メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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此方は初めての投稿となります。
拙い文ですが、宜しくお願いします。


神話から筋肉へ

 『ウマ娘』。彼女たちは、走るために生まれてきた。

 ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る───。

 それが、彼女たちの運命。

 

 この世界に生きるウマ娘の未来のレース結果は、まだ誰にもわからない。

 彼女たちは走り続ける。瞳の先にあるゴールだけを目指して───。

 

 ここは、中東のとある国にある、とある草原に建てられた古い土煉瓦製の建物の一部屋。

 土煉瓦特有の少し赤味を帯びた壁に嵌められた木製の窓枠と古くひび割れたガラス越しに見える青空を、これまた古びた木製の椅子に座りながらぼんやりと眺めている、1人の幼女が居た。

 その幼女は、同年代と比べるとかなり細く、若干骨の浮き出た肢体に、やや赤味がかったブラウンだが、光の加減で金色に見える時がある大きな瞳が特徴的で、何処か儚げで愁いを含んだ表情、薄く品の良い唇に小さく高く整った鼻、この陽射しの強い地域にあってなお、透き通る様な白い肌、腰まである更々の長い銀髪で、日本人形の様な髪型と、大凡人が美しいと思う物だけで構成された存在だった。

 だからこそ、人とは異なる部分が際立つ。

 その幼女には二つ程、人とは異なる部分があった。

 それは、頭の上の方に人ではあり得ない場所から生えた大きくて狐みたいな耳と、腰から生えた大きなフサフサな尻尾であった。

 共に髪の色と同じ銀髪であったが、先の方だけ黒色に染まっていた。

 それは、人ではなく、この世界特有の種族、ウマ娘と呼ばれる神秘の生き物であった。

 

 「ママ、みんな……」

 幼女は空を見上げながら、今はもう居ない仲間たちを想う。

 その頬に涙の跡を残しながら、懐かしい日々を大切に、大切に想い仲間たちの名を呼ぶ。

 「…キキ姐、ボルデ、オペレッタ、アビアナカペル、アラカトベ、みんなと会いたいよ、1人は嫌だよ……」

 幼女はまた空に向かって話しかけながら涙を溢した。

 いつまでそうして居ただろうか、空が赤く染まり、気温も少し下がって来たのか、気温の変化に気付いた幼女が、部屋のドアを閉めようと椅子から立ちあがろうと思った時だった。

 何時もは静かな廊下の奥、玄関のある方から、人の争う声が聞こえてきた。

 ヒトより耳の良いウマ娘の聴力が、その声を無意識に拾い上げる。

 「じゃから、此処におる娘を確認させて欲しいと何度も言っておるじゃろうが!」

 「ですから、せめて貴女の身分と目的をはっきりさせて欲しいと言っているでしょう?

 あの子の経歴を考えれば、それくらいの情報の確認をしなければ、私たちが所長に怒られるんですよ!」

 「お主らの事情なんぞどうでも良い、吾には友との仁義がかかっておるのじゃ!」

 「そう言う態度なら、尚更会わせられません!どうぞお帰りください!」

 「…ならば、是非も無しじゃ!押して参る!」

 その後、何かが壁に叩き付けられる大きな音と一緒に、職員数名の悲鳴が聞こえた後、あれだけ騒々しかった玄関の方から聞こえて居た声が、何も聞こえなくなった。

 

 自分が所属して居た組織からの追手か、強盗かと思った幼女は、どうにか隠れる場所が無いか、改めて部屋のなかを見る。

 しかし、部屋には椅子、テーブル、ベッドと最低限の家具しか無く、何処にも隠れられそうな場所は無かった。

 せめてドアだけでも閉めようと思い、其方を見て固まってしまう。

 幼女の視線の先には、先程の騒ぎを起こしたと思われる人物が立っており、自分の事を凝視したかと思うと、そのまま此方を抱きしめて来た。

 無言で自分を抱きしめて来た事に混乱した幼女は、この人物が人攫いの強盗か何かで、このままでは奴隷商に売られてしまうと恐怖した。

 「は、離して下さい! 私はママに会うんです!また何処かに連れて行かれる訳にはいかないんです!」

 どうにか脱出しようと全力で踠くが、大人と子供、幼女の拘束は緩むどころか、逃すまいと更に強くなる。

 「い、痛いです!体が潰れてしまいそうです!」

 ついに耐えかねた幼女から悲鳴に似た叫びが出ると、その声に狼狽えたのか、拘束が一気に弛んだ。

 「す、すまんのぅ?…怪我とかして無いじゃろうか?」

 拘束を解き、幼女を解放した不審者が、狼狽えた様子で幼女に問いかける。

 「…怪我はして無いです。」

 つい、律儀に訊かれたことに答えてから、恐る恐る不審者を見る。

 鹿毛の長髪に、前髪に白い流星が印象的で、整った顔立ちに何処か神前の様な雰囲気を纏い、ボロを纏ってはいるが、何処か人を喰ったような雰囲気すら感じる、なんとも言えない感じのウマ娘が自分のことを心配そうに見ていた。

 「……貴女は何処の誰ですか?」

 恐る恐る幼女が不審者に問いかける。

 その姿を見て不審者が微笑んで泣く。

 「えっと、何故泣いているのですか?」

 戸惑いながらも幼女が問いかけると、不審者はそのまま幼女の肩に両手を置き、膝をついて目線を合わせた。

 「吾はそなたの両親の友じゃ。約束を果たしにきた。」

 「両親?……私にはママと仲間たちしか居ません。 人違いではないでしょうか?」

 親と呼べる存在が、育ての親しか知らない幼女は不審者の間違いを指摘する。

 そんな幼女の姿を見て、瞳に哀しみの涙を浮かべながら、努めて優しく丁寧に不審者は言った。

 「…そうじゃのぅ、そなたからすればそうなるのは必然じゃ」

 何かに耐える様な表情を浮かべながら不審者は祈る様に言う

 「確かに、そなたからすればそうなんじゃろうが、そなたにもちゃんとそなたを心から愛しておる両親が居るのじゃ…じゃから、そなたの両親に代わってその存在と想いを伝えさせて欲しいのじゃ……ダメかのぅ?」

 自分に両親がいて、その両親の友を名乗る者が目の前にいる事に少しだけ現実味が薄れるのを自覚する。

 「でも、私は両親と言う方達を知りませんし、私を護り育ててくれたのはママです。なので私には両親は居ません!」

 そうだ、何もしてくれなかった両親なんて居なくても問題ない。

 自分に必要なのは、ママと仲間たちだ!…改めて強くそう思ってしまう。

 不審者が幼女の言葉と瞳に宿る意思に、哀しみを深める。

 「確かに、確かにそなたからすればそうなるのは必然かも知れぬ。親と言うても顔も分からぬ者達じゃ、育てて貰うた者達こそを親と思うのは当然じゃし、結果、両親なんぞ居らぬと心から思っておるのも本当のことなのじゃろう」

 不審者は哀しみを浮かべたまま、それでも尚、言い募る。

 「それでも、そなただけにはわかって欲しいと思う。その為に吾は2人の友の想いを伝えに来たのじゃ!」

 その一方的な態度と物言いに、少しだけ理不尽さとそれに対する苛立ちの様なモノを感じた幼女は、感情をそのままに吐き出す。

 「さっきからなんなのですか?想いだの何だの、一度も会ったことない人達の事なんて知らないです!大体、そんな想いがあるなら何で貴女だけで来たんですか?そんなに大事なら直接来たら良いじゃないですか?それこそここに来るくらいの想いなんて、本当は無くて、貴女もお金でも貰ったから来ただけじゃないんですか?だったらもういいから、さっさと帰って!」

 自分のどこから声が出ているのか、どうすれば止めれるのか、自分の事なのに全く制御出来ないまま、自分でもびっくりするくらい言葉が出てくる。

 最早感情が制御出来なくなった幼女は涙混じりに声をあげる。

 「…そもそも、あなた」

 更に強く言葉を叩き付け様とした幼女を、不審者が抱き締める。

 「……済まぬ。」

 一言だけ詫びると、幼女を抱き締めたまま、

 「吾はそなたの両親のお友達じゃ、じゃからの、ひとつ吾はそなたの両親に代わり、伝えねばならぬことがある、それは「聞きたくないです!」」

 嫌々をする幼女の肩を掴み、しっかりと目を見て話す。

 「良いか?そなたにこれから話すことに、世の中の慈悲は無い、じゃが、そなたには聞く義務がある。まず、そなたの両親のことじゃが、既に亡くなっておる。なので2人の友人である吾がそなたを迎えに来た」

 何と無く自分には肉親の縁と言うモノが薄い気がして居たが、いざはっきりと両親の死を言われてみても、そんなに何かを思う事が無かった。

 果たして自分は薄情なのだろうか?そう疑問に思っていると、少しだけ複雑そうな表情をした不審者が努めて優しく声を掛けてきた。

 「そ、そう言えば、未だに名乗りをしていなかったのぅ。吾の名はシンザン、これでも神馬と呼ばれたウマ娘ぞ?」

 場の空気を考えてか、腕組みをして少しだけ大袈裟に名乗りをあげるシンザン。

 「新馬?貴女は若いのですか?」

 首を傾げながら問いかける幼女。

 そんな幼女の顔を笑顔で上から見下ろしながら、

 「して、そなたの名は何と申す? よもや名乗りに対して、自分は名乗らぬなぞと言う無作法はすまい?」

 「リア、リアルデュークと、申します。」

 「ほう、イギリスの公爵。又は「拳で打つこと、殴ること」という意味を持つ、何とも勇ましい名を貰ったのじゃな?」

 リアルデュークは、シンザンに頭を撫でられながら

 (そんな意味がある名前だったんだ?拳で打つとか、殴るとか物騒なのは嫌だけど、公爵ってのは何か優雅な感じでいいかな?)と、何と無く考えて居た。

 「さて、お互い名乗りあった事じゃし、友人の娘であるそなたに、吾が何かプレゼントをしようと思うのじゃが、何か欲しい物は有るかの?」

 と、言われたリアルデュークはひとつの願いを口にする。

 「貴方は速いんですか?」

 何処か期待を秘めた少女の目を見て、やんわりと笑みを浮かべてシンザンは

 「そうじゃのう、これでも神馬と呼ばれるくらいじゃ、それなりには速いと思うぞ?」

 少女は表情を変えぬまま、シンザンに更に問いかける

 「じゃあ、とても強いんですね」

 「そうじゃのう、地元では1番強いと思うのじゃ」

 少しだけ考える仕草を見せたリアルデュークは、

 「なら、ひとつだけお願いします。ボクを強くして下さい。誰よりも強く、居なくなってしまった、遠くへ行ってしまった皆んなに気付かれるくらい、世界中どこに居ても気付いて貰える、覚えて貰えるくらい強く、速くして!」

 「ならば話は簡単じゃ!そなたはウマ娘じゃ!ウマ娘ならばレースで勝てば良い。大きなレースを、有名なレースを、最強の存在となりて駆け抜けて行けば良い。吾がそなたを強くしてやる、吾の持てるもの全て、教えられる事全てをそなたに与えよう!じゃからの、強く生きるのじゃ……そなたの両親の分までの?」

 そう2人は約束を交わす。

 その後、通報を受けて急行して来た地元の警察とやり合い、警官数名を殴り飛ばし、無事留置所送りになったシンザンは、メジロ家が後始末をしている1ヶ月程の間この地に滞在して、リアルデュークに基礎をみっちりと仕込むと、幾つかの注意点と学園入学まで基礎練以外は禁止することを厳命して、予定よりリアルデュークの引き渡しに時間がかかる事が判明した為、日本で仕事が残っていたシンザンは、新たにメジロ家の引き取り役となったスピードシンボリに全てを託して名残惜しそうにこの地を去ることになった。

 空港まで見送りに行くと駄々を捏ねるリアルデュークに「良いか、そなたが充分な基礎力を身に付ける事が出来た時、吾の全てをそなたに与える為に吾はそなたの下へ帰って来るつもりじゃからの、それまで確と励めよ?吾とそなたの約束じゃ!」と言って優しく頭を撫でて笑いながら去って行った。

 

 




初投稿、ちょっとドキドキしますね。
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