色々と考察とか調べたら、逆に正解が見えなくなったので、こうなりました。
飽く迄も、この世界線ではこうなったと言う事です。
レースが終わり、審議のランプが灯ったままの東京レース場の裁定室に、審議委員男女合わせて7名とその他3名が集まっていた。
場の空気は重く、不穏な空気が流れる10畳ほどの室内に、怒号が響いて居た。
「……納得がいきません。 何をもって貴方方はうちの子の名誉に泥を塗ると言うのですか!」
メジロマックイーンが、レース後にURAによる事情聴取を受けた際に、彼女のトレーナーと共に保護者として同席したアサマは、怒りに震えながら孫の名誉を守ろうと声を張り上げていた。
未だレースは審議中であり、審議の内容としては、レース開始序盤の第2コーナーでのメジロマックイーンによる斜行が原因で、プレジデントシチーの進路が塞がった為、これを重大な違反行為として、メジロマックイーンを18着の降着処分とし、更にレースへの一定期間の出場停止、罰金も課してそのトレーナーにも3ヶ月の謹慎と罰金を課すという、今までにないとても重い処分内容であった。
また、その通告をしたURAが指名した審議委員長を務める中肉中背で神経質そうな男も、尊大な態度ではなからマックイーンの弁明に耳を貸さず、メジロ家だからといって例外は認めない、自分は権力には屈しないと、検討外れな考えと主張に終始しており、そんな男の次の一言でアサマの我慢は限界を迎えた。
「どうせ、これ迄にも家の権力を使って反則行為で勝ってきたのでしょう? だが、この私が審議委員に居たのが運の尽きでしたな、URAから正式に任命された審議委員長である私には、メジロ家の権力等通じませんぞ?」
「わ、私は誓って反則などしておりません!」
思いもよらない言葉をぶつけられたマックイーンは、涙ながらに身の潔白を訴えたが、大半の審議員が職員と同じ考えなのか、既に答えは出ているのに無駄な訴えだとばかりにニヤニヤして居た。
「……良いでしょう、メジロ家だからこの子を裁くと言うのならば、今後我がメジロ家は貴方方とは袂を別ちます。
こんな無能な者しか居ない組織であるURAなど、愛想が尽きました。
我がメジロ家は、今後一切、日本のURAが主催するレースには出場致しません。
勿論、全ての寄付や協賛金、事業等も引き上げさせて頂きますし、版権などの使用も一切お断りします。」
完全に頭に血が昇っているアサマの姿を見て、男は子供の我儘を諭す様な、何処か相手を下に見た態度で溜め息混じりに言った。
「その様な出来もしない事を言っても、我々の正当性は微塵も揺らぎませんよ?」
「出来るか出来ないかではありません。 我等の誇りに後ろ足で砂をかけるかの様な行いに対して、私達は毅然とした態度で望みます。 つまり、喧嘩を売ったのはURA側であり、私達メジロ家はそれを買ったと言うだけのこと……我がメジロ家の子供達の名誉と誇りは、メジロ家総帥たる私が守ります!」
そう宣言したアサマは、悔し涙を流すマックイーンを伴って裁定室から出ようとしたその時、扉が勢いよく開け放たれた。
「アーちゃん、もうちょっとだけ時間を貰えるかしら?」
「スーちゃんと……シンさま?」
扉を開けて中に入ってきたのは、スピードシンボリとシンザンであった。
「さて、審議委員の皆様方、私ことスピードシンボリと此方にいらっしゃるシンザン様は、今回の皆さんの判定に異議を唱えさせて頂きますわ。」
「さて、審議委員の皆様、それにメジロアサマ様、まず初めに一言言わせて下さいね?」
何事かと騒つく審議委員達を無視して、スピードシンボリが一喝した。
「ここはレースでの問題を審議する場であって、貴方達の政治ごっこの遊び場では無い、選手たちを置き去りにして何の為の審議かっ!」
そう一喝するスピードシンボリの隣に立ったシンザンが、冷めた視線を室内に居る大人達に向けた後、マックイーンの側に行きそっと抱き締める。
「……アサマ、何故この子は泣いておる? 何故、斯様に辛き涙を流して居るのじゃ!」
普段と違う圧をシンザンから感じたアサマが、それでも先程からの怒りを治められずに答える。
「URAに名誉を汚されたからですわ!」
「……そこな男よ、この子は何故に泣いておる?」
今度は突然の事に呆けていた男に問いかける。
「はぁ、知りませんねぇ、子供なんて自分が不利になっても、泣けば許されるとでも思っているのでしょう? それよりも、いけません、いけませんねぇ、幾らシンザンさんでもここは部外者立ち入り禁止、勝手に入ってきては無作法に過ぎると言う物、品性を疑われますぞ?」
「子供だからか……で、その子供を見世締めに使うつもりと言う訳じゃな?」
シンザンは、男の態度に思う所があったのか、一瞬片眉を吊り上げたが、すぐに平静に戻り、質問を続けた。
「やれやれ、言うに事欠いて見世締めとは、酷い言い掛かりですね? 我々は公正なルールに則って、適正な判断の下裁定しただけで、悪いのは反則を犯したのに、家の権力を使って脅しているそこのメジロ家の方々ではないでしょうか?」
相変わらず、上から目線で話す男に、怒りの視線をむけるアサマを一瞥しながら、シンザンはニヤリと笑う。
「成程のぅ、公正なルールと言うならば、プレクラスニーにも降着処分をせねば片手落ちじゃろ? マックイーンが内に寄った時、隣のプレクラスニーがマックイーンに張り合って必要以上に内に寄っておる。 公正と言うならばその行為も裁かねばならん。 それをせずに片方だけに重い制裁を課すのは、公正とは言えぬ。 大体、マックイーンはプレクラスニーに体当たりをした訳でも無く、プレクラスニーには前に十分な進路もあったのに、横に動くと言う判断ミスがあったしのう。」
「なっ! それは最初に内に寄ったマックイーン選手が悪いのであって、プレクラスニー選手は、完全なる被害者です。 彼女は必死に努力したのに、この反則のせいで、その努力を台無しにされたのです。 彼女の素晴らしい努力の為にも、私たちは今こそ公正な裁きを行う為に、権力に立ち向かっているのです。 そう、これは今後100年の公正なレースの為、その礎としてメジロマックイーンの名は、後世の規範を作るきっかけとして語り継がれることでしょう。 正にこれこそが名優と言われるメジロマックイーン選手が、償いをする為に私達が与える名誉なのです!」
段々と自己の言葉に酔って来たのか、感極まった表情で男は演説をするかの様に、身振り手振りを交えて話を続けた。
「では、前回行われたマイルCSでの明らかな斜行で、該当の者に処分が無かった事はどう説明するのじゃ?」
そんな男の言葉を遮り、シンザンが問いかける。
「今話しているのは、既に裁定が済んだレースではありません。」
男は苛つき大声を出して反論する。
その姿を見て、更に眉を寄せ、耳を絞りながらシンザンが皮肉を言う。
「都合の悪い事は言わないとは、随分と都合の良い話じゃな?」
険悪な雰囲気が室内に蔓延する中、スピードシンボリが動いた。
「……既に20分経っています。 お二方の意見を折半してメジロマックイーンの降着は無し、選手にはペナルティとして賞金の3割を減額、トレーナーには1ヶ月の謹慎処分とする。 もしくは、1着、2着を降着し、選手にはこれ以上の処分は無し、トレーナーは1着は3ヶ月、2着には1ヶ月の謹慎処分のどちらかを多数決で決めると言うので如何でしょう?」
見兼ねたスピードシンボリが、この場の者達にそう提案し、少しこの遣り取りに飽きて居た他の審議員達が賛同した為、すぐに多数決による決議が取られた。
結果、マックイーンの降着は無くなり、会場にも結果がアナウンスされた。
これにより、メジロマックイーンの同年天皇賞春秋連覇は達成され、東京レース場はお祭りムードとなったが、関係者達はそれぞれ遺恨を抱える事となった。
特に、最後まで自身の提案する処分案に拘泥した男と、処分自体に反対していたアサマの2名は、互いに睨み合ったまま一言も言葉を交わす事なく、別れて居た。
賛否両論あると思いますが、一言だけ
この物語はフィクションです。