お受験って、大なり小なりこんなイメージです。
大変さが分かった頃には、いい歳になってます。
ここは天下に名高いトレセン学園、URAが運営するウマ娘のためのエリート教育機関で、正式名称は「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」と言うが、世間ではトレセン学園と言う略称の方が浸透しており、逆に正式名称を言うとピンと来ない人の方が多いくらいの知名度がある場所である。
当然、教育機関である以上、学生が通う学校であり、通う為には試験に受からなければならない。
ただ、その特性上、学力よりウマ娘としての身体能力が評価される傾向があり、サポート科等と比べて偏差値的には敷居が低いので誤解されがちだが、その求められる身体能力の敷居が日本でトップレベルであり、入学するだけでもウマ娘の中ではエリート中のエリートとして認識される程である。
そんな名門校であるトレセン学園の入学試験を受ける為に、リアルデュークはマックイーンに襟首を掴まれて引き摺られながら正門の前まで来た。
「姉様横暴」
頬を膨らませて抗議するリアルデュークを見ながら、一つため息をついたマックイーンがリアルデュークの襟首を掴んだまま持ち上げて、その顔を正面から見据える。
「横暴でも何でも、今日を逃せば学園に入れないのだから、いい加減きちんとしなさい!」
真正面から怒られたリアルデュークが更に頬を膨らませて、視線を逸らしながらも小さく呟く様にボソリと呟く。
「別に何処でも、レース出れば勝てる。だからいい。」
その呟きを聞き逃さなかったマックイーンの眦が吊り上がる。
「そう、何処でもいいなら此処でも文句は無いでしょう?」
「ボク気分乗らない。やる気大事。」
そんな子供みたいな反論をそっぽを向いたまま言い放った所で、リアルデュークの背後から聞き覚えのある声がした。
「気分なんて曖昧なモノはな、乗るのでは無くて、乗せてナンボやで?」
首だけで振り返ると、そこには学園の制服を着たタマモクロスがニヤニヤしながら立って居た。
「タマタマやふ〜」
タマモクロスの姿を見たリアルデュークが、ぷらぷらしながらも嬉しそうに手を振る。
「な、……せめてタマにしとき、お嫁に行けんくなるで?」
リアルデュークの自身に対するあだ名に苦笑いをしながらも、慣れた様子であしらうタマモクロスの姿を見て、マックイーンの警戒心が首を擡げる。
リアルデュークを地面に下ろしたマックイーンが、リアルデュークとタマモクロスの間で仁王立ちして腕を組んでタマモクロスを威嚇する態勢になると、堂々と宣言した。
「……嫁に欲しいのなら、この私を倒してからにして下さいます?」
寝耳に水な反応に対して、一瞬唖然としたタマモクロスが、気を取り直して即座にマックイーンを宥めに入る。
「こないなお子様いらんいらん、強いて言うなら単なるお友達や。」
「私のリアさんを要らないと言う気ですの!」
更に激昂するマックイーンを前にして面倒臭そうに苦笑いをしたタマモクロスが、リアルデュークに話しかける。
「前の時といい、今回といい、相変わらず難儀なお姉ちゃんやなぁ?」
一部のワードに対して即座に反応するマックイーン。
「貴女に姉と呼ばれる筋合いはありませんわ!」
「……メジロのもんは人の話を聞く事あるんかいな?」
そんなメジロ家に対して少々うんざり気味なタマモクロスに、リアルデュークが横から普段通りに話しかける。
「タマは何で居る?」
「こっちも相変わらずのマイペースやなぁ。」
そんなリアルデュークには達観した表情で感想を述べるタマモクロスに対して、自分の知らないリアルデュークの交友関係を知ったマックイーンが、更に警戒心剥き出しでタマモクロスに問い詰める。
「うちのリアさんとはどう言ったご関係ですの?」
「ウチはこのちびっこが試験受ける言うから、応援に来ただけやで?」
「タマは良い人!」
「おう、きちんと応援したるさかい、あんじょう気張るとええ。」
「少しやる気出た!」
仲良く話す2人に対して、少しの疎外感を感じたマックイーンが語気を強めて更に問い詰める。
「ですから、リアさんとどう言ったご関係かと聞いて居るのです!」
「せやから単なるお友達や言うとるやろ!」
「そう言って油断させて、リアさんを手に入れるおつもりですね?」
「せやからそないなつもりは無い言うとるやろが!」
「私のリアさんが可愛くないとでも言うおつもりですの?」
「だぁぁぁっ! 面倒臭いやっちゃなぁ? ウチにどないせいっちゅうねん!」
話が通じないマックイーンとの遣り取りにいい加減うんざりして来たタマモクロスが語気を強めて叫んだ所で、学園の敷地内から走って来たトウカイテイオーが声を掛けて来た。
「あ、いたいた。 お〜いマックイーン、何騒いでいるのさ?」
「あら、テイオーじゃありませんか?」
先程までの遣り取りが何だったのかと言うくらいに、平常運転に戻ったマックイーンがテイオーに話しかける。
「こんな所で騒いで無いで、さっさと受付行かなくて良いの? 今日はリアルデュークの試験でしょ?」
「テイオーやふ〜!」
「あはは、リアルデュークもやふ〜! リアルデュークは、何時も通り余裕の表情だねぇ?」
「ボク、出来る女! 出来る女は慌てない!」
「せやせや、そん調子なら合格間違い無しや!」
「って、タマモクロス先輩がどうしてここに居るの?」
「ウチはこのちびっこの応援に来ただけやで?」
「……油断は禁物ですテイオー、この方は私のリアさんを狙っている可能性が有りますわ。」
「相変わらず、ウチの話はこれっぽっちも聞いておらんなぁ?」
「あぁ、成る程。 それでさっきから騒いで居たんだ?」
「あんた、トウカイテイオーやな? そっちのメジロと仲がええらしいなぁ?」
「うん、ボクとマックイーンはライバルだもんにぃ!」
「なら頼むさかい、ウチとリアは単なる友達やと納得させたってや!」
「たはは、マックイーンってば、また暴走しているのね。 ならリアルデューク、こっち来て……」
「うぃ?」
呼ばれたリアルデュークがとてとてとトウカイテイオーの所に行くと、リアルデュークにテイオーが耳打ちする。
「良いからやってみてよ?」
多少渋い顔をしたリアルデュークがニコニコしているテイオーの方を一瞥すると、一つ深呼吸をしてマックイーンに話しかける。
「マックイーンお姉ちゃん、タマと仲良くする!タマ友達、お姉ちゃん好き?」
「そこは言い切ろうよ?」
その様子を見て苦笑いを浮かべるトウカイテイオーを他所に、急に居住いを正したマックイーンがタマモクロスに柔かに話しかける。
「……リアさんが言うから、これから仲良く致します。 宜しいですね、タマモクロス先輩?」
「もう何でもええわ。 仲良うする分には問題無いしなぁ。」
マックイーンの変わり身の早さに疲れた表情で応じるタマモクロスだった。
「そう、みんな仲良くする!」
そんな2人を後方師匠面で諭すリアルデュークに、トウカイテイオーがジト目で話しかける。
「……リアルデューク、ボクが思うにさ、キミが一番それ言っちゃダメな言葉だと思うよ?」
「とりま問題解決、ボクは帰る。」
清々しい顔をしてリアルデュークがそう宣言すると、タマモクロスもそれに追従いする……
「せやなぁ、ほな帰ろか?って言う訳無いやろがぁぁっ!」
訳ではなく、ノリツッコミでリアルデュークの肩を捕まえるタマモクロスだった。
「流石に、そろそろ受付行かなきゃ間に合わないよ?」
「さぁ、リアさん、急ぎますわよ?」
「……面倒い。」
トウカイテイオーがそう急かすと、タマモクロスからゲンナリとしているリアルデュークを受け取ったマックイーンが、リアルデュークを小脇に抱えて受付へと向かう。
「観念して頑張ってきなよ?」
「せや、気張って行くんやで?」
そんな2人に、それぞれ声を掛けながら見送るタマモクロスとトウカイテイオーだった。
やっとお受験開始です。
……多分、きっと、maybe?