ノータッチが大事です。
「任せろって言うけどさ、ゴールドシップ、実際の所これどうするのさ?」
未だに穏やかに笑いながら、紅茶を飲みつつマロングラッセをパクパクしているマックイーンを眺めながら、トウカイテイオーがゴールドシップに問いかける。
そのゴールドシップはと言うと、何処から取り出したのか、ショットグラスを2つテーブルの上に置き、もう一つを真剣な表情で磨いていた。
そして、満足するまで磨いたグラスをマックイーンの前に並べると、サムズアップをしながら、満足気に笑った。
「……だからそれが何なのさ!」
思わず叫ぶトウカイテイオーに対して、ゴールドシップがやり切った表情で親指を立てる。
「もぉ、訳わかんないよ!」
そう叫ぶトウカイテイオーを、察しの悪い人を見る様な表情で眺めながらゴールドシップが面倒そうに言い放つ。
「っだよてめぇ、わかんだろこれくらいよぉ?」
「分かんないよ!もう、ゴールドシップが絡むと訳分かんなくなるよ。」
頭を抱えて叫ぶトウカイテイオーの肩を、リアルデュークが優しく叩く。
「大丈夫、ボク分かった。」
「お、オメェは中々に見所がある奴だな? このゴルシちゃんに分かるように言ってみろよ。」
リアルデュークは、上機嫌で答え合わせを提案してくるゴールドシップを一瞥すると、トレーナーに丸投げした。
「……ここは大人、出番。」
「おいおい、俺にコイツの考えが分かる訳無いだろ? ゴールドシップだぞ?」
急に振られて慌てるトレーナーを見て、リアルデュークがヒントを口にする。
「パクパクさん見ろ。」
先程より少しだけ表情が固くなったマックイーンの視線の先を見てみると、ゴールドシップが全力で変顔しながら煽っていた。
「へいへいへいっ! どうしたどうしたマックちゃん。」
ヒントに全くなっていない状況にイラついたのか、心のままに叫ぶトレーナーだった。
「お前は何がしたいんだ!」
ダメそうだと判断したリアルデュークが説明を始める。
「昔、体重減らす為、辛い物いっぱい食べた、聞いた事ある。」
その幼女の言葉に、マックイーンの体が若干震えはじめる。
「辛いのって言うと、やっぱり唐辛子か?」
トレーナーの常識的な言葉に、マックイーンの震えが若干弱まった。
「ばっかお前、辛い物と言えばやっぱ鬼芥子だろ?」
ゴールドシップの非常識な言葉に、マックイーンの耳と肩が震えた。
「前にエルコンドルパサーに聞いたら、キャロライナ・リーパーがお勧めらしいよ? 何でも鷹の爪の55倍の辛さらしいし。」
トウカイテイオーの気狂いな言葉に、マックイーンは逃げ出した……ドアの前にゴールドシップがいる……逃げられない。
マックイーンは窓から逃げた……窓の前にはリアルデュークがいる……逃げられない。
マックイーンの目の前に置かれた3個のショットグラスには、赤い液体が注がれていた。
「って事で、取り敢えず3つ全部試していこうぜ!」
ご機嫌なゴールドシップが、赤い液体が入った3つのグラスを楽しそうに見ながら、何処からか取り出した野菜スティックをテーブルに置く。
「ま、待ちなさい。ちょっとだけベストから増えた事は認めますわ。 だから、その短絡的な考えで行動するのはおよしになって! トレーナーさん、貴方も良い大人なのですから、こういった事は止めないといけませんわ!」
「ボク見たいなぁ、世界一に勝つお姉ちゃん、見たいなぁ。」
必死にゴールドシップを止めようとするマックイーンだったが、リアルデュークの一言で抵抗を辞めた。
「わ、私は……お、お姉ちゃんですわ!」
震える手でグラスを一つ持つと、一気に中身を飲み干した。
辛さを覚悟して居たマックイーンだったが、いざ飲んでみると、中身はトマトジュースだった。
「あら……皆さん、タチの悪いドッキリでしたのね?」
ホッとした表情で飲み干したグラスをテーブルに戻したマックイーンを見て、ゴールドシップが声を荒げる。
「んだよ、面白くねぇ! トマトジュースならこのゴルシ様が全部飲んじまうぞ?」
そう言い放って、残りのグラス2つを続けて一気に飲み干したゴールドシップが、飲んだ勢いのまま後ろ向きに倒れて悶絶する。
「……残りブーさん。」
「確率3分の2とかって……リアルデューク、結構鬼だよね。」
「パクパクさん、運が良い。 だから大丈夫。」
「成る程、最初からゴールドシップ狙いだったんだね?」
「……違う、アレ、排除する為。」
そう言ったリアルデュークの指し示す先は、悶絶するゴールドシップに水を渡して更に悶絶させているトレーナーだった。
「……トレーナーに何かされた?」
「さっき下半身触られそうになた。」
そうリアルデュークが言った瞬間、部屋の空気が一気に冷え込んだ。
「ち、ちょっと待て、お前等……誤解だ、俺は下半身じゃない、脚を……」
「ゴールドシップ!」
「おう!」
まずはゴールドシップがトレーナーの肩に飛び乗り、足首をもう一方の脚の膝裏に当てて両脚を4の字状に組んでのヘッドシザースを決めながら、床に引き釣り倒すと、すかさずマックイーンが仰向けに倒れているトレーナーの左脚を取り、スピニング・トーホールドのように体を回転する。
そして、右膝のあたりに取った左脚の脛を上に乗せ、その上から自分の左脚をかぶせるようにロックした。
「アダダダダッ!」
声にならない声で叫びながら、首に巻き付いているゴールドシップの足を必死にタップするトレーナーを冷たい目で見ながら、トウカイテイオーがゴミを見る様な目で告げる。
「トレーナー、流石にこれはダメだよ。 ギルティだよ。」
「ち、違う。 テイオー、俺は決して邪な気持ちは」
「問答無用で御座います。 ゴールドシップ、この変態に更なる制裁を与えますわよ?」
「おうっ! このゴルシ様に任せな!」
更にゴールドシップがトレーナーを締め上げる姿を見て、リアルデュークが、興奮気味に叫ぶ。
「おおっ! これが宇宙一凶悪コンビの技、8の字固め。 ボク大興奮!」
異様な叫び声が交差するマックイーンの部屋に、普段とは違う異常を感知したメイド達により通報を受けたメジロラモーヌが、警備の者を連れて部屋に駆けつけると、あのまま締め落とされたのか、気絶したトレーナーをゴールドシップが縛りあげている所だった。
「あんだぁ、随分と物々しい格好の兄ちゃん達を連れてきたな?」
「ラモーヌ姉様?」
部屋に入ってきたラモーヌ達は、ゴールドシップを一瞥すると、傍に居たマックイーンを問いただす。
「マックイーンさん、リアさん、これは一体何の騒ぎですか?」
ラモーヌの機嫌がかなり悪いと見抜いたリアルデュークは、即座に最善と思う策を実行した。
「姉様、アレ、ボクの下半身触ろうとした。」
リアルデュークの言葉を聞いたラモーヌが鬼の形相でマックイーンに確認をしてきた。
「……マックイーンさん、事実ですか?」
「ヒィッ!……じ、事実と申しますか、その、ですね、そう、その方は私達のチームのトレーナーさんでして、触ろうとしたと言うのも、トレーナーとしての職業病みたいなものでして、変態ってことでも無いのではないかと思うんですが……ヒッ!……はい、私も変態だと思います!」
「おいおいマックイーン、流石にそれは……うん、もう変態っていう名の紳士だな。」
トレーナーの弁護をしようかと思ったけど、鬼が居たので即座に取り止めたゴールドシップだった。
「……ソレですか、私の妹を襲おうとした変質者は? 詳しい事情を聴取するので、身柄を拘束致します。」
「俺は無実だぁぁ!」
ゴールドシップによって縛られたトレーナーは、そのまま大柄な警備員2人に引き摺られて行った。
「……無実は有り得ませんわ。」
「まぁ、有り得ねぇな。」
「変態、頑丈だた。」
あのトレーナーさんは、普通にアウトだと思います。