戦女神は微笑まない   作:につけ丸

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文字数多いけど神獣倒して斉天大聖復活しただけで伝わります!って心の夏〇先生に添削されてる。



11話

 スカイツリー 頂上部 pm 15:00 

 

 

 空にもっとも近い聖塔(ジグラット)に、龍が──否。もはやドラゴンと化した怪物がとぐろを巻いている。とにかく巨大。今もなお膨張しつづける胴体と尾は、長大極まるスカイツリーを飲み込まんばかりに大きい。

 ずん、ずん。呪力が肥大化を続けている。爪も翼も広大となる。塩水を凝縮した宝玉を顎にはめ強靭かつ鋭利な歯列は太く数を増していく。碧潭とした鱗は海のさざめきのごとく流麗で雄大。

 ドラゴンは位階を駆け上がっている。神獣という枠を超え、聖なる血脈の最奥への扉を開き、まつろわぬ神への(きざはし)を駆け上がっている。

 膨張しつづける要因はたった一つ。

 

「ぅ……きゃ、ぁ、……」

 

 下腹部の異常に膨らんだ胎内に、赤ん坊がいる。

 幼子だがまつろわぬ神。その身に宿る奇跡は本物だ。だが齢のない神は無知無能。

 いまはドラゴンに都合のいい莫大なエネルギーを秘めただけのバッテリーにしかならない。

 

 やがてドラゴンは南西を向いた。

 海を超えたはるか遠方のさきまで視線をむけ、かつての太母が君臨した地へ出発しようと翼を羽ばたかせた。

 

 

 

「ティアマトー」

 

 

 

 

 

──()()()

 

 

「!!?」

 

 スカイツリーの直下から放出された。

 気付けばドラゴンの周囲に無数の光球が浮かんでいた。

 絶世の呪力に、おどろおどろしい龍は過剰な反応で迎えた。あれは、まずい。いかに神へと近づこうと頸部を断ち切り、脳髄を引きずりだす刃となる。

 ドラゴンは直感的に悟り、言霊の源を探し出した。

 

 居た。

 スカイツリーのそばに聳える東京スカイツリーイーストタワーの頂上に、少年が立っている。数百メートル離れた距離で視線が交錯する。ドラゴンの縦に割れた瞳孔と、ヒトの弧を描く瞳孔が結びつく。

 

 グォオオオオオオオ!!! 

 

「我は言霊の技を以て、世に義を顕す。この言霊は雄弁にして強力なり。勝利を呼ぶ智慧の剣なり」

 

『戦士』

 

 ウルスラグナの十番目の化身へとなった戦士へ幾重もの水弾の嵐が殺到し──全てが切り払われた。

 当然だ。

 人間の少年はドラゴンに立ち向かうのは若き戦士。神を殺めたチャンピオン。人類最後の希望(エルピス)。またの名を草薙護堂。

 

 護堂は朗々と言霊の剣を精錬しはじめた。

 

「神話とは伝播と剽窃を繰り返してきた物語の産物だ。そして人類最古の神話といえば人類文明最初の担い手であるシュメール人が生み出したメソポタミア神話。神話の祖型(アーキタイプ)ともいえるメソポタミア神話は世界各国の神話群にさまざまな名残を残す。洪水神話、死体化生神話、死の起源、そして──ドラゴン退治の逸話」

 

「メソポタミア神話の創造神は、海の女神であり、しばしば蛇ないしドラゴンの姿で顕れた。しかし新しい秩序を望んだ英雄神マルドゥークと戦うこととなり打ち倒されてしまう。英雄神マルドゥークは彼女の身体そのもので世界を創り上げることとなる。古き権威の崩壊と新しき世の到来だ」

 

「ドラゴン退治の概念はメソポタミア神話の信仰された中東の地から、地中海のギリシャへ輸出され、のちにペルセウス・アンドロメダ型神話と名付けられた」

 

「メソポタミア神話の創造神は、ドラゴン退治の概念とともに輸出されギリシャの地で海の女神テーテュースとして名残を残すこととなる」

 

「創造神の名を──ティアマト。数多の怪物を生み出した巨大な蛇のすがたをした塩水の女神だ」

 

 

 黄金の剣を無数に引き抜きながら、刃をドラゴンへと突きつける。

 

 

「お前はただ家に帰りたいだけなのかもしれないけど、やりすぎたな。放置してたら被害が増えそうだし、悪いけど倒させてもらうぞ」

 

 

 

 

 スカイツリー 外縁部 pm 13:12 

 

 

 スカイツリーの展望デッキから飛び出したはいいものの百合若を攫ったドラゴンは上空へと飛翔していた。空を飛ぶ権能なんてもっていない護堂はこうなると手が出せない。近づきたいが上空を旋回するドラゴンを睨むしかなかった。

 

 天候もドラゴンに有利に働いている。弾雨ごとき雨がほんとうに弾雨となって護堂を急襲する。

 発射地点は上空のドラゴン。完全に護堂に害意と敵意を向けている。かつて虜囚になっていた護堂を助けたオオムカデとはまるで違う温度差。

 息のつまる鋭い意思にさらされ護堂は『雄牛』から化身を切り替えらざるを得なかった。

 

「羽持てる者を恐れよ!」

 

『鳳』

 

 激しい雨が──静止する。世界が静止する。

 時間が減衰し、落下する雨粒が大小さまざまな雫へと変化する。護堂は神域の速度へと到った。かつて鹿島灘で殺し合ったアレクサンドル・ガスコインの代名詞ともいえる雷光の速度を得たのだ。

 あの無法極まる速度をもたらす。それがウルスラグナ第七の化身『鳳』

 

 神速へと到っても悠長にかまえてられない。

 まんじゅう形の水滴群を蹴飛ばして竜の水弾が護堂へと向かってくる。雨も利用して無尽蔵に弾丸を飛ばしてくるドラゴンに護堂は焦りを覚えた。

『鳳』は扱いが難しい化身だ。

 まず神速は繊細な動きができない。速すぎる。速すぎて重力すら振り切り、スカイツリーの外壁を駆け上ることも可能だが、一歩歩いたと思ったら数十メートル疾走していることもザラにある。

 

 護堂はスカイツリーのアンテナまで到達し、苦々しい表情を浮かべた。

 

 ドラゴンはまだ上空にある。そして護堂の腕は届かない。

 完全なアウトレンジだ。どれだけ実力差が開いてようと攻撃が届かなければ一切意味がない。ドラゴンは護堂が歯噛みするあいだにも攻撃を仕掛けてくる。

 避ける。避ける。避ける。

 

「反撃したいけどあのドラゴンは百合若を人質にとってるし、反撃もできないじゃないかッ! くそっ! 白馬も使えない、よな」

 

東方の軍神(The Persian Warlord)』の扱いにくさが足枷になっている。バリエーションは豊富で強力だがピーキーすぎる。

東方の軍神(The Persian Warlord)』は、『鳳』や『牡羊』のような禁じ手レベルの効果はあるが攻撃力がほぼ皆無な化身と、『白馬』や『猪』のような決定打になりうるが加減が効かない化身に分けられる。

 微調整しながら敵を殴り飛ばす都合の良い化身がないのだ。条件発動型の限界だった。

 

 そしてタイムリミットは来た。

 

『鳳』の最大の欠点──心臓に痛みを感じた。

 神速という稲妻にも匹敵する速さに身を置くからか、肉体の酷使によるタイムリミットがある。神速使いのアレクは神速使用のリスクを雷光化することでキャンセルしていたが、護堂は──

 

「く……きついな……!」

 

 その代償を真正面から受け止めることとなる。

 眉間に皺が寄り、苦悶の嗚咽が漏れるほどの痛みが心臓を襲う。標高634メートルの乱気流吹き荒れるアンテナに立っていた護堂は、強烈な痛みによって簡単に振り落とされた。

 

「くそっ」

 

 ふらりと傾いだ肉体が命綱もなく数百メートルくだり落ち、この高さではさしものカンピオーネも危うい。

 痛みに苛まれながらもドラゴンを睨みつけるが、もはやドラゴンは興味を失ったように南西の方角を見やっていた。悪態をつきながら目前に迫った地面への対処を考えていると。

 ──巨大な神鵰が、ぼふ! っと落下していた護堂の身体を拾った。

 

 そのまま風雨吹き荒れる中空を切り裂いていく。

 

「やれやれ、間に合いましたわね!」

 

「草薙さん! 大丈夫ですか!?」

 

 羽毛の柔らかな感触に手のひらに感じながら起き上がると、見慣れた祐理の顔があった。それに祐理と護堂が乗っている巨大な神鵰はメリッサだった。

 

「ま、万里谷! それにメリッサ……だよな。どうしてここに!」

 

「その。私とメリッサさまは別件であの龍、いえ、もうドラゴンとなってしまった神獣を追っていたんです」

 

「ドラゴンを?」

 

「はい。クラスメイトがあの神獣に取り憑かれていたようでして、祓うところで逃げられ……申し訳ありません。最初から草薙さんへ相談すべきでした」

 

「あー……まあ、いいよ。こっちも油断して百合若を人質に取られたからなぁ」

 

「百合若ちゃんを!?」

 

「なるほど、母の次は子を求めすか。まったく節操のないこと!」

 

 メリッサは鷹の目ではるか上空のドラゴンに囚われた百合若のすがたを視認した。

 

 メリッサと祐理の援軍。

 しかし事態は好転しない。雨に打たれながら、たまらず護堂は叫んだ。

 

「百合若はまつろわぬ神なんだろう! なんで反撃しないんだ!?」

 

 雨のなかの叫びが木霊する。

 

「いくら赤ん坊だからって神様じゃないか! こんな状況、すぐに解決して見せれるはずだ、襲われてたなら抵抗くらいしないとおかしいだろ! ……本当に赤ちゃんじゃ、ないんだろう!」

 

 護堂は語気強くぶつけた。

『鳳』の代償に苛まれ、惚けつづけてきたメリッサ、そして、苦しい状況への苛立ちが舌を止められなかった。これまで抱いていた疑心の一部を投げつけてしまった。

 言葉は刃物。使い方を誤れば傷つける代物だ。

 そんなこと言霊の剣をふるう護堂は誰よりも知悉しているのに止められなかった。

 

「悪い。取り乱した」

 

 言葉を吐き出してから護堂は目を逸らした。

 

 メリッサは少し間を置いて、やがて話し始めた。

 

『御子は──(よわい)を失っているのです』

 

「齢を失っている、だって?」

 

『ええ。いまより遥かに原始的で人の子と冥府の距離が近く、死にやすかった時代のことです。そのような命儚き世では”長寿”……とはそれだけで権威と智慧を象徴するものでした。オリンポスの頂点に坐す大神ゼウスや海神ポセイドンが老人のすがたで描かれる理由もそこにあるのです』

 

「神様の力のみなもとが、歳を取ることだっていうのか?」

 

 一理あるかも知れない。護堂はサルデーニャで出会った不思議な少年を思い出した。

 少年は人間ではなく神だった。

 軍神ウルスラグナの零落した傷ついた存在だった"少年"は、若々しく英雄然とした性根ではあった。とはいえ他の神々から見れば取るに足らない弱小もいいところだったはずだ。

 

『我ら神々にとって"齢"とは智慧や権能に直結する大事』

 

 メリッサは簡潔に言った。

 

『ゆえに齢をすべて失った御子は神であろうとただの無知無能。まつろわぬ性に呑まれて人を害する気概も、害意を向けられても抗する手段も持ち合わせていないのです』

 

 本当だろうか。

 訝しげな目線を向ける。

 

『草薙さま。いま、あなたは疑心暗鬼の闇に囚われかけております。ですが英雄を導く戦女神ではなく英雄を捕らえ惑わす暁の魔女のもとにいればそうなるのも当然ですか』

 

 なにやら得心したように零し、メリッサはスカイツリーの傍に建っている超高層ビルの屋上に舞い降りた。

 

 

 

 

 

『ふふふ……まあ丁度いい機会でございますか。わたくしは魔女のみに非ず。恋多き女神なれば、若い男女を愛へいざなうため愛を育む地へ導くのも役目。‪仕方ありませんね』

 

 メリッサは一人なにかを決心したように言葉を零し、やがて護堂たちの目線をドラゴンへと向けさせた。

 

『あのドラゴンは西を目指すつもりのようです。太母の眠る故地へと帰りたがっているのでしょう。もはや猶予はありません』

 

「メリッサ、よく分からないぞ。何が言いたいのかはっきりしてくれ。なにか策があるなら教えて欲しい」

 

『では……──草薙さま、『智慧の剣』を拵えくださいませ』

 

「なんだって!?」

 

『日々草薙さまと共に過ごして来たのです。草薙さまの懐にあの恐るべき言霊の刃が佩かれているのは気付いておりました。あのドラゴンを打倒し、そして御子を救うことをお望みになられるならば、『智慧の剣』で切り伏せる以外に方法はございません』

 

「うっ。たしかにそうだけど、しかしなぁ……」

 

 ウルスラグナ十の化身のトリを務める『戦士』は強力だ。アレクとの戦いでもその一端を見せたが『智慧の剣』を作るには、相応の知識が必要だ。切りたい神格の深い知識を。

 

「『智慧の剣』っていっても知識はどうするんだ? 俺、あのドラゴンを斬る知識なんて持ち合わせちゃいないぞ。メリッサからもらう訳にはいかないんだろう?」

 

 鳥類特有の嘴をぶしつけに眺めてそういった。

 

『確かにわたくしから知識を与えたいところですが、大変残念ながら力を使いすぎたようです。身体を休めなければこの身は危ういでしょう──マリア・ユリ。あの神獣の精髄は視えておりますね』

 

「は、はい。霊視のことでしたら視えております。メソポタミアの女神ティアマトに酷く似通った神獣です。神そのものではなく、あくまで紅海の潮水に誘発されて生まれた龍が……え? なんのお話を……?」

 

 優秀な霊感を備える祐理はあのドラゴンを見た瞬間から、その正体を探り当てていた。

 護堂の表情が強ばった。

 薄々分かっていたが、メリッサの考えはそういうことらしい。 

 護堂の顔が硬質化するのに不安をおぼえたのか所在なさ気に首をふっている。

 

『よろしい。では啓示の術も使えますね』

 

「は、はあ。それは身につけておりますが……」

 

 護堂は天を仰いだ。

 

 ──百合若を傷つけずドラゴンだけを攻撃する手段は特定の神格だけを切り裂く『戦士』のみ。

 

 ──『戦士』の化身を使うには知識が必要で、知識は祐理が霊感で知りえている。

 

 ──そしてカンピオーネが知識を受け取るには経口摂取しかなく。

 

 

『勝利の方程式は全て揃いました!』

 

 欣喜雀躍とメリッサが謳った。

 

純潔の百合(マドンナ・リリー)! いまこそ身に受けた託宣を神殺しの戦士へと啓示するのです! その唇から口移しで戦士の滋養となるべきエナジーを捧げなさい!』

 

「め、メリッサさま!? このような窮状で場をかき乱すような破廉恥なことをおっしゃらないでくださいませ!」

 

『この暁を背負う女神は虚偽を申しません。これこそいまは打てる最善の一手なのです』

 

「く、草薙さん、いまの話は本当なのですか? ……その口移しで知識の伝達……というのは……」

 

 祐理に問われ、護堂は気まずそうに頭をかくばかりだった。

 

「あー、うん。そういう権能があるんだ。今の状況を打開するのに一番いい化身なんだけど、知識がなくちゃ使えないんだ。倒したい神様の知識が」

 

「そ、そうなのですね……いえですが……」

 

『ええ、ええ。一人の乙女としてはじめて男性に唇を捧げるのは誰であっても躊躇うもの。わたくしも草薙さまのためにこの可憐なる唇を捧げとうございました……荒々しい勇士に花をちぎり取られるがごとく、熱い口付けを受け止めとうございましたわ!』

 

「唇というか嘴じゃないか。というかメリッサは、その、なんだ。俺が誰かとキスしても気にならないんだな」

 

 気の所為じゃなければ護堂の貞操を狙っているように思えたのだが。

 

『ふんっ! そのような些事を気にするほどこのメリッサは狭量ではありません。最後にこのメリッサのそばに居ればいいのです! その間はどの女にウツツを抜かそうが知ったことではありませんわ!』

 

「メンタルが世紀末覇王すぎるだろう……」

 

 メリッサは変化を解いて、普段通りの牝鷹になると祐理の肩口へ止まった。

 

純潔の百合(マドンナ・リリー)、よろしいですか。疑心暗鬼に惑っている草薙さまを導けるのはそなただけ。いつの世も戦士に託宣をおくり道を指し示すのは巫女の役目なのですから』

 

「メリッサさま?」

 

「あっ、おい待てっ!」

 

 最後に祐理になりごとか囁いてメリッサは光の粒子となって消えていった。

 

 

 

 東京スカイツリー イーストタワー 屋上 pm 13:20 

 

 超高層ビルの屋上に残されたのは若い男女。護堂と祐理である。

 屋上の物陰で、雨に隠れるように座り込んでついには黙り込んでいた。

 祐理は羞恥で顔を真っ赤に染めあげ、護堂も居心地悪そうに腕を組む。

 

 やることは分かっている。分かっているのだ。

 

 だがまるで決心がつかない。気まずい。

 

 まるで──教授しないと出られない部屋。

 

 いや屋上だから部屋ではないのだが。とにかくやることをやらなければ、にっちもさっちもいかない状況に陥った二人は大いに悩んでいた。

 だがややもして意を決した祐理から耳元でとんでもない事を言われた。

 

 

「あの。草薙さん」

 

「お、おうなんだ?」

 

「行為をされるおつもりであれば……ひとつ、お伝えしたいことがあります」

 

 祐理は視線を落とし、表情を前髪に隠したままぽつりぽつりと語り始めた。ただ髪の間から見え隠れするうなじは赤く染まっていた。

 

「実は私は、その」

 

「…………」

 

「く、草薙さんのことを……以前から」

 

「…………」

 

「こ、好ましく思っておりました……」

 

「え」

 

 突然の告白に護堂は瞠目した。

 顔を上げた祐理はこれ以上なく顔を真っ赤に染めて、瞳は潤んでいる。

 羞恥、緊張、不安、そして期待。感情の昂りが祐理の愚直なまなざしからは受け取れた。

 

「その、好き……なのかどうなのか、色恋沙汰には縁がなくよく分かりません。ですが……”行為”をなされるなら、私も、嫌ではないく望んでのことだったと知っていてほしいんです」

 

「……!」

 

「カンピオーネにトラウマのある私に、怖さを忘れさせていただけたのは、草薙さん、あなただけでしたから……。湖月堂を一緒にお探しになったあの日のことは忘れてはおりません……。あの時からあなたから目を離せなくなって……」

 

 知らなかった。

 祐理の驚くほどに一途な好意を向けられているのを護堂は初めて自覚した。

 

「ふ、ふしだらな女だと思わないでください! でなければ如何に羅刹の王の方であろうと、ど、同衾などいたしません……。も、もしそのような軽佻浮薄な女だと思われては心外極まります……。こんな事が出来るのは、草薙さん、あなただけ。神獣たいじ──」

 

「ッ!」

 

 

 思考以前に護堂は──唇を奪っていた。強引に少女の柔唇を奪っていた。

 

 これ以上、この気丈な子に言葉を使わせれば男ではなくなってしまう。そんな確信とともに祐理の顎を掴んで、引き寄せた唇を奪い取った。

 

 きっと万里谷祐理のファーストキスだと察しながら無粋なほど強引だった。

 

 ちゅ、ちゅ。

 

 触れ合わせた唇の面積をさらに広げていく。

 

 肌の薄く敏感な口唇がすべて密着した。

 

 柔らかな感触のなかに熱がある。祐理は目をぎゅっと瞑って顔を赤くしているから当然だ。

 いまも祐理の口をノックし、純潔を汚そうとする男を受け入れようと必死だ。

 

 ちゅ、ちゅ。ちゅぷ、ちゅ。ちゅっ。

 

 右手で顎をつかみ、左手で後頭部を抑えながら、しっかりとキスを続ける。

 勝つため。何より少女の献身を無駄にしないため。

 護堂は唾液の一滴も零すまいと唇を押し付ける。

 

 しかし。

 

 ちゅっ、ちゅ。ちゅぴ、ちゅぷっ。

 

 キスを続けるが目的のイメージが来ない。啓示、あるいは教授の術を使えば受け取った知識のイメージが湧く。

 

 それが来ない。目を瞑っていた護堂は訝しげに祐理をのぞき、それから失策を悟った。

 

 

「〜〜〜〜っ!」

 

 

 祐理は混乱していた。

 金髪ブロンドの情愛深い少女から受け取っていたのいつもの激しさは祐理には早すぎた。深窓の令嬢がろくでもない男に引っかかったように完全に翻弄され目を回している。

 祐理は健気だった。

 顎と後頭部を抑えられ、逃げられない祐理はしかし、男の押し寄せてくる唇をいっぱいいっぱいになりながら受け止めている。

 

(ああっくそっ。……やっぱ、ファーストキス……なんだろうな……)

 

 きっと、護堂のあらっぽさだけでなくファーストキスをしているという事実が羞恥に染めてしまい術の行使を妨げている。男とこれほど密着しているのも初めてかもしれない。

 

 貞淑な少女を汚すような罪悪感に申し訳なさを覚える。それから思考を切り替えた。

 

 引っかかっていたのだ。誰だってファーストキスは特別だ。女の子のファーストキスを台無しにするのは男がすたる。

 こんなろくでもない男に義務的に捧げるくらいなら、せめて失敗はさせたくない。

 唇を密着させたままゆっくりと祐理の髪を梳く。指のなかで流れる茶味の強い髪は、驚くほど指通りがいい。

 少しガサツだが丁寧さを忘れない手櫛を、何度も続けていく。すると強張り、震えていた、祐理の肩から力がスっと抜けていった。

 

 瞑られていた瞼はやっとのことで開かれていき、その機を逃さずもう一度、唇を強くノックする。顔を傾け、祐理の唇に集中する。

 

 当惑していた祐理もやがて護堂の意志を汲み取ったのか、もう完全に肩から力を抜いて、唇のむつみあいをひたむきに応えてくれる。

 

 控えめな仕草で唇の感触をたしかめ、護堂が動けばそれに追従して口唇を動かす。

 祐理の後頭部に回していた手を離して、人差し指の腹で繊細な手首から柔らかな手のひらをなぞっていく。祐理の人差し指の腹と重ね合わせて手を重ねる。

 

 もはや呪術的になんの意味もないキスだった。

 

 ただのキス。

 

 恋人同士が交わすような唇の交信。

 魔術とは関係のない睦み合い。魔王と巫女とでもない──普通の男女のキス。

 

 

(朝はかぼちゃの煮込みを食べたんだっけ)

 

 

 かぼちゃのとろみの甘さが、祐理の口から伝達されてきた。きっとそれは祐理もおなじようで、護堂と一緒におかしそうに眦を下げていた。

 

 ふたりは、やっとの事で唇を離した。

 

 十分とも一時間ともしれぬ時間感覚も溶けてきえるくらい長いファーストキスを終えた。

 

 唇を離すと唾液の橋がふたりの間にかかる。

 興奮したときに分泌される舌下腺からの唾液が混ざり合い、淫蕩な橋を作ってしまったようだ。

 

 それから護堂はあぐらをかいて祐理を誘った。

 楚々とした動作でやってくる祐理は、また緊張しかけていて、解きほぐすように鼻頭と頬にキスし、耳たぶに息を吹きかける。

 

「あ」

 

 あぐらをかいた護堂にしなだれかかり、耳元でささやく。

 

「もう1回やろう」

 

「は……はい……。もう、覚悟はできております。お好きになさいませ」

 

 押し倒されたほてった体を護堂の前に開く祐理。生粋の大和撫子である少女はその身を控えめにゆだねてきた。

 キスの再開地点は唇の端っこ。口と頬の中間地点にキスをすれば、困ったように眦を下げて振り向いてくる。

 生真面目な祐理は護堂の口に知識を流しこもうと必死なのに、祐理が首を動かすたびに護堂も首を動かして同じ場所へキスの雨を降らせた。祐理のひたむきさな健気さが愛おしい。

 

 やがて高まった興奮とともに口を重ね合わせ、今度こそ唇の裏側まで密着に成功した。しかしそれまでの戯れ、祐理はもう乱れていた。制服のスカートから無防備に晒される太ももが眩しい。

 十分な豊満さを備える乳房が襟元から谷間をのぞかせている。

 

 魅力的な少女をまえに舌下腺からねばねばした粘性のある唾液がさらに分泌される。混ざり合い、口の端にこぼれた涎を、祐理が反射的に舌で舐めとり。荒ぶる情動のまま祐理の口へ舌を侵入させてきた護堂の舌とぶつかり合った。

 

 瞬間、来た。

 

 ──蛇。

 

 知識。知識。上顎から脳へと知識が湧き上がってくる。呪術的に結ばれたのだ。

 

「創造神話は神々がどのようにして新しい秩序をもたらしたのかを説明する神話です。混沌(カオス)から秩序(コスモス)へ至る様子を大雑把に物語るお話なんです」

 

「あのドラゴンはメソポタミアの創造神ティアマトの系譜を継ぐ神獣です。世のはじまりには淡水の神アプスと塩水の女神ティアマトしかいませんでした。淡水と塩水の混ざりあう未分化の混沌(カオス)だったんです」

 

「やがて新しい神々を生み出したアプスとティアマトですが、生み出された若い神々は淡水と塩水を分けようと目論見ました。最初に変化を嫌ったアプスが殺され、夫の殺害で決起したティアマトも殺されてしまいます」

 

「殺されたティアマトはのちに英雄神マルドゥークの手で、太陽や月、大地や海と変えられ女神の死体は世界そのものへと生まれ化わることとなります。世界巨人型の神話、死体が変化して生まれ変わる死体化生神話とも言える類話の祖系(アーキタイプ)となるんです」

 

「この死体化生神話は別の視点でも世界に広がりました。武力による新しい秩序の誕生。大地に突き刺さった剣というイメージで語られる《鋼》と地母神の関係はここに原型があるんです」

 

「あのドラゴンが伏見めぐみさんという母と百合若ちゃんという子を欲したのは秩序から母のいる混沌へと逆走しようとした結果だったのでしょう……」

 

 

 ややもして。

 

 護堂は言霊の刃を揮えるという確信を抱いた。

 

 

 

 スカイツリー 頂上部 pm 15:05 

 

 

 空飛ぶドラゴンと対峙しながら護堂は黄金の剣を握った。言霊を重ね、その刀身を長く長く、そして鋭くさせていく。

 

「我は言霊の技を以て、世に義を顕す。この言霊は雄弁にして強力なり。勝利を呼ぶ智慧の剣なり!」

 

 護堂は謳う。

 

 敵を切り刻むための魔王の凱歌を。

 

「古来、蛇──そして竜と戦う英雄は多い。ペルセウス=アンドロメダ型神話にあげられるギリシャの英雄ペルセウスはその典型だ!」

 

「蛇を倒し、美女を救う英雄。彼らはなぜ蛇と戦うのか? それは、蛇も竜もかつて神界の支配者だった大地母神たち──彼女たちが悪しき魔獣として落魄した姿だからだ」

 

「神界の女王が、魔獣として倒される。その結果、女神を頂点としていた世界は崩壊し、青銅や鉄の武具を携える戦士たちが世界の頂点に君臨する。武力で国を治める時代の到来だ」

 

「メソポタミア神話はもっとも古い神話。だからこそ伝播と剽窃を繰り返す世界の神話群に与えた影響は莫大だった! 地母神ティアマトと英雄神マルドゥクの関係は、やがてギリシャ神話にも伝播し、英雄ペルセウスの神話へ繋がっていく」

 

「彼らは《鋼》という剛直な軍神としての地位を得る。──たとえば英雄神ペルセウスと習合した神ミトラス。彼はローマ帝国栄えたミトラス教の主神ミトラスだが、その信仰は非常に密儀的なものでミトラス教の聖堂は地母神の統括する地下の限定された!」

 

「ミトラス自身の創造神話でも地母神の象徴でもある聖牛を供犠し、世界を作り出すという一連の儀式はティアマトとマルドゥクの関係に酷似していると言っていい!」

 

「そしてミトラス教は女人禁制を掲げながら地母神の落とす影を排除できなかった!地下に聖堂に加え、ミトラス教徒を構成する七つのヒエラルキーには女人禁制でありながら不自然な位階がある。女性しかなれない花嫁の名を冠した──花嫁(ニュンフス)の階層。これこそ女神を殺め、世界を創造した神話の痕跡なんだ!」

 

 

 言霊を研ぎ、重ね合わせていく。生み出されたのは、ひどく細く、どこまでも長い刃。

 空高くにいるドラゴンには攻撃が届かない。

 

 ならどうする? 

 

 答えは簡単だ。刀身がドラゴンにあたるまで伸ばせばいい。

 

 どこぞの同族と同じ結論に至った自分に嫌気がさしながら──剣を振り切った。

 恐ろしいほどの切れ味を発揮した『智慧の剣』はいとも簡単にドラゴンの腹を引き裂いた。

 

 ドラゴンの胎内から百合若を剣で受け止め、救出に成功する。地面への落下を開始したドラゴンの頸部へ『智慧の剣』を突き刺そうとし──

 

「──いけません草薙さん!」

 

 すんでのところで停止した。

 

「あの神獣は関東平野の霊脈が集まった神獣です。殺めてしまえば霊脈が枯れ、数多の命が死に至るでしょう。刃をお収めください!」

 

 だがどうすれば!? 動揺する護堂に祐理のするどい言葉が投げかけられた。

 

「プロメテウス秘笈を思い出してください! 草薙さんの内なる肉体にはその奇跡が宿っているはずです!」

 

 護堂はハッとした。

 八丈島でオオムカデ託してくれたプロメテウス秘笈の残骸。あれは心優しき神獣の魂とともに護堂にあった。

 

 手首にブレスレット状に刻印された刺青を掲げる。

 

「我が名において告ぐ!」

 

「《偸盗》の秘石よ、智で以って神を欺いた悪戯者(トリックスター)の示現をこの世に現せ!」

 

 果たしてオオムカデのデザインをした刺青は縦横無尽に護堂の腕を動き回ると、護堂から多少の呪力を……普通の魔術師にとっては生涯かけても生み出せないほどの呪力量……を拝借し、護堂から飛び立った。

 ムカデの刺青が外界へと飛び出すと──蒼き炎へと化身した。

 既視感がある。

 あの炎の色はかつてプロメテウス秘笈がウルスラグナやアレクから権能の一部を盗み出したときに放っていたもの。

 

 蒼き炎はドラゴンを包み込むと、肥大化した呪力を"偸盗"し尽くした。そして主である護堂のもとへ帰還した。

 

「掌握した……ってことなんだろうなぁ。これって」

 

 さっきまで手首を一周するのがやっとだった刺青が、腕を飲み込むほどの巨大さとなっている。右腕が銀腕だったサルバトーレ・ドニと似たような姿だ。

 プロメテウス秘笈のごとき偸盗の権能。

 思いがけず新たな力を獲得してしまった護堂はため息をついた。

 

 

 

 

 

隅田川 pm 17:24 

 

 

「釣れるもんだなぁ」

 

 その後、いろいろあって軽い事後処理も終わった護堂一行はグズる百合若にみちびかれ隅田川で釣り糸を垂らしていた。

 なぜかいないはずのウナギやらウツボが釣れるが考えない方がいいだろう。

 

 それから護堂は祐理へと向き直った。

 事件が終わってからというもの、二人は目を合わせきれていなかった。

 

「今日はその、本当に助かった。あのドラゴンを倒すためにとはいえ、万里谷にあんなことを頼んだのは俺なんだから、俺の責任だ。好きなだけ罵ってくれていい」

 

「そんなこと、しません! 本当に、気になさらないで下さい。最初に言った通りわたしは……」

 

 言葉がしりすぼみになってよく聞こえなかったが、言わんとしていることは察した。

 祐理からの好意。

 それにどう応えればいいのか、まだまだ未熟な護堂には無理難題であった。

 

「う、うーん……。じ、じゃあ今回のはふたりの共同責任って形にしようか。ふたりでしたことなんだし、それが筋だと思う」

 

「は、はい。それでよろしくお願いします」

 

 折り目正しくお願いされてしまった。

 

「すまん。それに……多分、ああいうのを頼むのも今回が最後じゃないと思う。まだまだ敵は多そうだし百合若たちも心配だからな。もう少しだけ苦労をかけると思う」

 

「もちろんです。私たちは一蓮托生──いっしょにがんばりましょう」

 

 顔を見合わせて微笑みあう。誰でも丁寧で、悪く言えば壁を作りやすい祐理の心に少しだけ触れられた気がした。

 

「いやぁ、いいものをお見せいただきました。ワタクシ、感動しております」

 

「甘粕さん!?」

 

 委員会のエージェントが姿を表した。相変わらず足音を立てずにやってくるから心臓に悪い。

 

「馨さんまで。珍しいですね」

 

 甘粕のそばには片目を前髪で隠した男装の麗人、委員会の次期頭目とも噂される紗耶宮馨のすがたもあった。

 

「王自らのご出馬、お疲れ様でした。護堂さん」

 

 馨は護堂と顔を合わせると丁寧に頭を下げ、謝意を示した。同じ動作だが祐理のと比べると洒脱で垢抜けたように受け取れるから不思議だ。

 

「良かったんですか。ふたりもこっちに来るなんて」

 

 なはは、と甘粕が笑った。

 

「今回は大した被害もなく大方の事後処理は終わりましたので、そのご報告にと。いやぁ〜、いつもなら建築物のひとつやふたつ景気よく吹き飛ぶんですが今回はラッキーでしたね」

 

「チクチク言葉やめてくださいよ」

 

 権能を行使するたびにランドマークを破壊し続けている破壊の化身は目を逸らしながら決まり悪そうに返した。

 

 騒がしい人の会話など我関せず、釣りを続ける百合若を見ながら甘粕が思案する仕草をとった。

 

「しかし細長い魚ばかり釣っていると何かの間違いで人の死体まで釣り上げてしまいそうですなぁ」

 

「妙なこと言わないでください……」

 

「いえいえコレも歴とした根拠があるんですよ? ポリネシアやハワイでは死んだ人間は綿抜き……まあ早い話、内臓を抜くんですが……綿抜きした遺体を細長い魚として表現するらしいんですよ」

 

「たしかに人って縦に長いから……細長い……と言えるのか?」

 

 首を捻っているとやがて今度は馨が話し始めた。

 

「そういえば農耕を主体にした人々が草木の酸漿(かがち)や農具の案山子(カカシ)脛巾(はばき)を蛇の古名から取っていたように、鹿児島以南の海の民族も似たようなことをやっていたね」

 

「ええ。八重山諸島ではウツボ、ウナギ、ハモ、アナゴなんていう細長い魚はもっぱら"ウジ"と呼ばれているそうですよ」

 

「へえ」

 

 よく知ってるな、と思うが絶対に口にしては行けない。甘粕のうんちくが止まらなくなるからだ。

 

 とはいえ勢いが変わるだけでうんちく語り自体は無くならない。

 

「龍巻という自然現象がありますが、名の由来は古代人がタツという怪物が巻くことだと考えたと言います。同様に潮流が渦を巻く渦巻という現象は、ウズ(海蛇)の巻き起こす現象と考えた訳です。さっき挙げた魚たちはいずれも海に生息する細長い生物で"ウジ"は"ウズ"が訛った言葉いわゆる海蛇の類を指す言葉だと言えます」

 

 うんちくを吐き出した甘粕を横で、真剣な表情を作り続けていた馨が口を開いた。

 視線を百合若に固定したまま。

 

「一説によるとティアマトもまた海蛇と言われていたようだね。細長い魚を釣り上げる赤ん坊……そして海蛇の女神。あのドラゴンを揺り動かしたのはメリッサという鷹の女神でも草薙さんでもなくあの赤ん坊が引き寄せたという線も捨てきれないようだね」

 

 馨が言葉を区切るころには妙な空気が流れていた。

 

 ──prrrrrr……。

 

「おっと、失礼」

 

 甘粕の通信機器の音がなり、これ幸いごその場を辞していった。この場にいる最年長の男が、場を放棄していく後ろ姿を冷たい目線で見送る。

 

(前途多難だなぁ)

 

 ドラゴンの出現が百合若やメリッサと関係しているかもしれない。その疑念を払拭したいが、護堂にはそんな考察力も知識もなかった。

 

 沈黙を破ったのは祐理だった。

 

「ですがあのドラゴンは何故逃げていたのでしょう? ずっと南西を目指しているようでしたが……」

 

「──待ってくれ」

 

 馨が声を上げた。

 

「……逃げている? 祐理さん、君はあのドラゴンが逃げていると思ったのかい?」

 

 逃げる? 護堂も言われて気付いた。

 あのドラゴンはたしかに何処かへ向かっていたが、逃げているとは考えなかった。

 だが霊感に優れる祐理の言葉を退ける言葉を、それこそ考察力も知識もない護堂は持たなかった。

 

 対して馨は思案した。

 

 頭脳をフル回転させ、これまで起きたさまざま事件と要点をかいつまんで結び合わせていく。

 

(逃げる? 何から? 神獣──ティアマト──地母神──蛇──《鋼》──!)

 

(そういうことか! だったら彼女の直感は!)

 

 

「不覚だった……!」

 

 馨は色を無くして叫んだ。

 

「甘粕さん! 至急連絡を取って。九法塚家だ! 東照宮の封印が」

 

「……どうやら遅かったみたいです。先ほど、報告を受けました──()()()()()()()()()()

 

報告を聞き、紗耶宮馨は周囲を見渡し厳かに言い放った。

 

「来るよ。中華最大の闘神が」

 

 

 

ドォン!!! 

 

 

 

 直後、山嶺のごとき神域の鉄塊が隅田川に突き刺さった。

 

 

 名を如意金箍棒(にょいきんこぼう)という。

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