メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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こういう解釈もあると思うんです。


名家と血筋

 

 

 

 

 メジロ家別邸。

 ここには中央と呼ばれるトレセン学園から程近い自然豊かな場所にあり、主に学園に通うメジロ家のウマ娘達が療養や調整の為に利用する療養所と呼ばれる病院を中心とした施設群と、まだ学園に通う前の子供達が、その準備を整える為の屋敷とに別れている。

 そんな屋敷で1人気儘に暮らしているリアルデュークは、日課のトレーニングを終わらせた後、週に一回あるダンスの練習をする為、療養所にあるダンスの練習部屋で、柔軟等の準備運動を入念に行っていた。

 その後、ダンス講師に指導されながら、ウィニングライブで踊る楽曲の各種パートの振り付けの確認と練習をある程度終わらせると、リアルデュークは部屋から持ってきた薄汚れたジュート袋から、とても大切そうに大きな布を取り出して、とてもご機嫌にそれを頭から被った。

 「…また、あんな汚いボロ布を」

 側に控えていたまだ10代後半くらいの年若いメイドが、嫌な物を見たかの様にリアルデュークが被った布を睨み付ける。

 

 

 そんな視線に気がつく事も無く、リアルデュークは、その場に居る人達に布の自慢をしてまわる。

 リアルデューク曰く、この布は育ての親達がお金を出し合って材料を買い、みんなで手作りしてくれた物で、バウレ布といい、あるダンスをする時に必須の物なのだと言う…そのダンスはお祝い事や、何か良い事があった時、悲しい事があった時に仲間たちみんなで踊る大変大事なダンスらしい。

 その場に居た大人達への自慢が終わった後、リアルデュークがメイドの所にも走って来て、メイドの顔の前にその布を広げて自慢する。

 愛想笑いを浮かべ、適当に相手をしたそのメイドは、終始つまらなそうに練習を眺めていた。

 

 

 

 「…リアさんのことですが、帰って来てから2年経ちましたが、様子はどうですか?」

 執務室の窓辺に立ち、外の庭園を眺めながらアサマは自身の孫であるリアルデュークの様子をモニター越しに執事補佐に尋ねる。

 「そうですね、日本語については生活に困る程拙いという訳ではありませんが、感情でかなり言語能力に差が出る感じがします。 学力に付きましては……国語の理解力が低い為、問題の趣旨等が理解出来ずに間違えている所が多い気がします。 試しに元々の言語で授業を行ってみた所、すこぶる優秀な結果が出ております。」

 手元の資料を確認しながら、執事補佐は返答する。

 執事の報告を嬉しそうに聞いたアサマは、更に気になる事を尋ねる。

 「それで、あの子の選手としての能力はどの程度になりそうかしら? まだトレーナーを付けて練習をしていないみたいですし、特に問題が無ければ、あの子が学園に入る迄の指導をして下さるトレーナーを付けたいのですが……」

 「それは些か難しいかと思います。 リアお嬢様はトレーニングその物は欠かさず、ある程度の計画性を持って行っておりますが、何故かトレーニングは必ず1人で行っており、筋トレ以外は誰にも見せない徹底ぶりです。 理由を尋ねた時にも『ダメ』の一言だけでした。 まぁ、筋トレに関してのみ、ライアンお嬢様の指導を喜んで受けておられますが……」

 「何か、トレーニングをみせない理由でもあるのでしょうか? 迎えに行ったスーちゃんは、普通にトレーニングを見ていたらしいのですが、向こうと此方では何か違うのかしら?」

 「……設備などの環境面で言えば向こうとは比べるべくも無い筈ですが、使っている施設を見ますとトレーニングマシン以外は利用した形跡がありません。 それから、毎月お嬢様宛てに蹄鉄が届いているのですが、送り主の名前が何時も違う名前でして、送り先を調べてみたのですが、これが又……」

 「何か問題が?」

 「問題と申しますか、調べてみるとアッサリと判明しました。 送り主の名前は毎回変えのに、発送元の住所は全て同じでしたので……」

 「隠す気が有るのか無いのか?」

 「ええ、そうなのです。 そこが気になった所でして、リアお嬢様がトレーニングをお一人で行う理由もそこにあるのかも知れませんが、特に無理なトレーニングを行っている訳でも無さそうですので、特に問題が出るまでこのまま様子を見ているつもりです。 それよりも、お嬢様には他に大きな問題が御座います!」

 執事補佐は真剣な眼差しでアサマを見詰める。

 「……そうね、確かにあの子には大きな問題が有りますね。」

 「はい、この問題をそのままにしては、お嬢様の将来に関わります。」

 「ん〜、ちょっとだけ破天荒なのよねぇ。 そういう所もまた今までにないタイプで可愛い所なのですが……直さないとダメ?」

 コイツマジか?と、言いそうな驚愕の表情を浮かべた執事補佐は、少し強めの声色でアサマに訴える。

 「アサマ様、これまでのお嬢様の行動、とてもとてもメジロ家のご令嬢として、相応しいとはとても言えないモノばかりで御座います! 私共がどれだけお諌め致しましても、一向に改める気もない所か、最近では午後の礼儀作法には殆ど出ておりません! その姿を見て不満に思う者達もおり、特に行儀見習いで各家からお預かりしている方々の中には、才能も無い血筋だけの放蕩者と言う者も出る始末です。」

 荒い息遣いを隠しもせずに一気に捲し立てる。

 「ふむ、血筋だけですか……執事補佐、その行儀見習いの子達ですが、再教育が必要みたいですね?」

 「なっ!再教育が必要なのは彼女達ではなく、リアルデュークお嬢様の方です!」

 アサマが目を細めて口元を扇子で隠す。

 「トゥインクルシリーズで一番重要視されるのは何かしら?」

 「それは、本人の資質、才能だと思いますが?」

 急に予想から外れた質問に執事補佐は怪訝そうに答える。

 「ソレもあるわね。でも、1番では無いわ。」

 「では、何が1番に必要だと言うのですか? まさか本当に血筋だなんて思ってませんよね?」

 「思っているわよ? だって、レースに関わる名家と呼ばれる者達が、何故そう呼ばれるのかわかる? それは、レースで勝てる血筋を作る為だからよ。 だから、血筋だけと侮り侮蔑する様な無知な子には、しっかりと間違いを指摘してあげるのが、大事な子息女をお預かりしている私達の義務ではなくって?」

 凄みを増したアサマの雰囲気に怯んだ執事補佐は、それでも譲れない所があるのか反論を始める。

 「それは暴論です! 零細や寒門と呼ばれる人達だって活躍する子は居ます! 血筋なんて判断基準の一つに過ぎません!」

 「寒門ねぇ、ねぇ?執事補佐さん、何故、彼女達が寒門や零細等と呼ばれるのか。世間的には彼女達は名家と良く比べられるけれども、実際には私達と同じ……彼女達はその血筋の力が落ちただけで、その存在と考え方は私達と同じなのよ。 トゥインクルシリーズに参加するウマ娘達の8割近くがそうだから言えるのよ、血筋こそが1番だと、メジロも、シンボリも、日本最大の社外グループも、みんな自らの血筋を信じて、その力でレース界を蹂躙する為に努力を重ねているのよ」

 「……で、ではその血筋に当たらない者達は如何なるのです? 血筋が全てと言えるレースで、何も持たない者達には、絶望しか無いではないですか!」

 「DEUS lo Vult……神がそれを望まれる。」

 「…まさか神様が救ってくれるとでも?」

 揶揄われたと思ったのか、斜に構えた態度で言い捨てる。

 「そうよ? 時々、トゥインクルシリーズでは血筋も無く、碌な環境じゃない、お金も無い、そんなドン底から頂点に立つウマ娘が一定数いるのよ。 これって、正に神に愛されたとしか思えないウマ娘よね? まぁ、そんな子も名家が自分達の血筋に取り込んでしまうのがこの世界なのですよ?」

 「そんなの救いが無いじゃないですか……」

 「そうよ? 子供の遊びじゃないのですもの、そんな甘い世界じゃないわ。」

 知らなかった世界の仕組みを知り、暫し愕然とする執事補佐だった。

 

 




 
 
 
リアルな競馬の世界を元に考えると、こんな感じだと思うんですよね。

少し修正してみました。
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