「この学校って変なヤツが多いよな……」
ニライカナイ島の騒動や同族アレクサンドル・ガスコインとの死闘を凌ぎ、普段の通りの生活を再開している少年──おそらくクラスでも最も変な部類に入る
キンコンカン、キンコンカン。
下校時間を知らせるチャイムが鳴った放課後。普通なら三々五々と生徒たちが帰宅して静かになっていくのだが、我がクラスでは一味違う。
今日も今日とて我がクラスの放課後は騒がしい。
護堂はすっかり使い慣れた席からあたりを見渡すと、いつも駄弁っている高木の姿が目に入った。剣道部に所属する高木はわりと精力的に部活をやっているから、放課後に見かけるのは稀だ。
「高木、部活はいいのかよ?」
「ふふん、今日は休みだ。部活よりも大事なことがこの世の中にはゴマンある。そう、草薙も分かっているだろうが──部活どころではない、大事件について俺達は討論をせねばならん」
「俺達?」
クラスメイトの高木が声をかけてみると胡乱な言葉が返ってきた。気づけば護堂を取り囲むように名波と反町もいた。ひどく満ち足りた表情と、穏やかな瞳の奥にたしかな熱を灯した彼らは護堂という同じ道をいく同志を迎えるかのように手を上げて挨拶してくる。
名波、高木、反町──。
この三人を指す通称”三バカ”の名はすでに四月のころには定着していた。城楠学園の高等部は中等部からの進学組や外部からの編入組で、一年生の間はわりと混沌としているのだが、短い期間に通称が生まれているくらいにはアクの強い連中だ。
「まあまあ草薙、とぼけなくていい」
三バカのリーダー格である名波がふっと微笑んで優しい口調で声をかけてきた。
「とぼけるって、なにをだよ」
「ははは、こやつめ。何も言わなくてもわかってる──俺達は同志だろう?」
「何だ、そりゃ。今までだって友達づきあいしてただろ?……なあ、名波。今日は早く帰ったほうがいいんじゃないか? 普段より妄言がひどくなってるぞ」
「友と同志は違う。友と同志とではこんな話は出来ないからな──そう、我々は先日発売された
「やっただろう? って、俺は最近忙しくてゲームなんてやってないぞ」
「はは、そう恥ずかしがらなくていいさ。ENJOY! 聖☆ラミアっ子学園×大メデューサ魔女学院〜蛇腹だいしゅきホールド&全身蛇鱗拘束ホールド君で薔薇色学園生活〜の話だ」
異世界語が聞こえた。
「……なんだって?」
「またまた。照れることはない。お前が相当な
「どこで調べたんだよっ、というか
思わず喚いてしまった護堂を三バカが「まあまあ」と生暖かい眼差しで見てくる。
高木と反町はアルカイック・スマイルを浮かべ、名波なんぞはスネOかト□ワ・バートンのような撫でつけられた七三をかき上げて爽やかに笑っている。なにか決定的に勘違いしてる顔だ。
「草薙も感じ入ったはずだ、ラミアっ子に羽をつける。たったそれだけの事であれほどの差別化を図れるとは……いやぁ制作陣の慧眼に感服した。付録のファンブックには当然目を通したはずだろう? ──”ミネルヴァの
「ウム……あの一文にはおれも衝撃と涙を禁じ得なかった……。純潔聖女神の愛し子、風紀委員長のエパティークが本来許されない魔王の娘でありながら夜はあんな……」
「待て待て。メデューサ女学院も忘れてはいかん、蛇髪という古き良きオーソドックスな設定ながらも、学院の生徒会をたった一人で切り盛りする敏腕で貞淑な生徒会長シッサルがまさかあんなことになるとは……」
異世界語を話す三バカに神々との戦いですら味わったことの無い"畏れ"を感じて思わず引き気味になる。というか、ところ構わずこんな話をするからGW前なのに三バカの通称が定着してしまったのだ。
「すまん、何を言ってるか欠片も理解できない」
「はは。まだ言うのか? 仕方ないやつだな……」
こやつめ、と言わんばかりに苦笑する名波の目は気持ち悪いほど澄んでいた。
まったくこちらの意思を汲んでくれない。
拒否の意思を示し続ける護堂に、名波はウィンクを投げてきた。妙に堂に入った仕草がなんとも不快だ。
「やれやれ、そんなに言うなら俺のを貸してやろう。先生に見つかれば没収だから見つかるなよ?*1」
「学校に持ってきてるのか!? ……というかこのソフトだとハードを持ってなくて、おいっ! そっちも押し付けてくるな!」
コイツラ学校をなんだと思ってるんだ!? カバンのなかから綺羅びやかイラストの描かれた真新しいパッケージを差し出してくる。
パッケージは明らかに人肌の配色が多く、謳い文句は「えろくがっこうせいかつ!!」である。最悪である。
「なあこれもしかしてエ」
「ロに興味がないならこのゲームはCS版もでている」
機先を制すること『鳳』のごとく。
結局、ソフトとハードを押し付けられた護堂は妙な熱気に押し切られて受け取ってしまった。
押し付けられたゲームを持って立ち尽くしながら自分の流されやすさに思わずため息をついていると、ニヤニヤとした三バカが肩を叩いてきた。
明らかにろくでもない話題が始まる。さっきの話題よりも、だ。直感だが間違いない。
「それより聞いて驚け。今朝、なんと俺たちは学院随一の美少女と名高い万里谷さんの”巫女服姿”を拝むことに成功した!」
「うむ、僥倖を超えた僥倖だった。芝公園あたりで
「流石に、写真で撮ったり公序良俗に反する行為ははばかられた。──が!
そういや万里谷は学校じゃバイトしてるって設定だったっけ。学院一の美少女だと誉れ高い祐理について口々に賛美を捧げる三バカを尻目にそんなことを思った。
万里谷は媛巫女とかいう神職にあるらしく、委員会から舞い込む頼み事に毎回付き添ってくれる。その時は大抵、巫女装束だから見慣れているといえば見慣れている。
そんなことを言えばこの三バカが激するのは目に見えているため、護堂は別の話題を振った。
「あー……というか万里谷ってそんなに人気なのか。確かにすごい美人だけど」
「ああ、というよりこの学院自体レベルが高いな! 隣のクラスだけでも眼鏡美人の澤さんに小柄キューティーな宮間さん! そしてその中でも随一の美少女なのが、巫女さん萌えである俺が推しておる巫女さんのバイトしているという──」
「──ご歓談中に申し訳ありません。六組の万里谷祐理です」
噂をすれば影と言うべきか。
「噂をすれば美少女が現れるなら俺達は怪しげな儀式でも躊躇なくやるぜ!」と言いだしそうな三バカを含めた、五組の男子たちは驚愕した。学園随一の万里谷祐理が控えめな挙動で、扉を開けて顔を出したのだ。
1-5組創立以来の珍事であった。まあ編成されてから三ヶ月ほどだが。
「あ」
クラスをぐるりと見渡した祐理は護堂と視線が合うと礼儀正しくぺこりと頭を下げ──そして自分のことかと錯覚したクラスの男子全員が90°お辞儀したのは見物であった。カルト教団の集会かな?
さっきのお辞儀に何やら確信めいたものを感じたのか名波が唐突に叫んだ。
「ま、ま、ま、万里谷さん! なにかおれたち……いや、おれに御用でしょうか!?」
その確信はクラスメイト全てが持っているものでもある。
クラス男子の視線にリビドーが宿り、クラス女子の視線が一瞬で冷めたものへ変わるなか、祐理は戸惑った様子で用件を告げた。
「……? いえ申し訳ありません。あの、草薙さん少しお時間よろしいでしょうか?」
ドン!
名波が背中を叩きつけるように倒れた。
両瞼は閉じられ、生気というものが抜け落ちたように顔色は土気色。
その瞼の裏にあるイメージは、巫女装束を着たお淑やかな祐理が理由もわからず困ったようにピースをし、そして祐理の華奢な肩に腕を回して高らかに笑っている色黒な男──草薙護堂のすがたであった。
「ゴフッ!!!」
「どうした名波ッ! 傷は浅いぞ!!!」
反町が駆け寄るが、反応がない。心の叫び。魂の咆哮。期待、希望、それらすべてを綯い交ぜになった叫びは見事に空振り、名波は脳を破壊されたのだ。
瞳孔が散大しかけている。
死相である。
まさに使命がために命をすりつぶし、余命を使い果たした漢の顔であった。
「草薙に死を……、プロレタリアートに希望を……」
反町の必死の呼びかけも虚しく。
”巫女萌え”を自称する男、名波は窓の差し込む天使の階を駆け上がりやがて旅立った。
「──く、草薙〜~~ッッッ!!! おまっ、おまっ、お前はァ!! 我々の側ではなかったのかーッ!? この裏切り者ぉ!!!」
剣道で鍛えた声帯を無駄に発揮して高木が猿叫じみた慟哭を護堂に向けた。
高木の般若か明王かと見紛うほどの憤怒の形相にびくりと身をすくめる祐理と、「うーん……と言われてもなぁ」と頬をかく護堂には勝者の余裕というものが窺えた。
少なくともクラスの男子の目には。
「──申し訳ありません。草薙さんには草薙さんでなければならない大切な用事がございます。ですので、草薙さんをお放しして騒ぐのをおやめください。お願いいたします」
そこへ追い打ちをかけるように、立ち直った祐理が毅然とした声を騒ぐ男子たちへ言い放った。
たおやかな彼女からはあまりに結びつかない凛とした声音に、男子たちも鼻白み……そして黄泉路を歩んでいた名波が急遽帰還し、腰を抜かして痙攣をはじめた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛羨ましすぎる!!!!!!」
「な、名波!」
周囲の机や椅子を巻き込みながら痙攣した名波は──唐突に活動を停止した。
目をカッと見開き、天井を……いや、その先にある”天に瞬く星々”を見上げる。まるでなにもない虚空を見やる赤子のように、その眼差しは純真で──。
名波は天を見上げると、手を伸ばし、やがて──握りしめた。無垢な子供が空を見上げて、手を握りしめるのと同じく。
きっとその動作に意味はない。何も掴めやしない。
しかし。
それは、人がどの時代、どの世界でも繰り返してきた動作だったのかもしれない。
人は、常に届きえぬものに手を伸ばし続ける。
その憧憬を一心に表したのではなかろうか。
男子たちは召されていく名波のそばへ駆け寄り、例外なく男泣きをはじめた。
つまり男の執着ほど気持ち悪いものはない。
「あの? さっきの方々は大丈夫なのでしょうか」
「ああ、気にしなくていいよ。いつものバカ騒ぎだから……」
三バカこと名波の迫真の姿にクラス男子が気を取られている隙に、教室を抜け出した。
さすがに神だの魔王だの、表立って話せるような内容だから仕方がない。屋上に来た護堂はフェンスによりかかりながらあまり目立たない場所でひそひそ話をはじめた。
「で、また何起きたのか?」
人気がないことを確認し護堂を向き合った。
祐理は今朝甘粕から聞いた情報を思い出し、一瞬目を逸らしたもののなんとか平素な表情で、用件を伝えた。
「はい、神獣が出現したと──」
「──わかった、行こう」
「え」
即決でそういい校門の方へ歩き出す。唐突な切り替えに祐理の反応が遅れた。
「悪いけど万里谷は静花に帰りが遅くなるって伝えておいてくれないか? 同じ茶道部だし、お願いできるか?」
「いえ、王が向かわれると仰せなのです。ここで安穏としていることこそ不敬になります。私もご一緒させてください」
「…………。はあ……好きにしたらいい」
「はい。好きにさせて頂きます」
礼儀正しくいつもよそよそしいが、妙なところで頑固なのだ。優等生の祐理にろくでもない用事を付き合わせるのは気まずいのだが、どうせ言い募っても引くことはない。ここ一週間で、祐理の生真面目さは良く知れた。
用事というのも神獣がらみで関東を弾丸出張しているのだ。
それで魔術の類に疎い護堂のために、知人? である祐理に付き合ってもらっているのだ。しかし祐理は護堂にいまだに慣れないようで、いつも口調が硬い。
「草薙さんは連日、神獣退治をなさっておいでです。いかに神殺しの比類なき力をお持ちであろうと休息が必要です。移動の間はお休みになられてはいかがでしょう」
「う~ん、でもなぁ」
「草薙さん」
スッと祐理の目が細まった。夜叉女のような微笑が浮かぶ。
思わず苦笑いが漏れた。あれには護堂も敵わない。頭を垂れて従うのみ、だ。
万里谷祐理とはもう何度も依頼で一緒になったことがあるから知っているが、あれは怒った時の表情。権能を行使して建物を破壊し、毎回あの顔で説教をされているからよく知っている。
とはいえ護堂はあまり嫌な気持ちにはならなかった。
カンピオーネという人種にトラウマがあり最初は異常なほど畏れ慄きへりくだっていた彼女が、打ち解けた証拠だ。気のせいかもしれないが。
「だったら万里谷ももう少し気楽に話せないか? もう何度か遠出したりしてるしさ、そろそろ気安い口調になってくれてもいいんだぞ?」
学校も一緒で、正史編纂委員会からの依頼も一緒にこなしている。毎度、こうも馬鹿丁寧に接していると気疲れしてしまう。
三バカほどとは言わないがもう少し砕けてもほしいものだ。
「で、ですが……あなたは世界に七人しかいらっしゃらない”神殺しの君”であらせられます……。それに鹿島神宮でも、見事な御国守護の宣言をなされておりました。その覚悟とお力に感じ入り、敬意と尊崇を示す事をどうかお許しくださいませ。またそのご身分にふさわしい敬意を示し申し上げることも、私どものお役目。どうかお気遣いなく……」
「そういうのだよ。苦手なんだ」
「しかし荒ぶる鬼神の顕現なれど、草薙さんは我々まつろわぬ神に唯一抗しえる羅刹の王にございます。粗雑に扱うなどとても……」
う~~ん、ダメだなこれは。礼儀正しくというより神に捧げられた巫女のごとく礼を尽くす祐理に護堂は頭をかいた。
寡黙に護堂の三歩後ろを歩く祐理を盗み見ながら、こんな言葉がよぎった。
12世紀の甘蜜博士でフランスの神学者"聖ベルナルドゥス"は「聖母マリアは謙譲のスミレ、純潔のユリ、そして慈愛のバラ」と言ったそうだ。
祖父の閉めてしまった古書店の本にそんな一節が書かれていた記憶がある。
後ろを歩く容姿端麗な和風美少女に、山桜や百合の美しさを見出すことがあるのだが……『ユリの純潔さって言うより……なんというか、頑固なんだよな万里谷って』ぽつりとそんな事も思う。
(前途多難だなぁ)
委員会からの車を待つため、一旦学校の敷地から出た二人はベンチに座って会話もなく時間の流れるままになっていた。
話しかけても一言二言しか返ってこないのはキツい。話題殺しのスキルでもあるのかと思うくらい話が広がらない。
祐理の事情も護堂は知っている。
委員会のエージェント甘粕の話では、四年ほど前に東欧のカンピオーネ──サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンに酷い目に合わされて以来"カンピオーネ恐怖症"とでも言えるPTSDを患ってしまったそうだ。
とはいえ以前……護堂がカンピオーネだと知る前は丁寧ではあれど、同学年の生徒という範疇のやり取りができていたのだ。できていたのである。 それを思い出すと護堂は気が重くなる。
「神獣退治で出かけるのってもう何度目だろうな。最初のは犬吠埼の海岸だったよな。めちゃくちゃデカい大海蛇の神獣が出てきて……」
「はい。あの折は……」
どうにか祐理の堅物すぎる口調を崩せないかと話題を振りながらアプローチする。
しかし悲しいかな女性に対して慣れていない護堂がろくに武器など持っているはずもなく返り討ちにあっていた。
「はあ」
それから繰り出す話題もなくなって二人で虚空を眺めているときだった。
ふと──やさしい匂いが鼻腔をくすぐった。
目玉に染みわたるような香りの出処は、となりに座る少女の髪からだ。祐理の匂いだ。
香水なんてつけていない彼女の純正の匂いはどこか甘く、そして
だからだろうか。護堂は急に襲ってきた眠気に抗えず、祐理のほうへ倒れてしまった。
「きゃ!」
ハッと気づけば倒れた先にある少女の十分に膨らみ、柔らかな胸元へ沈みこみ……その上で護堂の唇が祐理の手首に触れるという暴挙を働いていた。
「すまん万里谷! 最近ちょっと眠れてなくてな……って、万里谷?」
というか祐理の方から応答がない。彼女の方から話しかける事はないが。
護堂の言葉は余すことなく拾ってくれたから、少し気になる。
祐理は倒れてきた護堂の顔をボーっと眺めていたかと思うと、すぐに唇の触れた手首をじぃ……っと眺め、それから頬を赤く染めうつむき、頭を振ると一転して表情を厳しいものに変え、ためらいがちに護堂を見やり……などなど。
百面相を繰り返していた。
その仕草はまさに可憐な少女という風情で、深くにも鼓動が早くなる。護堂はそれを気取られないよう平素な声音を心がけて祐理に問うた。
「ま、万里谷? どうかしたのか?」
「え、あ、あっ! ……ダ、ダメです! み、見ないでください! その、どうしてか、さっきから動機が収まらなくて……顔も熱くて、と、とにかく草薙さんと顔を合わせられません!」
両の手のひらで抑えた頬は見るからに赤く、熟した柿のようだ。ちょっと心配になるくらいだ。いままで堪えていたものが堰を切ったように真っ赤に染まっている。
「あの! 草薙さんが、その……お疲れでしたらお休みになられますか? お望みであればお膝に頭を預けていただいても……!」
「そういうわけにもいかないだろう」
「そ、そうですよね……」
護堂が、速攻で固辞すると少し残念そうに答えた。
「あー、さっきは悪いな。俺みたいながさつな奴が相手で万里谷も困ってるだろう」
「……と、とんでもございません! 畏れ多いことでございます! 草薙さんは今世紀において八人しかおられない神殺しの君です! そ、そのお身分に相応しいお家柄とお強さを備えた才色兼備の──こ、婚約の縁組もそのうちできるでしょうし……!」
「──い、許婚ぇっ!?!?」
突然パワーワードと言うなの言霊を放ってきた祐理に負けじと護堂もわめき声をあげた。まじまじと見ると祐理がハッとしてさっき口から出た言葉を自覚したのだろう。
かつてないほど真っ赤に頬を染め、縮こまった祐理が凄い挙動で前髪を梳いている。
「……い、いえ、申し訳ありません! 忘れてください!」
気を取り直すように姿勢を正し、凛とした雰囲気を取り戻した。とはいえまだ頬と首筋の赤らんでいるのは拭えない。
あんな不躾なことをすれば慌てるのは無理ないよなぁ。申し訳ないことをしたものだ、護堂は反省の色を浮かべながら頭を掻いた。
そして護堂が倒れたのと同じように、彼のカバンもひっくり返っているのに気がついた。
「──あら?」
「あ」
ひっくり返ったカバンの中身は教科書、筆箱といったいつメンの他に……見慣れない代物があった。これは、さきほど名波に押し付けられたゲーム。しかも普通の女子たちなら嫌悪の視線を投げかけてきそうなえっちな美少女キャラクターがたくさん描かれたパッケージ……。
そして──
──肌色のパッケージには”えろくがっこうせいかつ!! ”の文字が踊っていた。
すん。
赤面して紅潮していたはずの祐理の顔が能面のように白く染まり、薄く微笑した。
終わった。護堂はすべてを悟って目を閉じた。