メジロ家の変な子   作:ネギ市場

114 / 130
戦いの後

 

 

 湯気の立つティーカップを囲み、リアルデュークは膝の上でにこにこと笑っていた。

 ブライアンも、その小さな手を握り返しながら、楽しそうに見つめる。

 部屋の明かりは柔らかく、窓の外の街路樹にはイルミネーションが静かに灯っている。

 クリスマスイブの夜らしい、少し特別で温かな空気が漂っていた。

 マックイーンは胸の奥で焦りと嫉妬を抱えたまま、ティーカップの縁を指でなぞる。

 苛立ちや独占欲は消えないが、今はこの穏やかな時間に押さえ込まれていた。

 ビワハヤヒデも理知的な微笑みを崩さず、内心の小さな八つ当たりを抑えつつ、ブライアンの楽しそうな様子を静かに見守る。

 千尋は穏やかに微笑みながら、お代わりを淹れたティーカップを差し出す。

 大人としてのさりげない配慮が、この夜をさらに柔らかく彩っていた。

 そして、ふと膝の上でリアルデュークがまぶたを閉じる。

 小さな体がゆっくりと重くなり、ブライアンの腕の中で安心しきった寝息を立て始めた。

 「……良い子は寝る時間だ」

 ブライアンは微笑み、そっとリアルデュークを抱き直す。

 「うぃ……」

 小さな声が漏れ、すぐに静かな寝息に変わる。

 マックイーンもビワハヤヒデも、その様子に自然と視線を向ける。

 嫉妬や苛立ちはまだ心の奥に残るが、この瞬間だけは静かな和みが部屋を包む。

 ブライアンはリアルデュークの寝顔を見下ろし、満足そうに小さく頷いた。

 「……今日は楽しかったな?」

 窓の外のイルミネーションが、柔らかく光を揺らす。

 暖かい室内、静かな夜、膝の上で眠るリアルデュークの寝息――クリスマスイブの特別な時間は、こうして静かに、しかし確かに刻まれていった。

 

 朝の光が、安アパートのカーテンの隙間から差し込んでいた。

 いつもより少し遅い時間。けれど、静かで穏やかな朝だった。

 リアルデュークは、ソファに敷かれた毛布の中で、もぞりと身じろぎする。

 「……うぃ……?」

 寝ぼけた声と一緒に、ゆっくりと目を開けた。

 見慣れない天井。知らない匂い。

 一瞬きょとんとしたあと、昨夜のことを思い出して、ぱちぱちと瞬きをする。

 「……おにく……パパ……」

 そのすぐ横で、ブライアンが床に座り、壁にもたれて目を閉じていた。

 ほとんど寝ていないはずなのに、リアルデュークの気配にすぐ気づき、片目を開ける。

 「起きたか」

 「うぃ!」

 ブライアンは小さく笑い、リアルデュークの頭を軽く撫でた。

 それだけで、リアルデュークはすっかり安心した顔になる。

 キッチンの方から、湯を沸かす音。

 千尋がエプロン姿で振り返り、柔らかく声をかけた。

 「おはよう。よく眠れた?」

 「うぃ!」

 マックイーンはテーブルに座り、カップを手にしながら、その様子を横目で見ていた。

 胸の奥に残るもやもやは、まだ消えていない。

 けれど――リアルデュークが何事もなかったように笑っているのを見て、昨夜よりは少しだけ、肩の力が抜けていた。

 ビワハヤヒデは窓際に立ち、朝の光を背にして腕を組む。

 「……やれやれだな」

 その声には、昨夜の八つ当たりめいた棘はほとんど残っていなかった。

 ブライアンは立ち上がり、リアルデュークを抱き上げる。

 「朝飯、世話になるぞ」

 「ええ、簡単なものですけどね」

 リアルデュークはブライアンの肩に手を置き、にこっと笑った。

 昨夜の非日常は、もう過去のもの。

 今はただ、少し特別だったクリスマスイブの続きを、穏やかな朝として受け取っているだけだ。

 こうして、少し騒がしくて、少しぎこちなくて、それでも確かに温かかった夜は終わりを告げる。

 クリスマスイブは、静かに思い出へと変わり――

 それぞれの想いを胸に、いつもの日常が、また動き出していた。

 







 はい、今回はかなり短いです。
 ちょっと区切り的なものと言いますか、言い訳するなら構成ミスりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。