メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 子供はアグレッシブです。
 幼女は更に悪ノリします。
 



リアと芦毛の姐さん

 

 

 「タッタカタッタカたかたかたーん。 パクパクさんがたかたかたーん。」

 自作の謎ソングを歌いながら、リアルデュークが道路のウマ娘専用レーンの歩道側に書かれた白線の上を軽快に走る。

 背中に背負った某ブランド製の水色のランドセルをカタカタ揺らしながら、ただ白線以外を踏まない様に気を付けて、目的も無く走って居た。

 そうして走る内に、気が付けば見知らぬ住宅地に迷い込んでいたリアルデュークは、暫く周りを探る様にキョロキョロと辺りを見回しながら歩いて居たが、少し遠くの方から大勢の歓声が聞こえて来た為、好奇心を刺激されたリアルデュークは、取り敢えずその方角へ行ってみる事にした。

 「ボクの冒険、これから! どぼめじろうの次回作、期待!」

 

 

 

 あれからも、好奇心の赴くまま、あっちへフラフラ、こっちへフラフラとしながら走り回ったリアルデュークは、漸く目的地として居た人の集まっている場所へと辿り着いた。

 そこはかなり開けた場所で、広場は公園になっており、その中の一角、1番広い場所に100人くらいの人々が集まって騒いでいた。

 「……お祭れ?」

 その集団の中の、恰幅の良いおじさんに声を掛けてみると、赤ら顔で明らかに酒に酔っている顔で、リアルデュークと目線を合わせる様にしゃがむと叫んだ。

 「ガキが汚ねぇ手で触ってるんじゃねぇよ!」

 急に大声で怒鳴られたせいで、びっくりして固まっていると、酔った男が右手を上げると、リアルデューク目掛けて振り下ろそうとした。

 「おっと、おいちゃんそれはあかんで?」

 そう言って長髪の少女が、その腕を掴んで止めると同時にリアルデュークが右ストレートを酔った男の腹に撃ち込む。

 「……ふんっ!」

 「がふっ!」

 軽く殴った様に見えたが、男は殴られた瞬間軽く宙に浮き、そのまま崩れ落ちて地面を悶絶しながら転がっていた。

 まさか幼女がいきなり殴るとは思って無かった少女が、慌てて悶絶している男に声をかけた。

 「おおおいっ! おっちゃん? 大丈夫か、生きとるか? なんや自分、ちっさいのにえげつない事しよんなぁ?」

 少女は、男の様子を見て声をかけながらも、若干引き気味にリアルデュークにも話し掛ける。

 「敵、容赦ダメ、初撃に全てかける。 女々はダメ。」

 「いやいや、自分薩摩隼人やないやろ!」

 自分の発言に軽くツッコミを入れる少女に対して、気にする素振りも見せずにリアルデュークは、地べたで悶絶する男に対して何の感情も篭っていない表情で声をかける。

 「……まだ生きてる?」

 「ひぃっ!」

 トドメを刺す為に振り下ろした拳を奇跡的に躱した男が、必死の形相で四つん這いになって逃げ回る。

 「逃げる、よくない。」

 「待て待て待て! 流石にこれ以上はやり過ぎや、もう堪忍したってや?」

 慌ててリアルデュークと男の間に体を入れて止めてきた少女の姿を見て、動きを止めたリアルデュークの姿に安堵した少女は、リアルデュークの気が変わらない内に男を逃す事にした。

 「おっちゃん、これに懲りたら2度とこないな事するんやないで? ほら、今の内に早う行きいや!」

 「あ、悪即斬、出来なかた……」

 「……アンタも、飴ちゃんやるからもうここまでにしときや?」

 そう言って、落ち込むリアルデュークにポケットから飴玉を取り出して渡すと、その小さな頭を撫でた。

 「飴ちゃん、甘々。」

 リアルデュークは、貰った飴を食べながら、改めて少女の姿を観察してみる。

 自分よりは大きいが、世間一般的には小柄と言える体格で、その腰まである長い芦毛の髪を捻り鉢巻のように捻った青と赤の長いリボンで結び、同じカラーリングでポンポンのついたカチューシャに、真っ赤な耳覆いをつけているウマ娘の少女は、自分の姉達と同じ制服を着ていた。

 「飴ちゃん美味いか?」

 自分をジッと見てくる幼女に、ニッコリと微笑んで声を掛ける少女に対して、警戒心を解いたのか貰った飴を口の中でコロコロと転がし始めた。

 「さてと、ウチの名前はな、タマモクロス言うねん。 嬢ちゃんはこないな所に1人で来たんか? それとも誰かとはぐれたんか? もしそうならウチが一緒に探したるで?」

 タマモクロスは、少しだけ屈んでリアルデュークと目線を合わせて優しく話し掛けてくれた。

 「ボク、リアルデューク! 遊び来た!」

 そんなタマモクロスが気に入ったのか、リアルデュークは先程とは違い、元気に答えを返す。

 「おぉ、元気の良い挨拶やな? おとんやおかんと来たんか?」

 「おと? おか?」

 言葉の意味がいまいち分からなかったのか、首を傾げて聞き返して来るリアルデュークに対して、タマモクロスは、この子くらいの年齢でも分かりやすいと思われる言葉に直して、もう一度聞いてみる事にした。

 「えっとやな、お父さんかお母さんとここに来たんか?聞いているんや。」

 今度はちゃんと理解出来たのか、きちんと答えが返ってきた。

 「どっちも居ない。 1人で来た。」

 「そかそか、偉いのぅ。 お家でおかんが待っているんやなぁ?」

 「家、居ない。」

 「お仕事で居ないんか?」

 「どっちも最初から居ない。」

 想定して居た答えと全く違う答えに疑問が増えたタマモクロスは、更に突っ込んだ質問をしてみる事にした。

 「最初からて、ほな今は誰と暮らしとるねん?」

 「ここ違う、別の国居た。 日本連れて来られた。 一緒暮らした仲間、ママ誰も居ない。 ママ会いたい何時も思う。」

 思わぬ答えに対し、瞬時に目の前の幼女の様子を確認しつつ、状況を推理する。

 確かに、目の前幼女は高そうな服とランドセルを身に纏っているが、良く見れば痩せており、成長期に見合わない身体付きをしていた。

 そしてそれは、タマモクロス自身が見慣れた身体付き……即ち、幼い頃、貧乏で食べる物も無く常に栄養失調ギリギリの生活を送っていた、当時の己の身体と全く同じであった。

 そこから推測される事態に、タマモクロスの正義感が感情を一気にレッドゾーンへと持って行く。

 「ちょい待てや、アンタ、連れて来られてママさんと会えないやて?……あかんっ! こないな小さい子がそないな理不尽な目に会うてるなんて事は間違っとる! お天道様が許しても、ウチが許さへん、リアルデューク言うたか? アンタは何も心配せんで良い、全てこのタマモ姐さんに任せとき、ウチがきっとママさんに会わせたる! 先ずはアンタを日本に誘拐した奴等にウチが天誅喰らわしたるわ!」

 既に頭に血が昇ってキレる寸前まで来ていたタマモクロスは、感情の赴くまま、リアルデュークに家へと案内して貰うことにした。

 「ほな、カチコミじゃ! 悪者どもを退治するでぇ!」

 そして2人は勢いそのままに、メジロ家別邸へ殴り込みをかけるのであった。

 







 タマモクロス大好きです。
 
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