湯気の立つティーカップを囲み、リアルデュークは膝の上でにこにこと笑っていた。
ブライアンも、その小さな手を握り返しながら、楽しそうに見つめる。
部屋の明かりは柔らかく、窓の外の街路樹にはイルミネーションが静かに灯っている。
クリスマスイブの夜らしい、少し特別で温かな空気が漂っていた。
マックイーンは胸の奥で焦りと嫉妬を抱えたまま、ティーカップの縁を指でなぞる。
苛立ちや独占欲は消えないが、今はこの穏やかな時間に押さえ込まれていた。
ビワハヤヒデも理知的な微笑みを崩さず、内心の小さな八つ当たりを抑えつつ、ブライアンの楽しそうな様子を静かに見守る。
千尋は穏やかに微笑みながら、お代わりを淹れたティーカップを差し出す。
大人としてのさりげない配慮が、この夜をさらに柔らかく彩っていた。
そして、ふと膝の上でリアルデュークがまぶたを閉じる。
小さな体がゆっくりと重くなり、ブライアンの腕の中で安心しきった寝息を立て始めた。
「……良い子は寝る時間だ」
ブライアンは微笑み、そっとリアルデュークを抱き直す。
「うぃ……」
小さな声が漏れ、すぐに静かな寝息に変わる。
マックイーンもビワハヤヒデも、その様子に自然と視線を向ける。
嫉妬や苛立ちはまだ心の奥に残るが、この瞬間だけは静かな和みが部屋を包む。
ブライアンはリアルデュークの寝顔を見下ろし、満足そうに小さく頷いた。
「……今日は楽しかったな?」
窓の外のイルミネーションが、柔らかく光を揺らす。
暖かい室内、静かな夜、膝の上で眠るリアルデュークの寝息――クリスマスイブの特別な時間は、こうして静かに、しかし確かに刻まれていった。
朝の光が、安アパートのカーテンの隙間から差し込んでいた。
いつもより少し遅い時間。けれど、静かで穏やかな朝だった。
リアルデュークは、ソファに敷かれた毛布の中で、もぞりと身じろぎする。
「……うぃ……?」
寝ぼけた声と一緒に、ゆっくりと目を開けた。
見慣れない天井。知らない匂い。
一瞬きょとんとしたあと、昨夜のことを思い出して、ぱちぱちと瞬きをする。
「……おにく……パパ……」
そのすぐ横で、ブライアンが床に座り、壁にもたれて目を閉じていた。
ほとんど寝ていないはずなのに、リアルデュークの気配にすぐ気づき、片目を開ける。
「起きたか」
「うぃ!」
ブライアンは小さく笑い、リアルデュークの頭を軽く撫でた。
それだけで、リアルデュークはすっかり安心した顔になる。
キッチンの方から、湯を沸かす音。
千尋がエプロン姿で振り返り、柔らかく声をかけた。
「おはよう。よく眠れた?」
「うぃ!」
マックイーンはテーブルに座り、カップを手にしながら、その様子を横目で見ていた。
胸の奥に残るもやもやは、まだ消えていない。
けれど――リアルデュークが何事もなかったように笑っているのを見て、昨夜よりは少しだけ、肩の力が抜けていた。
ビワハヤヒデは窓際に立ち、朝の光を背にして腕を組む。
「……やれやれだな」
その声には、昨夜の八つ当たりめいた棘はほとんど残っていなかった。
ブライアンは立ち上がり、リアルデュークを抱き上げる。
「朝飯、世話になるぞ」
「ええ、簡単なものですけどね」
リアルデュークはブライアンの肩に手を置き、にこっと笑った。
昨夜の非日常は、もう過去のもの。
今はただ、少し特別だったクリスマスイブの続きを、穏やかな朝として受け取っているだけだ。
こうして、少し騒がしくて、少しぎこちなくて、それでも確かに温かかった夜は終わりを告げる。
クリスマスイブは、静かに思い出へと変わり――
それぞれの想いを胸に、いつもの日常が、また動き出していた。
はい、今回はかなり短いです。
ちょっと区切り的なものと言いますか、言い訳するなら構成ミスりました。