戦女神は微笑まない   作:につけ丸

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内容があれだったので訂正しました!!!!!!!!!
すみません!!!!!!!!!!!


20話

 福島県 相馬市某所 am 0:09 

 

 雨雲で覆われた空のもと、金と黒の入り交じる黒檀の髪を背に流す少女がいた。

 少女はパチリ、と吹きっさらしのあぜ道に置かれた碁盤へ黒石を打った。白優勢。しかし碁盤の向かいには不思議なことに誰もいない。

 

「ほほ……やはり派手なお方だ」

 

 黒の少女──菅原道真は呟いた。

 

「かの『美猴王』どのは天界の秩序を乱し、不老不死を得た大妖怪。三千世界の一つでしかないこの世を乱せぬわけもありませぬか」

 

 数多の王者が殺し合う『聖秘儀』だが、日本列島が舞台になったのは理由がある。

 江戸幕府の開闢とともに400年間、まつろわぬ神から守護していた大呪術『弼馬温』があったからだ。日本中の寺社仏閣や霊地から呪力供給を受けて成り立つ大呪縛だが、今はすべて裏目となっていた。

 これに目をつけた黒坊主がハッキングし、乗っ取って完成したのが『聖秘儀』である。

 

 そして黒坊主という神ならぬ人外ですらなし得たのだ。道術も仙術も究めた神、斉天大聖ができぬ道理はない。

 斉天大聖はさらにハッキングを重ね日本全域を支配に成功した。

 

「『弼馬温』は本来、美猴王どのを呪縛するために存在する術式。言うなれば彼の神もまた術式の一部……なれば書き換えらぬ訳もありませんか」

 

 ──道術と仙術の神。

 ──長年呪縛され、術式の一部となり術式を知り尽くした。

 ──各地からほぼ無尽蔵に呪力を受ける仕組みの乗っ取り。

 

 これらの要素を最大限に活用し、斉天大聖は日本全域を転覆したのである。でなければ、万全ではない斉天大聖が限定的とはいえ世界征服するなど大胆なことは不可能。

 

 パチリ。

 

 相手はいない。だが、ふと気づけば白石が音もなく置かれていた。

 むむ。

 黒の神は唸った。

 盤面の中央深くに切り込む、戦人の一手だ。勝ち目のある場所以外はすべて切り捨てる引き算による一撃。

 

 負け戦ですか……。ため息をついて、鼻筋で雨粒が弾けた。

 

「おや雨足が強くなって参りましたな」

 

 空を見上げ濡れそぼりながら、まつろわぬ怨霊神は手元の笏で口元を隠した。

 

 

 

 栃木県 華厳の滝 am 0:38 

 

「万里谷っ、大丈夫か!?」

 

『猪』の豪脚でなんとか戦線を離脱した護堂と祐理は大滝のそばに身をひそめた。

 その間、護堂は嫌な汗が止まらなかった。

 背負った祐理の息がどんどんか細くなっていくのを間近で感じていたからだ。

 川べりに上着を広げ、その上に祐理を下ろす。憔悴した祐理の息遣いだけは妙に鼓膜にとどく。

 深夜の澄み切った時間だからだろうか、いや、それにしては滝の轟音がやけに静かだ。

 

 護堂の声に青白い表情で「は、はい……。これくらいなんてことは……」とはいうが憔悴が顕著だ。

 

 まずいな、どうにかしなければ……。

 祐理の身を案じていると──周囲の気配が一変した。

 

 風景が線を失い、曖昧になっていく。

 まるで水墨画の世界。奥日光といえば東照宮や中禅寺湖という古刹の並ぶ聖地だった。神韻縹渺たる雰囲気は以前から濃いものだったが、それに輪をかけて玄妙さに歯止めがかからない。

 カンピオーネの抵抗力で護堂周辺は影響を免れている。

 が、それ以外は酷いものだ。別世界のように黒墨とした夜闇と、年月を得た和紙じみて黄ばんだ月光で満ち満ちている。

 なんだ!? 動揺する護堂の耳元で「おそらく……」と祐理が囀った。

 

「征服を是とする《鋼》の神格である斉天大聖さまの権能です。世界各地で劫掠の限りを尽くした遊牧騎馬民族を取り込んだ()()()()の権能……限定的ではあるようですが……」

 

「世界征服だって?」

 

 えらく大仰な例えだ。

 

 だがもう二度ほど斉天大聖と戦ったからか、少しだけ理解できる。

 まつろわぬ神はただ存在するだけで世に影響を及ぼす。冥府の地母神がいれば冬季が早まり、寒冷と死が足早にやってくる。疫病の神がいれば一族郎党根絶やしになる勢いで人々は病死するだろう。軍神がいれば世は乱れるだろう。

 

 周囲の水墨画と化した異変も同じだ。

 

 斉天大聖は《鋼》だ。

 世の理すらひっくり返せるまつろわぬ神と闘争や征服を生業とする側面が重なれば、この状況も理解はできる……のだが。

 

「うーん……?」

 

 どうもそれだけではないような疑念が湧く。

 先ほど斉天大聖と小競り合いをしたからだろうか? 直感的にそんなことを思った。

 

「っ──……!」

 

「万里谷!?」

 

 思案している場合ではなかった。

 祐理がいよいよ表情から苦悶を隠さなくなってきた。体力が擦り切れる寸前なのだ。

 護堂が浜離宮恩賜庭園に埋まっている間、祐理たちは斉天大聖の足止めをしてくれていた。中華最強と呼び表してもいい至極の《鋼》を相手取って。

 人の身を超えた役目に祐理の命があるだけ奇跡かもしれない。

 

 だが……その生命の灯火も尽きようとしている。

 

 横たわる少女の肩口ほどでバッサリ切断された髪に触れる。数時間前までには存在していた腰まで届く長い髪はいまはない。その事実が祐理の困難を示し、そして護堂の胸を締め付ける。

 

「……苦労を掛けたな万里谷」

 

 心からの言葉だった。

 

「不甲斐ないやつですまないと思っている……だから、その、もう十分だから休んでいてくれ」

 

 護堂の忸怩たる想いを秘めた言葉が祐理に届いた。

 霞む思考のなか、労わる声が耳朶をたたく。思わず声の流れに身を任せ、そのまま沈んでいきたくなる。

 

「まだです」

 

 けれど、祐理は暗闇に沈むのを拒んだ。

 

 なぜなら。

 

「まだ私にはやるべき事が残っています」

 

 命を擦り減らしてでも斉天大聖のもとへ赴き、わざわざ激昂させる言葉まで投げかけたのは草薙護堂という戦士のため。

 護堂というカンピオーネが簒奪した権能のなかでも最も神々が警戒する武器。スカイツリーでも垣間見せた神々の来歴を詳らかにし、神格の根幹を斬り伏せる恐るべき『智慧の剣』──その刃を拵えるための鍵を手に入れるためだ。

 

 そして祐理は王への献上の儀式をまだ終えていない。ならば、まだ倒れるわけにはいかない。

 

 祐理は護堂の手を取って少しだけ身を起こした。

 戸惑う護堂へと焦点の合わない目で訴える。一筋だけ強固な意思を宿して。

 

「……草薙さん……。私の命はここで尽きても構いません。ですがどうか、私が霊視で得た力を、剣の刃を……──斉天大聖・孫悟空さまを斬り伏せる言霊をどうぞお受け取りくださいませ……」

 

「──っ!」

 

 麗しい媛巫女の月光というスポットライトに照らされ凛然とした姿。

 そして彼女の言葉の端々に垣間見える意思。今なら、一緒に地獄に堕ちてくれといえば微笑とともに頷いてくれそうな……おとなしく控えめな祐理らしくない烈々しい決意を秘めた言葉に、護堂は言葉を失った。

 

「ダメに決まってるだろ! そんな身体で……」

 

「ですが、草薙さんがかの神へ対抗するにはもうこの手段しか──」

 

 ──しかし、限界はすぐに祐理を襲った。

 

 反論も途中で途切れ、目の光が茫洋となりくずおれていく。

 糸が切れたように力を失った祐理が、護堂の膝の上にしなだれかかってきた。

 

 少女は肌で感じる祐理はひどく軽く、怖いほど華奢で、ガラス細工のごとく繊細だった。

 

 祐理はほかの同年代の子と比べても貧弱だ。体力的に見れば学年最下位を誇るだろう。

 今ままで気絶しなかったのが奇跡に近い。

 

(くそ……っ)

 

 そんな女の子が自分のために命を削っている。

 否、己の情けなさと未熟ゆえに追い込んでしまったのだ。

 これ以上ない献身を見せる少女に応えなければ、草薙護堂は草薙護堂ではなくなってしまう。そんな暖かみのない確信と焦燥感に似た衝動が突き上げてくる。

 

 ここで奮わなければ。

 ここで勝利を得ねば。

 

 護堂はもう……戦士でも、男でもない。

 

 矜持を忘れ義侠も失われれば、今度こそ護堂は自分を赦せない。力だけの害獣と成り果てる。そして害獣はこの世から消えるべきだ。

 

「万里谷、すまないがもうちょっと頑張れるか?」

 

「はい。はい……! 草薙さん、私が観たものをどうぞ余さずお感じください……そして何人にも負けぬ剣を! 勝利をその手にお納めください……!」

 

 唇を合わせ、呪術の道が開通した。祐理からイメージの奔流が流れ込み、膨大な知識が脳で弾ける。

 

 ──猴行者(こうぎょうしゃ)

 ──無支祁(むしき)

 ──ハヌマーン。

 いくつかの単語が脳裏をかすめ(アカゲザル)に似た二足歩行の猿が、馬に乗り込み草原を駆ける。地に突き立つ剣。教授の術とともに膨大な知識が流れ込み、まつろわぬ斉天大聖の淵源とも言うべき魂が詳らかになっていく。

 

「斉天大聖・孫悟空さまはさまざまな要素が積層する究極の混淆神です」

 

「混淆神……?」

 

「はい。戦闘神だけでなく、大妖怪でもあり仏でもある。道術や法術さえも体得した仙人。錬丹術の化身でもある。数多くの仮面を斉天大聖さまが持つようになった理由は、孫悟空を主役とし孫悟空伝説の集大成でもある『西遊記』が中国各地の戯曲、小説本、民間伝承をつなぎ合わせて誕生したからなんです……」

 

 草原の広がる中華大陸。中央アジアだけでなくシルクロードやインド、南方の海原すらも。土地だけでなく元、明、清……そして現代に至るまで。万里を征服する猿面の異形な神が疾駆する。

 天界に押し入り、不老不死の果実を盗み取り、やがて三蔵法師に付き従い、仏となった中華の大英雄・孫悟空。しかし──彼は最初から最強と謳われていたわけではない。

 

「今の世に伝えられる『西遊記』は明代後期の小説本を原典としております……」

 

 中国の代表的な小説『西遊記』『封神演義』『三国志』……これらの作品は確かに人の手によって創作されたものだが、誰か一人で書いた訳ではない。多くの人々によって書かれた集団創作物だ。

 

 だから時代によって内容はまちまちだったりする。

 

「しかし、『西遊記』の隆盛は小説だけでは決してないんです。小説だけでなく戯曲──演劇との両輪によって中国宗教史にも大きな影響を及ぼし──はーっ……はーっ……! 申し訳、ありま、せん……意識が……っ」

 

 と、そこで知識の供給が止まった。術が解け、咀嚼していた知識が立ち消える。

 気付けば祐理の表情は白を通り越して土色だった。

 教授で無理をさせすぎたのだ。

 

「すまない万里谷。無理させちまったな……」

 

 護堂の言葉に祐理はもう言葉を返せず、小さく瞳を揺らすだけだった。

 

「どうか、お気になさらないでください。私……ずっと満足しているんです。草薙さんのお力になれて……唇まで交わして……。メリッサさまのおかげであなたへ尽くし尽くす覚悟が出来ましたから、本懐を遂げて……実は満足しているんですよ……?」

 

「……万里谷……くそっ!」

 

 護堂は新しい力に目覚めているのに気づいていた。

 呼び手である祐理を視界に収めた瞬間──一つの化身が発動条件を満たしたのを確信した。確信して、しまった。

 ただ、この化身は厄介な化身だ。

 誰かに強大な加護を与える代わりに──それに等しい代償も求める。そんなピーキー極まるウルスラグナの権能らしい権能だった。

 行使するための条件は、護堂への生涯の忠誠を誓うこと。こんな窮状で気にしてる場合ではないが、人間一人の人生を奪うような条件がヘンに義理堅い護堂を躊躇わせていた。

 それに……ニライカナイ島で意味がないからと行使しなかった化身でもある。

 

(でも、今は違う)

 

 あの時と違い、権能を行使すれば眼の前の少女を助けられると確信が湧く。あの時と同じ想いをするなら……。

 屈辱と後悔で己に怒りを燃やす。護堂は新たな力への忌避感──あのニライカナイ島で使わなかった化身を行使する覚悟を決めた。

 

 新たな化身を掌握を前にした興奮と、この化身を使う羽目になった己への爆発的な怒りが護堂のなかで荒れ狂う。握り合っていた祐理の手を一方的に力を込め、白濁しかけている祐理の意識を痛みで呼び起こす。

 

 永遠の眠りになんて就かせない。

 

 この女はおれが貰う。

 

 そのために絶対の忠誠を。

 

 この女の残りの人生の一片まで俺が喰らい尽くすために、誓いの言葉を吐き出させるために。

 この化身へと身を(やつ)すためには、必要な儀式。絶対の忠誠を誓わせ、以後の人生を護堂のために消費させる支配の化身。

 加護を求めるものへ己自身の犠牲を強要するのだ。

 

「あ……っ、く、草薙さん、すこし……痛いで──」

 

()()

 

「あ、え。……名前を……?」

 

 初めて名前で呼んだからか、戸惑って視線を彷徨わせる祐理へ強引に目線を引き戻させる。

 

「俺を見ろ。いいか、よく聞け。……今から、お前を助け出してみせる。だから──誓え。俺が例えどんな神様と戦うことになっても、最期まで俺の傍にいると。髪の一本、細胞の一個、人生最期のその瞬間まで俺に捧げると誓え!」

 

 祐理に語気の強い声を落とす。弱った彼女に追い討ちをかけるが如く。

 限界まで献身を捧げた祐理にもっと差しだせと強請っているに等しい辛辣さ。

 この気丈な少女の声ひとつ、髪の毛一本、そして覚悟と涙の一滴まで俺に捧げさせてやる。そういった気迫を込めた言霊。

 

「草薙さん……それは、け、権能の力なのですね……? あなたが簒奪した加護と祝福の……」

 

「御託はいい! 誓うのか誓わないのか、いますぐ決めろ!」

 

「っ! ──は、はい……お好きになさいませ。我が心身はすべてあなたの想いのままに……もうあなたに尽くす覚悟は出来ております」

 

 苦痛で滲んだ瞳がわずかに震え、歓びの色へと変わる。潤んだ眦から涙がこぼれ、その華奢な肢体を委ねてきた。

 焦点の合わない瞳から何粒もの涙を落とし、女の尊厳を己の手で破壊しつくす言葉。カンピオーネという羅刹王とともに修羅道へと堕ちることを要求する外道の化身。

 それは恋をする万里谷祐理にはあまりに抗いがたく、一種の破滅主義的な倒錯に至上の幸福をもたらすもの。

 

「いいんだな?」

 

「はい。もはや私に迷いはありません……!」

 

 祐理は言霊のひとつひとつを丹念に折り曲げ、たった1人の男へ届けるために言葉を紡いだ。

 

「私は正妻を望みはしません」

 

「ですが、どうかあなたを愛することをお許しください」

 

「果てるまであなたに恋うことをお許しください。

 

「私の奉ずる情愛の女神とおなじく……この胸に燻る熾き火を、大火へと燃焼させることをお許しください」

 

「我が生の終わり、その瞬間まで草薙さんの──」

 

 祐理の繊細な美貌を恍惚と歓喜に染めながら。

 

「──護堂さんのおそばに……」

 

『少年』

 

 祐理の覚悟を贄にしてウルスラグナ第五の化身が覚醒した。全能感が一撃する。ぶるぶると手足が震え、高ぶる。やがてそれも立ち消え、逡巡や気後れが消えていく。

 穏やかな水面のごとく、心が澄み切っていく。

 護堂は、おもむろに祐理の唇を奪った。舌を突き入れ、準備を整える。その間にも祐理が献身的に、舌を撫ぜ、男の自尊心を満足させようと奉仕してくる。

 そんな仕草に愛おしさが溢れるが、いまは時間がない。

 幸い呪術の道は、さきほどの教授の術で出来上がっている。

 護堂は呪力を『加護』に精錬し、祐理の奥深くへと注ぎ込んだ。精錬した呪力を一気に流し込むと、祐理が、びくんと身を震わせた。

 

「────ッ!? ああっ……熱っ……」

 

 臍下丹田──下腹部あたりまで落ち、完成した加護はやがて祐理という少女に紋章を刻んだ。

 輝ける英雄が与える勝者の印。あるいは灼熱する鉄で印字した奴隷紋。

 

 加護と庇護を授け、もう命の危機からは脱した。今はしっとりとした微笑を浮かべ、幸せを感じているのか恍惚とした表情を隠さない。

 

「祐理。もう大丈夫そうか」

 

「はい……。少し苦しいですが、これくらいなら……──んん!?」

 

 護堂は満足し、それから祐理へと素早くキスした。目をひらく祐理に構わず、舌を潜り込ませる。

 少し遅れて祐理が教授の術を施した。

 

「ぷはっ……。時代が変わるほど変化した『西遊記』の記述ですが……。斉天大聖・孫悟空という神格は本来、それほど戦いに長けた神格だったわけではありません」

 

 ──天竺に向かう高僧に付き従う馬と、そして猿がいる。しかし彼は戦えはするが、強くはない。

 

「斉天大聖・孫悟空さまがその名で呼ばれる以前……『西遊記』成立以前の、猴行者(こうぎょうしゃ)だった彼は天界を騒がすほどのおそるべき妖怪ではなく、玄奘三蔵に付き従う()()()()()お供でしかありませんでした」

 

 ──彼ら一行のピンチを救うデウス・エクス・マキナは別の神格。

 ──武神として誉れ高き"毘沙門天"

 

「時代を経るごとに斉天大聖さまの要素は、肉付けされ、後付けされ、強化され続けます。以前の庇護者だった毘沙門天さますら上回るほどに」

 

 ──中国史でたびたび起きる文字の獄。

 ──焚書の影響をその莫大な民衆人気で逃れ、肥大し続けた。

 

「孫悟空伝説は明後期から清時代には今に伝わる大英雄として昇華します。その途上で、密教や江南伝説、騎馬民族の言い伝え……『西遊記』と斉天大聖さまはさまざまな伝承を取り込み混淆神として再誕を果たします」

 

 ──スキタイの故地コーカサスの英雄バトラズ。石から生まれた猿と酷似するスキタイの伝説もまた斉天大聖は呑み込んだ。

 ──「石から生まれるサル」の誕生。

 ──しかしスキタイの伝説を取り込む以前、元から明の時代の斉天大聖には兄妹がいた。

 ──そして《鋼》へと至る過程で肉親を捨て、牛魔王をはじめとする義兄弟を得る。

 

『西遊記』の成立史は、そのまま斉天大聖の強さの源となってきたのだ。

 

 祐理が締めくくった瞬間、護堂の中で確信が湧いた。化身『戦士』が使用可能になった合図だった。

 

 斉天大聖、あんたの中華最強の看板をぶっ壊す準備はできてるぞ。

 お前はどうだ? 四百年眠りこけてたのか? それとも捕らえられてもこの国を護った守護神だったのか? 

 あんたの本地ってやつを俺が確かめてやる──。

 






3/1に投稿したんですがちょっと過激すぎるんじゃ……?とご指摘頂いたため成人版と分けました。
先に読まれた方にはご迷惑とご不快な思いをおかけし申し訳ないです。



https://syosetu.org/novel/404478/1.html
パスワードは「さかほこ」です。
内容は変わらないので、苦手な方は無視してください。
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