(11日目、勤務中)
「……そうだ嬢ちゃん。俺も今度お人形を買うことにしたんだよ」
「そうなのか?」
「娘が欲しがってなぁ。やっぱり小さい女の子はお人形遊びが大好きだからな。何て名前だっけ?確かマ……マ……なんとか人形、う〜ん……何だったかなぁ?」
「あ、見えてきたぞ(娘?)」
「おおっと、じゃあお喋りは終わりだ。ここは量が多いから、気合い入れてけ!」
「了解した(ロボットの……娘?)」
(車の停車音)
今日も元気にゴミ収集をする錠前サオリだ。今は13番目の担当ゴミ捨て小屋……トリニティ総合学園の校舎裏に来ている。
指名手配の身でそんな場所に行くのは気が引けるが、今のところバレてないしそもそも校舎裏には生徒もほとんど来ない。しばらくは心配ないだろう。早速業務開始だ。
「すみませ〜ん、このゴミ袋も回収して下さ〜い!」
「おう、任せとけ嬢ちゃん!雑草いっぱいだな、草むしりでもしてたのか?偉いぞ!」
「あはっ⭐︎褒められちゃった!ありがとうございまーす!」
「いやしかしゴミ袋の数が多いな……お〜い!こっち来てくれ!」
「了解した」
作業をしていたら、誰かがまたゴミ袋を持ってきたようだ。呼ばれたのですぐに駆け寄る。雑草がいっぱいのゴミ袋が5〜6個あり、隣にはそれをむしったと思われる生徒が1人立っていた。
1人であの量は中々やるなと感心して、彼女の顔を見てみる。ピンク色の髪にお団子が2つ、銀河を思わせる立体的なヘイロー……ん?あれ!?
「ミカぁ!?」
「サオリ!?」
そこには泥だらけの体操服を着た聖園ミカが、目をまんまるくかっ開いて立っていた。
「________ぷはぁ!奢りのジュース美味しい!」
「よかったな」
そう言って私は校舎裏の自動販売機に背中を預け、ペットボトルの水を一口飲んだ。先ほど上司から「なんだ知り合いか?じゃあちょっと早い休憩だ。小遣いやるからジュースでも飲んで来い」と言われ、今私はミカと一緒に自動販売機の前でくつろいでいる。とは言っても日除けやベンチがないため、穏やかな昼の日差しが眩しく感じる。風が汗を拭うのも間に合わず、私とミカはその熱気を冷たい飲み物で誤魔化していた。
「奉仕活動か?」
「うん、今日は草むしり。あ、でもね聞いて。私力強いし結構動けるからって業者のおじちゃん達に頼まれて、街路樹の枝切りまでやらされてるの!見てよこの枝切りバサミ!」
頬を膨らませ、ミカはサブマシンガンと一緒に背負っていた枝切りバサミを掲げて見せた。よく手入れされた刃にトリニティのエンブレムが彫られている。それだけで普通の枝切りバサミが何か神聖な剣を掲げてるように見えて、少し笑ってしまった。
「いいじゃないか、街路樹をお前好みにかわいくしてやればいい」
「そう言うわけにはいかないの!ちゃんと綺麗に整えないとナギちゃんに怒られるんだよ」
「真面目にやってるんだな。……本当にいいと思うぞ、庭師の聖園ミカと言うのも」
「ちーがーうーのー!!」
「す、すまない……」
お気に召さなかったらしく、ポコポコと殴りかかって来るミカ。慌てて謝ったが、本気で殺し合ったあの時と比べたら遥かに弱い力だと気がついた。本気で怒っているわけではないのだな、よかった。私は大人しく殴られながらミカの頭を撫でてやった。しばらくそうしてると満足したようで、しかしむすっとしながら私から離れる。気持ちを切り替えるように、2人同時に水とジュースを飲み干し、ゴミ箱に捨てた。
「……あちこちでバイトしてるんだって?」
「ああ、自分探しをしてるんだ」
「前はコンビニで働いてるって先生から聞いてたけど?」
「バイト先、結構変えてるんだ。それで今はこれだ」
「そっか……何か見つかった?」
「分からない……。でも、何も得なかったわけじゃない」
「そっか。まあ……サオリが元気ならよかった」
「ありがとう。ミカも元気でよかった」
自然と顔を見合わせ、笑い合う。するとゴミ捨て小屋の方から上司の呼び声が聞こえてきた。そろそろ出発するらしい、私も行かなくては。
「お仕事頑張ってね、サオリ。あ、そうだ!しばらくトリニティ自治区にいるなら拠点の場所教えてよ!どこの廃墟にいるの?」
「廃墟?いや、マミーと普通の家に住んでるぞ」
「え?マ、マミー……!?」
「おーい!早くこーい!」
「すぐ行くー!すまない。またな、ミカ」
ポカンとしているミカに軽く手を振り、私は駆け足で上司のところに戻った。
「すまない、1人でやらせてしまって……」
「構わねぇよ。さあ行くぞ!」
すぐにゴミ収集車に乗り込み、次のゴミ捨て小屋に向かう。その道中、上司は私に問いかけてきた。
「あの草むしりの嬢ちゃんは友達なのか?」
友達、か……。あんな風に会話できるようにはなったが、果たして私達は友達だろうか?ミカは嫌じゃないだろうか?私が友達面をするのは……。
「………どうだろうな」
分からなかったから、私は言葉を濁した。
「________えぇ?確かスクワッドは……サオリは孤児だったよね?しかもマミー呼び?も、もしかして……アレかな?ママ活って奴なのかな?わーお………」
(11日目、退勤)
「なあ、マミー……」
「どうしたの、サオリ?にんじん嫌いだった?」
「いや、そう言うわけではないのだが……」
ちょうどスプーンに乗っていたニンジンを口に入れる。私達はソファに並んで座り、晩ご飯を食べていた。今日はレトルトのシチューだ。マミーも私も料理ができなくて、いつも惣菜や弁当、あるいはレトルトで済ませている。出来合いの品だが温かくてとても美味しい。
「……今日はどんなことがあったの?マミーにお話しして」
私の顔を覗き込み、問いかけてくる。マミーは聡い人だ。私が思い悩んでると気づいて、話しやすいようにそれとなく話題を振ってくれている。私はありがたくそれに乗ることにした。
「上司が娘にプレゼントを買うそうなんだ。あの、何と言うんだったか、マ、マ……」
「マミー人形?」
「ああ、そう。それだ。知ってるのか?」
「ええ、よく知ってるわ。素敵な話ね」
「そうだな。それで、その……羨ましくなったんだ」
仕事中や休憩時間の間、家族の話ばっかりしていた上司を思い出す。家族写真も見せられて、幸せそうな娘の顔を嫌でも覚えた。これから幼稚園で、お友達を作るのが楽しみ。どこにも嫁に行かせるつもりはない……なんて、ささやかで幸せな話。私にはなかったものだ。
「トリニティ自治区に来て、マミーに会えて……家族になれたのは嬉しい。だけど私達は本当の親子じゃないだろう?本当の親子じゃないから、私は幼稚園に通うことはなかったし、人形をプレゼントされることもなかった。子供の頃、家に帰るとマミーはいなかった……」
思い出すのはアリウスにいた頃、まだ私が幼くて、ミサキ、ヒヨリ、姫と寄り添って生きていた頃。あの時マミーがそばにいてくれてたら、私は上司の娘のように幸せな顔ができたのだろうか、嫉妬なんて醜いことしないでいられただろうか。
マミーと家族になって、上司の幸せを見せつけられて、私は改めてあの時手に入らなかった、普通なら当たり前の幸福を羨望するようになっていた。いや、これじゃあマミーと上司が悪いみたいじゃないか。そんなつもりじゃないんだ、ただ、その……言葉が見つからない。
「……ごめんなさいサオリ。もっと早くに会えていたら………」
「いや、いいんだ。私こそ……困らせてしまった。すまない。………それより!今日トリニティの校舎に行ったら、昔の知り合いと会ったんだ。聖園ミカって言うんだけど……」
気まずさをかき消すためにミカをダシにし、シチューを食べ終わるまで無理矢理会話を繋げる。
そして食後、諸々の寝支度を整える間、珍しく私達の会話は無かった。晩ご飯が終わったらやることがない。いつもならマミーとお喋りの続きを楽しむが、今はできそうにない。私は逃げるように自室に篭り、さっさとベッドに入った。
(ノック音)
「サオリ、もう寝てる?」
「……いや、起きてる」
「入っていいかしら?」
「…………ああ」
タオルケットに包まり、壁に顔を向けながら返事をする。ドアの開く音が聞こえる。足音、マミーが私のベッドの横に座った。
「サオリ、その……まだ出会って少ししか経ってないから、マミーはサオリのその苦しみをちゃんと分かってあげることができないかも知れない」
「……すまない、そんなつもりじゃ」
不意に頭を撫でられる。その温もりに安心感を覚え、同時に目頭も熱くなる。
「本当の親子じゃないけれど、昔のサオリに寄り添えなかったけど、これからサオリのマミーになれるように努力するわ。サオリを理解してあげられるように……」
そう言ってマミーは私に抱きつき、首筋に顔を埋めてきた。私は少し体勢を変え、抱き返す。
「もうマミーは私のマミーだよ。でも、ありがとう」
正直に言うと、まだ心に刺さった針は抜けてない。まだ少しだけ痛い。そんなこと、マミーならお見通しなんだろう。それでも何も言わずに抱きしめ続けてくれた。変わらない愛情で私を受け入れてくれた。温もりを貪るようにマミーのエプロンにひたいを擦り付ける。嫉妬も劣等感も拭い去りたくて、拭いきれなくて、いつの間にかマミーの胸の中で眠っていた。
(12日目、勤務中)
朝の10時頃。前半のゴミ回収を終えた私達は集積場に戻り、社員食堂に来ていた。昼休憩中にやることもない私は、いつもここで上司と早めのお昼ご飯を食べている。私は食堂でご飯を買うが、上司は奥さん渾身の手作り弁当だ。
「……あれ?今日は弁当じゃないのか?」
上司はトレーとお箸を持って、私と同じように食堂の列に並び出した。
「ああ、実は弁当忘れちまってなぁ。仕方ねぇから今日はこっちのを食べるんだよ」
「それは……災難だな」
……内心ホッとしていた。昨日マミーと話したこと、針の痛みをまだ感じている。今愛妻弁当を見せられたら、また羨望で痛くなっていたと思う。そんなつもりじゃないのに、上司のせいじゃないのに、飲み込めないこの感情を辛うじて押し留める。
気持ちを切り替えよう。ここのご飯は美味しいんだ。アリウスを出てから私は色んなものを食べるようになった気がする。今までなら潜伏中はカロリーバーと水さえあればよかったが、今の私はリスクを承知でちゃんとしたものを食べるようになった。何ならカロリーバーなんて最近買ってもないくらいだ。
「……今日は親子丼らしい、久々に食べるな」
「お、いいじゃねえか。楽しみだなぁ」
上司は顔面のディスプレイに笑顔を映す。私も笑い返して、自分の順番を待った。
「________パ〜パ〜!」
「っ!」
「ん?おおっ!おチビ!!!」
上司が列から飛び出し、食堂の入り口に駆けて行った。直後に上司と、女性と、小さな女の子の明るい声が聞こえてくる。ゆっくり振り返る。そこで会話してたのは上司とその妻ロボット、そして娘ロボットだった。間違いない、昼休憩のたびに写真を見せられ、話を聞かされているから。
「あなたったら、慌てん坊なんだから。弁当届けに来たわよ」
「いや〜悪りぃなぁ!おチビもついてきてくれたのか!」
「うん!パパにね、あいたかったの!」
「そうかそうか〜!!かわいいなぁおチビ!!」
鈍痛を感じ、胸を押さえつける。心臓の中で針が暴れている。上司の家族の笑顔を直視できない。私にはマミーがいるから大丈夫なはずなのに、これ以上を求めてしまう。娘が憎たらしく感じる。お前は祝福されて産まれ、優しいパパとママに囲まれてすくすく育ち、学校に行って、友達を作って、反抗期やすれ違いでたまに喧嘩もするけど最後はまた祝福されながら巣立つんだろう?私はそれがなかったのに!どうしてお前だけ!!
「どうした?バイトの嬢ちゃん、腹痛いのか?」
「えっ!?あっ、いや!すまない……」
いつの間にかこちらに駆け寄っていた上司に呼びかけられ、ハッと意識を戻す。心配そうな顔をディスプレイに映してる……ああ、何やっているんだ、この人達に何で酷いことを考えていたんだろう!!こんな私が求めていいわけがないのに。
「まあいいや、ちょっと来てくれよ。カミさんと娘に嬢ちゃんのことを紹介してぇんだ」
「あ……いや、私なんかが……」
「何だ?やけにネガティブだな。自信持てよ、嬢ちゃん真面目でいい奴だって評判なんだぜ。いいからほら」
自己嫌悪と、それでも抑えられない羨望、胸の痛みに苛まれていると、上司はそう言って私の手を掴んだ。そして上司の家族の下へズンズンと引っ張っていく。一歩進むたびに心臓の針が深く突き刺さり、何かを縫い付けているかのような連続した痛みを発する。そして奥さんと娘さんの目の前に立った瞬間、縫い付けた糸を絞るように心臓がキュッと縮んだ。
「あら!貴女がバイトのお嬢さんね!うちの旦那からとってもいい子だって聞いてるわ!この人変なことしてないかしら?気に入らなければ蹴っ飛ばしていいからね!」
「おいおい!言いがかりはよしてくれよ!俺がそんなことすると思うか?な〜おチビな〜」
「パパいいこ!ね〜マミーね〜」
上司に抱き上げられた娘さんは、愛おしそうに人形を撫でていた。赤いエプロンに、優しく柔らかな顔立ち、そして綺麗で長い金髪。トリニティで昔から売られているマミー人形、そう言えば買ってやるんだと上司が言ってたな。
「まあまあ綺麗なお顔立ちしてて素敵ねぇ……あら?大丈夫?緊張しちゃってる?」
「……大丈夫だ。すまない」
そう返すので精一杯だった。これ以上口を開いたら理不尽な言葉を投げかけてしまいそうで、自分の奥底の激情を抑えるのに精一杯で、とても人に向けるような顔をしていないと思う。
「おねーちゃん、どうぞ」
「え……?」
不意に娘さんがこちらに歩み寄り、風呂敷に詰められた箱を差し出してきた。受け取って風呂敷を、蓋を開けると、色鮮やかなお弁当が中に入っていた。
「どうせ届けるならと思って、お嬢さんの分も作ったのよ!よかったら食べてちょうだい」
「いや、私は大丈夫だ……」
「遠慮すんなって、うちのカミさんの飯はうめぇんだぜ!」
「いらない!!」
(弁当箱が床に落ちる音)
上司に返そうとするが受け取って貰えず、押し付け合いになってしまう。つい声を張り上げた瞬間、弁当箱を落としてしまった。
食堂に響き渡るくらい大きな音が鳴り、驚いた娘さんが泣き出してしまう。それが私の耳を通り心臓まで到達し、針を奥深くまで突き刺した。
「ぉうぇっ……あ」
「お、おい嬢ちゃん?大丈夫か?さっきからおかしいぞ?」
何の涙か分からないが溢れてくる。声に嗚咽が混じる。どうすればいいのか分からなくなって顔を手で覆った。
「ごめんなさいね、押し付けちゃって。嫌だったかしら?」
「違っ、ごめんなさい……そんなつもりじゃ……うぅっ!!」
「おい、嬢ちゃん!!」
ついに爆発してしまい、私は食堂を、集積場を飛び出した。街中の人々が私を不思議そうに見つめるのも無視して、ボロボロに泣きじゃくりながら走った。走って走って、息せき切って、自宅に駆け込んだ。
「あら、サオリどうしたの?」
「マミー!!」
マミーの姿を見つけた瞬間、私は荷物もスマホも全部そこら辺に投げ捨て、その胸に飛び込んだ。フェルト生地にぐちゃぐちゃになった顔を擦り付け、大声で泣き叫んだ。マミーは何も言わずに抱き返し、撫で続けてくれた。
5分ほどそうして、その体温と優しさのおかげでいくらか落ち着きを取り戻す。喉が枯れて息が上がっている。私は深呼吸を一度した後、顔を上げてマミーの目を見た。瞳に反射して見えた私の顔は見るに耐えないものだった。
「マミー。私マミーの本当の娘になりたかった!やっぱり我慢できない。マミーに育ててもらって、学校行ったりお弁当作ってもらったりしたかった!いっぱい甘えたかった!マミーの子供として生きたかった!そうだったら私は虚しさも感じずにいられたのにって……!上司の奥さんと、娘さんに、あんな酷いことしてしまったり、悪いことを思ったりしなくて済んだのにって……!私……私………!」
胸の中に抱えてたものを全て吐き出す。心臓に刺さった針の穴から止めどなく出てくるそれを、我慢せず全部。涙も鼻水も垂れてきて、嗚咽もして、それでもマミーに抱き付き続けた。
それに対してマミーは私を見続け、全てを聞き入れてくれた。そして私を慈しむ瞳のまま、そっと額に口付けを落とした。
「________ようやっと言ってくれた」
「マミー?」
「大丈夫よサオリ、安心して。サオリがそう望んでくれるのなら、私がサオリを産み直してあげる」
「……え?そんなことできるの?」
「ええ、できるわ。サオリを産み直して、マミーの本当の娘にしてあげる。そしたらサオリもお弁当作ってあげられるし、学校にも通えるわ」
「で、でも、いいの?私……サオリ、いい子じゃない………」
「そんなことないわ!サオリはいい子。だからマミーも、サオリを本当の娘にしたいのよ」
「じゃ、じゃあお願い!サオリを本当の娘にして!」
「もちろん!それじゃあ行きましょうか、マミーとサオリが初めて会った場所へ」
「うん!」
いっぱいないちゃって、それでなみだとかはなみずとかでぐちょぐちょだったけど、マミーがふきふきしてくれた!うれしい。それでね、マミーといっしょにおててをつないでおうちをでたよ!マミーとサオリがはじめてあったばしょにいくの!サオリね、マミーのむすめになるの!とってもたのしみ!
「あれ、サオリ……!?」
「あ、ミカちゃん!」
「ミカちゃん!?」
マミーとサオリがはじめてあったばしょにいくとちゅうに、ミカちゃんがいたよ!なんでかわかんないけどすっごくおどろいてる!たいそうふくで、えだきりバサミもってる。おにわそうじをしてたのかな?
「サオリ、どうしたの?なんかおかしいよ!?」
「あのね、いまからマミーとサオリがはじめてあったばしょにいって、マミーのむすめになるの!」
「マミーって、それのこと?その、サオリがだっこしてるそのマミー人形……?」
「ん?マミーはマミーだよ?」
「ヒィッ!?」
「あ、だめマミー!おこっちゃだめ!ミカちゃんはおともだちなの!だめ!……ごめんねミカちゃん、いそいでるから、またね!」
「………」
マミーがミカちゃんのことおこっちゃったから、ミカちゃんがぺたんってすわっちゃった。ヒューッ、ヒューッていってこわがってる。けどごめんね!はやくいかなくちゃ。楽しみだな〜。
うれしくなって、もういっかいマミーのおててをぎゅってにぎって、マミーとサオリがはじめてあったばしょにいったよ。
(…………何?あのマミー人形?)
(人形だから、動かないはずなのに……睨まれた。すごい強く拒絶された。動けなくなった。怖すぎて……)
(バルバラとかそういう類かな。何というか、危ない……!サオリが危ない……!)
(追いかけなきゃ、でも腰が抜けちゃってる。しばらく動けないかも………)
(ああもう涙出てきた。サオリ……)
(…………スマホどこだっけ)
(電話の呼び出し音)
「もしもし、先生?いきなりごめんね。ちょっと緊急事態」
「………………」
「うん、うん。だから、ちょっとお時間貰っていい?」
幕間・サオリのバイト飯
7.ファンシーレインボーユニコーンピザ
食べた時のバイト:ピザ屋の配達
説明:パプリカやナス、紫玉ねぎなどの色味が強い食材をカラフルにトッピングした馬肉のピザ。
コメント:店長曰く、ユニコーンは小さな女の子達の憧れらしい。……確かに美味しいんだがそんなものをピザとしてお出しするのはどうかと思う。小さな女の子達泣かないか?
8.姫達が買ってきた惣菜
食べた時のバイト:ピザ屋の配達
説明:潜伏先の近所のスーパーで売っていた唐揚げ、餃子、春雨サラダ、おにぎり、コーラ、チョコパイ。
コメント:ピザ屋の配達バイトでの給料を貰い損ねた私のために、3人がお金を出し合って買ってくれた。代金を払おうとしたが、「私達がしたいことのためにお金を使ってるから大丈夫。サッちゃんは気にせずいっぱい食べて」と言ってくれた。今までで1番美味しい夕食だった。