お姉ちゃんの友達とのお出掛けって、何か滾るモノが有ります。
ここはトレセン学園近くにある小さな神社で、小さいながらも学園近くにある為、良く学園生が立ち寄る事で地元では有名で、中には有名選手も現れる為、それ目当てで県内外からファンが集まる場所であり、その為、初詣ともなれば屋台に御神楽にと、大変賑わう場所の一つでもあった。
そんな現在進行形で混み合っている神社に、トレセン学園合格と、マックイーン達の必勝祈願も兼ねてリアルデュークとマックイーンのチームメイトが集まって居た。
勿論、まだ学生の為、引率としてトレーナーも駆り出されて居た。
神社の鳥居前で待ち合わせをし、最後にトレーナーが現れると、リアルデュークが走ってトレーナーの前まで行くと、期待に溢れた表情で声をかける。
「明け嫁、床ヨロ。たまくれ?」
「な、なんて事言っているのさ!」
突然の発言にびっくりしたトウカイテイオーが声をあげる。
「トレーナーさん、まさか本当に……」
マックイーンが冷めた目でトレーナーを睨む。
「事案、発生だな。」
此方も冷めた目で、ゴールドシップがため息混じりに呟く。
「おぉ、小さいのに大人の女発言、何かかっけぇ気がするぜ。」
よく分かっていなさそうなウォッカが、やや興奮気味に声をあげると、隣りにいたダイワスカーレットが、声を張り上げて指摘する。
「何馬鹿な事言っているのよ? これは事案だわ。」
「この焼き人参、なまら美味いです。」
急な事に思考停止していたトレーナーが、慌ててリアルデュークを嗜める。
「ち、違う。 リアルデューク、お前は新年早々何言ってるんだ!」
「……挨拶、これ言えば玉袋?貰えると聞いた。」
リアルデュークは、何故周りが騒いでいるのか分からないと言った感じで、首を傾げながら主旨を説明した。
「それはお年玉のことか? ならこれやるからあまり変な事言って俺を巻き込まないでくれ。」
ポケットから取り出した硬貨をリアルデュークの小さな手に乗せると、何故か両手を合わせて拝んでいるトレーナーを不思議そうに見た後、自分の手に置かれた硬貨を確認した。
「……綺麗な穴空いたお金?」
「……おい、トレーナー? これは流石のゴルシ様でも笑えねぇぞ?」
それを見たゴールドシップが、無表情でトレーナーに言う。
それを受けてトレーナーが少し切れ気味に叫ぶ。
「仕方ないだろ、お前等の飲食代のせいで、俺の給料もボーナスも全部吹っ飛んだんだよ! 特にスペが5人前以上食ったからな、ウマ娘5人前ってどんだけだよ?」
「あぁ、あの時のスペの食事量は……結構マジで笑えなかったな。」
「ええ、でも1番驚いたのは、翌朝には全て消化されていた事ですわ。 あんな事はオグリキャップさん以来の衝撃でした。」
ゴールドシップとマックイーンが、少しだけ疲れた表情で過去を振り返る。
「この焼きそばも、なまら美味いです。」
「やっぱスペ先輩の胃袋は他と違うぜ!」
その2人の話を聞いて、その時の事を思い出したのか、ウォッカがスペシャルウィークをリスペクトする。
「アンタと違って、スペ先輩ならここの屋台の食べ物、全種類制覇出来そうだしね。」
そんなウォッカの姿を見て、スカーレットがウォッカを挑発する。
「お、オレだってそんくらい出来らぁ!」
「アンタには無理ですぅ!」
スカーレットが肩でウォッカの肩を押すと、負けじとウォッカもスカーレットを押し返す。
「んだとスカーレット、お前こそ出来ない癖に!」
「出来るわよ!」
「いいや、無理だね。」
「なによ、アンタ喧嘩売ってるの?」
段々とお互いに相手を体全体で押し合い、肩だけでは無く顔も押し付け合う形になりながら、更にお互いに罵り合う。
「エセお嬢様ぶってるスカーレットには、こんなの無理だってオレは教えてあげてるだけだぜ?」
「いいわ、だったら勝負よ!」
「いいぜ、受けてやる。」
「「どちらが先に全種類制覇するか、勝負よ(だ)!」」
そう言うと、2人は互いを押し合ったまま、屋台の方へと走って行ってしまった。
「この焼きチョコ人参も絶品です。」
「アイツらはまたやってるのか、本当に仲が良いよなぁ。」
話が自分から逸れた事に安堵しながら、トレーナーが呆れた様子で2人の消えた先を見る。
「あれだけ息が合うのに、お互い仲良く無いとか言いますのよねぇ。」
それに同意する様に、マックイーンがため息混じりに話す。
「喧嘩、仲良し?」
近くにいたトレーナーに、リアルデュークが疑問を呈する。
「そう、リアルデュークにはまだ難しいかも知れないが、日本には喧嘩する程仲が良いって言葉があってだな、スカーレットとウォッカのは、まさにそれだな。」
「……ツンデレ?」
リアルデュークは、いまいち分からないのか、首を傾げながら知っている単語を言ってみる。
「それはまた違う要素だな。」
「ベル姉が言ってた百合養分?」
即座に否定されたので、少し考える……のは面倒に思えたので、前にメジロドーベルから聞いたことであってそうなことを言ってみた。
「……ドーベルは子供に何を教えていますの!」
「まあ、オメエさんには少し難しいかもだが、このゴルシちゃんが、その内わかる様に説明してやるから気にすんな?」
優しくリアルデュークの頭を撫でながら、ゴールドシップが微笑む。
「この綿飴もなまら美味いです。」
「スペちゃんはいつ迄食べているのさ!」
遂に耐え切れなくなったトウカイテイオーが、スペシャルウィークにツッコミを入れた。
「「「はい、テイオーの負け!」」」
その瞬間、リアルデュークを除いたその場の全員が、口を揃えてテイオーに対して負けを宣告した。
「負けたテイオーには、スペが間違えて買った激辛海鮮焼きそばをプレゼントだ。……安心しな、ちゃんとゴルシちゃんお勧めの鬼芥子トッピング付きだぜ?」
すかさず、ゴールドシップが罰ゲームを通達する。
「何余計なことしてくれちゃってんのさ! うぅ……やっぱり食べなくちゃダメ?」
余計な事をしたゴールドシップに文句を言った後、その全てが真っ赤に染まった焼きそばを見て、テイオーは嫌そうな顔で仲間達にお伺いをたてる。
「いや、コイツらの悪ふざけに、無理に付き合う必要は無いんだぞ、テイオー?」
そんなテイオーに、無理をする事は無いとトレーナーが声をかける。
「へへん、まぁ、お子ちゃまのテイオーにはまだ無理だったかな?」
ゴールドシップは、心底楽しそうにテイオーを煽った。
「ボクはゴールドシップと違って、まともな味覚の持ち主なだけだよ! ねぇ、これ、本当に食べなきゃ駄目? ボクこれでも食事には気をつけているんだけどなぁ。」
「大丈夫ですわテイオー、そのくらいの辛さならまだ味が分かりますわ。 辛さには向こう側が有りますのよ?」
ゴールドシップから受け取った焼きそばを眺めながら、尚も渋るテイオーに優しく声を掛けるマックイーンの目は笑って居なかった。
「味が分からない辛さってどう言う事? 辛さの向こう側って何? もう、訳わかんないよ!」
急に雰囲気の変わったマックイーンに動揺したテイオーが叫ぶ。
「その焼きそばを食べれば何処に行くのか? 食べればわかるさ……って事だな? テイオーもうだうだ言ってねぇで、食べりゃあ良いんだよ!」
そんなテイオーの肩に腕を回して肩を組んだゴールドシップが、テイオーの持つ焼きそばを見ながら、更にテイオーにウザ絡みをする。
「あら、テイオー、お箸が落ちそうに……あら?」
その時、焼きそばに刺していた割り箸が、ゴールドシップに揺らされた事で落ちそうになっているのを気づいたマックイーンが箸に触った瞬間、箸の先にあった鬼芥子の山に突き刺さり、鬼辛子を跳ね上げると、そのまま芥子の塊がゴールドシップの目に直撃した。
「ギャァ! 目が目がぁぁあ!」
芥子の直撃を受けたゴールドシップが、目を押さえて地面に転がって悶絶する。
「ありがとマックイーン、仕方ないから食べるよ。 うわぁ、これ辛すぎるよぉ!」
テイオーは、マックイーンにお礼を言って意を決して焼きそばを食べた。
「やっぱり、人参焼きが一番なまら美味いです!」
「ここにパクパクさん超えるパクパクさんが居た!」
ひたすらに食べ続けるスペシャルウィークを見て、驚愕に震えるリアルデュークと、無事に焼きそばを食べたテイオーに飲み物の入った容器を渡すマックイーン、誰も地面に転がるゴールドシップを気にしていなかった。
「はい、テイオー、完食のご褒美はちみーですわ。」
「有難うマックイーン!……やっぱりはちみーは濃い目、固め、多めだよねぇ!」
「……まぁ、何時も通りの日常ってやつだなぁ」
そんな面々を見ながら、トレーナーも何時も通りに棒キャンディを咥えるのだった。
ゴルシは目も鍛えてあるので、素人は真似をしてはいけません。