独自解釈、独自解釈で御座います。
リアルデュークがルドルフとの話し合いを終えた数日後の放課後、何時もの練習の為にグラウンドに来ていたサロメが、準備運動の為にリアルデュークに声を掛けているが、リアルデュークはグラウンドに寝そべったまま、無反応だった。
「……リアさん?」
「あかん、なんや知らんけどだいぶ背中が煤けとんなぁ?」
「……お腹が空いているのだろうか?」
サロメが話しかけてもグデッとしたままのリアルデュークを見て、何故かタマモクロスについて来たオグリキャップがオロオロする中、近くに居たタマモクロスがリアルデュークを指差しながら千尋に問いかける。
「千尋トレーナー、これ、大丈夫なんか?」
「あぁ、この間ちょっとルドルフさんにね?」
「ええ、ナリタブライアンさんと一緒に生徒会室に呼び出しを受けてから、あれ以来ちょっとこんな感じなんですよね。」
サロメと千尋がタマモクロスの問いに対して苦笑いで答えると、何時の間に来たのか真面目な顔をしたナリタブライアンが、何故かしみじみとした表情でタマモクロスに話しかける。
「おチビはアレを受けたんだ、今は優しくしてやれ。」
「あれ、ブライアン先輩? 今日のグラウンド整備の時間まではまだありますけど……と、言いますか、最近リアさんのお迎え早いですね?」
「仕方ないだろう、迎えに行かないとコイツはすぐサボるからな。 全く、仕方のない奴だ。」
サロメの問いに答えながら、何処か満足そうにグデッとしたリアルデュークの頭を撫でるブライアンを見ながら、サロメが更に口を開く。
「確かにそうですけど、それにしても何と言うか……ブライアンさんって意外とマメですわね?」
「ん〜、マメっちゅうより甲斐甲斐しいって感じやな?」
「こ、これくらい普通だ、普通!」
タマモクロスの揶揄う様な言葉に、ブライアンが少しむきになって反論すると、2人を見ながら何かを思い付いたタマモクロスが慌てるブライアンに更に話しかけた。
「何や知らんけどリアルデュークも前と違って懐いとるみたいやし、何ちゅうかオカンっちゅうより、雰囲気的におとんっちゅう感じやな?」
そんなタマモクロスの言葉を聞いたオグリが慌てた様子でタマモクロスに声をかける。
「タマ、おとんは男性だ! タマは知らないかもだが、ブライアンは実は女性なんだ!」
「そんくらいわかっとるわっ! 今のはモノの例えっちゅう奴や!」
オグリの言葉にすかさずツッコミを入れたタマモクロスだったが、そんなタマモクロスの言葉に安堵したオグリが自身の胸に手を当てながら安心した様に優しく語りかける。
「そうか、なら問題無い。 てっきり私はタマが勘違いをしているのかと思って……タマはまだ若い、ここはお姉さんな私が教えないと駄目だと思ってたのだが、無事理解してくれて良かった。」
「せやから、最初からわかっとる言うとるやろが……まぁええ、取り敢えずリアルデューク、ブライアンにパパって言うてみい?」
途中まで小ボケをかますオグリにツッコミを入れていたタマモクロスだったが、何かを思い付いたのかニヤニヤしながらリアルデュークに話しかけた。
「……パパ?」
タマモクロスの言う事に素直に反応したリアルデュークが、首を傾げながらブライアンにそう言うと、その言葉に過剰反応を見せたブライアンが胸を押さえてブツブツと独り言を言った後に立ち上がって叫んだ。
「はゔっ! ……な、何だこれは? これか、これが『特別な何か』なのか? フフフフ……あ〜はっはっはっ! 沸る、沸るぞぉぉおおっ! おチビ、いや、リアルデューク! 私がパパだっ! これからはこのパパが貴様を世界一幸せなウマ娘にしてやるからな?」
リアルデュークを抱き締めながら何やら宣言するブライアンを見て、タマモクロスが呆れた表情でボヤいた。
「あかん、何や知らんがあかん方に覚醒しとる……」
「……ブライアンさんの目が逝ってますわ。」
「そうか、ブライアンはリアルデュークのパパさんだったんだな?」
「んな訳有るかいっ!」
ボヤきながらもオグリの言葉には即ツッコミを入れるタマモクロス、そんな外野を後目にリアルデュークがブライアンの間違いを訂正しようと口を開く。
「……うぃっ? 三冠、パパちが「今から最高の肉を食べに行くぞ?」……パパっ!」
「あかん、あっさり買収されとる!」
リアルデュークの変わり身の速さに驚くタマモクロス達を眺めて深い溜息をついた千尋が呆れ顔でボヤいた。
「まぁ、本人達が良いなら私は良いけど……いい加減練習しようよ?」
某日某所、毛量の多いとある少女が考え事をしていた。
「……やはり、おかしい。」
最近、私の最愛の妹で、姉大好きお姉ちゃん子である筈の『私のブライアン』の様子が明らかにおかしい気がする。
元々、私以外と群れる事を嫌い、基本的に1人を好む性質だった筈なのに、最近毎日のように何故か嬉しそうに何処かに出掛けている。
「……おかしい。 何より、この私に何も言わない所が怪しい。 でも、毎日いそいそと身嗜みを整えて出かける姿はとても良い。 これは要観察だな。」
そうして私は、最愛の妹を守るため、まずは姉の嗜みとして妹の観察日記を書く事にした。
観察日記 初日
【さて、今日よりラブリーな妹の観察日記を書く事となった。 これは姉として当然の行為であり、一般的な姉ならばきっとみんなやっている事である。 なので私はリビドーの赴くまま、愛し子の生態を記録しよう……、今日のあの子はいつも通りに朝から肉を食べ、昼も学食で肉を食べていた。 美味しそうに分厚い肉を頬張る姿、実にラブリーだ。 明日の朝も美味しい肉を焼いてあげようと心に誓う。 因みに、夕食も肉料理にする予定だが、姉としての威厳を保つ為に一応野菜も食べる様に言っておこう。 反感を買わない範囲内でだがな。】
観察日記 3日目
【今日も朝から美味しそうに肉を食べる姿を見れた、これで今日も1日元気に乗り切れる。 今日はお弁当を頑張って作ったので、学園の裏庭のベンチで幸せそうに私が作った肉尽くし弁当を食べる姿が見れた。 とても良い、凄くほっこりする。 これでハードな練習の疲れも消え失せるだろう、正に完璧な癒しだ、世の中にある全てのマイナス要素を打ち消す特効薬だと思う。 あの子を見るだけで世界が平和になることは間違いが無いだろう、今夜も夕食はあの子の好きな肉だけのすき焼きにしようと思う。】
観察日記 5日目
【終わった、もうお終いだ。 まさか本当にあの子があんな事を言うなんて……ヤバたんツラたんとか言うやつだろうか、マトモに頭が回らない。 正に世界の終わりだ。 いや、このまま無様に終わるならばいっそのことその原因を……。】
某日、とある寮の一室。
「姉貴、実は紹介したい人が居るんだ。」
「……why?」
「凄いな、咄嗟に英語で返してくるなんて、流石は姉貴だな? それで、都合の良い日はあるか?」
現実を理解出来ない私の口から咄嗟に出た言葉にすら感心するブライアン、可愛い……ではなく、外見は取り繕っていたが、私はブライアンの口から出た言葉に酷く動揺していた。
(待って、どうして? どうすれば良い? 長年クールで格好良い頼れる姉として築いて来たイメージを損なう事無くこの場を切り抜けるには?……お付き合いなぞまだ早い、何より私のラブリーなあの子に手を出して無事に居られると思っている奴に、特大の正義の鉄槌を下さねば私の気が済まない!)
「……どうした姉貴? 何か不味い事でもあるのか?」
「いや、別にそういった事実は無い。」
私が黙っている事を訝しんだブライアンが、その整った眉根を曲げてこちらを心配そうに見ている……可愛い。
冷静を装っていつも通りクールに答える私に、ブライアンが特大のカウンターとも言える言葉を言って来た。
「なら良いんだ。 姉貴は私と違って頭が良くて交友関係も凄いからな、色々と忙しいのは理解している。 だからすぐになんて我儘を言うつもりは無いんだ。 ただ、時間のある時でいいからさ、是非とも私の特別なあの子に会って仲良くして貰いたいと思っている。」
(と、特別? 今特別って言った? 私の最愛でラブリーで愛しているこの子が、私以外に特別な子がいるだなんて……)
ブライアンの言葉一つ一つに多大なダメージを受けた私は、この危機的状況をクールに乗り切る方法を思わず口にした。
「……よし、ヤろう。」
「やるって、何をやるんだ姉貴?」
「あ、いや……そ、そうだ、ちょっと新しいトレーニングをな。」
「そうか、姉貴の考えた新しいトレーニングか……上手くいったら私も一緒にやって良いか?」
「ああ、そうだな、勿論良いぞ? 上手く行ったらだがな。」
「分かった、楽しみにしている。 それで、あまり急かすのも悪いし、姉貴に予定に合わせるから大丈夫な日が分かったら教えてくれ。 ただ、相手の有る事なので、出来れば余裕のある日程にしてくれると助かる。 我儘ばかりで済まないが、やはり姉貴相手だと甘えてしまうな?」
(……良いんだよ、幾らでも甘えて良いんだよ? そのはにかんだ表情も良い! ……心のマイベストショットに追加しておこう。 ふふ、癒されるなぁ。)
私の咄嗟の言い訳にも全く疑わず、逆にハスハスする事を言ってくれるブライアン、とても可愛い。
「何度も言わせるな、妹が姉に甘えるのは至極当たり前の事だ。 なんならもっと甘えても良いのだぞ?」
「やっぱり姉貴は頼れるな。……流石は私の憧れるウマ娘だ。」
(はい、今日のベストショット頂きました! やはり妹こそ正義、最早妹しか勝たん!)
ブライアンの言葉に大分みなぎってきた私が、そろそろ結婚式の日取りを決めようと考えていると、ブライアンが時計を見てソワソワしながら酷い事を言って来た。
「そろそろ時間か……悪い姉貴、あの子を迎えに行く時間だ。 私が行かないとダメなんでな、ちょっと行ってくる。」
「あ、ああ、気をつけて行くと良い。」
(いやぁぁああっ! 行っちゃらめぇぇえーっ!)
「……鬱だ。」
ブライアンの酷い仕打ちにちょっとだけハスハスした情緒不安定な私が次にやるべきこと、それは……原因の究明、つまり敵情視察ことサーチアンドデストロイだ。
そう、可愛い妹を守るため、古来より姉は戦うモノだからだ。
ブライアンが部屋から出て行ってすぐ、私は追跡を開始した。
ちょっとリアルが忙しく、更新間隔が酷い事になりました。
……誠に申し訳ないです。