お姉ちゃんは大変なのです。
所変わって嫉妬に狂ったウマ娘2人は、未だに不問な言い争いを続けていた。
「……貴女も頑固な人ですわね?」
「其方こそいい加減にして諦めたら良いのではないか?」
「「私が諦める事は有り得ません(無い)!」」
2人が睨み合っていると、リアルデュークの下を去ったタマモクロス達がその場に居合わせた。
「……アンタらこないな所で何してんねん?」
「こ、これはタマモクロスさん、ご、ご機嫌ようですわ。」
「タマモクロス?」
明らかに狼狽えるマックイーンと、怪訝な顔で自分を見て来るビワハヤヒデを交互に見ながらタマモクロスは話を続けた。
「せや、ウチがタマモクロスや……で、2人共そないけったいな格好をしてこないな所で何しとるんや?」
「……れ、練習の息抜きにバードウオッチングを……」
「……れ、レースの思索の為にバードウオッチングを……」
「そかそか、望遠付けたカメラに軍用の高性能双眼鏡で2人仲良くバードウオッチングかいな? ええ趣味しとんなぁ?」
「これくらい、淑女の嗜みですわ」
「ああ、淑女の嗜みだ。」
「……んな訳あるかいっ! アンタら2人、何処をどう見てもストーカー御用達な格好やんかっ! どこの学園に、学校内でそないな格好で彷徨く学生がおんねんっ? マックイーンに至っては既に何度か同じ格好で同じ言い訳使うとるし、そっちのビワハヤヒデもどうせ同じ穴のムジナやろ?」
自身のツッコミに無理目な惚け方をする2人に堪らずタマモクロスが更なるツッコミを入れると、何故か2人はお互いに相手を罵り始めた。
「貴様、やっぱりストーカーだったのだな?」
「まぁ、矢張り貴女はストーカーでしたのですね?」
「せやから、アンタら2人共ストーカーや言うてるやろがっ!」
「グラウンドの2人は仲が良いのに、こちらの2人は仲が悪いのだな?」
騒がしい3人を他所にグラウンドの方を眺めていたオグリキャップがそう呟く様に話すと、罵りあっていた2人がそれぞれ手に持っていた道具でグラウンドを観察し叫び声を上げ始める。
「「あんなにくっついてっ!」」
「「なんて不適切なっ!」」
「……アンタら実は仲ええやろ?」
「「そんな事ない(有りませんわ)!」」
「息ぴったりやんかっ!」
タマモクロスのツッコミが虚しく響く中、オグリキャップは別の音が響くお腹を撫でていた。
「……お腹、空いたなぁ。」
近くで自分達の姉が不毛な戦いをしている事を知らないブライアンとリアルデュークの2人は、グラウンド整備の手伝いも終わった事で最近の日課となりつつある学園近くのラーメン屋に来ていた。
「ボク何時もの!」
「私は、チャーシュー麺肉マシマシだ!」
「は〜い、リアちゃんは煮干しラーメントッピング全種に、ブライアンさんはチャーシュー山盛りだね?」
「ああ、肉こそ全てだ!」
「あはは、偶には野菜も食べた方が良いと思うけどなぁ。」
「……野菜は、葱がある。」
「量も質も足りて無いよ?」
「ファイ姉、ボク、野菜タンメンも好き!」
「うんうん、リアちゃんは野菜も食べれて偉いねぇ? それじゃあ、私が必殺の湯切りを披露するから、ちゃんと見ていてね?」
何故か厨房に立つファインモーションが得意気に湯切りを披露しようとしたその時、カウンター奥で客と話し込んでいた壮年の男性が立ち上がって叫んだ。
「ファイン、対魔王シフトだぁぁああっ!」
「はい、店長! あ、こちらご注文の煮干しラーメンと、肉マシマシチャーシュー麺です!」
そう言ってリアルデュークとブライアンの注文したラーメンを配膳すると、店長と共に大きな寸胴鍋を何個も準備し始めた。
「ラーメンうまうまっ!」
「そうだな、ここのチャーシューは中々のモノだな。 ……ほら、リアも食べて見ると良い……どうだ?」
「……チャーシューうまうまっ!」
「そうだろうそうだろう……この私が認めたチャーシューだからな!」
リアルデュークとナリタブライアンの2人が仲良くラーメンを堪能している間に、厨房は異様な緊張感に包まれていた。
「店長! お湯沸きました!」
「よし、次は冷蔵庫に仕舞ってあるトッピングを全部出すんだ! その間にワシはチャーシューを仕上げる! 奴が来る前に準備を終わらせるぞ?」
「はい、店長!」
ファインモーションと店長の2人が慌しく大量のトッピングの準備をしている、そんな戦場と化した店に、1人のウマ娘が現れた。
そのウマ娘は、店の入り口である古びた引き戸を勢いよく開くと、開口一番こう叫んだ。
「店主、チャレンジだ!」
「……魔王め、今日こそ返り討ちにしてやるぞ!」
「……あれが魔王ですか……」
ファインモーションが緊張した面持ちで魔王と呼ばれたウマ娘を見詰めながら店長に声をかけると、真剣な眼差しで店長が頷き、場の空気が緊迫したものとなった。
「ファイン、チャレンジメニューの準備にかかるぞ? ワシはスープをみる、お前は麺を準備しろ。 これ迄の修行の成果、あの魔王に見せ付けてやるが良い!」
「はい、店長! 私の持てる力全てを出して湯切りをします!」
「ああ、お前の素晴らしい湯切りを見せ付けてやれっ!」
そう言って一致団結した師弟は、一心不乱に調理を始めた。
「うぃ? あ、オグリん、おっすおっすっ!」
「……リアルデューク? それにブライアンじゃないか? 2人共来ていたのか?」
店に入って来たウマ娘を見て、すぐに知り合いのオグリキャップだとわかったリアルデュークが元気に手を上げて挨拶をすると、オグリキャップの方も2人を認識したのか笑顔で話しかけながら、リアルデュークの隣の席に腰を下ろした。
「ラーメン食べてた!」
「ここのチャーシューは絶品だからな、うちの子にも食べさせたかったんだ。」
「そうか、2人は仲良しさんだな?」
「ああ、仲良しさんだ。」
仲良くラーメンを食べる2人を微笑ましく感じるオグリキャップが笑顔でそう話すと、リアルデュークが首を傾げながら問い掛けてきた。
「オグリんもラーメン?」
「ああ、ここの店は私の行きつけでな? 学園の周りで唯一チャレンジメニューを続けてくれている店なんだ。 前は他にもやっている店があったのだが、何故か辞めるかお断りされてしまうんだ。」
その時の事を思い出したのか、ウマ耳を元気無く垂れさせて俯くオグリキャップを見たリアルデュークが気にせず更に問い掛けた。
「チャレンジメニュー?」
「そうだ、チャレンジメニューは凄いんだ。 何と、完食すればいくら食べても無料なんだ!」
「無料凄い! チャレンジメニュー最強!」
オグリキャップの話を聞いたリアルデュークが、何故か興奮気味に立ち上がってそう叫ぶ姿を見ながら、ブライアンが騒がしく調理をする2人と期待に目を輝かせるオグリキャップを交互に見ながら若干顔を引き攣らせてぼやく。
「……オグリキャップ相手にチャレンジメニューとはな……心意気は買うが、この店大丈夫なのか?」
ブライアンさん大満足な日常です。