フロストパンク世界にTS転生して落とされる話 作:キサラギ職員
「晴れたっ!!」
俺はガッツポーズしていた。観測班の予想通り、三日で嵐が去っていったからだ。食料はカツカツなのは相変わらずだったが、木材や鉄材などはそこそこ集まっていたし、製鉄所も稼働を開始して、鉄鋼の生産も始まっている。
と言っても、原作通りのあんな巨大な工場じゃなくて掘っ立て小屋に近い。人員100名+1人しかいないので、そうもなる。
俺は気配を感じて振り返った。リラックスした姿勢のエイダンが手帳片手に立っていた。
「ジュン。銃についてだが………」
「しゃーないね。火薬の生産がどうにも……」
で、狩りに使っていた銃だが、ついに弾薬が底を突きそうになった。俺の指示で銃は保管庫に送ってある。
……無いとは思うが、例えば狂暴な熊やら、狼藉者が出た時に使えるように。弾薬の類を最低限残しておくのだ。
「だけど代わりにあれが生産のメドついたからな」
「クロスボウか」
代わりのものの設計も、既にエンジニアたちにやらせている。クロスボウ。それもテコを使う強力なやつで、これで狩りをしようというのだ。銃がない以上弓でやるしかないが、エイダンみたいなうまい人ばかりじゃないからな。クロスボウなら狙って撃てば事足りる。
「今日の仕事だが………」
「うん」
いや実際やってみて分かったけど、フロストパンクのキャプテンは大変な仕事である。UIついててゲージ見られるならいいけど見られないので全部連絡係か自分で確認しないといけないし、目には見えない『不満』『希望』とかいうふわっとしたゲージ管理もしないといけない。
ルーチンとしては起きて身支度整えたら、各部門からの報告を数字にして見える化。作業遅れの進捗管理。新規プロジェクトの管理。とかやってる間に午前が終わるので、住民からの意見陳情にも目を通して、現場を駆け回って作業指示。で夕方。街の建築計画の………。
「涎出てる涎が」
「ウウッ」
俺が机に突っ伏して寝落ちしていると、肩をゆすられた。うるさいな。起こさないでくれ、眠いんだ。
するとふわっとした浮遊感と共に体が浮き上がって、かすかに男性特有の香りが鼻をくすぐった。
「おやすみ。いい夢を」
チュッ。額に何かが当たったところで意識が完全にすっ飛んだ。
何か凄くいいことがあった気がするが全く思い出せない。
俺は新規プロジェクトに取り掛かる為、あれこれと考えを巡らせていた。都市に足りないものはなにかというと何もかも足りていないのだが、基本的な生産設備は整えるべきであろう。
食料はいい。いやよくないが練度もあがってきていて、狩猟効率は上がっている。
木材……はいよいよクレートが枯渇してしまいそうであり、早急に製材所が必要だ。
鉄材……は製鉄所と機関車の残骸で何とか回す。
石炭……これだ、とにかく石炭は用途が多い。暖房はもちろん製鉄にも使えるわけだ。
「あたしの出番ってわけだねぇ」
「そう。炭鉱を作りたい」
そこで石炭拾いをしているアデルを呼んだ。相変わらず手は真っ黒だし、それで顔を擦るものだから鼻が黒い。
「比較的簡単にできると思うよぉ、だって石炭層が露出してるからねェ。最初は炭鉱というより露天掘りに近い形になるだろうよ」
「できそう?」
「できる。ただ表層を削り終わったらいよいよ覚悟ってもんをしないといけない」
「覚悟とは」
「人が生き埋めになることをさ。炭鉱ってのはそういうことだろ」
あっけからんというアデル。
そう言われて初めて、俺は人命を預かっているということを意識したのである。
「もし、人が死んだとき、俺のことを恨むかな」
俺が言うと、アデルはこれもあっさりと答えた。
「知らないよ。人によっては感謝するだろうし、恨みもする。でもそれが人生ってやつだろ」
「補償、補償かぁ」
私有財産を認めない以上は補償というものがない。というよりも、意図的に考えてこなかったことを考えねばならない。人の死だ。
「正式な葬式と、犠牲になった魂を慰めるために碑でも作るかぁ……これじゃ宗教ルート一直線だけどディストピアルートよりかはいいか……」
ロンドン主義者イベントにおいてプレイヤーは二通りの解決を求められる。一つが規範と正義のディストピアルート。一つが信仰の宗教ルートだ。どっちもまあ最後まで選択していくと現代日本からすると相当イカれている罪の告白やら、拷問やらが待っているわけだが。
「あんましたくないんだよなぁ」
むち打ち刑はあるけどそれは私有財産認めてないからであって……。
「どう思う?」
「どうと言われてもな」
俺は今は完全に『本部』として運用されている小さい小屋の中で唸っていた。傍らに控えているエイダンに問いかけてみる。ちなみに救護所だけど移設した。移設して、診療所として独立させてある。今のところ風邪ひいた人くらいしかこないけど、いずれは病院として大規模な施設が必要になるかもしれない。
エイダンはぱたんと手帳をたたむと、腕を組んだ。
「答えなんてないだろうなぁ………そのルートが何の話かは知らないが、統治するってのはルールを決めてあれこれ考えながらやらないといけない。王様気分でふんぞり返るような人間性じゃないってのはこれまでの付き合いでよくわかってる。好きにやってみればいいんじゃないか」
「そうねぇ………宗教……いや……」
等と議論して、日が暮れていく。
結局結論も出ないまま、俺はルークと共に製材所の建設指揮に当たっていた。大型の
俺はいつものようにオレンジ色のダウンジャケットを着て、図面片手に立っていた。横にはルークがいる。また薄着である。零下で薄着とか北国育ちはやはりヤバイ。
「なあ俺頭悪いからよくわかんねぇんだけどよ、このクレーターの中の木を全て切り終わったらどうするんだ?」
「その構文使う人初めてみたわ。えっとね、この辺の土壌は大昔から埋没していた木材が入っていることが分かってるからそれを掘るウォールドリルを建設しようと思うんだ」
「それ、いつ調べたんだ?」
「え? ああ、まあ、この前ね」
なんとなく誤魔化したけどこれは事実だ。そんな都合よく埋まってるわけないだろと試しに掘らせたところ本当に木材が出てきたので、いずれはウォールドリルを作ろうと思っている。クレーター内部のクレートは枯渇。木を全て切りだし終えたら後は壁から木材を発掘することになるだろう。
しかしここまでフロストパンクの世界観そのままだとするといずれ『大寒波』が来る可能性が非常に高い。
大寒波。泣く子も黙るマイナス150度とかの世界である。寒すぎて大気が画面上で液体になって垂れて来るレベルである。息を吸い込むと肺が凍り付くんじゃないか。
さてお次の仕事は………遠征隊に指示を送って、遠征隊に生存者を探させることだ。
俺は本部へと戻った。
通信員がトントンツーという音を立ててモールスを打っていたのだが、返信を聞いて興奮し始めた。
「リーダー! 大変です!」
「おう、どうした?」
「雪上で立ち往生していたオートマトンを発見したとのことです!!」
ステータス:定住中
メインクエスト:大寒波を生き延びろ
:オートマトンを回収せよ
生存者数:101名 エンジニア6名+子供たち
食料:あと7日分 収集中 スープの日と通常食の日を決めました
木材:少し 収集中 クレートが枯渇しました
鉄材:少し 収集中 機関車が枯渇しそうです
石炭:5日分 収集中
スチームコア:1個
傾注! 傾注! 新しい法律の施行だ!
『墓地』
尊厳と敬意をもって死者を埋葬できるよう、埋葬地を設けます。
『正式な葬式』
町への奉仕に命を捧げる者は、最高の栄誉に値します。死者のために葬儀を行い、生者の士気を高揚させます。
『死者の碑』
死者を弔うための碑を建設します。
「児童法」子供たちは、技術者の手伝いをしなくてはならない。
「労働法」通常通りの8時間シフト 延長12時間シフトまで可
「基本法」殺すな、盗むな、怠けるな。違反した者はむち打ち刑と処する。
「私有財産」これは、認めない。
「投票権」これは、認めない。ただし都市の自立が確立されたのち投票権を付与し民主主義体制に移行する準備がある。
次の建物があります
・本部 執務室を備えた家です エイダンとジュンの家でもあります
・テント101人収容分 ゲームとは異なり木材や石炭燃焼で暖房レベル1+
・救護所→診療所
・狩猟小屋(クロスボウ含む装具の開発済み)
・ワークショップ(一軒家)
・集積所(ゲームとは異なりクレーター中のをかき集めて集積します)
・道 クレーター内部、砂利を敷いた道を建造しました
・ビーコン 観測気球 遠征隊を組織できます
・温室 作物が出来上がるまで時間がかかります カロリー大の作物が出来上がるには数か月はかかるでしょう
・製鉄所 クレーター内壁に露出している鉄鉱石や砂鉄を採取、鉄に変えます
・製材所 クレーター内部の木を伐採して木材にかえます。
・炭鉱 露天掘りを開始しました
エイダン・ウィンターズ(副官として忙しく働いています)
ルーク・エヴァンス (あなたのことを、なぜそんなに色々知っているのかと疑問に思っています)
イーサン・ロックウェル (鉄材リーダーのままです)
アデル・ブラックモア(リーダーとして精々がんばんな、と思っています。石炭リーダーのままです)
住民(希望が高く、不満も減少傾向にあります)