錠前サオリの裏バイト奇譚   作:@Ana

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私事ですが明日資格試験です。頑張ります。

あと「多数決さん」なるサイトを見つけまして、せっかくだからこれまでのバイトの人気投票なんかをしてみたいと思います。好きなバイトに票を入れてみて下さい。私が楽しいです。結果は売血調査が終わって次のバイトの時にでも発表します。
問題がありましたらすぐに消しますのでお声掛けください。よろしくお願いします。
https://tasuketsu.com/result/WHB9fPcie5IOhkWP4k40


救急医学部案件・売血調査.7

(バートリー邸、浴室)

 

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎………⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!」

向こう側の言葉。無学な私でも分かる、それは命あるものは理解してはいけない……話すなんて以ての外な代物だ。それをバートリー夫人は躊躇いなく叫んだ。それに呼応して血管の本はうねり、表紙に巻き付いた血管を無数に伸ばして私達に襲い掛かる。

嗚呼、これを超常現象と呼ばずして何と言うのか。常識ではあり得ない光景が目の前で繰り広げられ、迫り来ることに改めて戦慄する。だが同時にホッとしているところもあった。それはアレらは物理攻撃が通用することと、散々私達を悩ませたこの売血に関わる事件の首謀者が目の前にいると言うことだ。要するに……殴って止めれば全部終わる。

「得意分野だな……セナ!」

「はい」

迫る血管の群れにグレネードランチャーを撃ってもらう。眼前の赤い津波が爆発の炎と煙で塗り潰される。爆発物なら血管共を一掃できるが、手元が狂ったらチナツとイオリに当たるかも知れない。……そもそも、奴の目と鼻の先に2人がいる間は直接攻撃は難しいだろう。人質に取られているようなものだからな、どうにかして引き剥がさねば。

そんなことを考えつつ私とセナは2手に分かれ、爆炎に身を隠しながら駆けた。またバートリー夫人の声が、悍ましい祝詞が聞こえる。そして血管共が迫る気配を感じた。だが2手に分かれたおかげで爆発物なしでも対処できる量に落ち着いている。

 

(銃声)

 

煙を抜け出して飛び上がり、スライディングで着地。タイルの床を横っ飛びに滑走しながら発砲する。迫って来ていた血管共を撃ち落とすことに成功した。反対側のセナも同じように滑りながら、メスを振るって血管共を切り落としていた。さすが医者と言ったところか、頼りになるな。

「はっ、兎のように飛び跳ねるのはいいですが、どうするつもりですか?いつまで逃げ切れるのでしょうねぇ!?」

こちらを煽りながら血管共を呼び出したバートリー夫人。実際その通りで腹が立つ。弾薬も爆発物も無限にある訳ではないし、チナツとイオリの出血も危険だ、短期決戦で決めたいところだが……そうだ。

「セナ!奴にグレネードランチャーを撃ってくれ!」

「ッ!?本気ですか……!?」

体勢を立て直し、リロードをしながら私はセナにそう叫ぶ。セナは少し身体をこわばらせた。バートリー夫人の目の前にはチナツとイオリがいる、だから彼女は躊躇っているのだが……、

「信じてくれ!」

「…………!はい!」

意を決して、セナはグレネードランチャーを構えてくれた。私は走り出した。

 

(銃声)

 

「あらあら、(きゅう)しましたか?」

かくして引き金が引かれ、グレネードが宙を舞う。バートリー夫人は下卑た笑みを浮かべながら本の表紙を指で叩いた。すると一回り太い血管が2本スルスルと落ち、チナツとイオリの首に巻きついて持ち上げる。

「不細工でも盾くらいにはなるでしょう。ああ、貴女達の大切な人なのですよね?それなのに攻撃するなんて、なんて酷い人達でしょう」

「言ってろ……!」

そう吐き捨て、グレネードの射線の後ろに辿り着く。2人を盾にすることなんて想定済み、グレネードは着弾まで残り1秒……間に合ったな、私はアサルトライフルを構えて発砲した。

 

(銃声)

 

「上」

「ッ!?」

「なっ……跳弾ですって!?」

ようやっと意図に気付いたか、だがもう遅い!

 

(銃声、銃声、銃声)

 

私のアサルトライフルの跳弾によって真上に跳ね上がったグレネードに再度発砲。爆発させぬよう、弾丸で側面を撫でたりちょっとだけ小突く精密で高難易度な射撃……私にはそれができる。舐めるなよ、私はアリウススクワッドの錠前サオリだ……!

「前、加速、下……吹き飛べ!!」

「そんなっ、ああっ!!」

バートリー夫人の頭上を飛び越え、真後ろに回り込んだグレネード。それが爆発する。爆炎がバートリー夫人の背中を襲い、衝撃波が宙吊りのチナツとイオリを激しく揺らし、振り落とし、血の風呂から大きく引き離すことができた。

「よし!手荒で申し訳ないが、これで安全だ」

「2人は私が回収します、サオリさんは……!」

「ああ、任せろ!」

互いの仕事を全うするためにもう一踏ん張り、私達は駆けた。先に辿り着いたセナがチナツとイオリを俵担ぎにする。それを飛び越えて私はバートリー夫人に接近する。

「このッ、不細工な小娘が!私の血を返しなさい!!」

「黙れ!ここにお前のための血なんて1滴たりともあるものか!!」

迫る血管を真正面から打ち落とし、サバイバルナイフで切り裂き、私は血の風呂まで辿り着く。足を踏み入れる。水位は膝まであり、粘性の温もりと生臭さが気分を不快にさせた。よくこんなところに入っているものだ、感心するな。皮肉を思いつつ私は懐からベルトいっぱいの手榴弾を取り出した。鞭のように叩きつけて爆発させることで大きなダメージを与えることができる。前にミカと戦った時は擦り傷をつけることができたから、一般人相手なら威力は十分だろう。そしてそれをバートリー夫人に振り下ろし、身体に巻き付ける。

「思い知れ!!」

ベルトを引っ張ってバートリー夫人の体勢を崩し、こちらへ手繰り寄せる。同時に私は血を掻き分けて跳躍し、バートリー夫人の顔面にドロップキックを食らわせた。

 

(大爆発音)

 

吹っ飛んだバートリー夫人が着水するのと同時に、巻き付いた手榴弾が爆発する。本日1番の爆炎が血の風呂の上に花開いた。私はその光景を見届けたと同時に着水。腐った血に全身浸かってしまうことになった。

「サオリさん、ご無事ですか!?」

「ゔぉえっ、ぺっ!……はぁぁ、無事だ……!そっちは?」

「私は問題なく。チナツとイオリさんは……予断を許さぬ状態です。あと少し遅れていたら、どうなっていたか……」

「……生きているなら、良かった」

間に合ったことに安堵しつつ立ち上がる。滴る血を何とか拭う。本当に臭い、不衛生が過ぎる。早く出ないと病気になってしまう。私は踵を返してセナの元へと歩き出した。

「とにかく2人を搬送しよう。バートリー夫人は一旦放置だ、怪我人優先だ」

「分かりました。ですが、あの爆発はやり過ぎではないですか?」

「死んではいないさ、死ぬほど痛いがな」

 

(水面が爆ぜる音)

 

やってしまった……完全に気を抜いていた瞬間に私の後方の水面から何かが飛び上がって来た。私はすぐに反応したがそれよりも早く何かは私の背中に飛びついた。そして……左肩に噛み付いた。

「ぐあああああああああああああ!!!!!」

先は尖ってるが鈍な刃に筋肉と神経が断ち切られ、それが痛みと言う情報となって脳に叩き込まれる。耐えられず私は叫び、もがいていると、左耳から悍ましい音が聞こえて来た。

 

(血を啜り吸い取る音)

 

「はぁ……はぁ……ぐうっ、お前は……!?」

振り返ると何かと目が合い、戦慄する。そこにいたのは、何かの正体とはバートリー夫人だった。先ほど蹴り飛ばし、たくさんの手榴弾をお見舞いした……それなのに傷ひとつなくピンピンしているバートリー夫人だったのだ。そんな馬鹿な……サーモバリックなしでもミカに擦り傷を与えられた威力だぞ!?

「……嗚呼、貴女は他の不細工とは違う。とても高貴な生まれなのね。この血を捧げたら、赤き姫君はさぞお喜びになるでしょう」

「な、何を訳の分からないことを……!離せ……!」

血を吸われる感覚……それは生命を損なわれる感覚だ。どんどん自分が世界から欠落して死に近づいてるかのようだ。余りにも不快で恐ろしく、私は何としても引き剥がそうともがいて暴れた。バートリー夫人に何度も殴る蹴るの暴力を浴びせた。しかしバートリー夫人は涼しい顔でそれを受けながら血を吸い続け、対する私は身体に力が入らなくなり、視界も霞んで行く。

「サオリさん!!」

「ぷはぁ……安心なさい、死にはしませんよ。死ぬほど痛いですけどね」

「クソ……離せ……ううっ……!」

「フフッ、いいでしょう。貴女からはこれくらいで充分です」

「何……まさか!?」

瞬間、バートリー夫人は顎と首の力だけで私を持ち上げ、振り回し、投げ飛ばした。完全に力が抜けていた私の身体は受け身も取ることができずにタイルの床に激突して、セナの足元に転がる。全身に痛みが走る、特に左肩は犬歯の穴が4つぽっかりと空いており、だが叫びを上げることもできなかった。

「サオリさん!!」

「っ……!逃げろ!あいつはお前を……お前の血も搾ろうとしている………!」

「っ!?」

「血管の本は……無事ですね。咄嗟に離せて良かった……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!」

浴室全体に反響する悍ましき祝詞。私達はすぐにそれを発した者へ視線を向ける。彼女は……バートリー夫人は翼膜を広げてくるくると回りながら祝詞を唱えていた。揺れる黒いドレスのように美しく、滴り飛び散る血が悍ましい舞踏。その最中にバートリー夫人の手の血管の本から大量の血管が伸び、セナに降り注ぐ。さっきよりもずっと多い……!

「くっ……セナ、逃げろ……!」

「……死体を、いえ、患者達を守らなければ」

「セナ!!」

決意を帯びて力強い瞳でこちらを一瞥し、セナは前に出る。右手にグレネードランチャー、左手に血染めのメス。相対し迫り来る血管共とバートリー夫人を止めるために立ち塞がる。ああ、確かにセナは強いが、単身であれを止めるのは無理だ。きっと私がセナと同じ立場になったら同じことをするだろう、だけど……クソ……!立ち上がれない、援護の1つもできやしない……!

 

(爆発音)

 

グレネードランチャーの殲滅力は変わらず頼もしく、しかし単発式であるが故に絶えず攻撃してくる血管共に苦戦を強いられている。片手で器用にリロードし、その間は目にも止まらぬような速さのメスで斬り捨てる。機械のように効率的な動きだ。でも抑え込めることはできておらず、1歩、また1歩と後退させられていた。

「フフッ、私を治療してくださるんでしたっけ?不細工な救急医学部員さん達。ですがその前に治療するべき人がいるじゃないですか……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!」

「ッ!?」

不意に一回り大きな血管が伸び、セナを通り過ぎた。狙いは……私達か!

「皆さん、危ない!!」

セナはすぐにこちらへと駆けた。バートリー夫人へ背中を向けることになるがそんなこと構わず血管を追った。だが間に合いそうにない。私はまだ意識を失っているチナツとイオリに覆い被さる。この2人はこれ以上血を搾られたら死んでしまう、やるなら私にしてくれ……!

「かかった」

瞬間、下卑た微笑を浮かべつつバートリー夫人はそう言った。すると私の眼前まで迫っていた血管が折れ曲がり、セナに向かって加速する。

「なっ……ゔっ!!?」

血管は驚き思わず硬直したセナの首を正確に捉えて、先端で噛み付くように吸い付いた。そしてセナの身体を持ち上げ、首筋から血を搾り始める。

「ゔゔっ……!!ああああっ!!!」

「貴女は……さっきの子ほど美味しくはありませんね。まあ、貰っておきましょう。これで4人から半分ずつ。人間2人分です」

何とか抜け出そうともがき、しかしどんどん力と顔の血色が抜けていくセナ。さっきの自分を見ているようで、セナが損なわれていく様を見ることしかできなくて恐ろしくなる。

「愚かですね、お友達を諦めておけばこんなことにはならなかったのに。さあ、その不細工な顔を見せてください」

勝ち誇ったバートリー夫人は血管を未知の方法で従え、セナの顔がよく見えるよう近くに寄せた。

「くぅ……はあっ!!」

セナは最後の力を振り絞り、左手のメスをバートリー夫人に投げた。か弱い放物線だが、しっかりとバートリー夫人を、彼女が手に持つ血管の本を正確に捉えている。しかし簡単に払い落とされてしまった。

「まだそんな元気があったのですね………愚か者が!!」

爆発したかのように急に怒り出したバートリー夫人。それに呼応して血管は乱暴にセナを振り、私のところまで投げ飛ばした。

「セナ……!」

「貴女達の……貴女達のような不細工が傷付けていいものではないのですよ!?この本は貴女達なんかよりもずっと価値のある本なのです!!それを何と愚かな!!愚かな不細工!!………まあいいでしょう、はあ……血は溜まった。これで私は願いを叶えられる!血管の本の赤き姫君のような……神のような美しさを!!!」

血走った目、逆立った毛、大きく開かれた翼膜。狂ったように喜んで、バートリー夫人は長い祝詞を唱え始める。すると血管共はバートリー夫人を包み込み、繭のような形になった。繭を構成する血管は1本1本が脈動しており、繭の中に血液を流し込んでいる。血の風呂の水位が下がる。産まれてはいけないものが産まれようとしている。私とセナはそれを眺めることしかできなかった。目の前で起きている光景に……悍ましき儀式に、逃げることも、抵抗することもできなかった。

 

(血管が千切れ、血が噴き出る音)

 

やがて繭は破られ、中に溜まっていたものが垂れ流される。せっかく下がった水位が少しだけ戻る。鈍い音がした。何か大きなものが落ちたようで、水面が大きく跳ね上がった。落ちたものが起き上がる。………それは人だった。獣人じゃない、人間だ。

身長はセナと同じくらいだろうか。一糸纏わぬ肌は高級な陶器のように白く艶やかで、肩までの長さの髪は光沢を纏う明るい赤。産まれたばかりだから当然だが化粧をしておらず、しかしそんなものもいらないほどに顔立ちがハッキリとしていた。長いまつ毛を湛える目が開かれる。宝石、白い宇宙に瞬く2つ星の如き赤色の瞳、重力を感じて視線が引き寄せられた。見下された。私は矮小な存在だと格付けした眼差しだった。

「……ふぅ、嗚呼、しっかり目に焼き付けていますか?不細工な小娘達。祝福なさい!!今キヴォトスに真(まこと)の美が誕生したのです!!そう!この私が!!アハハハハハハハハ!!!!!」

先ほどまでの声よりもずっと透き通った声で甲高く笑う人間……いや、バートリー夫人。その様変わりした姿に私の勘は警笛を鳴り響かせている。確かに息を呑むほどの美しさで、こんなに綺麗な人はこの世にはいないんじゃないかと思えるほどのものだ。だが度を超えている、威圧感や悍ましさすら感じるのだ。バートリー夫人は人の域を超えた、本当に恐ろしい者に成ってしまったのだと確信する。これは……本当にダメだ、何とかしてアイツから逃げなくては……!

「アハハハハハハハハ!!ハハッ、アハハハハハ………は?あれ?」

ボロボロの身体で、何度も意識が飛びそうになりながらもチャンスを伺っていると、突然バートリー夫人が困惑の声を上げた。途端に浴びせられていた威圧感が和らぐ。どうしたのかと思い、私はセナと顔を見合わせた。セナも困惑した様子でこちらを見ていた。

「様子が……おかしいですね?」

「ああ。また何かするつもりだろうか?」

一層警戒しながら視線を戻すと、バートリー夫人は全身をくまなく見回し、手足を何か確かめるかのように動かし、そしてどんどん顔色を青ざめさせていた。最終的に下を向き、指で頬やおでこなどの顔のパーツに触れ、なぞり、つねり始める。恐らく水面に映る自分を見ているのだろう。原型を留めない、種族自体変わったその姿。しかしとても美しいわけだから、彼女としても喜ばしいはずだ。だが、バートリー夫人は悲鳴を上げた。

「ぇあっ、な、うわあああああああああああああああああああ!!!!!何で、何で人間の姿に成ってるのよおおおおおおおおおおお!!!!??」

…………は?それが、お前の望みだからじゃないのか?呆気に取られているとバートリー夫人は血の風呂に膝を突き、そこらに沈んでいた血管の本を手に取ってパラパラと捲り出した。

「嗚呼……ああ間違いない!!この姿は、血管の本の……赤き姫君の姿そのもの!!違う!!私が望んだのは『赤き姫君のような美しさ』であって、『赤き姫君になりたい』訳ではないのです!それなのに……それなのに嗚呼!!手入れを欠かさなかった体毛が!!夜空のようだと讃えられた翼膜が!!私のっ、私の陶器のような牙があああああああ!!!!私は私は私は、私は損なわれてしまった!!そんな……そんなああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

………よく分からないが、奴の儀式は失敗したと言うことか?それで取り乱している……のか。

「……サオリさん」

「っ!セナ……!無事か?」

「どうにかまだ動けます……。それより、今のうちです。急いで逃げましょう。チナツとイオリさんを連れて」

「そ、そうだな………付き合ってられない」

奴の目論見は止められなかったが、失敗したのならそれはそれでいいんだ。それより今は私とセナを含めた患者の救助が最優先、バートリー夫人は後で風紀委員会に逮捕してもらおう。さっさとこっそり退却だ。

「待ちなさい不細工共ォオ!!!!!」

私がイオリの、セナがチナツの肩を組んで立ち上がった瞬間に怒号が撒き散らされた。まずいバレた!

「いい!無視だ!走れ!」

「はい!」

「待ちなさいと言っているでしょう!!貴女達の血でもう1度儀式を行うのです!今度こそ私は真の美を手に入れる……!こんな不細工な顔、私には相応しくありません!!!⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!」

後ろから血管共が迫り来る音がする……いや振り返るな!前に進め!脱衣所まで行って戸を締めれば……!!

「くぅ、うぅ……!!」

「サオリさん!!あっ、はぁ……はぁ……!!」

脱衣所まで後1本のところで私達は立ちくらみを感じ、膝をついてしまった。当たり前だ、血を半分も吸われたんだ。動けないに決まってる……!

「あと、少し……クソ……!」

悪態を吐き、そしてとうとう振り返ってしまった。そこにはさらに数を増した血管共が、私達を押し潰そうと迫る姿が見えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(天井に穴が開く音)

 

 

(銃声、終幕:イシュ・ボシェテ)

 




幕間・サオリのバイト百景(100個あるとは言っていない)

8.空きオフィス

立ち寄った時のバイト:デバッガー
説明:かつてゲーム開発会社が借りていたオフィス。今はもぬけの殻になっている。

コメント:静かなオフィスだ。バイトをしていた時の喧騒……いや修羅場が嘘みたいだな。本当に彼らはどこへ消えたのだろうか?せっかく完成したゲームも非公開になって、この世界から彼らが痕跡もろともかき消されたみたいだ。

「そう言えばゲーム開発部、お前達は『幻想神社の怪』を買ったそうだな。どうだった?」
「はい!アリスが買って、すぐにプレイしました!ですが……う〜ん、アリスはその時のことを思い出せないのです」
「肝心のゲームもバグか何かで使えなくなって、ヴェリタスにも頼んでみたけど復旧できなかったし……はぁ、私もプレイしてみたかったなぁ〜……」
「だよね〜私も。あ、でもさミドリ、おかしくない?アリスが思い出せない、なんてことある?だってアリスは……」
「もっ、モモイストップ!!」
「ん?ユズ?急に慌ててどうした?アリスが何なんだ?」
「あっいえっ!何でもないです……!!」
「ああごめん!!サオリさん!本当に何でもないから!!」
「そ、そうか……」
「もう、お姉ちゃんったら!あ、サオリさん!それよりもまたゲームしませんか?せっかくシャーレの当番被ってまた会えたんですから」
「ああ、いいぞ。何をする?」
「はい!アリスはみんなでテイルズ・サガ・クロニクル2をプレイしたいです!」
「テイルズ・サガ・クロニクル!!???断る!帰る!!あんな拷問アリウスでも無かったぞ!!!2度とごめんだ!!!!」
「そ、そこまで言わなくても……ううっ……!」
「大丈夫だよサオリさん!2はミレニアムプライズも取った自信作なんだから!」
「スマホからでもできるんですよ、サオリさんもぜひ!」
「さあ、サオリさん!一緒に魔王を倒しましょう!勇者パーティからフレンド申請を送ります!」
「やめろ……!近づくな!離せ!うわああああああああああああああ!!!!」

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