あ、リオネルガチャ2天井でポイントお迎えフィニッシュです。憤怒。
(サオリが配達に行く少し前)
対策委員会の部室に1番早く辿り着いたのはセリカだった。だからこそセリカは部室にやって来る全員の表情を見ることができた。真面目なアヤネ、温和なノノミ、表情が薄いけど感情豊かなシロコ、そしてものぐさに見えて誰よりもアビドスのことを考えているホシノ。全員セリカを一目見るとすぐに笑顔を作って声をかけたが、扉を開けてすぐの顔は酷く険しかった。
部室に入った自分もこんな感じだったのだろうかとセリカは思い浮かべてみる。当たり前だが自分の表情なんて鏡でも見ないと把握はできない。それでも皆と同じように険しい顔で部室に入る自分の姿を想像できたから、きっとそうだったのだろうと結論づけて思考を止めた。
(……ホシノ先輩、思い詰めてないといいけど…………)
そう思ってセリカは隣の席に座るホシノに視線を移した。セリカの次に来た彼女は皆が揃うまで昼寝してると言って、早々にテーブルに顔を埋めてしまった。だがずっとヘイローが点灯したままだ。狸寝入り……いや、本当に眠りたいけど意識がそれを許してくれないのだろう。ふと頭を撫でてやると、ホシノはされるがままぴょんと立ち上がったままの髪の毛を揺らした。
「……ホシノ先輩起きて、みんな揃ったよ」
きっと分かりきってるであろうことを声掛けて体を揺らすと、ホシノはゆっくりと起き上がって欠伸のふりをして見せた。
「ふぁ〜ぅあぅ……、よく寝たよく寝た。ありがとね、セリカちゃん」
「……別にいいわよ」
これ以上口を開くと余計なことを言いそうで、そのせいでホシノに余計な気遣いをさせそうな気がしたセリカはそれを防ぐために顔を逸らした。そして既にホワイトボードの前に立っていたアヤネを見上げてコクリと頷く。アヤネも察していたようで、ホシノを心配しつつ何も聞かずに緊急会議の開始を告げた。
「今回の議題はアビドス高校の来客、錠前サオリさんを襲った特異現象の調査についてです。まずは事件の内容を振り返りましょうか」
アヤネの主導で皆は記憶を遡る。始まりは柴大将からラーメン配達のテスターを探していると相談を受けた時だろう。諸々の事情があってアビドスの生徒達ではできないと判断し、何とかならないかと先生に相談したのだ。
そして紹介されたのが錠前サオリで、アビドスの生徒達は相談の末に彼女を受け入れることにした。しかし予定の時間になってもサオリは到着せず、5日間の捜索の末に旧オアシス前繁華街の廃ホテルで、何故かアルバイトをしているところを発見されたのだ。
「……サオリさんの証言によると業務内容は高所窓清掃。雇い主は件の廃ホテルの支配人で、アビドス高校の生徒だと名乗っていたそうです。そして働いている間は、あの廃ホテルが廃墟ではなく本当に営業している綺麗なホテルに見えていた……そうですよね?シロコ先輩」
「うん。私にはそう見えなかったけど、あの時のサオリはそうであるかのように振る舞っていた。何なら溺れていたよ、水もない部屋の中で……」
『がふっ、ゔっ……はぁ、はぁ、あっ……お前、アレが見えてないのか?水槽に、引き摺り込まれて……!』
シロコはドローン越しに見ていた、サオリが一生懸命に虚空を磨き上げている姿や何もない廃墟の部屋の中でもがき苦しんでいた姿を思い出す。言語化してみたら随分と滑稽なその姿は、しかし実際に目の当たりにすると歪で恐ろしいものだった。あの時は必死だったせいで恐怖もいくらか柔らいでいたシロコだが、改めて思い出して身震いする。頭上の獣耳がぺたりと垂れた。
「ともかく、サオリさんはアビドスでの拠点を探して住みやすい廃墟を探していたところ、たまたまホテルにいた支配人と接触。操られてそこに居続けていたそうです」
「ありがとうアヤネちゃん、シロコちゃん。それでノノミちゃんが支配人について調べてくれたんだよね。どう?裏は取れた?」
「はい、図書館の資料や過去の生徒名簿を調べてみたら……確かにあの廃ホテルは元々アビドス高校の所有物件で、支配人さんと思われる生徒が十数年前のアビドスの名簿に確認できました。そして彼女は……」
「ん……無理して言わなくていいよノノミ。大体分かってるから…………」
シロコに優しく制されて、ノノミはそれに甘えて口を噤む。ノノミが続きを話さなくても、支配人の最後については皆察することができていた。サオリとシロコが廃ホテルを調査した時に見つけた、天井にロープを吊り下げた痕跡と壁の落書き。
『私達は砂漠に殺される』
……それは支配人の絶望と慟哭。つまりはそう言うことなのだろう。
「……ん、サオリはあのホテルで水槽を見たと言っていた。オアシスを再現した立派な水槽が見えていた、階層1つを丸々使った大きなものだって。でもそんなの私には見えなかったし、サオリと一緒に中を探索した時もそれらしい設備はなかった。だからその水槽は支配人の大切なもの、願望……未練、だと思う」
「……それが支配人がサオリちゃんを襲った理由だって、シロコちゃんは思っているんだね?」
「…………私達が知らなかっただけで、支配人はずっとそこにいたんだと思う」
「そっか……ノノミちゃん、資料には他に何か書かれてた?」
「そうですね……得られた情報はお名前と簡単な経歴と役職、それと彼女が通っていたのがアビドス高校第3校舎だってことくらいです」
「第3校舎……昔のアビドスの生徒が砂漠から逃げるために引っ越した3番目の校舎ってことよね?」
セリカの確認にアヤネは頷いた。対策委員会の部室があるこの校舎も引っ越し先の校舎……言わば別館であり、本館や他の校舎……そして第3校舎もとっくの昔に放棄されている。
「そんな第3校舎を……うん、おじさんも知ってるよ。引っ越した時はまだオアシスも枯れてなくて、アビドス砂祭りもギリギリ開催されていたって…………先輩が話してくれたのを覚えてる」
「ホシノ先輩……」
「ん?ああ、ごめんねセリカちゃん。そんな顔させるつもりじゃなかったんだけど……ああそれと、砂嵐が酷くなってオアシスも枯れちゃって、それで第3校舎も引っ越すことになったって話も聞いてるよ!何もかも全部持ち出されてすっかり廃墟になっちゃって、いや〜諸行無常だね〜」
「第3校舎……」
努めて明るく振る舞うホシノをよそに、噛み締めるように呟いたシロコ。そしてすぐに席を立ち、力強く言い放った。
「……ん、第3校舎を襲う」
「は?……は!?え!?シロコ先輩何言ってるの!?」
「ごめん、銀行強盗と間違えた。正しくは……第3校舎を襲撃する」
「それも違いますよねシロコ先輩!?ええと……調査!調査って言いたいんですよね!?」
「ううん、襲撃」
「頑な!!」
「どうしてそこ拘るんですか!?」
「フフッ♪でも今一番の最適解はそれですよね。最初のシロコちゃんとサオリさんの調査と、昨日の私とホシノ先輩とアヤネちゃんの探索でも、ホテルでこれ以上目ぼしいものは見つかりませんでした。でも支配人さんが通っていた第3校舎なら、何かあるかも知れません」
「ノノ……クリスティーナの言う通り。覆面水着団で第3校舎を略奪する……!」
「はーい!出動です〜♪」
シロコの危険極まりない発言をノノミが補足し盛り上がる。やる気満々の2年生組、対する1年生組は暴走する先輩達に頭を抱えて反論した。
「略奪ってちょっと!!……いや、第3校舎って、とっくの昔に引き払われてるんでしょ?中に資料や痕跡なんて残ってるの?」
「仮に残ってたとしても、砂に晒されて風化してるんじゃないでしょうか?」
「うん、アヤネ、セリカ。2人の言う通りかも知れない。でも、それを確かめるのも調査。ホテルにだって少しは残ってたから、きっと何か残ってる」
「…………うん、そうだね。シロコちゃんの言う通りだ」
静観していたホシノが一声、4人は視線を向ける。頬杖を下ろし、背筋を伸ばし、皆を真っ直ぐ見据えてホシノは言葉を続けた。
「実際、調べられる場所は他にないからね。少しの可能性でもあるのなら行ってみようよ。それにさ、私達の大先輩が誰かを襲ったなんて。そんなの許せないし……それ以上に悲しい」
言い切って、堪えるように微笑んだホシノを見て4人は息を飲む。思えばサオリから事件の話を聞いた時から、ホシノは目に見えて元気がなかった。唯一の3年生で、1人で抱え込もうとする性分であり、そして誰よりもアビドスのことを考えている。そんな彼女がそう思うのは必然で……だけど4人も同じ気持ちだ。
「……はい、そうですね。私も……いえ、私達も悲しいです!」
「支配人を、私達の大先輩のことを知らなくちゃ。サオリさんを助けることはできたけどそれだけじゃ、知らなくちゃきっと終わらないわよね!」
「うんうん!そうですね♪私達が支配人さんに何をしてあげられるかまだ分かりませんが……いえ、きっとできることがあるはずです!」
「ん、決まり。第3校舎を襲う」
最後を飾ったシロコの言葉に再度アヤネとセリカが噛み付く。それを止めるどころか、覆面を被ってシロコに味方し出したノノミ。そんな後輩達の……未来のアビドスを見てホシノは今度こそ心からの笑顔を見せた。
起こってしまったことは変えられない。だがそれとの……支配人との向き合い方は変えられる。2度とこんな悲しいことを起こさない為に、5人が彼女を許せるようになる為に、支配人のことを知らなければならない。アビドス廃校対策委員会の決意は固まった。
「…………ありがとう、みんな。よし、それじゃあ対策委員会!みんなで調査を頑張るよ!」
「「「「おー!!!!」」」」
……その後の会議では第3校舎の具体的な調査方法が議論された。とは言っても第3校舎はただの廃墟なので侵入は簡単、心配なんぞ老朽化した床を踏み抜かないよう気をつけましょう位のものである。ヘルメット団やスケバンなどの不良集団の溜まり場になっていたとしても制圧すればいいだけなのでさしたる問題ではなく、その他の細部も簡単に詰められて会議は終了となった。
「今日はセリカちゃんのバイトがありますから、出発は明日ですね。皆さん銃器弾薬の準備をしておいて下さい、お疲れ様でした!」
「了解!……ああそうだ、サオリさんには一応話しておいた方がいいよね?」
「ん、言わないは無し。きっとサオリは怒るし追いかけて来る」
「フフッ、きっとそうですね♪だからしっかり話して、柴関ラーメンを守って貰いましょう!」
詰められた細部の中の1つ、錠前サオリに関しては待ってもらうことに決まった。せっかくアビドスに来てくれたのに酷い目に遭ってしまった彼女をこれ以上巻き込む訳にはいかない、本来の目的であるアルバイトに専念してもらうことになったのだ。本人は手伝うと言ってくれそうだが、そこは何とか説得するつもりである。
「今日はみんなで学校にお泊まりして、その時に話そうか。セリカちゃん、サオリちゃんのことお願いね」
「任せてホシノ先輩!じゃあ、いってきま〜す!」
会議も終わったので今日は学校でやることはもう何もない。それを見越してセリカは、柴関ラーメンに早く出勤すると伝えていた。サオリが手伝ってくれているが彼女の担当は配達、ずっと屋台にいる訳ではない。きっと今頃柴大将が壮絶なランチタイムを1人で捌いていることだろう。
そう思い足早に部室を出たセリカを、他の面々が笑顔で送り出す。忘れずに笑顔を返し、ツインテールを揺らして廊下を駆けて行った。
________一旦家に帰って制服から柴関ラーメンのバイトウェアに着替える。店舗があった頃は更衣室が用意されていたが、屋台にそれを求めるのは酷だろう。ふとセリカは柴関ラーメンを店舗から屋台ににリフォームしてくれやがった彼女達のことを思い出し、今度会ったら頬でもつねってやろうと決意を固めた。
(ああ……でも、今あいつら入院してるんだっけ)
怒りが一気に冷め、彼女達……便利屋68への心配が湧き上がる。詳細は分からないが、大きな事故に巻き込まれて4人全員病院送りになったと先生から聞いている。実は対策委員会の全員で便利屋のお見舞いに行こうと話が上がっていたのだが、諸々の事情があって中止になっていた。
(赤き姫君だっけ、ゲヘナ自治区に現れた巨大怪獣……)
連日ニュースになっているそれを心の中で反芻する。クロノスの報道によるとその巨大怪獣に風紀委員長含めた沢山の人々が怪我をして入院し、おかげでゲヘナの治安が更に悪化したとのこと。ゲヘナの生徒会長はこれ以上の混乱を避ける為に自治区の出入りに制限をかけ、それもあって対策委員会はお見舞いには行けず、先生もゲヘナに出ずっぱりになっていた。
(いやヤバすぎでしょ、大丈夫かなぁ……)
一方その頃某美食を探求する部活が万魔殿の発令をガン無視して柴関ラーメンまでやって来てランチタイムを楽しみ、それを知った某行政官が盛大にキレ散らかしているのだがまあそれは置いといて、知り合いの身に降りかかった災難にセリカは……いや対策委員会の面々は心を痛めていた。もちろん何かできないかと先生に話をしてみた。その時に返ってきた答えは……、
『________それなら、柴関ラーメンのアルバイトの話があったでしょ?1人生徒を紹介するから、彼女を受け入れて欲しいんだ。錠前サオリって子なんだけど……』
……その名前を聞いた時の自分達を思い出し苦笑するセリカ。錠前サオリ……トリニティの指名手配犯にしてエデン条約を巡る事件を暗躍していたテロリストのリーダーだ。
あの時アビドスの面々も大事な友達のために駆け付けてサオリと一戦交えていた。先生が撃たれたことも聞いていた。そんな訳で大切な人達を傷つけた彼女の第一印象は最悪と言っていい。だから先生から彼女を紹介され、受け入れろと言われて、この人は何を言ってるんだとアビドスの面々は顔を引き攣らせたものだ。
(……でもサオリさんを信じて欲しいって先生は言っていた。サオリさんが事件を起こした理由、通っていた学校のこと、それと今のこと。サオリさんの全部を話してくれて、前に進めるよう手助けして欲しいって……)
それがゲヘナで頑張る先生の手伝いになるのかいまいちピンと来なかったが、頼まれたのなら引き受けよう。そして自分達は過去しか知らない彼女の今を見て、先生を通して許してみよう、信じてみよう。5人で相談した末にその結論となり、サオリを柴関ラーメンのバイトとして受け入れることにしたのだ。
「……その結果酷い目に遭わせてしまって、ゔっ、ゔぉぉ…………」
現状に頭を抱えつつバイトの準備を済ませたセリカ。ここで考えても仕方ないと早急に思考を切り上げ、玄関のドアを開ける。砂混じりの風が部屋の中に入り込む。アビドス自治区に住むなら掃除は欠かさない方がいい、でないと部屋の中ですら外と同じく砂に埋もれてしまうから。長い付き合いの風に揺れた髪を煩わしそうに押さえ、無人の自宅に行ってきますと声をかけて鍵を閉めた。
(……うん、大切なのはこれまでじゃなくてこれから。サオリさんは無事助け出されたんだし、終わったことをクヨクヨしてても仕方ないわよね!それより早く行かなくちゃ!)
真昼の太陽がバイトウェアの黒に吸い込まれていく。人通りの少ないアビドスだが、それでも店名が大きく書かれたこの服を着ていれば宣伝にもなるだろう。こうやって出勤するのも悪くないものだと思いつつ、セリカは屋台へと足を進めた。
(アビドス自治区都市部、柴関ラーメンの屋台)
「あ、サオリさん」
自宅から20分程の道のりを踏み越えて屋台が遠くに見えた頃、ちょうどサオリが配達に出発する姿を見送ることができた。柴大将が持ち物チェックをし、走り去るバイクを見送り、そしてすぐにラーメン作りに戻っている。もう少し早ければサオリを見遅れたと残念に思いつつ、セリカは駆け足で屋台へと近づいた。
「大将、お疲れ様!」
「おお!セリカちゃん!悪いね、早めに来てもらって」
気さくな挨拶を返し、だが一切手を止めない柴大将。その手際の良さに感心しつつ辺りを見まわし状況を確認する。どうやらランチタイムは乗り越えたが、それでも途切れず客が来ているらしい。出されたラーメンに舌鼓を打つ親子連れや、自分も舌鼓を打ちたいと楽しみに待っている何人かの客が見て取れた。
「よし……!今日も頑張るわよ!サオリさんも頑張ってるみたいだしね!」
「ああ、すごいぜサオリちゃんは!悪戯電話も解決しちまったからな!」
「え?そうなの?」
「さっき電話を取ってもらったんだけどなぁ、相手の声が少し聞こえたんだがいつもの悪戯電話の言葉だったんだ。でもサオリちゃん、意味が分かるらしくてな、同じ言葉を使って普通に受け答えしてたんだよ」
『……はい、柴関ラーメン。配達の依頼だな?注文を言ってくれ』
『…………………………⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『……︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『……︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ ︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?』
『⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?』
『……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?』
「……⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
『…………⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
「________ってな感じでね」
「え、凄……。最初からサオリさんに任せればよかったかも」
アヤネに相談したり、どうしようかと悩んでいた問題があっさり好転して、セリカは拍子抜けしつつも安心して溜め息を吐いた。
「ああ、そう言えば。サオリさんどこに配達に行ったの?」
「ん?ああ、そう言えば忙しくて聞いてねぇや。メモは取ってたはずだぜ」
サオリが任されているのはただの配達ではなく、今後配達業務を続けられるかのテスターだ。だから配達先や配達時間などのデータを記録しているのだ。
セリカは屋台の脇に置いてあったメモ帳を手に取る。大丈夫だと思うが、ちゃんとメモを取ってるかのダブルチェックをする為だ。100均の安物だが表紙に黒猫と柴犬のシールが貼り付けられている使い古されたメモ帳。果たしてそれを開くと、1番新しいページにはちゃんと配達内容と行き先が書かれていてセリカは一安心…………した瞬間、
「……………嘘」
「よぉし!柴関ラーメン3丁完成!セリカちゃん、持ってってくれ!……あれ、セリカちゃん?どうしたんだい?」
「……ッ、ごめんなさい!!」
「あっ、おおい!セリカちゃん!?」
困惑した様子の柴大将を振り返ることなくセリカは走り出した。スニーカーが砂を踏みつける音、心臓の鼓動、自分の呼吸音、それが囃し立てる早鐘のように鳴り響いて煩わしくて、セリカの焦りを助長させる。
ずっと持っていたメモ帳をもう1度見る。配達内容は柴関ラーメン並1丁で、配達先は…………、
「アビドス高校、第3校舎……!」
『そんな第3校舎を……うん、おじさんも知ってるよ。引っ越した時はまだオアシスも枯れてなくて、アビドス砂祭りもギリギリ開催されていたって…………先輩が話してくれたのを覚えてる』
『ん?ああ、ごめんねセリカちゃん。そんな顔させるつもりじゃなかったんだけど……ああそれと、砂嵐が酷くなってオアシスも枯れちゃって、それで第3校舎も引っ越すことになったって話も聞いてるよ!何もかも全部持ち出されてすっかり廃墟になっちゃって、いや〜諸行無常だね〜』
配達で廃墟に行くことは、実は結構あったりする。ありがたいことに廃墟を根城にしているヘルメット団やスケバンからの注文も来ていて、セリカはものすごく複雑な心境でサオリを送り出していた。だが第3校舎はただの廃墟ではない、サオリを襲ったあの特異現象に関わっているかも知れない場所だ。
『ああ、すごいぜサオリちゃんは!悪戯電話も解決しちまったからな!』
『さっき電話を取ってもらったんだけどなぁ、相手の声が少し聞こえたんだがいつもの悪戯電話の言葉だったんだ。でもサオリちゃん、意味が分かるらしくてな、同じ言葉を使って普通に受け答えしてたんだよ』
(私と柴大将が分からなかった言葉をサオリさんが喋れた?今考えたら絶対おかしい!だってサオリさんは……!)
『セリカは凄いな、英語が使えて。私は今喋ってる言語しか分からないぞ』
「今朝そう言ってた!ああもう……!」
セリカは懐からスマホを取り出し、対策委員会のモモトークグループのチャットを開く。立ち止まっていられないので走りながら操作する、焦りで染み出した手汗で指が滑って上手く操作できない。何とか二言チャットに投げたら、スマホを仕舞う手間も惜しくて握り締めながら走り続けた。
『さおりさんがだいさんこうしゃにいった!なにかおかしい!!!!いまおいかけてる!みんなきて!』
『まだおわってなんていなかった!!』
幕間・サオリのバイト百景(100個あるとは言っていない)
16.AI技術研究部第5部室
立ち寄った時のバイト:データ入力
説明:ミレニアムサイエンススクールの部活、AI技術研究部が借りているビルの一室。医療系企業や病院法人と合同で進めている研究のために使われている。
コメント:あの時の雇い主……ヘヴンの臨床実験が今度行われるらしい。きっと今頃部長達が忙しそうに作業して、ヘヴンが電子音声で応援していることだろう。私が雇われてた時もそうだったから。
「________彼女も私達のことを、そんな感じで応援してましたね」
「あの人は……お母さんは私のことも応援してくれてたんだよ。頑張って最高の天国を作ってねって。フフッ」
「そうですか……笑い声もそっくりですね」
「……うん、当然だよ。全部お母さんから貰ったものだからね」