錠前サオリの裏バイト奇譚   作:@Ana

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あにまん掲示板で投稿していたものです


ビーチ前屋台警備.1

ビーチ前屋台警備のバイトを始めた錠前サオリだ。ここはアウトロービーチ……の付近にある⬛︎⬛︎自治区で1番大きなビーチ。たくさんの観光客が遊びにくる場所で、海の家はないが祭りの縁日のように屋台が並んでいるのが大きな特徴だ。この屋台はビーチの組合が管理しており、私は組合に雇われて屋台周辺の警備をすることになった。

先日のヘルメット団総連合会ではDJの護衛を中心に様々な仕事を行ったが、今回は警備だけをやることになる。ビーチで巻き起こるトラブルを無事に解決し、時には荒事に飛び込んで行かなければならない。大変な仕事だが時給は1万円、さらに昼食や飲み物を買うためにどの屋台でも使えるフリーパスが支給される。気前がいいな、張り切って行こう。

なになに、注意事項として『本ビーチではココナッツジュースの販売が禁止されている。もしココナッツジュースを飲んでいる客を見かけたら組合本部に報告すること』……とのこと。ヘルメット団総連合会では販売されていた覚えがある、ココナッツに穴を開けてストローを通して飲むアレだな。ここではダメなのか、覚えておこう。

 

(1日目)

 

カラッとした眩しい日差しに照らされる中、観光客達が青い海を求めてビーチにやってくる。熱に浮かされた人々は財布の紐も緩くなり、気前よく屋台で買い物をしていた。焼きそばやジュースが飛ぶように売れる、何だかよく分からないキーホルダーやアクセサリーもついでに売れる。

「よってらっしゃい見てらっしゃい!このビーチ名物の緑閃光の写真集だよ!縁起物だよ〜!絵ハガキとかもあるよ〜!」

……お土産屋、と言ったところか?おおよそ屋台で売るような物ではない物を売っている屋台もある。何というか……凄いな、先日のヘルメット団総連合会以上の活気だ。押し流されないようにしなくては。

そんな喧騒の中、私の業務は始まった。ビーチの屋台エリアを練り歩き、怪しい人物がいないか監視をする。何か見つけたら、耳につけたインカムで組合本部に報告し、不審者の確保や応援の要請を行う。左手には組合の腕章をつけており、それを見て助けを求める観光客が話しかけてくることもある。それを助けるのも仕事だ。

滞りなく業務を行い、たこ焼き屋の店主にいちゃもんをつけている観光客の身柄を取り押さえていると、ちょうど昼休憩の時間になった。

「ありがとね、警備のお姉ちゃん!よかったらうちのたこ焼き食べてって!」

店主からたこ焼きを3パックも貰った。何を食べようか迷ってたからちょうどいいな。だがフリーパスがあるとは言え、こんなに貰っていいのだろうか?

「いいのいいの!どうせ原価バカ安いんだから、ちょっとおまけしても問題ないわ!」

「そ、そうか……。なら頂こう、感謝する」

駆け付けた組合職員に取り押さえた観光客を預け、私はその場を後にした。

「どこか座って食べられる場所は……」

屋台エリアを離れ、ビーチの駐車場エリアへと入る。確かここにはいくつかベンチがあったはずだ。水着(ヘルメット団総連合会で着ていたもの)を着ているとは言え、今の私はアルバイト。ビーチの砂浜で観光客に混ざって食べるのは気が引けた。

そんなわけで空いているベンチを探していると、歩道で誰かが揉めているのを見つけた。片方は組合職員、もう片方は……悲壮な表情の獣人(ラッコ)の女性だ。

「どうした、トラブルか?手伝おうか?」

「ん?ああ、バイトの人か。いや〜この人ね〜、届け出を出してないのにビラ配りしててね〜。困っちゃうよホント」

「そんな!出してるじゃないですか!何度も何度も!なのにどうして許可してくれないんですか!?」

「いや〜そこら辺は上の人の裁量次第ですけど……屋台の宣伝ならともかく、行方不明者の捜索チラシは通りにくいといいますかぁ……」

「……行方不明者?」

「そうなんです!!」

私が呟いた瞬間、女性は血相を変えて私の肩を掴み、顔を近づけてきた。

「去年、このビーチに息子と遊びに来たら、いつの間にかいなくなったんです!ヴァルキューレに捜索して貰ってるけど全然見つからなくて……!もう心配で……!ああ……坊やっ、どこにいるの……!?」

女性は私にしなだれかかり、さめざめと泣き始めた。周囲の観光客が好奇の視線を向けてくる。ヒソヒソと何かを話しているのが聞こえる。だがそんなことが気にならないくらい、この女性が哀れに思えた。

彼女が持つチラシを1枚貰い受ける。息子さんの写真と、息子さんの情報がびっしりと書かれている手作りのチラシ。少しでも息子さんに繋がればと祈るような思いを感じた。……とても愛情深い人だな。ヴァルキューレの捜査を待ち続け、自分でも何かしようとチラシを配っているんだろう。勝手に配っているのは悪いことだが……何かしてやれないだろうか?

そんなことを考えていると、それを見透かしたような困り顔で、組合職員は私から女性を引き剥がした。

「もう、困りますよ〜お客さん。とりあえず本部連れて行きますから、ほら立って。バイトさんはこれから昼休憩だよね?もう大丈夫だから、行っていいよ」

「だが……」

「あんまり入れ込むものじゃないよ、ね?」

「あ、ああ……。失礼する」

職員に促され、私はその場を離れる。後ろからは女性の鳴き声と、職員の宥める声が聞こえ続けた。

しばらくして、ちょうどいいベンチを見つけた私はそこでたこ焼きを平らげ、ホッと一息を吐く。たこ焼きは美味しかった。でも何かが胸に引っ掛かっているように感じる。恐らくその原因である、ずっと持っていたままのチラシをもう一度見た。

写真には真っ白なカバの帽子を被った少年が笑顔で写っている。確かアズサの友達ファウストが同じキャラクターの鞄を背負っていたな。爆弾を仕込んでいたあの人形も……何にせよ、特徴的な目印だ。

「入れ込まない方がいいのは同意する。だが、頭の片隅に入れておくだけなら、文句はないだろう……」

息子さんの顔を覚え、チラシを丁寧に折り畳み、ポケットに仕舞った。




幕間・サオリのバイト飯

17.エンジェル24の生プリン

食べた時のバイト:事故物件ロンダリング
説明:エンジェル24が自社工場で製造している生プリン。トリニティのパティシエが監修し、百鬼夜行の新鮮たまごと牛乳を使い、ミレニアムの最新設備で量産している。お値段は普通のプリンより少し高い。

コメント:口の中で溶けて濃厚な甘味が広がる絶品プリンだった。カラメルも上品な味わいで思わず笑顔になった。ヒヨリにも1つ買ってやったが、調子に乗って3つくらい強請ってきたからお望み通り3つ買って目の前で食べてやった。たまにはいいだろう。
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