幼女は遊びに全力で頑張ります。
※ちょい短めです。
「A〜D班まで沈黙、まさかのマックイーンお嬢様が参戦するとは思わなかったっすねぇ。 今はE〜J班による再捕捉待ちで、タイムリミットまで残り30分を切っていると……やばいっすねぇ、このままじゃ負け確定っすねぇ。」
モニターの前で1人、俯いて楽しそうに口許を弛めながらぶつぶつと独り言を言うと、顔をあげて新たな指示を出し始めた……全ては勝つ為に、ボーナスの為に。
先程、マックイーンに倒された警備員から小銃を奪ったリアルデュークとタマモクロスは、順調に反撃を行なっていた。
「お次が来たでぇぇ!」
リアルデュークが銃を構える茂みの近くを叫びながらタマモクロスが走り抜けると、それを追いかけて手持ちの銃を撃ちながら警備員が走り込んでくる。
「……センターに入れてスイッチ!」
「うぎっ!」
その警備員を茂みに隠れたリアルデュークが狙撃する。
首筋を撃たれた警備員は、痛そうな声を上げた後、黙って両手を上げてその場で横になった。
「よっしゃ、これで3人や! サバゲー同好会だけあって、アンタも射的が上手いやん。」
「……フンスッ!」
無事上手く行った事を喜ぶタマモクロスの隣で、鼻息荒くドヤ顔をするリアルデュークだった。
「しかし、最初は如何なる事かと思うだけど、相手さんも弾が当たればちゃんと死体役に変わるし、こん調子なら何とかなりそうやな?」
上機嫌でタマモクロスがリアルデュークに話しかけると、リアルデュークが拾った小枝で死体役を突いていた。
「つん、つん」
「真面目に死体役しとるんやから、乳首つんつんしたりなや?……大事な血管通っとる腋もあかん!」
そうツッコミを入れた時、背後からタマモクロスの首筋に冷たく硬い物があてられた。
その状況を見てリアルデュークが宣告する。
「……タマ、アウト!」
「なんやて?」
いつの間にか副隊長に背後を取られて首筋に模擬ナイフを当てられていた状況に、頭が追いつかないタマモクロスが、リアルデュークが行ったアウト宣告を聞き返すが、その僅かな間に副隊長がリアルデューク目掛けてナイフを突き出す。
「お嬢も大人しく倒されるっす!」
突き出されたナイフを片手で軽くいなしながら後退するリアルデュークを追いかける様に次々と刺して来る副隊長を見て、リアルデュークが嫌そうな顔をする。
「副ちゃん、めんどい」
そう言いながら繰り出されるナイフを的確に捌くリアルデュークだった。
「いつの間にやられたんや……ってウチも寝転がらんとかぁ」
そんな2人を無視して仰向けに地面に横になろうとすると、先程つんつんされていた警備員が、1人用のレジャーシートを敷いて、死体と書かれた腕章をタマモクロスの腕に付けてくれた。
「あ、おおきに。 しっかし自分等何時もこないな事してる……あ、私語禁止? 死体は喋らないって、自分等真面目か!」
そう言いながらも、大人しくシートに横になって寛ぐタマモクロスだった。
ひたすら突き出されるナイフを捌きながら、汗一つかかずに余裕を持って後退するリアルデュークの姿に対して、額に汗をかきながら様々な角度や技法でナイフを繰り出している副隊長が焦りを見せ始める。
「めんどいって、それはこっちの台詞っすよ?」
「戦略、撤退!」
遂に大きな距離を取って逃げて行くリアルデュークの背中を見ながら、副隊長が溜息混じりに呟いた。
「鬼ごっこは苦手なんすけどねぇ。」
乱れた前髪を掻き上げると、冷静になったのか狙撃班に指示を出した。
「予定通りそっちに行ったっす。 後は任せたっすよ?」
「……了解、これより狙撃を開始します。」
「捕獲班も準備完了。 行動に移ります。」
「タマは南無南無、パクパクさんも南無南無、次の遊びは何じゃろか?」
又々オリジナルの歌を歌いながら1人中庭を走っていたリアルデュークは、何かを感じ取ったのか、急停止すると近くの木に登り始めた。
ある程度の太さのある枝まで登ると、枝に抱きつく様に身を屈めて隠れる。
それから少し経つと、副隊長が真下を通過して行ったので、気づかれない様に降りて尾行を開始する。
「今度は尾行、スパイする。」
そんな事になっているとは思ってもいない副隊長は、ひたすらリアルデュークを探していた。
「うちのお嬢様は、一体何処に行ったんすかねぇ?」
辺りをライフル用のスコープで覗きながら呟く副隊長の背後に回り込んだリアルデュークが、合わせた両手の人差し指で背後から副隊長の肛門目掛けて思いっきり突き刺した。
「天怒り、非道絶つ! 臨、兵、闘?以下略! 七年ゴロシ!」
「んぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」
その瞬間、副隊長の身体は飛び上がり、庭中に悲鳴が轟いた。
あれから直ぐに悲鳴を聞いて駆け付けたメイド達によって副隊長は担架で医務室に運ばれて行き、リアルデュークは何故か少しだけ上気した顔のラモーヌの説教を受ける事になった。
その場にはタマモクロスも同席していたが、何故か終始ドン引きした顔をしていた。
「……それで、タマモクロスさんは当家に何か御用があるのでしょうか?」
そうラモーヌに聞かれたタマモクロスは、疲れた顔で覇気なく答えた。
「なんか、もう、どうでもええわ。 リアが楽しそうならそれでもうええと思うことにする。 ……メジロは怖いわ。」
そう言って疲れ果てた顔で帰って行った。
帰り際、見送りに来たリアルデュークが、屋敷の正門前で肩を落として歩くタマモクロスの背中に、その小さな手を優しく添えて声をかける。
「……タマ、元気出す。 副隊長、尊い犠牲。 誰も悪く無い。」
「お前が言うなや!」
タマモクロスの渾身のツッコミが響いた。
因みに数日後、無事に退院した副隊長から、何故か顔を合わせる度に熱い視線が送られる様になったリアルデュークであった。
頑張ったらダメな事もあります。