翌日、私達は村であの山とヒダル様、ヒダルソウの情報を集めることにした。前回は闇雲に探したわけではないがヒントが少なすぎた。もっと情報を集めることで山に入る時間をできるだけ短くしたい……それがサヤの提案だっだ。
「あんなのがいるなんて……ヒダル様とやらがいるなんて聞いてないのだ!」
「聞いてはいたぞ」
「ああもう!ヤバい奴だなんて聞いてないのだ!なんならもう二度とあの山には入りたくない!サオリ!ぼく様ここにいるから取りに行ってきて!」
旅館という安全地帯に入り、一晩過ごしたサヤは元気に喚くようになったが、あの恐怖はいまだに残っているらしい。それでも諦めないのは大したものだな、私1人にやらせようとしてなければ尊敬したのだが。
「そう言うわけにもいかないだろ?知識なんてない私1人では採集どころか、植物の見分けすら分からんぞ」
「ああ……ははっ、確かにサオリだけじゃ大変なのだ」
「オイ、なんで笑った?」
昨日のウルイとモドシユリ間違えちゃった事件を思い出してるのだろうか、よく似てたんだからあんなの間違えるわ。
「……まあいい。あんなのがいる山に長くいたくないのは私も同じだ。おにぎりを食べたら消えた……『山に入る時は村の作物を食べておくこと』を守っていれば安全だとは分かっているが、気味が悪い」
「他所様の神様にこんなこと言うのは失礼かも知れないけど、会いたくないのだ……」
そう言って俯いたサヤの頭を撫でてやる。常識では考えられない存在に慣れていないのだろう。元気に見えるが、根っこに恐怖が居着いてしまったようだ。
恐怖することは悪いことではない、だが恐怖し続けるのはダメだ。いざという時動けなくなって、手遅れになる。山に入る上で大きなリスクになってしまう。克服して貰うのが1番だが、すぐには無理だろう。
……雇われた身として、支えてやらないとな。それに情報が集まれば、未知が既知に近づけば恐怖も和らぐはず。サヤは優秀な学者(らしい)から、本人もそう思って情報収集を望んでるのかも知れない。
「……どこまでできるか分からないが、最後まで付き合うさ。ほら、さっさと行くぞ」
「うん。……ふんっ!よし、サオリ!ぼく様について来い!」
「フフッ、了解」
両手で頬を叩き、気合いを入れ直したサヤ。空元気でもやる気を取り戻したのなら上等だ。ずんずん進むその小さな背中を追って、私は旅館を後にした。
________さて、情報収集だがまずは村人への聞き込みから始めることにした。女将と仲居は忙しいそうで話を聞けなかったが、村人に話しかけろと助言を貰えた。
「小さな村でみんな知り合いなので、気さくで良い人達ですよ。お客様の話も聞いて下さるでしょう。オホホホ」
とのことだ。そして彼女の言った通り、村人達は皆優しかった……優しかったのだが。
「あら〜サヤちゃん!サオリちゃん!お散歩してたの?これ持ってっていいわよ!」
「わぁ!新鮮なトマト!おばさんありがとうなのだ!……って、なんでぼく様達の名前を知ってるのだ?」
「おう!サオリ!サヤ!明日暇か!?トウモロコシの収穫手伝ってくれねーか!?」
「む、バイトの募集か?少し考えさせてく……いや待て。お前は……村の住民か?初対面だよな……?」
「サオリねーちゃん!虫取りして遊ぼ!」
「サヤお姉ちゃん、お外のお話ししてぇ」
「わ、悪いが暇じゃないんだ……!」
「無理!ぼく様達やることあるから!じゃあねなのだ!」
………この村は小さく、住民全員が顔見知りで仲がいいらしい。だから外から来た人間はすぐに分かるし、情報の拡散も早いそうだ。
「……だからって初対面で名前呼びは……ん゛っん゛っ!……おかしくないか………!?」
「パーソナルスペースがイカれてるのだ……!ああ、でもなんか色々貰えたのは嬉しいね」
村唯一の商店の前に設置されたベンチに座り、野菜を育ててる村人のおばさんから貰ったきゅうりを齧る。隣のサヤは子供達から貰った干し柿を食べ、米農家の若い夫婦から水筒ごと貰った水を飲んでいた。
他にも果物やお菓子や今2人とも被っている麦わら帽子など、色々貰ってしまった。村人は皆異様に優しくしてくれた。
最初は悪意や媚びへつらいでもあるのかと身構えていたのだが、そんなものは一切ない、まるでこちらを家族として受け入れてるかのような姿勢と雰囲気で、彼らは私達に接してきた。純粋に、お腹減ってないか?美味しい野菜が取れたから食べてみるか?と言う気持ちで野菜を分けてくれた。親戚や知り合いにちょっと手伝って欲しいと言う気軽さで農作業を手伝ってくれと頼まれた。親戚に久しぶりに会えたのが嬉しくて遊びに誘われた。こう……善意しか感じないのだ。それが不気味だった。
「ケホッ……旅館の客は村人総出で持て成すとか、そう言う文化なのか?優しくしてくれるのは嬉しいけど、あんな当たり前のように話しかけてくるのはいくらなんでも怖いのだ」
「隠すつもりは別になかったが、バラしたのは旅館の人間だろう。いい人達だが、さすがにクレームを入れるべきだな」
「現代社会でこれは不味すぎるのだ!先生にもゴホッ!……言いつけてやる!」
サヤはりんごで右の頬を、怒り心頭で左の頬を膨らませている。出発前の元気のなさは消えて、元のサヤに戻ったのは不幸中の幸いだろう。それに、皆フレンドリーだったおかげで情報は集まった。
「山で……ごほっ、んーっ。……私達に迫ってきたのはヒダル様で間違いない。誰に聞いてもそれはヒダル様だと言ってたからな」
「でもヒダル様が具体的にどんな姿か分からなかったのだ。誰も直接見たことがないんだって」
「仕方ない、神様だからな」
この村で昔から信仰されている土地神、ヒダル様。村に飢饉が来ないように、山や畑に恵みをもたらすと信じられ、その信仰が今もこの村には根付いている。村人達は口を揃えてヒダル様を畏れ、讃えていた。
「山でヒダル様に会いそうになったの!?それは大変だったわね。でもお腹を空かせてなければとてもいい神様よ!みんながお腹を空かせないようにお恵みを下さるんだから!」
……と言った具合に。
「そしてフェイスベールもヒダル様信仰の一環と言ってたな」
「うん、口に入れたヒダル様……んっ、ヒダル様のお恵みが出て行かないようにって。食べたものを吐き出すことが禁忌。食べたものはちゃんと消化して栄養にしろってことなのかな?」
「過剰に感じるが、吐いて腹を空っぽにしたせいでヒダル様に襲われてしまうのを防ぐ経験則かも知れない。あくまで私の予想だがな」
「ぼく様もゲホッ、そう思うのだ」
ヒダル様についての情報整理は以上。次はヒダルソウについての情報を整理する。……こちらは大収穫だ。
「……ヒダルソウはヒダル様が現れた場所に生える。自生はしているけど数が少ないから、山で見つけたいのならヒダル様がいた場所に行けばいい。……昨日ヒダル様が迫って来た所を重点的に探せばあるいは……」
「う〜ん、気が乗らないのだ……!やっぱり怖い……」
「腹を括れ、お腹いっぱいにしておけば襲われないんだ。大丈夫だろう。……不老不死の霊薬を作るんだろう?」
「ああもう!守れよ!サオリ!」
「任せてくれ、私も怖いがな」
「不安!」
頭を抱えるサヤに苦笑する。何にせよ次のヒダルソウ探しでの行動方針が決まった、一歩前進だな。
情報整理が一通り終わり、肩が少し軽くなった気がして、私は大きく伸びをした。時刻は正午。昨日も今日も歩き通しで少し疲れたな、全身の骨がポキポキと鳴っている。
その痛気持ちいい感覚を堪能していると、急に喉がむず痒くなった。
「ゴボッ……!!ゲホッゴボッ!!……ふぅ」
かなり強く咳き込む。食べたものが出てこなかったのは幸いだ。何だか分からないがさっきからずっと喉が痛いのと、胸焼けがする。色々あって、本当に参ってるのだろうか?
「大丈夫か、サオリ?」
「ああ、問題ないとは……思う。それにサヤ、お前もさっきから咳き込んでただろ?」
「うん、何だか喉が痛くて胸焼けがするのだ……」
「全く同じ症状だな。風邪か?」
「山の中で何か悪い菌でも拾って来ちゃったかな?聞き込みは十分だし、今日はもう帰るのだ!」
「そうだな、夕飯まで寝ていよう」
そう言って私もサヤも立ち上がり、村人達から貰ったものを抱えて、のんびりとした足取りで旅館に帰ったのだった。
旅館へ帰る途中に見覚えのある顔と遭遇した。昨日山に入る前に会った老夫婦だ。私たちが歩いてる道沿いに彼らが住む家があり、そこの縁側で寛いでいた。
「あら、昨日ぶりねぇ。よかったらお茶でもどう?」
「顔色が悪いぞ、少し休んでけ!」
症状が酷くなっていて歩くだけで気分が悪い。喉の痛みと胸焼けが本当に苦しい。だがなぜか食欲は増していく一方で、私達は村人から貰った食料を歩きながら平らげてしまった。それでも空腹は収まらず、もっと気分が悪くなっていたのだ。
そんな地獄のような不調が顔に出ていたらしい、老夫婦は私達を心配そうに迎え入れてくれる。ありがたく縁側に上がらせて貰った。
「あ、麦茶とありがとうなのだ!」
「これは……おにぎりか?わざわざすまない、感謝する」
「カッカッカッ!気にせんでもっと食べなさい!」
そう言って老夫婦はどんどん食べ物を持ってくる。喉の痛みと胸焼けがあるのに食べ物だけはするする入る。普段の倍以上は食べてる気がする……不思議だがそれどころじゃない、やめられない止められない、ひたすら食べ続けた。
「ゲホッゴボッ……あ、ラマンドゥとぽちゃぽちゃ焼き。まさにおばあちゃん家って感じなのだ」
「あらまぁ、おばあちゃん家ですからねぇ」
サヤはそう言ってサヤは市販のお菓子を見慣れている、しかし親しみを感じているような眼差しで眺め、そして食べ始めた。
「どう言うことだ?そのお菓子とおばあさんの家が何か関係があるのか?」
「ん?サオリのおばあちゃん家には無かった?おばあちゃん家にいっつも置いてあるお菓子といえばラマンドゥとぽちゃぽちゃ焼きって相場が決まってるのだ」
「……すまない、馴染みがないな」
「ふーん。ま、そう言う家もあるのだ」
そう言ってサヤは私にぽちゃぽちゃ焼きとやらを差し出してくる。手がおにぎりでいっぱいだったので私はそれを口で受け取った。
列車の中やヒダルソウ探しをしていた時など、ふと世間話をした時、私はついうっかり話辛い話題を振ってしまうことがある。そんな時サヤは深掘りせずに適当に流してくれる。面倒なだけかも知れないが、いい距離感を保ってくれているようで有難い。サヤはいい奴なのはこの旅で分かったから、今後とも仲良くできたら嬉しいものだな。
ぽちゃぽちゃ焼きのあまじょっぱさを堪能しながらそんなことを考えていると、隣に座っていたお爺さんも感慨深そうにぽちゃぽちゃ焼きを食べ始めた。フェイスベールがめくれないように中に入れて食べる姿は随分不思議だな。
「カッカッカッ!つい買ってしまってなぁ。村の外にいた頃から好きだったんだよ」
「村の外?んんっ……移住者なのか?」
「おう!元は植物学者でなぁ、ええと……そうだな、お前さん達ヒダルソウを探しとるだろ?アレの論文書いたのワシなんだよ」
「ええっ!?ガハッガハッ……おじいちゃんがあれ書いたの!?」
サヤは叫び声を上げたかと思うと、懐からヒダルソウの資料を取り出した。ああ、列車で見せて貰ったあれか、それを書いたのがこのお爺さんなんだな。
「こんな所で会えるなんて光栄なのだ!これを書いた直後に引退して田舎に引っ込んだって聞いたけど……!?」
「それがワシで、その田舎がこの村じゃな。いやぁ本当はヒダルソウを持ってこの村もさっさと出て、研究に没頭しようかと思ってたんだがなぁ、滞在してるうちにすっかりこの村が好きになっちまってなぁ。研究ならここでやればいいやって移住して、だけどカミさんと結婚して農業始めたら研究もすっかりやめちまって、今に至るんだ」
「うわぁ……もったいないのだ……!」
「フフッ、いいじゃないか。それもまた人生だし、貴方のやりたいことだったのだろう?」
サヤと同じで、この人も自分の夢や目標……幸せを持ってるんだな。眩しいな。
「カッカッカッ!そうかもなぁ!最初はさっさと逃げ出したい研究したいって思ってたけど、そう言うのが綺麗さっぱり無くなって、村のことしか考えられなくなっちまったんだ。郷土愛って奴が芽生えたのかもなぁ」
「なるほど、郷土愛か。そう言うのもあるのだな……」
「ぐぅ……こればっかりは仕方ないのか。……あっ、そうだおじいちゃん」
釈然としないと言いたげな顔をしていたサヤ。直後に何かを思い出したようで耳をピンと広げだした。
「昨日、何か言いかけてなかった?おばあちゃんに止められていたけど」
昨日、何か言いかけた?
『いいえ、ヒダルソウは食べられませんからねぇ。私らは採りませんよ』
『カッカッカッ!それにヒダルソウに用があるってんなら、村で……』
『ああ!あなた!』
『おおっと!』
……ああ、アレか。
「いや、お婆さんが止めてたのだからグフっ……無理に聞き出すことでもないだろう、サヤ」
「でも気になるのだ!ん゛ん゛っ……ヒダルソウを調べてた人なら何か知ってるでしょ?裏技的なものでもあるの?村で〜って言ってたけど村に何かあったりする?」
「ああ、そのことか〜……なあ、お前」
「そうですねぇ、あなた」
老夫婦は何かを示し合わせるかのように視線を交わし、そして笑顔を浮かべて私達を見やった。
「ヒダルソウが欲しいんだったな?よかったなぁお前さん達、カッカッカッ!」
「今夜女将さんから話をされると思いますから。その時には私達も来ますねぇ」
……どう言うことかと問い詰めてみたが、ニコニコするだけで何も話してくれない。それどころか、さっさと帰って休めと急かされてしまった。まあ確かに食べるだけ食べて居座るのはよろしくない。それに思うところはあるが体調は幾分か楽になって。異常な空腹も感じない。いっぱい食べさせてくれた老夫婦のおかげだ。私達は丁寧にお礼を言って、老夫婦の家を後にした。
________その後は部屋に用意されていたトランプで遊んだり、サヤが研究内容をまとめてるのを眺めたりして時間を潰した。しかし胸焼けと喉の痛みがどんどん酷くなり、どの暇つぶしもやってられなくなる。最終的には2人して呻きながら畳の上でゴロゴロ転がっていた。
「お客様方、錬丹術研究会のお二方」
19時頃、女将が部屋にやってきた。食事を持ってきたのだろうか、にしては時間が早いな?何にせよこんなみっともない姿は見せられないと思い、どうにか立ち上がって対応をする。サヤは気にせずゴロゴロしていた。
「女将か、どうしたんだ?」
「オホホホ、お二人に贈り物がございまして。宴会場まで来ていただきたいのです」
「贈り物?ここに持ってくるんじゃダメなのか?実は体調が優れなくて……」
喉に痰が絡まってる感覚……アレがずっとしている。声も何だかしゃがれている気がする。しかし女将は気に留めることもせず、笑っている目でこちらを見つめ続けていた。
「オホホホ、申し訳ありませんが、皆様待っておられますから。お召し物も変えましょう」
そう言うや否や女将と何人かの仲居が部屋に入り、私とサヤの身支度をし始めた。
押し切られる形で服を脱ぎ、用意された上質な着物を見に纏う。そして口元には女将と同じようにフェイスベールをつけられた。
「この着物も口布も、この村で栽培されてる木綿でできているのですよ。これも村の作物、だからこれにもヒダル様の加護があるのです。素敵でしょう?」
「あ、ああ……そうだな。だが女将、一体何故こんなことを……?」
「もう!色々やってくれるのは嬉しいけど強引過ぎるのだ!村の人達にぼく様達のことを教えたのも女将でしょ!?」
「オホホホ、お二人共よく似合っておられますわ!さあさあ、村の者達にも見せましょう!さあ!」
女将と仲居に、本当に強引に背中を押されて宴会場へと辿り着いた。道中サヤは大騒ぎだったが、近づくにつれてそれ以上に大きな喧騒が宴会場から聞こえてくることに気づいて静かになった。私も口を塞ぎ、サヤと目を合わせる。もしかして、村人全員集まってるのか?
「おう!サオリとサヤが来たぞ!」
「サオリちゃん!サヤちゃん!おめでとう!」
「今日の主役の登場だな!カッカッカッ!」
宴会場の中は異様な光景だった。今日私達が話をした村人はもちろん、それ以外の村人が宴会場に集結しており、全員が宴会場の壁際に並んで立っている。皆私達と同じ、着物にフェイスベールの出立ちだ。……そう言えば村人達は、今日会った村人の中には洋服を着ている者もいたが、基本的に和服でフェイスベールは絶対着けていたな。おかげで口元は見えないが、全員笑ってこちらを見ていた。
村人らの円の中心には大きなローテーブルがあり、その上にはクローシュ(洋食店で料理の上に被せることがあるドーム状の銀色のアレ)が乗った皿が置かれていた。女将に促され、私とサヤは宴会場に入り、ローテーブルの前に座る。女将は反対側に座った。
「一体、こんなに人を集めて何をする気だ?」
周囲を警戒しつつ、女将を問い詰める。女将は含み笑いを漏らし、クローシュの取っ手を掴んだ。
「オホホホ……。錬丹術研究会の研究のために、ヒダルソウを求めてこの村に来たのですよね?」
「そうなのだ!……ん?贈り物ってまさか!?」
女将はクローシュを持ち上げた。そこには私達が昨日頑張って探していた植物の姿があった。
一見するとどこにでも生えていそうな形の植物だが、葉の色が黒に非常に近い深緑で、たった2本しかない根っこは非常に細長く、2メートル前後まで伸びている。間違いない……!
「ヒダルソウ……!これが本物の……!」
「やった!ヒダルソウなのだ!もしかして、村の人達が採集してくれたの!?ありがとうなのだ!!」
「オホホホ。いいえ、採集したのではありませんよ」
「「え?」」
私達は目を丸くした。山に行って採集したのではないのか?じゃあどこから?そんな疑問で頭がいっぱいになっていると、女将はクローシュ横に置いて、皿の上のヒダルソウを愛おしそうに撫でた。
「こちらは、我が村が秘密で栽培しているヒダルソウですよ。オホホホ」
「「………………え?栽培?」」
幕間・サオリのバイト飯
16.蟠桃の天女
食べた時のバイト:旅館の仲居
説明:蟠桃の間に飾られていた屏風絵、『蟠桃の天女』の切れ端。
コメント:化け物から逃げ切った後、いつの間にか絵の切れ端を握り締めていて、それに気がついた瞬間無意識に食べてしまった。結局吐き出せなかったが大丈夫だろうか……今の所お腹を壊してはいないが。
味は紙の味がした。幼少期に飢えのあまりに食べた道端の段ボールよりは美味しかったと思う。高級な和紙だったのだろう。