円卓って使い辛そうですよね。
「リアさん、貴女試験勉強とかちゃんとしてますの?」
ある日の朝、屋敷のサンルームで、食後の日向ぼっこをしていたリアルデュークに、マックイーンが何となく気になってした質問がきっかけだった。
「試験? 勉強、なんで?」
寝転がったまま、顔だけあげて首を傾げるリアルデュークを見て、マックイーンは、過去最大級の嫌な予感を感じた。
「執事補佐! 今すぐに執事補佐を呼びなさい!」
非常に焦った様子で近くのメイドに指示を出すと、自らも慌ててウマホを取り出し、ラモーヌへ連絡を取り始めた。
所変わってここは、メジロ家別邸にある会議室、そこは普段の落ち着いた雰囲気ではなく、緊張感溢れる場となっていた。
急遽用意された円卓には、ラモーヌ、ライアン、ドーベル、メイド長が座り、リモート参加で執事長も居た。
因みに、この場に居ない執事補佐はと言うと、数日前に幼女の部屋に侵入して床で鼻血を出しながら寝て居た所を、掃除に来たメイドの通報によって、現在留置所暮らし真っ最中である。
尚、多数の証言により、余罪がある者として、現在更なる捜査が行われているらしい。
そして、円卓の真ん中の空間には、椅子に縛り付けられたリアルデュークがおり、全員が視線を向ける先には、大きなホワイトボードとその前で、先が刺激で光るタイプの指示棒を持ったマックイーンが、厳しい表情で立っていた。
「……さて、先ずはこの場にお集まり頂いた皆様方に、御礼申し上げますわ。 早速ですが、この集まりの趣旨を説明させて頂きますと、ズバリ、今のままでは、メジロ家から初のトレセン学園入試失敗者が出る可能性が高いので、何とかする対策を練る為ですわ!」
この集まりの趣旨を一気に言い切ったマックイーンは、鼻息荒く参加者達を見回した。
……誰もマトモに話を聞いて居なかったのと、リアルデュークが変顔して居た為、マックイーンは指示棒を変顔目掛けて思いっ切り投げ付けた。
指示棒を投げ付けられ、幼女が良い声で鳴いた後、そのまま飛び掛かろうとした所を、ライアンが必死に宥めてやっと落ち着いたマックイーンは、執事長の執り成しも有り、再び進行役を担っていた。
「さて、改めて現状の確認をしますと、まず、今のままの学力では合格は無理、これから頑張っても良くて4割の合格率で、スポーツテストに関しては一度もやった事が無いので未知数、面接に関してはまずまともな受け答えが出来ないだろうと、言う事ですので……これ、もう手遅れでは?」
自分で資料を読み上げながら、既に有効な手段が何も浮かばないことに愕然とする。
誰もが諦めの表情で考えこんでいた。
「そう言えば、トレセン学園って推薦枠があるって噂があったよね? それで何とかならないかな?」
「「「「「それだ(よ)(ですわ)!」」」」」
思わずといった感じで全員が声を合わせる。
「執事、すぐに推薦枠について調べて下さい。 ラモーヌ姉様は過去に推薦された人について、ドーベルさんはラモーヌ姉様の補佐を! ライアンさんは、私と一緒に学園の先生方に聞き込みをしますわよ?」
マックイーンが、矢継ぎ早に指示を出すと、それぞれがすぐに了解して部屋を出て行く、最後にライアンと手分けする先生をリスト化した2人も、意気揚々と部屋を出て行った。
ただ1人、この問題の張本人を残して……
「……しょんぼり。」
椅子に縛られて放置されたリアルデュークは、ただただ黄昏ていた。
あの会議から数日経ったある日、前回の参加者達は再び会議室に集まっていた。
「では、第二回リアルデューク救済会議を行います。 議長は、前回に引き続き、私こと、メジロマックイーンが務めさせて頂きます。」
全員、前回と同じ席に座ってマックイーンの話を聞いていたが、ただ1人だけ不参加となったリアルデュークは、居ても意味が無いと判断され、メイド長直々に礼儀作法の特訓を付けられて居た。
「先ずは、執事が調べた内容からですわ」
その場に居たみんなが、プロジェクターでホワイトボードに映し出された執事長を見る。
「おはよう御座います、お嬢様方。 まず、結論から申しますと、今現在トレセン学園に推薦枠で入学された方は居りませんでした。 ただ、通常の試験を受けた後に、本来なら不合格な筈なのに、理事長面接でその場で合格とされた者ならば、一定数居られるみたいです。 この事実を踏まえて考えますと、どうやら推薦枠とは、この理事長の判断で行われる何らかの試験で間違い無いのではないか?と、愚考する次第で御座います。」
「ふむ、つまりはその理事長の面接内容を知る事が出来れば対策をして挑めると言う事ね?」
執事長の話を受けて、ラモーヌは少しだけ考える素振りを見せると、ドーベルに資料を配らせる。
「この資料を見てわかる通り、ここ3年間で推薦を受けたと思われる子達は、僅か3名程、それ等の子達に共通しているのが、共通点がないって事よ。
学力は平凡、スポーツで見るべき所があった者は1人だけ、あとの2人に関しては、言っては悪いけど何で推薦されたのか、全然、全くもってわからないわ」
ラモーヌは首を振って掌を上に向けて、分かり易くお手上げ状態である事を訴える。
「学園の先生方はどうでした?」
ラモーヌの報告を受けて、流れを変える為か、ドーベルがマックイーン達に報告を促す。
「私もマックイーンも、色々聞いてまわったけど、推薦に関してはどの先生たちも、理事長次第としか言ってくれなかった。」
「……正に八方塞がりですわね。 他に何か聞いたり見たりした事で、何か気になる事は無かった?」
マックイーンが一人一人に目線を送ると、送られた子は首を振り下を向く。
「そ、そういえば…昔の話らしいんだけど、地方の地元開催レースで勝ちまくって学園にスカウトされた子が居たって聞いた事あるわ」
ドーベルが思い出した様子でぼそっと言い放つ。
「スカウトかぁ、確かに、学園にはスカウト専門の人が居るって噂は、昔から有るみたいね」
「でも、それって噂だけで実際には存在しないとも言われているよね?」
ドーベルの話を聞いて、マックイーンとライアンが話し合う。
「……あら、スカウトさんなら居るわよ? 私会ったことあるもの。」
ラモーヌが当然の様に言う。
「はあぁぁっ? ね、姉様、それは本当なのですか?」
意外な発言にマックイーンが素っ頓狂な声をあげて確認してくる。
「ええ、だって私が直にスカウトさんからのオファーを受けましたもの。 メイド長もその場に居りましたから聞いてみても宜しくてよ?」
少しだけ自慢げに答えたラモーヌは、側に控えていたメイドに、メイド長を呼んでくる様に頼む。
「はい、ラモーヌお嬢様は確かにトレセン学園所属のスカウトの方にお声掛け頂いた事が有ります。」
縛られて小脇に抱えられたリアルデュークと共に入室したメイド長は、グッタリとしているリアルデュークを気にする素ぶりもなく、アッサリと答えた。
「何を理由に、そのスカウトさんはお姉様にお声掛けしたのでしょう?」
グッタリしている幼女擬きが多少なりとも気にはなっていたが、それよりもまずは目先の問題解決が先決だと思い、気になっている事を尋ねる。
「あの時は、ラモーヌお嬢様も幼く、退屈だと地域のレースを荒らし回っていた頃で御座います。 その頃に比較的大きな大会で大差で優勝した直後に不審な男が声を掛けて来ましたので、事案発生として実力での鎮圧をはかった時に自らスカウトである事を申し出ましたので、学園側に照会後に話を聞いた形でございます。」
話を聞いたマックイーンは、暫し考えると、確認を兼ねて聞いた。
「つまり、レースである程度の成績を納めて噂になる事かしら?」
「状況的にはその可能性があります。 あの頃のお嬢様は、その、少しばかりヤンチャ?でしたので……」
「学園でも噂になるくらいの強さでレースを勝ちまくれば、スカウトが来る可能性が高い?」
「噂になるくらいの強さっていうと、どの位かしら?」
ライアンとドーベルも考え始める。
「全てのレースで大差勝ち……この位は必要じゃなくて? 仮にも私の妹なのですから…」
何故か腕を組み、不敵に笑うラモーヌ。
「……それで、私は良く知らないのだけど、強いの? リアちゃんは?」
思わず、その場の全員で、縛られてグッタリとしているリアルデュークを見た。
幼女擬きの活躍する所がそろそろ見たいなぁと、そう思ったら幼女に筆を止められました。
どうやら、まだまだぐうたらしたいみたいです。