これにてアビドス編1つ目のバイトはおしまい、次回は少しお時間をいただきます。気長にお待ちを。
________水槽の中は冷たいが外気より心地いい温度で、砂漠の陽光で火照った肌に染み渡るように熱を奪っていく。心臓の鼓動。水はオアシスと言うから淡水かと思っていたが少ししょっぱくて、どこか懐かしい味がした。泡の破裂。はて、どこで味わったか?……ああ、そうだ、涙の味だ。アリウスにいた頃、辛くて泣き腫らした時、頬を伝った涙を舐めた時の味。酷くしょっぱくて、刺すような痛みを感じる味だ。水面が揺れる音。
「…………これはお前の涙か?雇い主は、ずっと泣いていたのか?」
人型の魚の群れの胸に抱き寄せられる。心臓の鼓動。身体を形作る魚達と目が合う。小魚達が整列し、器用に泳いで形作られた髪が揺れる。泡の破裂。似通っているのはシルエットだけなのに、何ならよくある髪型なはずなのに、私は彼女はこのホテルの支配人であるアビドスの生徒……私の雇い主だとハッキリと理解できた。そして彼女が泣き腫らしていることも。水面が揺れる音。
「……砂嵐はよくあることで、大変だけど乗り越えられるものだった………あの日までは。それは理不尽に私の大切なものを全部全部全部飲み込んでいって、頑張ったけど乗り越えられなくて………私達は砂漠に殺される」
雇い主の慟哭が、雇い主の涙の鋭さが全身を突き刺す。心臓の鼓動。魚達の皮膚は酷く冷たくて生命を感じない。ああ、そうか。お前達も泣いているんだな。魚達……いや、彼女達は枯れ果てたオアシスでもあるんだ。泡の破裂。砂漠化に苛まれ、押し潰されたオアシスが雇い主と一緒にいるんだ。雇い主は大好きなオアシスと1つになれたんだ。命を落とした末に……砂漠に殺された末に。水面が揺れる音。
「私達は……アビドスは砂漠に殺される。大事なもの、オアシスの美しさをもっとたくさんの人に知って欲しかった。小さい頃から砂祭りに行くのが大好きだった。砂漠に殺される。アビドスの生徒になって、オアシスや砂祭りに関われるのが本当に嬉しくて。砂漠に殺される。青春だった……これが私の青春だったんです」
心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。命無き亡き者の泣き腫らす脈動が水槽を揺らしている。心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。何も考えられなくなって、段々と意識も遠くなった。そんな私の顔を覗き込み、雇い主は無数の魚眼で私の瞳の奥を見やった。
「ねえバイトさん。どうして私達は殺されなきゃいけなかったのですか?」
「…………分からない。けど、そうか」
理不尽に青春を奪われたことへの絶望。相手が自然災害だから復讐すらできなくて、行く当てもなくここにい続けているのか。そんなことを考えながら頭を雇い主の胸に預けた。
「……っ!……………!」
誰かの呼び声。心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。私に向けられた声か?心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。心臓の鼓動。泡の破裂。水面が揺れる音。返事をしなきゃ。心臓の鼓動泡の破裂水面が揺れる音心臓の鼓動泡の破裂水面が揺れる音心臓の鼓動泡の破裂水面が揺れる音心臓の鼓動泡の破裂水面が揺れる音心臓の鼓動泡の破裂水面が揺れる音。ああ、でも、沈み込んでいく。心臓の鼓動、泡の破裂、水面が揺れる音。起きられない。心臓の鼓動……泡の破裂……水面が揺れる音……。
……………。
……………。
……………まあ、いいか。
……………。
…………。
………。
……。
…。
「________錠前サオリ!!」
「ッ!!」
まあいいか……………なわけないだろう!!
「がはっ!ごぼっ……ぐうっ………!」
意識が覚醒した瞬間、水が体内に入り込んで窒息する。いや、これも幻覚だ。今なら分かる。心臓の鼓動、泡の破裂、水面が揺れる音。鬱陶しいそれらを払うかの様に頭を振り、私は水槽の中を……否、客室の中を見回した。
まるで暗いトンネルの中を車で走行している時の様に、一定の間隔で設置されたライトが一定の間隔で車内を照らす様に、周囲の空間が様変わりを繰り返している。明るく美しい水槽が暗く薄汚れた廃墟の部屋に変化し、かと思ったらまた水槽に戻ってを繰り返しているのだ。この変化の中、不変なのは私の窒息と眼前の魚の群れ……つまり雇い主。手を伸ばしてくる彼女を突き飛ばし、私は踵を返して窓へと走った。
「錠前サオリ、どうしたの!?大丈夫!?」
「大じぶっ、ごぶっ、がっ……!!」
水槽の浮力と廃墟の中にまで積もった砂が、不安定な空間そのものが私の足を絡めとる。窒息も相俟って上手く走れない。それでも前に進んだ。窓の向こうでドローンが呼んでいる、そこに向かって足を進めた。窓だ、窓の向こうに行けば呼吸ができるはず……!
「ゔっ……!」
瞬間、水の底に設置されていた岩に足を掬われて転倒する。受け身を取る余裕もなくて思い切り顎をぶつけたが、砂のおかげで怪我はない。足音、ヒレの音、迫って来ている。すぐに体勢を立て直さなきゃ。立ち上がろうとしたが足を引っ張られた。岩に生えていた海藻が絡み付いている……!
「ゔゔっ……!ゔんっ!ゔんっ!!」
海藻を蹴って千切ろうとしてみる。だがやけに頑丈で千切れない。必死になって蹴り飛ばし続けて、自分の足が痛くなってきた。足音、ヒレの音、迫って来ている。もう目と鼻の先にいる!
「ねえバイトさん。どうして私達は殺されなきゃいけなかったのですか?」
「っ……!!ゔゔゔゔっ!!」
雇い主に追い付かれ、魚の腕で肩を掴まれる。もう片方の腕が頬から髪にかけて撫でてくる。冷たい鱗の感触が焦りを加速させた。冷静さが酸素と共になくなっていく、意識が朦朧として、それでも必死に助かろうともがき苦しんだ。雇い主を追い返そうとアサルトライフルを振り回した。
「錠前サオリ!どうしたの!?よく分からないけど、落ち着いて!」
窓の向こうから驚きと焦りを含んだ声が聞こえてくる。ドローンの声だ。その声を聞いた瞬間、世界が再度瞬いた。水槽から廃墟に変わり、岩だと思っていたものの正体が私のバッグであることも分かった。どうやらここは私が使っていた客室だったらしい。よくよくみると私が寝るときに使っていた壊れかけのベッドの骨組みや他の家具もあって………私のバッグ?そうだ!それならその中に……!
(銃声、爆発音)
バッグのとある位置に狙いを定めて撃つ。そこには護身用の手榴弾が数個入っていて、弾丸さえ当たれば誘爆するはずだ。果たしてその目論見は成功し、鋭い弾丸が頑丈な作りのバッグを貫通して爆発する。その炎と煙は雇い主を包み込み、衝撃波が私の体を窓の向こうのゴンドラまで手荒に運んでくれた。
窓ガラスをぶち破る感触。水が溢れ外に投げ出される感覚。水槽から抜け出せた、大きなダメージを負うことになったが必死でゴンドラを掴み、乗り込む。そしてようやっと息をすることができ必死で酸素を取り込んだ。
振り返るとそこには水槽と雇い主の姿はなく、代わりに爆炎で焦げた廃墟の部屋が広がっていた。建物も元のボロボロな姿に戻っていた。いや、ずっと私はそこに綺麗な建物と水槽があるだけだと思い込んでいたんだ。酸素が頭に巡り、ようやっと視界と思考が戻っていく。安堵と恐怖が入り混じった感情を覚え眉間に皺が寄った。
「錠前サオリ、一体どうしたの?急に飛び込んだと思ったら暴れ出して、爆発まで起こして。一体何をしているの?」
「がふっ、ゔっ……はぁ、はぁ、あっ……お前、アレが見えてないのか?水槽に、引き摺り込まれて……!」
「水槽………何のこと?」
無機質な、だがさっきの魚達よりも感情を感じるカメラの視線が私を覗き込んでくる。ああ、そうだった………。
『……ん、あなたは急にボロボロのゴンドラに乗ったと思ったら、ボロボロの清掃用具を持って窓掃除を始めた。でもこの廃ビルに窓なんてない。全部割れてる。ゴンドラだって、動いてるのが奇跡』
………こいつには水槽やホテルの様子が見えていないんだ。だから私が何に襲われたのかも分かっていない。クソ、何をどう話したものか……。
「……とにかく、こんなボロボロなゴンドラにいたらいつか落ちて怪我をする、今すぐ降りるべき。ドローンに捕まっていいから」
「あ、あぁ……感謝する」
確かに、こんな危険な場所で考え込んでも仕方あるまい。状況説明は落ち着いてから、何ならドローンの操縦者と顔を合わせてからでもいいだろう。ドローンが機体を寄せて下部の取っ手を差し出してくる。私は呼吸を落ち着かせ、ありがたくそれに手を伸ばし………、
(水飛沫の音)
「ゔっ!?」
突然後ろから首を絞められる。魚の腕……雇い主か!
「バイトさん、綺麗って言ってくれてたじゃないですか。どうして逃げるんですか?どうして私達は、こんな目に遭わなきゃいけなかったんですか……?」
壊れた無線機から雇い主の酷く冷たい声が響く。ドローンのプロペラの音より小さいはずなのにはっきりと聞こえる。魚、声、絞められる首は苦しくて、痛くて、また息ができない……!
不意に振り返ると、そこにはずっと見てきた水槽が広がっていた。こんな状況でも綺麗で、要項を反射させて私の頬を水の青を纏った光で照らしている。魚の群れの姿をした雇い主が窓を突き破りこちらに手を伸ばし、首を絞めている。この痛み、光のせいで、本当は廃墟なのにこの光景が現実と思えてならなくて私は再度もがき苦しんだ。
「錠前サオリ!」
「わがっ……でる!!ぐゔっ……ゔっ!!」
身体が水槽に引っ張られる、またあの中に入りそうになる。今度も出られる保証はない、だからここで逃げ出さなくては。私は抵抗しつつアサルトライフルを動かす。狙う先は、ゴンドラの制御装置だ。
……高所窓清掃用の1人乗りゴンドラ。本当はボタン1つで上下左右に動かせる仕組みなのだが、風化で機械がダメになっており私はクランクを手回しすることで操作していた。それくらい古びて危険なものであり、このアルバイトの注意事項として『ゴンドラの操作を間違えないこと』と定められている程だ。
そんなゴンドラの制御装置に銃の先で触れる。つけっぱなしにしていたクランクを外し、ブレーキレバーに銃身をぶつける。何回かそうするとレバーが動き、悲鳴を上げながら倒れ始めた。
「っ!錠前サオリ!そんなことしたら……!」
「わがっでる!……ぢゃぐぢをだのんだ」
完全にブレーキレバーが倒れた瞬間、ゴンドラが一気に落下した。そう、真似しないで欲しいのだがクランクを外した状態でブレーキレバーを誤って完全に下げると、支えを無くしたゴンドラはそのまま落下するのだ。
と言うわけで立っていた場所が消えて私も重力に捕まり、引っ張られる。首を掴んでいた魚の腕は咄嗟に反応することができず、そもそも私の身体を持ち上げる程の腕力もなかったようで私の首を手放してしまった。
「バイトさん!!」
無線機から雇い主の悲鳴が聞こえる。上を見ると雇い主が、魚の1匹1匹が必死になって腕をこちらに伸ばしている。私はそれを、掴むことはなかった。
(ドローンの駆動音)
「はあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
銀の機体を煌めかせ、プロペラが限界まで回転する。スピーカーから操縦者の声を響かせながら、大きなドローンが落下する私に迫って来る。地面に激突するまで8、7、6メートルのところでドローンは追い付き、私はドローンの取っ手を掴んだ。
「よし!飛べ!」
「分かってる!!」
機体が持ち上がり、砂漠の風を切り裂いて加速する。私がぶら下がっているのにも関わらずドローンは上昇し、遂にはホテルよりも高くまで飛び上がった。そしてそのままその場を後にし、あの水槽は見えなくなった。
…………5分程飛んでいると高度が下がり、少し先の廃公園へと接近する。そこには銀髪の生徒が空を見上げて佇んでいた。ドローンの制御装置と思われるものを持っており、私を見るや否や眉を吊り上げた。
ドローンから手を離す。華麗に着地……したかったが叶わず、積もった砂に転げ落ちて大の字になった。
「………何となく、何かに襲撃されていたのは分かったけど、逃げ方が危険過ぎる。ヒヤヒヤした」
「………すまない。だが、助かった」
「……ん」
歩み寄って来た彼女に手を差し出される。それを掴み、引っ張って貰って立ち上がる。制服に付けられたアビドスの学生証が目に映る。彼女は本当にアビドスの生徒らしい。砂風が彼女のマフラーを揺らし、それを煩わしそうに、しかし心地よさそうに目を細める。改めて見ると非常に整った顔立ちで………ん?コイツどこかで見たことがあるような……。
「何にせよ、錠前サオリが無事に見つかってよかった。みんな心配して……」
「あっ、ああ!!」
「……ん、今度は何?」
「お、思い出した……!お前、あの時戦った……!」
「……ああ。うん、そう。エデン条約?って時にヒフミに呼ばれて戦ったね」
そうだ、その通りだ。エデン条約調印式の時、アズサの援軍としてファウストと先生が呼び寄せた戦力、ブラックマーケットに名高い伝説の犯罪集団……!!
「改めて、私は砂おおか……」
「お前、覆面水着団のブルーだな!?」
「っ!!ん!そう!!私は覆面水着団のブルーッ!!!」
________その後、私とブルーは再度あのホテル……いや、廃墟に戻って中の探索を行った。中に私を襲った誰かがいないか、もしくはその痕跡を探すためだ。結論から言うとそんな奴は見つからず、私以外の誰かが出入りしていた跡も見当たらなかった。
だが私が寝泊まりしていた17階の客室に、ホテルの支配人であるアビドスの生徒が残した痕跡を見つけることができた。爆破で吹き飛んでいなかったのは幸運だろう。
その情報を持ってブルーと共に旧オアシス前繁華街を去り、今私はアビドス高校にいる。覆面水着団……改めアビドス廃校対策委員会の部室に招かれたのだ。
「………と言うわけで到着が遅れてしまった錠前サオリだ。迷惑をかけて本当に申し訳ない」
「謝ることじゃないわよ!……正直、非現実的な話ではあるけど、実際に襲われて酷い目にあったんでしょ?」
「もう1人のシロコさんが来た日や、あの日のようなこともありましたから……。私達の常識では考えられないことは実在するんだと思います。今回もそう言うことだと、サオリさんの話を信じます」
「黒見セリカ、奥空アヤネ……」
「何にせよ無事でよかった。うへ、こんなことがあった後だけど、ようこそアビドス自治区へ!私達はサオリちゃんのことを歓迎するよ〜」
「小鳥遊ホシノ……」
「うんうん♪それじゃあ早速歓迎会を始めましょう!実はみんなで準備をしていたんですよ⭐︎」
「ん、前は敵同士でサオリは悪い奴だったけど、今は頑張っているいい生徒だって先生から聞いている。私もサオリを歓迎する」
「クリスティーナ、ブルー……ああ。みんな、感謝する」
「待って待って待って待って待って待って」
「ノノミ先輩!シロコ先輩!」
「フフッ、だって私達……愛と正義の覆面水着団じゃないですか〜♪」
「ん!この際だからセリカとアヤネもコードネームを決めるべき!」
「「嫌に決まってるでしょ!?(じゃないですか!!)」」
セリカとアヤネの怒号が部室に響く。だが本気で怒っている様子ではない。仲良さそうで、楽しそうで、見ているこっちも顔が綻ぶ彼女らの青春のアーカイブが繰り広げられている。
………よかった。私の報告を聞いていた時はこの世の終わりみたいな空気が漂っていたから、彼女達が元気を取り戻したなら何よりだ。
「サオリちゃん」
ふとホシノに呼びかけられ、振り向く。窓を背にしたホシノの顔は微笑んでいるが、それが仮面だとはすぐに分かった。表情に落ちる影も、窓から差し込む夕陽の逆光によるものではない。彼女がアビドス高校唯一の3年生だと聞いている。だから思うところがあるのだろうか?思い詰めたりしないといいのだが……。
「……ああ、ふふっ。心配してくれてる?」
「っ!?……顔に出てたか?すまない、余計なお世話だったな」
「そんなことないよ、サオリちゃん。嬉しい、ありがと。でも私は大丈夫だよ」
「………そうか」
仮面の微笑みが、本物の微笑みに変わった。だが濃い影は拭えておらず、ホシノはまるで遠い先を見ているかのように対策委員会の面々を眺め始めた。
「……賑やかでいいでしょ、私の後輩。こ〜んな頼りない、おバカな先輩だけどさ、私のことを大切に思ってくれていて。だから私も大切にしたいんだよね」
「………私も、部隊では年長だった。気持ちは分かる」
「そっか。おんなじところもあるんだね、私達」
「ああ……」
「………………ねえ、サオリちゃん。私は大丈夫って言った後にこんなこと聞くのもアレだけどさぁ、………本当にそこにはソレがあって、そう書かれていたの?」
「………間違いない。私もブルーもこの目で見たぞ」
「そっかぁ……。私達のOGが、ねぇ………」
深く溜め息を吐いた後、ホシノは立ち上がり、セリカに飛び掛かって抱き付いた。気持ちを切り替えてはしゃぎたくなったか、やってられなくなったか……いや、両方か?何にせよ対策委員会の5人を……特にホシノの心情を心配せずにはいられなかった。
……廃墟の探索の時、私とブルーは私が寝泊まりしていた17階の客室で2つの痕跡を見つけた。誰が残したかはまだはっきりと分かっていないが、どれも数十年前に、ホテルの支配人が残したものだと私は確信している。
1つは天井のヒビ。爆破で付いた傷ではなく、何か重いものをロープでぶら下げた時に付いたものだ。……それをした者が身内にいるからすぐに何の傷か分かった。彼女を思い出し、私は首筋を意味もなく擦った。
もう1つは壁に書かれた落書き……いや、雇い主の遺書だ。初めてホテルの中から美しい水槽を見た時、水槽の中で私と一緒にいた時、雇い主はその言葉を何度も何度も言っていた。
『私達は砂漠に殺される』
客室の壁に大きな文字で、そう書かれていた。
ここだけサオリが裏バイトで働いていて、ひどい目にあったりあわなかったりする世界
錠前サオリの裏バイト奇譚18
業務内容:高所窓清掃
注意事項: 『ゴンドラの操作を間違えないこと』
勤務期間:5日
給与額:なし(雇い主失踪のため)
コメント:色々あったが、明日から柴関ラーメンのアルバイト開始だ。そこでもしっかり頑張ろう。
……あの水槽のことは、本当に綺麗だと思っていた。幻覚なのが少し、残念だ。