ナリタブライアンとリアルデュークのレースが終わって数日が経ち、お昼時の食堂は飢えたウマ娘で満員御礼であった。
そんな混雑する食堂の片隅に、何故かメイド服を身に纏ったウマ娘達が居た。
「……おい。」
「三冠サボらない!」
「そうですよ、今はお昼時で忙しいんですから!」
そんなメイド服姿のウマ娘の中で、不機嫌さを隠しもしないブライアンが、とても不満そうに周りの同じ姿のウマ娘達に声をかけるが、それを遮るかの様に食堂のおばちゃんの声が響いた。
「オグリ盛りあがったよ!」
「は〜い! ほら、リアさん出番ですよ? あのカートに乗った料理をオグリキャップさんの所に運んで下さいね?」
「うぃっ!」
にこにことしたサロメが、リアルデュークに指示を出すと、リアルデュークが元気いっぱいに応えて料理が満載されたカートを運んで行く。
「あぁ〜、リアちゃんのメイド服姿、とても可愛らしいですねぇ?」
「なんちゅうか、親の手伝いをする小学生みたいやな?」
「……眼福眼福ですよ。」
「……おい、無視するな!」
その姿を見て、クリーク、タマモクロス、サロメの3人が微笑ましいものを見る目線で話し合う。
そんな3人にブライアンが先程よりも大きな声で話しかけると、サロメがブライアンを見ながらニッコリと微笑んで答えた。
「大丈夫、ブライアンさんもちゃんと似合っていますよ?」
「いや、似合う似合わないではなく、何でこんな格好をしないといけないのかをだな……」
「追加のオグリ盛りあがったよ〜!」
予想通りの受け答えだったのか、少しウンザリとした態度で疑問を口にするブライアンの声を、再度食堂のおばちゃんが遮った。
「ほら、ブライアンさん出番ですよ?」
「あ、いや……はぁ、これを持って行けば良いんだな?」
サロメの急かす様な声に何かを諦めたブライアンが、素直に指示された内容を確認する。
「そうですよ〜、早くしないとオグリさんが待ち惚けしちゃいますよ?」
「いや、さっきリアルデュークが持って行った分がまだ……もう無いだと?」
「あはは、オグリさんですからねぇ。」
まさかそんな事は無いだろうと、オグリキャップが陣取るテーブルを見て愕然とするブライアン、そのブライアンの姿を見て思わず笑い声を上げるサロメだった。
「取り敢えず行ってくる。」
「はいは〜い。」
若干狼狽えるブライアンが、それでも意を決してカートを押して行く後ろ姿に軽く片手を振ると、ブライアンと入れ替わりでリアルデュークが空のカートを押して戻って来た。
「ほふ、ふひほほへふぁ!(ボク、無事届けた!)」
「ちゃんとお手伝い出来て、リアちゃんはとても偉いですねぇ?」
「……何で運んだリアルデュークがエビフライ咥えてるんや?」
「……んぐっ……お駄賃貰った!」
お駄賃のエビフライを器用に手を使わずに食べるリアルデュークを、笑いながら見て居た一行に更なるおばちゃんの声がかかる。
「はい、次あがったよ〜!」
「うぃっ! ボク頑張る!」
「……なんだかんだ有りましたが、リアさん楽しそうですね?」
「リアちゃんが楽しそうな姿を見せてくれて、私も嬉しいですわ。」
楽しそうに食堂の手伝いをするリアルデューク、そのリアルデュークの手伝いをするクリークとサロメの2人、不満そうな態度のまま、なんだかんだと真面目に仕事をするブライアン、この集団の噂はすぐに学園生徒達の間に広まり、食堂には更なる人集りが出来るのであった。
本日の食堂での手伝いも終わり、一息付いていたリアルデュークとブライアンが生徒会室に呼ばれたのは、騒動の次の日だった。
2人揃って生徒会室に入ると、会長の席に座ったシンボリルドルフが和かに出迎えてくれたが、何時もと違い2人を席の前に立たせたままだった。
「さて、先ずは食堂の手伝いにグラウンド整備の手伝い、共に頑張っている様でなによりだ。 日々、勤倹力行(きんけんりっこう)するその姿を見て、この私も己が務めに奮励努力(ふんれいどりょく)せねばならないと改めて思う所だ。」
「……日本語でおK!」
「バカ、お前は余計な事を言うな!」
ルドルフの言葉に、笑顔で煽る様な事を言うリアルデュークを慌てて嗜めるブライアンは何時もと違い、緊張した顔付きだった。
「ふふっ……帰国子女のリアルデュークくんには、少し難しかったかな?」
「大丈夫、何時も意味不明! 聞き流してるから問題無い!」
「ちょっ! おま……。」
「あはははは、そうか、聞き流しているのか……」
元気に酷い事を言うリアルデュークにブライアンが絶句していると、言われたルドルフのウマ耳が目に見えて項垂れる。
「って、あからさまに落ち込んでるじゃねぇかっ! ほら、おチビは取り敢えず謝っとけ?」
「うぃ、何か知らないけど、何かごめん?」
「いや、別に謝る事じゃ無いさ。」
「んじゃ、話は終わりって事で失礼するぜ? ほら、おチビも行くぞ?」
「うぃっ!」
勢いに任せてこの場を乗り切ろうとするブライアンをルドルフがすかさず止める。
「……待て、誰が話が終わったと言った?」
「ちっ、ならさっさと要件を済ませろ。」
苦虫を噛み潰したような顔をしてブライアンが話を促した。
「……と、言う訳で、君達が今回行ったレースによる影響はかなり有る。 当然、我が生徒会としても看過出来ない。 特に、リアルデュークくんがレース中に行った挑発行為については、教師陣や一部生徒から強い反感が上がっている状況だ。」
「ハッ!……面と向かって文句すら言えない連中に配慮する必要は無い。」
ルドルフが話す内容に、眼光鋭く反論するブライアン、その姿を見てルドルフは少しだけ困った様な顔になる。
「ブライアン、私もそう思わなくも無いが、こういった人々の声無き声を拾うのも我々生徒会の仕事だ。 それにだ、私も個人的にああいった行為を行った人物に対しては、少し本気で話し合いをする必要があると思っているのでね?」
「わ、私はあの件に関しては悪くないぞ?」
ルドルフの顔付きが変化した事に気付いたブライアンが、明らかに狼狽えると、ルドルフが作り笑顔で話す。
「あぁ、わかっているさ、だから君には2つの選択肢を示そう。 このまま残ってリアルデュークくんと共に話し合いに参加する。 もう一つは、このまま残って溜まった自分の仕事を片付ける。 どちらでも好きな方を選んで大丈夫だよ?」
「……そこに慈悲は無いのか?」
眉根を寄せて抗議するブライアンの言に、ルドルフが笑顔のまま答える。
「私としては、仕事が溜まっていても待っていた、これが慈悲だと思うがね?」
「……説教に付き合う趣味は無い。」
「ならば、仕事を頑張ってくれると、私としては助かるよ。 さぁ、リアルデュークくんは、ブライアンくんの仕事の邪魔にならない様に私と一緒に奥の部屋に行こうか?」
そう優しく語りかけるルドルフを見て、今まで我関せずでぼけっと部屋を眺めていたリアルデュークが冷や汗を掻きながらブライアンに対して叫ぶ。
「な、何か嫌な予感する。 三冠ヘルプ!」
「まぁ、死にはしない……取り敢えず、頑張れ。」
「さぁ、これ迄の事も含めて、2人きりでしっかりと話し合いをしよう!」
「いぃぃやぁぁあっ!」
目を逸らして形だけの応援をするブライアンと、リアルデュークの肩にしっかりと手を回してホールドするルドルフ、哀れなリアルデュークはそのまま奥の部屋へと連れて行かれるのであった。
シングレの会長と、アニメ版の会長を足していい感じに割ってます。