錠前サオリの裏バイト奇譚   作:@Ana

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あにまん掲示板 で 投稿 していた ものです


セミナー案件・兎狩り.5

(23階、高級レストラン)

 

「顔を出したぞ!撃て撃てェ!!」

ギャング達の連携のない乱射。私は右隣にあったテーブルに素早く隠れる。直後、アサルトライフルの鋭い弾丸がテーブルを襲った。

先ほどまでいた遮蔽……そこに隠れているコユキを見やる。あちらに攻撃が行ってないのを確認してホッとする。あえて姿を晒すことで敵の狙いを私に集中させようと言う目論見は達成した。これでコユキは大丈夫、後は私が頑張るだけだ。

さてどうするか。適当に撃ち返しながら改めて敵の様子を見る。しっかり数えたところ21名のギャングと、最奥にはボスが指示を飛ばしている。ボスを狙い撃ちできたら楽なのだが、人数が圧倒的に不利で狙撃なんて出来そうにない。仕方がないから少しずつ削って行こう。手始めに1番邪魔なのは………、

「………ハイヒールだな」

「うおおおおおおおおグフゥッ!?」

痺れを切らし、こちらに突進してきたギャングの顔面に蹴りを入れる。ハイヒールが鼻先に直撃し、悲鳴と鼻血を出してそのまま意識を失った。私はそいつが倒れる前に抱き寄せ、首を掴んで盾のように構える。アサルトライフルを背負い直し、ハンドガンに切り替える。次に近いのは……あそこだ。

「テメェ!仲間を返しやがれ!」

「いいだろう、持ってってやる」

最寄りのギャングががなり立てた。発砲もして来たのでギャング盾でそれを防ぎ、一気に接近する。靴擦れは相変わらず痛いが我慢して踏み込んだ。

「うわっ!?」

ギャング盾によるタックルが綺麗に入り、敵を吹っ飛ばすことに成功する。崩れた体に即座に追撃。ハンドガン3発で意識を奪った。そしてリロードをしている他のギャングを睨む。もうすぐ終わりそうだが残念、私の方が早い。

「はあっ!」

持っていたギャング盾を力任せに投げ飛ばし、そのギャングにぶち当てた。結局リロードは終わることなく、そいつは投げ飛ばされたギャングと添い寝をする。あと18人、ギアを上げて行こう。

 

(銃声)

 

アサルトライフルに持ち変え、天井に向かって1発だけ撃つ。そこには大きなシャンデリアがあり、ちょうど真下にギャング達が固まっていた。果たして弾丸によって留め具が破壊されたシャンデリアは落下し、ギャング達を襲った。

「危ねえ!避けろ!」

「うぎゃああ!!」

1人のギャングが哀れにも下敷きになって気絶する。だが他の奴らは無事逃げおおせ、その場でホッとして汗を拭った。馬鹿だなぁ。

「ちゃんとその後も考えろ」

「いで!」

「ぎゃ!」

「ゔっ!」

呑気に突っ立っていたギャング3人を撃ち抜く。無力化を確認した私はすぐにシャンデリアの残骸に突進し、飛び越え、その先にいた別のギャングに襲いかかった。

「くたばれぇ!!」

そいつは私を迎え撃とうとアサルトライフルを向けてきた。私は発砲される前に手のひらで銃身をずらし、その懐に潜り込む。

「遅い!!」

「ぐはっ!?」

ギャングの腹部にアサルトライフルの接射を叩き込む。4発の弾丸によるボディブローがこいつの意識を奪う。しかしその瞬間、アサルトライフルのスライドがホールドオープンの状態になった。

「なっ!?もう弾切れか……?」

そう言えばさっき乱射してしまった。その時に想定より弾を消費してしまったのだろう。いつも弾数を頭の中で数えながら撃っているのだが、感情的になったせいでそれが抜け落ちたらしい。反省しなくてはな。

私はすぐに近くの遮蔽に隠れてリロードをしようとした。瞬間、

「近くに来やがった!おい兄弟!突っ込むぞ!」

「おう!このクソガキがぁ!!」

1番近いギャング2人が発砲しながら突っ込んできた。リロードは……間に合わない!

私はすぐにアサルトライフルを手放した。そしてハンドガンを取り出そうとしたが、すぐにその手を引っ込める。先頭の奴がアサルトライフルを逆さに持って、棍棒のように振り上げているのを目の当たりにしたのだ。

(スライドは……空いていない。まだ弾が残っている)

「使えるな………フッ!!」

こちらに辿り着き、振り下ろされるアサルトライフル。それを私は片手で受け止め、もう片方の手でギャングの手首を掴んだ。

「はああああっ!!」

「おわっ!?」

ギャングの突進の勢いを活かして背負い投げ。そいつは目論見通りアサルトライフルを手放してくれ、壁まで飛んで激突し動かなくなる。綺麗に決まったな。

「兄弟!?テメェ!!」

おっと、もう1人いたな。そいつも対処しなくては。だが今の私は背負い投げの時に体勢が変わって、奴に背を向けた状態になっている。今から振り返って反撃……は間に合いそうにない。だが想定内だ。

私はさっきのギャングから奪ったアサルトライフルを脇に挟み、銃口を真後ろに向けた。二の腕と胸で銃身を支える。エイムは経験と勘……そして残弾を信じろ。

 

(連射音)

 

「ぐおおおっ!」

思っていたより弾は残っていたようで、それを全部吐き出し、突進するギャングを倒す。痛みで意識を失ったそのギャングは勢い余ってレストランの床を滑っていった。それを一瞥した後に遮蔽へ戻り、手早く自分のアサルトライフルのリロードを終えた。

さて、あと11人とボスだけだ。奪った方のアサルトライフルをそこらに投げ捨てつつ、残りのギャング達の様子を伺う。すると顔を真っ赤にしたボスが吠えた。

「クソ!埒が空かねえ!おい、お前ら全員でだ!全員で突っ込め突っ込め!!」

「うおおおおおおおおおお!!!」

とても戦術とは呼べない、安直な突撃。だが数の暴力とは恐ろしいもの、11対1の戦力差では対処が難しい。

「舐めやがってくそガキ共が!2匹とも捕まえて、この世で1番の苦しみを味合わせてやる!!」

「っ……、言わせておけば……!」

遮蔽に当たる銃弾の衝撃を背中で感じつつ、私は頭を回転させた。どうする?このままでは袋叩きだ、何か方法は……?

 

(何かが床に落ちる音)

 

「……?」

見ると、先ほどコユキから貰った爆弾が懐からこぼれ落ちていた。私はそれを手に取る。

「そうだった、これがあったな………一発逆転という奴を狙ってみるか」

深く息を吸い、意を決して遮蔽から体を出す。ギャング達はここぞとばかりに私の体を狙い撃つが、多少の被弾は歯を食い縛って耐える。頬に弾が当たり口元が切れた。それでも視線を外さず意識を維持した。

……しっかり構えろ、1人でも多く爆破範囲に入るよう、狙う場所を見極めろ………!

「________そこだ!」

爆弾を放り投げ、すぐに遮蔽に隠れる。爆弾は狙い通りの放物線を描き、ギャング達の頭上で爆散。青白い電流を撒き散らした。

「アバババババババババー!!!!!」

電撃はしっかり全員を包み込んでくれたようで、絶叫の後に11人分の倒れる音が聞こえた。

「そ、そんな!?全滅だと!?嘘だろ……嘘だろおおおおおおお!?」

「結局、この世で1番の苦しみとは何だったんだ?」

「はっ……!?げふっ!!」

錯乱したボスに素早く近づき、その頬を殴り飛ばす。ボスはみっともなく床に転がり、金切り声を上げながら後退った。

「ヒィィィ!!あっああいやあアハハハ!アレは言葉の綾って奴だよ……いやですよ!やだなあ本気にしないで下せえ!この世で1番の苦しみなんて知りやせんから……だからね?ね!?暴力反対!平和に行きましょうや!!」

「何だ、知らなかったのか。なら教えてやろう、この世で1番の苦しみとは……」

「ヒッ、ヒィィィィィィィ!!!」

また金切り声を上げ、ボスはこの場から逃げ出そうとする。だが立ち上がる前に私はボスの頬を蹴り飛ばした。

「グエッ!!?」

「……ハイヒールで階段を降りることだ」

ボスは吹っ飛んでテーブルに激突し破壊する。上にあったカトラリーや皿が盛大に撒き散らされる中、テーブルの破片に寝転がって意識を失った。

「________ふぅ、よし。コユキ!終わったぞ!」

ギャング達を全員倒すことができたので、私はその場でコユキを呼んだ。遮蔽からバニーの耳が少しずつ伸び、まだ警戒した様子のコユキが顔を出す。

「フフッ……怖くなかったか?」

「っ!サオリ先輩すごいです!!ギャングに圧勝じゃないですか!!」

努めて笑顔を作り、手を振ってやる。すると安心したようでコユキにも笑顔が戻り、遮蔽を飛び越えてこちらに駆け寄ってきた。

……よかった。VIP達は逃げたしギャングは全滅。これで私達を追う輩はいないだろう。あとはミレニアムに帰ってコユキと一緒に説教を受けてやれば任務完了だ。

そう思い、緊張も解けて緩み切った状態で私はコユキを待った。手を広げ、飛びつかれてもいいように構えた。

………瞬間、コユキの顔が歪んだ。

「サオリ先輩!!後ろ!!」

「え?」

「バーン」

 

(銃声)

 

背中に鋭い衝撃が走り、思わず膝を突く。ライフル弾の銃声と痛みだ、誰だ?もうVIPもギャングもいないはず……!?

「あっ……!司会者さん!?」

「何……!?」

コユキの答え合わせに驚き、顔だけを後ろに向ける。そこには見覚えのあるロボット……闇オークションの司会者がアサルトライフルを持って立っていた。

「フフフ、先程ぶりですね。突然ですがホープクローバーの押し花を奪いに来ました」

 

(連射音)

 

「ゔあっ!!あああっ!!」

「サオリ先輩!!」

「本来ならオークションはお客様同士の交流には関わらないのですが、漁夫の利を放っておくのもアレかなと思いまして」

 

(リロード、その後乱射音)

 

「ホープクローバーの押し花、取り返してまたオークションに出品させて頂きます。そうしたらフフフ、またエキサイティングな競り合いが楽しめる!ああ、か弱い兎のお嬢さんが持ってくれてよかった!簡単に奪えますからねぇ!!」

司会者は倒錯した笑顔を浮かべ、私に弾丸の雨を降らせた。銃弾を弾く体もこの量は致命傷になりうる。意識が朦朧とし、私は床に倒れた。

「サオリ先輩!大丈夫ですか!?……し、死なないでください!!」

「安心して下さい、お嬢さん。次はあなたですから」

「ヒッ……!や、やめてください!何でこんなことするんですか!?」

「フフフ……そんなの、最高のオークションのために決まってるじゃないですか!!だから兎のお嬢さん、代金はお返しできませんが……クーリングオフってことで♪」

そう言って司会者はコユキに銃口を向けた。何のためらいもなく引き金に当てた指を折り曲げようとしている。

「させ……るか……ああああああっ!!」

「おっと!」

私は最後の力を振り、司会者の背中に飛びついた。そのまま羽交い締めにしようとするが、いつもなら出せる力が出せず抵抗される。

「コユキ!逃げろ!」

「えっ、あ、え……でもサオリ先輩!!」

「いいから行け!早く!!」

「うっ、ゔゔっ……!」

……何とか分かってくれたようで、コユキは非常階段へと逃げてくれた。このまま下へ降りればきっと助かるだろう。

「おや、ホープクローバーの押し花は持ってっちゃいましたか」

安堵した瞬間振り解かれ、地面に投げ飛ばされる。もう一度立ち上がり、抵抗しよう……ダメだ、体に力が入らない……立てない……!

「仕方ありません。あなたには人質にでもなって貰いましょうか」

「くっ……!」

首根っこを掴まれて無理矢理立たされる。それでも抵抗できず、私は司会者に身を任せる他なかった。そんな司会者はアサルトライフルを投げ捨て、懐からハンドガンを取り出して私の頬に銃口を貼り付けた。

「これもまた闘争ですかね?何だか楽しくなってきました♪」

顔面のディスプレイに笑顔を貼り付け、鼻歌まで歌ってみせる司会者。そして私を引きずってエレベーターまで移動し、静かになったレストランを後にするのだった。




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