それはさておき、これまでのバイトの文字数がふと気になって集計してみたのですがこんな感じになりました。
コンビニ店員 3070文字
夜の街の見回り 3914文字
公園の清掃 5948文字
ピザ屋の配達 15126文字
チラシ配り 11475文字
美術館の警備 7452文字
デバッガー 13674文字
ゴミ収集 21992文字
旅館の仲居 19732文字
事故物件ロンダリング 12696文字
シャーレ案件・植物採集 34138文字
ビーチ前屋台警備 26147文字
データ入力 34535文字
セミナー案件・兎狩り 40044文字
結婚式場スタッフ 33927文字
要人及び荷物の護衛 33516文字
インフレが過ぎる……今回は何文字になるのやら………。
(風紀委員会本部)
ゲヘナ学園中央区の片隅にある塔の様な建物。意外にも人はまばらだが、皆慌ただしく業務あるいは出動をしていた。ただでさえ事件の多いゲヘナ自治区に、昨日の事件もあったからパトロールを強化しているのだろう。ここにいる者も、現場に出ている者も、一丸となってゲヘナの混乱を何とかしようとしている。このアルバイトを通して、私も役に立てればいいのだが……。
そんな中に足を踏み入れるわけだが……何を隠そう私は指名手配犯、そのままの姿で突っ込んだら逮捕されるので今回はセナから救急医学部の制服を借りて変装をしている。新人部員の錠前サオリだ、よろしく頼む。
「お久しぶりですね、セナ部長。……あら、そちらの方は見ない顔ですね。救急医学部に居ましたっけ……?」
何!?このメガネの風紀委員は救急医学部の部員を把握しているのか!?まずいこのままではバレてしまう……!!
「最近入った新人ですよチナツ。ああ、紹介します、彼女は火宮チナツ、風紀委員ですが元救急医学部員です」
「し、新入りだ。よろしく頼む」
「…………そうでしたか。初めまして、火宮チナツです」
早速大ピンチで焦っていると、セナがすかさず助け舟をだしてくれた。全力で乗っかって自然な対話を試みる。メガネの風紀委員……火宮チナツは一瞬キョトンとしていたが、何事もなかったかのように挨拶を返してくれた。あ、焦った……!
「……さて、チナツ。先程連絡した通り、今回の血液強奪事件及び売血に関わっていると見られる黒塗りの高級車を発見しました。車両ナンバーの照合をお願いします」
「承知しました、セナ部長。少々お時間をいただきますので、応接室でお待ちください」
チナツの後ろに控えていた風紀委員が前に出る。右腕には『交通課』と書かれた腕章。セナはその人にドライブレコーダーのデータを渡した。この後、彼女ら交通課の風紀委員が映像を確認して車両を特定してくれるそうだ。
「どれくらいかかるんだ?」
「はっ!手続きなどもありますので、10分ほどお時間を頂戴します!」
「十分です、お願いします」
そう言ったセナとチナツ、そして私に交通課は敬礼をして去って行く。見送った後、私とセナは応接室に通された。さすがキヴォトス3大校と感心する豪華なソファとテーブルに調度品。座ってみると頭まで沈み込みそうなほどにふわふわな感触で思わず声を漏らしてしまった。そんな私を見て微笑み、チナツは紅茶を淹れてくれる。おお……、紅茶の味は素人だが良い茶葉だと分かる味だ。とても美味しい。
「お気に召しましたか?」
「ああ、感謝する」
「フフッ、どういたしまして」
おかわりをいただいて、ついでに茶菓子も楽しんでいると、応接室の扉が勢いよく開いた。
「チナツ!持ってきたよー!」
「ありがとうございます、イオリ」
快活な銀髪の風紀委員、銀鏡イオリ。風紀委員の手練れの1人としてマークしていたから知っている。こいつにバレたら厄介なことになるな、改めて気を引き締めよう。私は救急医学部の新入り……救急医学部の新入り……。
「あ、セナ先輩お久しぶりです。そっちの人は……救急医学部の人?」
「……ああ、最近入った新入りだ。よろしく頼む」
「…………ふ〜ん。よろしく」
それ以上何か言うでもなく、イオリはチナツの隣に座り、ローテーブルに資料を広げた。イオリも上手く騙せたようで安心しつつ、私はその資料を手に取る。何々……燃やされたトラック?
「このトラックは……!」
「ん?知ってるのか?」
「ええ、昨日見ました。私達を襲撃した者達のトラックは、この車種で間違いありません……!」
セナの瞳が一層鋭くなる。するとイオリがあくびを1つ吐きながら詳しい説明を始めた。
「……その通り。昨日、救急医学部を襲撃した犯行グループが乗っていたトラックで間違いないよ。自治区郊外で乗り捨てられて、燃えていたところを近所の住民に見つかって通報されて……ふぁぁ……今はうちで保管してる。全く、これのせいで朝早くから起こされたんだから!」
「災難だったな。それで、持ち主の手がかりはなかったか?」
「手慣れているみたいで、証拠や手がかりはほとんど消されてた。だけど現場近くに特徴的なタイヤ痕を発見した。ね、チナツ」
「はいイオリ。セナ部長が前もって送ってくれたタイヤ痕と、そのタイヤ痕の照合をしておきました」
何のことか分からず、隣に座るセナにそっと耳打ちをする。
「タイヤ痕?」
「あなたがスラム街から戻る前に現場に行って、少しでも手掛かりがないかと探していました。それでタイヤ痕を発見し、あの黒塗りの高級車のものかと思い、撮影してチナツのモモトークに送っていたのです」
「なるほど」
用意と要領が良い。さすが救急医学部部長、やはり優秀な生徒だと感心する。そしてチナツとイオリに向き直り、真っ直ぐ見据えて問いかけた。
「それで、その照合の結果は?」
「………一致しました。恐らく、トラックを乗り捨てた犯行グループとその荷物を、その黒塗りの高級車が回収したのだと思います」
「……やはりと言うか、スラム街の売血も昨日の襲撃も、同一犯……いや、同一のグループによるものか」
「それならあの黒塗りの高級車を追えば、黒幕を捕まえられるでしょう。交通課の照合が待たれますね」
「すぐに終わりますよ、セナ部長。照合もこの事件も」
「チナツの言う通り、私達の手で終わらせてやる。こんなことしてただじゃおかないからな……!」
まだ見ぬ犯人によってたかって殺気を飛ばす。怒りのままに紅茶をしばき茶菓子を食いちぎっていると、程なくして交通課が書類を持って応接室にやって来た。
「失礼します!照合終わりました!」
「感謝する、交通課。それでどこの車だ?」
「それが……」
言い淀んだ交通課は恐る恐る書類をテーブルに広げた。私達4人は身を乗り出してそれを読み込む。そこに書かれた車の所有者は……あまりにも予想外の人間だった。
「バートリー?……どこかで聞いた名前だな」
「……え?待って?この車庫証明の住所って、あの高級住宅街だよね?ってことは、あのバートリー?」
「はい、確かCEOの邸宅がそこに……ああ!やっぱり!検索してみたら一致しました!」
「は?………あ!あのバートリーか!?」
「………?失礼、あのバートリー……とは、どのバートリーですか?」
「「「知らないの(か!?)(ですか!?)(セナ先輩!?)」」」
首を傾げるセナに、私達はよってたかって説明を始めた。
________株式会社バートリー。ゲヘナに本社を置く化粧品メーカーで、この会社が作る化粧品はゲヘナだけでなく、キヴォトス全土で人気を博している。規模もカイザーほどではないが大きい、まさにキヴォトスの大企業と言うべき会社だ。
「……なるほど。すみません、化粧は最低限しか行いませんから……自分で言うのも何ですが無頓着です」
「それは違うぞ氷室セナ!最低限だとしても良い化粧品を、あるいは自分の肌と相性がいい化粧品を厳選するべきだ!」
「私も薄い方ですが、バートリーの化粧品は本当にオススメです!」
「世界変わるよセナ先輩!本当にすごいんだから!」
「お言葉ですがイオリ殿!チナツ殿!救急医学部の新入り殿!セナ部長が困惑しております!」
「おっと……!す、すまない……」
「いえ……まあ、すごいことは分かりました……」
我を忘れてセナに詰め寄っていた私達は交通課にベリベリと引き剥がされ、どうにか落ち着きを取り戻した。
さて……閑話休題。改めて交通課が持ってきてくれた書類に目を通す。
「……黒塗りの高級車の所有者はバートリーCEO。会社の車ではなく個人のもののようだな」
「車の駐車場として届けられてる住所はバートリーCEOの邸宅。そうだね、完全に私物だ」
「急にビッグネームが出てきましたね。チナツ、バートリー社とCEOに何か怪しい点は?」
「何もありません。交通課さんはどうですか?」
「はっ!交通課にも報告は上がっておりません!」
「巧妙に隠していたか……あるいは急に血が必要になったのか。現時点では判断を下せないな」
……自分で言っておいてなんだが、急に血が必要になる理由とは何だ?どうしてバートリー社、あるいはバートリーCEOは血をかき集めているのか……全く見当がつかずに周囲を見回してみるが、他の面々もクエスチョンマークを浮かべていた。
「……スラム街での聞き込みでは、確か売血をする者……黒塗りの高級車に乗っている奴はこんなことを言っていた」
『余計な詮索なんてしたことねえよ。後が怖いからな。ああ、でも、昨日あいつマダムのための血だって言ってたな』
『…………マダム?』
『ああ、この世で最も美しい人だそうだ。それ以上は分からねーけど……何だよその顔?』
『………いや、マダムと言う名に縁があると思っただけだ』
「________これは関係あるだろうか?」
「マダム……ねえチナツ、バートリーCEOって女の人?それとも男の人だけど既婚者とか?」
問いかけながらイオリはチナツの肩に頭を寄せ、彼女が持つスマホを覗き込んだ。対するイオリは気にも留めずに指を動かし、素早くスマホを操作している。何なら頬を埋めてくる同僚が見やすいように、画面を傾けてあげたりもしていた。
「………検索できました。バートリーCEOは男性……ですが既婚者ですね」
イオリとチナツの2人で十分読んだ後に、スマホの画面がこちらに向けられる。
「あ、本官も見たいです!」
「よし、こっちに来い」
ずっと立っていた交通課を隣に座らせてやり、3人で画面に顔を近づけた。全員画面に顔を近づけ過ぎて頬がくっついてしまっているが、そんなこと気にせずに表示された画像を睨む。その画像はスーツを着た中年の獣人(チスイコウモリ)とドレスを着た妙齢の獣人(チスイコウモリ)の夫婦の写真。こいつらがバートリー夫婦か、どちらも優しげな笑顔をファインダーに向けている……。
「獣人の年齢はよく分からないが、随分と……夫人は若いな。20代か?」
「新入り殿!横に年齢が書かれております!」
「どれどれ……何!?どちらも50歳だと!?」
「CEOはともかく夫人はそう見えませんね……『この世で最も美しい人』と謳われていたのも納得できます」
私は頭を背もたれに戻し、くっついていた頬を引き剥がす。そして脳内で盤面に出ている情報を整理した。
……1週間前からスラム街で売血を行う者達が現れた。そいつらは黒塗りの高級車に乗っていた。
……昨日、救急医学部の部室が襲撃されて、輸血パックが盗まれた。襲撃に使われたトラックは乗り捨てられていたが、付近には黒塗りの高級車のタイヤ痕が発見された。
……黒塗りの高級車の所有者はバートリーCEO。車庫証明にはバートリー邸の住所が記載されていた。
……スラム街で売血を行っていた者達は『マダムのための血』と言っていた。
「________多少の飛躍もあるが、バートリー社ではなくバートリー夫婦が血を集めているように思える」
「新入り、私もそう思った。会社で動いているのなら自家用車を使うとは思えない」
「それで言ったらイオリ殿!どうして足のつきやすい自家用車をわざわざ使うのでしょうか?CEOなら足がつかない車くらい用意できそうですが……あ!交通課としては絶対にそんな車両見逃しませんけどね!」
「確かにそうですね、交通課さん。CEOならそれができるでしょう。……ですが、CEOではないとしたら?」
「……セナ部長。つまり、主犯はバートリー夫人の方……と言うことですか?
「……錠まっ、新入りさんと同じように、多少の飛躍はありますが。ですが動機は謎のままです………」
仮にマダム……つまりバートリー夫人が血を集めているのだとして、結局無茶をしてまで血を集める理由は分からない。今の手札じゃ推測すら立てられないだろう。私達は再度首を傾げた。
「何でだろう……パッて思いつく理由は、その〜、あ、新作ルージュに血を使ってました〜……とか?綺麗な赤色にしたくて夫人が個人用に集めてましたとか?」
「イオリ……私今使ってるんですけど?」
「奇遇だな、愛用している」
「はっ!新作は発色が綺麗ですよね!……つまり!?」
「今すぐ拭き取りなさい。衛生的に最悪です」
「ゴメンって冗談だって!みんなして睨んでこないで!……とにかく!住所が分かったんだから事情聴取しに行けばいい!バートリー夫人なら何か知ってるはずでしょ?本人達に聞こう!」
「そうですね。すぐにでも向かいましょう」
「チナツ、イオリ。私達も同行します」
「荒事は得意だ、任せてくれ」
「よし!それじゃあ出発!」
「待ってください、イオリ」
フンスと鼻を鳴らしたイオリにチナツはぴしゃりと言い放った。そしてチナツはスマホを手早く操作しながら言葉を続ける。
「バートリー邸には私達だけで行きましょう」
「え?何で?人がいた方がいいんじゃないの?」
「確かにそうですが、セナ部長と新入りさんにはここに行ってほしいのです」
そう言ってチナツは私とセナにスマホの画面を、そこに表示される地図を見せた。
「ここは……バートリー社の本社ビルか」
「平日の昼間ですから、お休みじゃない限りバートリーCEOはここにいるはず。そして主犯と思われるバートリー夫人がいるのはバートリー邸です。主犯がいる以上、何をされるか分かりません。そこは風紀委員である私とイオリが行くべきです。と言うわけでセナ部長と新入りさんはCEOに会って話を聞いてください」
「構いませんが、しかしチナツ……」
セナはチナツを真っ直ぐと見つめた。その眼差しには「この子の判断なら正しいはず」と言う信頼と、「でも危険な場所に行って大丈夫なのか?」と言う心配の、相反する2つの感情が読み取れる。チナツもそれを読めたようで、優しく微笑んで見せた。
「セナ部長、私だって立派な風紀委員ですよ。それにイオリもいますから」
「そう言うことならしょうがないか。セナ先輩、私とチナツに任せて!」
「……分かりました。ではバートリーCEOは私達に任せてください」
信じることに決めたセナはキュッと絞っていた口元を綻ばせた。とてもいい信頼関係だな、見ているこっちも思わず微笑む。
「……善は急げだ、早速出発するぞ」
そう言って立ち上がると他の面々もそれに続いて立ち上がり、私達は応接室を出る。作業中の風紀委員達が私達……いや、イオリとチナツを見て敬礼をして見送ってくれる。自分に向けられたものではないと分かっているがそれでもむず痒くなってくるな。こなれて敬礼し返している私以外の面々に隠れ……ああダメだ、私が1番背が高い。大人しく風紀委員達の視線を浴びながらエントランスを通り抜けた。
(スマホの着信音)
「おや、これは……」
「チナツ殿!本官も何かお手伝いしましょうか?車なら出せますし、交通課の権限で道路封鎖や信号操作も可能ですが!」
「何!?そんなことができるのか!?」
「本当にヤバい事件の時は交通課に頼んでやってもらってるんだけど……今回は別に大丈夫かな?ね、チナツ」
「そうですね……ただ、1つ仕事をお任せしたいです。あ、セナ部長と新入りさんは先に出発してください。私達は後ほど」
「分かりました、2人とも気をつけて」
「セナ先輩も気をつけて!あ、新入り。さっき荒事が得意だって言ってたな?だったらセナ先輩のこと守ってくれよ」
「任せておけ」
イオリがスナイパーライフルを掲げてきたので、私はアサルトライフルを取り出し、ハイタッチのように銃身をぶつけ合う。そして彼女らと別れ、緊急車両11号に乗り込んだのだった。
「________行ったね、セナ先輩と錠前サオリ」
「イオリも気づいてたんですか?」
「まあね。変装してるつもりかも知れないけど、救急医学部の制服を着てるだけだったし」
「……てっきり、イオリなら気づいたらすぐ攻撃するものだと思っていました」
「最初はしようと思ったよ、あいつはとんでもないテロリストなんだからな!……でも前に先生が大丈夫だって言ってたし、何よりセナ先輩が何もしてないでいたから」
「……個人的にはまだ彼女のことは信じられませんが、先生とセナ部長は信じている様子でした」
「それなら私達は先生とセナ先輩を信じよう。あの2人なら、間違えたりはしないはずだから」
「ええ、そうですね。セナ部長を頼みます、錠前サオリさん……!」
「………あの〜、本官はその話を聞いてよかったのでしょうか?」
「あ、交通課!!ごめん!これは秘密にしといてくれ……!」
「はっ!了解しました!本官はイオリ殿とチナツ殿を信じます!」
「ありがとうございます、交通課さん……!」
「礼には及びません!………して、チナツ殿!本官に任せたい仕事とは?」
「はい、来客のお迎えをお願いします。すぐに私達と合流できるよう、交通規制もしていただいて構いません」
「来客?誰か来るの?」
「ええ、先程レッドウィンター自治区を出たと連絡が入りました。今日中には来てくれるはずです」
「っ!それなら事件は解決したも同然だな!」
「はっ!お任せください!チナツ殿!イオリ殿!」
幕間・サオリのバイト百景(100個あるとは言っていない)
1.コンビニ跡地
立ち寄った時のバイト:コンビニ店員
説明:実際にバイトをしていたコンビニの跡地。建物は取り壊されて空き地になっているが、未だに誰もこの土地を買い取っていないようだ。
コメント:付近には他にもコンビニがあるのだが、果たしてあの立ち読み客はどのコンビニに行ったのだろう。気になるが追うつもりはない。怖いからな。
2.夜景が綺麗な公園
立ち寄った時のバイト:夜の街の見回り
説明:小高い丘の上にある小さな公園。街を一望でき、夜になると夜景がとても綺麗。
コメント:あの住宅地はずっと暗いままだ。あの暗闇の中には未だに子供達が潜んでいるのだろうか?どうか早く電灯を直して欲しい。