メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 ちょっと短めです。
 



ターフの名優その2

 

 

 

 【さぁ、本日のメインイベント、ここ、中山レース場芝2500m右回りで行われる今年一年の集大成有馬記念、間も無くパドックが開始されます。

 中山レース場に集った優駿達が、今か今かと出番を待ち望むファン達の前に、その姿を見せる。

 先ずは大本命、現役最強の呼び声も高い1枠1番、メジロマックイーンの登場で……】

 その瞬間、パドックでマックイーンの勇姿を一目見ようと集まったファン達は、その姿に言葉を失った。

 一瞬の静寂の後に、歓声ではなく戸惑いの騒めきが広がった。

 【し、失礼しました。 メジロマックイーン、これは明らかな太め残りです。 これは陣営の作戦なのか? それとも調整の失敗によるものなのか? 1枠1番メジロマックイーン、これは厳しいレースとなりそうです。

 気を取り直して、次の注目選手は、3枠4番ダイタクヘリオス選手です。

 ここは、同じく逃げを得意とするツインターボ選手との、逃げ対決が見ものです。

 そして続いてクラシック級からの参戦となります、3枠5番ナイスネイチャ選手、悲願のビックタイトル獲得なるか?

 ……そして最後は8枠15番、メジロライアン選手。

 なんとメジロ家、この年末のビッグタイトルに2名も選出されて居ます。

 マックイーン選手の調子があまり良く無さそうな為、メジロライアン選手に期待が高まる所、何かと勝ち切れない印象のあるメジロライアン選手ですが、実力は十分有りますので、是非頑張って欲しい。

 さぁ、パドックも無事に終わり、各選手各々がレース前のルーティンをこなしております。】

 

 

 観客に衝撃を与えたパドックが終わり、今はゲート入りの為に各選手達がゲート前に集まっていたが、殆どの選手がマックイーンの姿を見て動揺していた。

 そのマックイーンはと言うと、いつもと違う勝負服のキツさに苛ついていた。

 「……全く、これでは動き難くて仕方ありませんわ。」

 特に、ウェストがきつく絞められて不快感のみを伝えて来る。

 何時もならば、この衣装を着るだけで不思議と落ち着き、胸の奥から力が湧いてくるのだが、今回はいまいちそれを感じ取る事が出来ない。

 その事だけでも平常心では居られないのに、更に苛つかせるのは、無遠慮に注がれる周りの視線だった。

 周りの視線が全て己のクビレ、腹周りに集中している……その事実がまるで己の罪を責め立ててくる様に感じるのだ。

 「……少しだけ出ただけですわ。」

 そう自己弁護すると、勝負服では隠し切れなかったお肉を摘む。

 そう、マックイーンは失敗した。

 流石に、10日くらいでは1ヶ月以上かけて蓄えた肉は落ちてくれなかった。

 「あんなに頑張ってみたのに……でも、勝負は勝負。 ここはキッチリと勝たせて頂きますわ。」

 決意を胸に秘めたマックイーンはゲートへと向かう、己が魂と脂肪を燃やす為に……。

 

 

 

 【第4コーナーを回って最後の直線、プレクラスニー先頭!

 たが、やはり来た、大本命名優マックイーンが来た!

 そしてヤマニングローバルも来ている!

 さあ、ここからが本番、マックイーン! マックイーン3番手!

 やはり何時もの伸びが無い、マックイーンいっぱいか?

 そしてそしてなんと、内からダイユウサクが伸びて来た!

 マックイーン外から伸びてくる、マックイーン来た!

 しかし、ダイユウサク、ダイユウサクだ!!

 これはびっくりダイユウサク~!

 5枠8番、14番人気のダイユウサクが見事に差し切ってゴール!

 暮れの中山レース場に見事に大輪の花を咲かせました!

 あっとこれは……レコード、レコード勝ちです。

 実に見事な走りを見せました、ダイユウサク、中山レース場コースレコードでの有馬記念制覇、自身も初のG1制覇となります。】

 

 

 大歓声の中、嬉しさを爆発させるダイユウサクの姿を、何処か現実味の無い感覚で眺めながら、マックイーンは勝者を讃えると、静かに控室へと向かった。

 マックイーンが控室に着くと、中で待っていたトレーナーが頭を下げて来た。

 「な、何事ですの?」

 急な出来事に驚いていると、頭を下げたままトレーナーが謝ってきた。

 「すまん、マックイーン今回の件は完全に俺のミスだった。 俺が調整をミスらなければ勝てたレースだったんだ。」

 そんな自分のトレーナーを見詰めながらマックイーンは自分の言葉を噛み締める様に、自分で自分に言い聞かせる様に話す。

 「……私のミス、いえ、私の傲慢さが招いた結果です。 トレーナーさんが悪い訳では有りませんわ。 何処かで私は、これくらいで負ける訳が無いと思っていました……完全にレースを舐めて居た。 その報いがこの結果ですわ。」

 自身の愛馬の言葉に対して、諭す様にトレーナーが自らの責を話す。

 「……マックイーン。 だが、だからこそ、その行動を戒める為に俺達の様なトレーナーが居るんだ。 だから、それが出来なかった以上、今回の件はトレーナーである俺の責任なんだ。」

 「なら、次からはきっと大丈夫ですわ。 だって貴方は私こと、ターフの名優メジロマックイーンのトレーナーなんですから……期待、させて頂きますわよ?」

 そんなトレーナーに、マックイーンが励ます様に少し戯けて話す。

 「あぁ、任せてくれ。 差し当たっての目標は、天皇賞春連覇。 序でに大阪杯と宝塚記念も勝って、春シニア三冠でどうだ?」

 トレーナーも、マックイーンの気遣いを無駄にしない様に軽口を効く。

 「あら、随分と大きく出ましたわね? でも、そのくらいの目標で丁度良いのかも知れませんわね?」

 「よ〜し、やるぞマックイーン、まずは減量だ!」

 漸く普段の元気を少し取り戻したトレーナーが、マックイーンに今後のトレーニングの方針を告げる。

 「まだ時間は有りますから、そんな急いで減量なぞせずとも……」

 その内容に危機感を感じたマックイーンが、慌てて軌道修正を試みる。

 「甘い物断ちに、発汗を良くする辛い物料理にトレーニングだ、忙しくなるぞ!」

 「ちょっ、あ、甘い物断ちも辛い物もいけません、いけませんわ!」

 勢いよく想定外の方針を打ち出すトレーナーに、慌てて翻意を求めるマックイーンの声が響いていた。

 

 

 

 有馬記念決着後、地下場道にて1人佇む少女が居た。

 「……12着か……ううん、きっとまだ行ける。 私はまだ終わらない、終わりたくない。 脚もまだ大丈夫、今回は偶々伸びなかっただけ……次こそは絶対に……。」

 誰も居ない地下場道で拳を握り、1人決意を込めて道の先を見つめるメジロライアンが居た。

 







 この頃のメジロ家って、まさに全盛期って感じだったんですねぇ。

 
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