メジロ家の変な子   作:ネギ市場

44 / 130



 明けましておめでとう御座います。
 本年も宜しくお願い致します。
 って事で、新年1発目の投稿となります。


幼女のお受験 その4

 

 

 

 ここは天下に名高いトレセン学園のグラウンドにある芝コースの練習場、何時もは学園に通うウマ娘達が日々汗を流す場所だが、今日は何時もとは違い複数あるコース全てで、大勢の学園教職員達によって模擬レースの準備が進められて居た。

 そんな何時もとは違うコースから離れた、グラウンドの隅にあるプレハブ小屋では賑やかな昼食会が開催されていた。

 何時もはウマ娘達が着替えたり、トレーナーとの作戦会議を行なったりするテーブルの上には様々な料理がウマ娘基準の量で置かれており、椅子などは片付けられ、立食パーティー仕様となっていた。

 トウカイテイオーに連れられてきたリアルデュークが、マックイーンのチームメイト達に出迎えられて中に入り、トレーナーが音頭をとってジュースで乾杯をすると、すかさずゴールドシップが絡んで来た。

 「ギャハハッ! お前ってヤツはマジで最高だなぁ? いやぁ、流石のゴルシちゃんでもここまではやらなかったぜ!」

 大声で笑いながらリアルデュークの肩を抱くゴールドシップと、そんなゴールドシップを無視して、ひたすら手に持ったリブサンドに齧り付くリアルデューク、そんな2人を苦笑いで見ているトレーナーと、頭を抱えているメジロマックイーンを宥めているトウカイテイオー、ひたすら目の前の料理を貪るスペシャルウィーク、正にカオスな状況であった。

 「しっかしよぉ、砲丸投げで真上に飛ばして試験官を脅かすわ、前屈やればゴロゴロ転がるわと大活躍だなぁ?」

 「……うぃ」

 ゴールドシップの言葉に生返事で答えたリアルデュークは、リブサンドを食べ終えると、今度はタマゴサンドを食べ始める。

 「更にゲート試験でゲートを突き破ったって言うから最高に笑えるよなぁ?」

 「てか、金属製のゲートを突き破るって、どんな力してるのさ?」

 そんなリアルデュークの方を少しだけ呆れた感じで見ながらトウカイテイオーがぼやくと、疲れた表情でマックイーンが俯きながら続けてぼやく。

 「あぁ、メジロ家として在るまじき振る舞いの数々ですわ……」

 「この唐揚げなまら美味いです」

 正に愉快で堪らないという感じでゴールドシップが更に続ける。

 「しかもアレだろ? ハードル走ではハードル全部ぶち破って完走したしなぁ?」

 「で、でも、ハードル走では1番だったのですから頑張ったと思うわ。 だって1番なんですもの!」

 流石にマックイーンを見て居た堪れなくなったのか、ダイワスカーレットがフォローを入れるが、マックイーンの表情が明るくなる事は無かった。

 「全てを薙ぎ倒す走りかぁ、ある意味かっけぇかも……」

 そしてウォッカが何時も通り何かを感じ取っていた。

 「このオムライスもなまら美味いです」

 「これでは合格は無理ですわ……お婆様に何と伝えれば……」

 益々沈んで行くマックイーンに、流石に何かを感じたのか、ゴールドシップが今更だがフォローを入れる。

 「まぁ、ひとつひとつはアレだけどよ、まぁ、アレだ、午後からの模擬レースで勝てば問題ねぇんじゃねえか? なぁ、トレーナー?」

 「ん? あぁ、確かに模擬レースを勝つ位の実力を示れば大丈夫だとは思うが、いかんせんここ迄やらかしているとなるとなぁ……」

 急に話を振られたトレーナーが慌てて答えるが、つい本音を溢した所で遂にマックイーンが床に蹲って頭を抱えて青い顔をする。

 「……やっぱり無理なんですわ。 私がもっと親身になって体力測定のやり方から教えてあげていれば……」

 そんなマックイーンの肩に優しく手が置かれる。

 「……大丈夫、きっと何とかなる。」

 マックイーンが手を置いた人物の方を見上げると、そこにはタマゴサンドをもっちゃもっちゃと食べながら、人事の様な感じで話しかけるリアルデュークの姿があった。

 「……貴女が……」

 「これからでも遅くない。 マックイーンが走ればレース勝てる、間違いない。 これで全て解決、みんなハッピー!」

 そう言いながら手に付いたタマゴを、マックイーンの肩で拭くリアルデュークが、次に何を食べようかと視線だけでテーブルの上の料理を物色していると、肩に置かれた方の手首をマックイーンが突然掴み、捻り上げながら勢いよく立ち上がった。

 「いい加減真面目にやりなさい!」

 「ひぅっ!」

 マックイーンによって宙吊りになったリアルデュークが、何時も通りに上目遣いで誤魔化そうとマックイーンの顔を見ると……そこには鬼が居た。

 「いつもいつもいつもいつもいつも……貴女と言う方はっ! 私がどれだけ貴女の為を思って助言をしていると思っていますの? それなのに貴女は何時も何時も同じ生返事ばかりで、少しは真面目に考えて下さっても宜しいじゃありませんか!」

 段々とヒートアップしていくマックイーンの両肩を背後から両手で掴んだトウカイテイオーが、優しく話しかける。

 「はいはい、マックイーン、そこまでにしておこうよ? リアルデュークだって、きっとわかっていると思うよ。 だからさ、ちょっとだけこっちで話そ?」

 そう言ってゆっくりとリアルデュークからマックイーンを引き離すと、テイオーは、マックイーンの肩を抱いて小屋の外に連れて行った。

 その場に残されたリアルデュークは、床に足を投げ出す格好で座り込むと、そのまま俯いて動かなかった。

 「……あぅ。」

 そんな場の空気に耐えられなくなったウォッカが、恐る恐る声を掛ける。

 「あー、その、なんだ……大丈夫だって、リアルデュークが本気で走ればマックイーンさんだってわかってくれるだろ? だから、なっ?」

 ウォッカの言葉だけでは不十分だと思ったスカーレットが、ウォッカの言葉に追従する様に話しかける。

 「そ、そうですわ、マックイーンさんなら1番になればきっと褒めてくれるわ! だって1番なんですもの!」

 そのスカーレットの言葉に、つい何時もの癖で余計なことをウォッカが口にする。

 「お前は1番以外に言う事ねぇのかよ? な、リアルデューク? きっと大丈夫だって。」

 そしてスカーレットも、反射的にウォッカの言葉に反応してしまう。

 「アンタこそもうちょっと言う事無いの?」

 「何だよ!」

 「何よ?」

 そんな、最早御約束とも言えるやり取りに対して、流石に空気を読んだトレーナーが止めに入った。

 「お前等、こんな時まで張り合うな!」

 「「だってトレーナー、スカーレット(ウォッカ)が!」」

 2人の何時も通りの反応に少々呆れながらも、真面目な表情を意識して作ると、俯いているリアルデュークに努めて優しく話しかけた。

 「お前等……兎に角だ、いいか、リアルデューク? 一応、俺の立場的にはあまりこういった事を言うのは良くないんだが、まぁ、知らない仲って訳でも無いから言うが、お前みたいに走る事自体にそこ迄執着しないウマ娘ってヤツは稀にだが居るんだが、一般的には走りに執着するのがウマ娘って種族の性みたいな物何だと俺は思う。だからお前にも走る事を強要するのは間違っているとは思うが、マックイーンは、お前のお姉ちゃんは、それでも自分と同じ場所で一緒に走って欲しいと思っているんだと思う。 だからリアルデューク、これはおそらく、ここに居るみんなの思い……」

 いい感じに話していたトレーナーの背中を平手打ちして話を止めたゴールドシップが、子供でも分かるくらい作った嫌そうな表情で文句を言う。

 「トレーナーの癖に何勿体ぶった言い方してんだよ? そんなん見るとこのゴルシちゃんは、何だか背中が痒くなっちまうじゃねぇかよぉ? かゆ、ウマだぞ!かゆ、ウマ!」

 「なんか私、お肉が食べたくなって来ました!」

 ゴールドシップの方を向いたトレーナーが、頭をかきながら少しだけイラッとして話す。

 「……ゴールドシップ、あのなぁ、折角人が真面目な話をしていたんだから茶化すなよ!」

 そんなトレーナーの態度を気にする素振りも見せずにゴールドシップが得意げに宣う。

 「このゴルシeyeがある限り、トレーナーにシリアスなんざさせねーっての!」

 ゴールドシップの言葉に毒気を抜かれたのか、そもそもそんなに気にして無いのか、すぐに表情を先程までの真面目なモノに戻すと、リアルデュークの肩に手を置き話しかけた。

 「相変わらずお前は……まぁ、話の腰を折られちまったが、要するにだ、ここに居るみんながリアルデューク、お前の入学を楽しみにしているって事だ、だから模擬レースではしっかり走ってこい!」

 「……うぃ!」

 トレーナーの気持ちが通じたのか、俯いた顔を上げて返事をするリアルデュークの表情は、何時もと違う真面目なものだった。

 「おお? 何時もと違う気合いの入った返事だな?」

 「そうよ、その気合いで1番を取って来なさい!」

 「そんだけの気合いならきっとやれるぜ!」

 「こうなったらこのゴールドシップ様が応援するんだ、ぶっちぎりで勝ってこいよ?」

 口々にリアルデュークを励ます面々に、自然と場の空気も盛り上がりを見せる。

 「このリブサンドなまら美味いです!」

 「「「「まだ食って(たべてい)たのかよ(ですか)!」」」」

 そんな場の空気を全く読まない発言に、その場の面々がツッコミを入れるのも何時もの事であった。

 

 

 「ほらね、リアルデュークは大丈夫でしょ?」

 外からドア越しに中の様子を伺っていたトウカイテイオーが、マックイーンに笑いかける。

 「……それでも、心配なんですわ。」

 「お姉ちゃんは大変だね?」

 そんなマックイーンに、トウカイテイオーが揶揄う様に話しかける。

 「もう、揶揄わないで下さいまし。」

 そう返事をしたマックイーンの顔は優しく微笑んで居た。







 シリアスの塩梅って難しいです。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。