メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 命令する人は、命令される人です。
 



リアと芦毛の姐さん、その2

 

 

 ここはメジロ家別邸、日本有数の名家、メジロ家が所有する数ある建物の中でも本邸に次ぐ規模を誇り、併設されている療養施設等も含めればその広さと設備の立派さで、これと同等の物は日本には数える程しか無い。

 また、その警備体制も盤石で、グループ傘下の引退したばんえいウマ娘を積極的に採用している警備会社が勤めており、日夜スクープを狙って侵入してくる非常識な記者擬きなどを撃退している。

 そんなメジロ家別邸のモニター室では、担当の警備員が困惑した顔で隊長に報告をあげていた。

 「あのぅ、隊長……ちょっとこのモニターを見て頂けますか?」

 「どうした? 何か変な物でも映っているのか……な!」

 部下に言われたモニターを見てみると、そこには裏門の前で少女と幼女が門を乗り越えようとしている場面だった。

 「……これ、どう対処しましょうか?」

 普段ならば侵入者として、適切に処理してしまうのだが、今回の侵入者はとても良く知っている人物である……所謂、当家のお嬢様であった。

 「一先ず、私がラモーヌお嬢様に報告してくるので、貴女はこのままモニターで監視と指示出し、何かあったら不味いので数人現場に派遣して、見つからない様に監視させて下さい。」

 隊長がモニターを見て少し考えたあと、的確に指示を出していると、指示を受けている最中の部下が新たな事実を発見する。

 「この一緒にいる少女って……此方の方に何かあっても拙いですよね?」

 どう見ても、超が付く程有名なウマ娘にしか見えないその少女を指差して確認を取る。

 「分かっているじゃない。何かあったら取り敢えず、救助からやりましょうか?」

 隊長が他人事の様に軽いノリで肯定する。

 「……隊長が残って指示出しをして、自分が報告に行くって事でどうです?」

 「……職務命令、頑張れ副隊長?」

 一縷の望みを賭けて提案してみたものの、逆に強権を発動された副隊長は叫ぶ。

 「うわ、ずりぃ! こういう時ばっかり命令使って、だってこれリアお嬢様ですよ? 絶対面倒事起こすに決まっているじゃないですか! 私嫌っすよ、前だって2人がかりで取り押さえたのに、冬のプールに投げ込まれたんすよ?」

 そう叫ぶ副隊長を無視して、隊長が足早にモニタールームを出て行った。

 「で、副隊長さん、誰が現場に行くんです?」

 「そうっすねぇ、当然みんな行きたくないっすよね?」

 そう言いながら同僚達の顔を見渡すと、全員の顔に行きたくないと書いてあるかの様な表情をして居た。

 「大体、相手がリアお嬢様ってのがキツイっす。 だってあのお嬢様、私達3人がかりでやっと取り押さえられるくらいパワフルなんですよ? あのサイズであの馬力って頭おかしくなりますよ。 あのままばんえいレース出ても重賞くらいすぐ取れるんじゃないですか?」

 「まぁ、確かにあり得ない位にはパワフルだよなぁ。」

 「あれでまだランドセルを背負ってる年齢って……あり得ないです。」

 その場に居た者達が口々に当家のお嬢様について話し始めるのを聞きながらも、副隊長が強権を発動させる。

 「そうは言っても、これって残念ながらお仕事なんすよ。 て事で、職務命令っす。 みんな仲良く行ってらっしゃいっす。」

 「せめて危険手当くらい欲しいよなぁ?」

 「まぁ、給料分くらいはと思うけどさぁ、あのお嬢様相手は違うと思う。」

 「……良いからさっさと行くっす。」

 ぶつぶつと文句を言いながらも、速足で現場に向かう警備員達だった。

 

 

 

 その頃、メジロ家別邸の裏門では、何故か裏門近くの木の枝に引っかかってぶら下がっている幼女に、少女がツッコミを入れて居た。

 「何でその状況でドヤ顔してるねん!」

 少女こと、タマモクロスのツッコミにドヤ顔で返した幼女ことリアルデュークは、自身の状況を確認すると、ぶら下がっている枝を叩き折った。

 「あかん! 自分何してるねん!」

 咄嗟に裏門を蹴上がって落下するリアルデュークをキャッチしたタマモクロスは、そのまま敷地内に着地した。

 「おおっ! ナイスキャッチ?」

 空中で見事にキャッチされたリアルデュークが称賛の声を上げる。

 「あかん! つい敷地内に入ってもうた。 これじゃ不法侵入になるやんけ!」

 リアルデュークを無事降ろした後、タマモクロスは頭を抱えてしゃがみ込むと今の状況に焦り出した。

 「問題無い、侵入、格好良い!」

 右手の親指を立ててドヤ顔をするリアルデュークに対して、タマモクロスが軽く説教染みた話を始めた。

 「いや、格好良いとかや無くてやな? お天道様に顔向け出来ひん様なことはしたらあかんねん。 これは良い悪いの問題や無い、ウマ娘として譲れんものなんや。 せやからあんさんもお天道様に恥じない生き方をせなあかんで?」

 タマモクロスの話を最初から聞く気が無かったリアルデュークは、すぐに周囲の異変に気付くと、警告と共にタマモクロスの腕を掴んで気配のする方と反対方向へとそのまま走り始めた。

 「誰か来る! 見つかる駄目。」

 「ちょっ、引っ張らんでも分かっとる。って、力強い何てもんやないな?」

 半ば引き摺られる様に走りながら、自分を引っ張るリアルデュークの力強さに吃驚していた。

 「このまま見つからない様に進む。 ちゃんとついて来る!」

 「見つからん様にて……カメラとかあったし、既に見つかっているんちゃうか?」

 これだけの規模の屋敷には、そう言った設備があって当然と思うタマモクロスが、諦め半分で問いかけた。

 「エージェントは諦めない、昨日テレビで言ってた!」

 そのタマモクロスの問いかけに対して、何故か確信を持って根拠のない自信に満ちた表情でリアルデュークが答える。

 「なんやごっこ遊びかいな……しゃあないなぁ、少し付き合うたるわ。」

 そんなリアルデュークを見て、何となく諦めたタマモクロスは、この遊びにもう少し付き合う事に決めた。

 「エージェントたま、あれ見えるか?」

 「エージェントたまってウチの事かいな?」

 「私語は包む! ここは危険……地帯?」

 「知らんがな!」

 支離滅裂なリアルデュークの指示に毎回ツッコミを入れながら暫く走った2人は、物置小屋と思われる建物の影に隠れて周りを警戒しているマックイーンを見つけた。

 「油断、命取る。 今日のミッション、アレを手に入れる。」

 「アレっていうと……あれはメジロマックイーン? 何であないな建物の影に隠れて……何かをバックから取り出した?」

 タマモクロスが、マックイーンと言うと、リアルデュークが悲しげな雰囲気で首を振り否定してきた。

 「あれはパクパクさんと言う、とても悲しい生き物。 糖分摂取しないと暴れる。」

 「いやいやいや、あれはどう見てもメジロマックイーンで、ウマ娘やから糖分如きで暴れたりせえへんやろ!」

 「なら試すといい。 パクパクさんの気を逸らす、エージェントたま、バック奪う。」

 そう言ってリアルデュークは、タマモクロスに対して、ドヤ顔で命令すると、自分は少し離れた木の陰から姿を隠したままマックイーンに話しかけた。

 「……マックイーンお姉ちゃん来る! 早く来る!」

 リアルデュークの声が聞こえてくると、マックイーンはすぐにウマ耳を立てて声のした方へと向かった。

 「し、仕方ない妹ですわ。……はい、お姉ちゃんが今行きますわよ〜♪」

 「……やっぱりチョロい。」

 そんなマックイーンを見て、リアルデュークはニヒルに笑みを浮かべ、マックイーンが離れた隙にタマモクロスは無事バックを手に入れた。

 「何でウチ、人様のバックを盗む様な形になっとるんや……。」

 「おかしいですわ、この私がリアさんの呼び掛けを聞き間違えるなんて……」

 タマモクロスが現状に疑問を抱いている頃、リアルデュークを見つけられ無かったマックイーンが、バックがあった建物裏へと首を傾げながら戻ってきた。

 「さて、これ以上邪魔が入らない内に、久々のスイーツを……バックは何処ですの?」

 「で、持ってきたこのバック、どないすんねん?」

 何となくリアルデュークの目の前にバックを突き出すと、すぐにバックを受け取って走り出した。

 「バック持ってすぐ逃げる。 パクパクさんが覚醒する。」

 急に走り出したリアルデュークを慌てて追いかけながら、リアルデュークに話しかける。

 「覚醒てなんなん? それより、早いとこバック返したった方が良いんちゃうか? 何やら探してって危なっ!」

 何やら危険を感じたタマモクロスが少し左に避けると、顔のすぐ横を小石が高速で通り過ぎていった。

 「私のスイーツ! 返しなさい!」

 後ろを振り返ると、そこには鬼の形相で追いかけて来るマックイーンが居た。

 「返すも何も、ウチは、バック、持って無い!」

 







 タマさん、君も被害者です。

 
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