今回は周りの人達の反応中心です。
【え〜、多少のトラブルは有りましたが、どうやら無事に全選手ゲート入りが終わりました。 えっ! ……第3模擬レース、芝短距離、只今発走しました。】
【何だこのスタートは! ゲートの不具合にしても、これでは一方的な不利では無いか!】
突然予期せぬ形で始まったレースに、思わずといった感じで立ち上がって叫ぶ東条トレーナー、依然として出てこない10枠の選手に会場の視線が集まる。
そんな中レースは進み、既に先頭選手が第一コーナーへ差し掛かる頃、観客席から誰かが叫んだ。
「リアルデューク、そこで一体何をやっているのです。走りなさい、貴女はこの私、メジロマックイーンの自慢の妹なのですよ!」
その瞬間、ゲートから爆音が響いた。
【何? 爆発? え、嘘でしょ……な、ななな何とも凄まじいスタートです! 10枠リアルデューク選手、一気呵成の加速! 何というスピードでしょう、あっという間に最後尾に並びかける、いや、並ばない並ばない、あっという間に抜き去って行く。 これは……】
【……まさに、ナタの切れ味だな。 これ程とは……】
突然の出来事に誰もが声も出せずに黙る。
その間にも大外から全てを追い抜いて行くその小さな姿を見てざわつき始める。
【リアルデューク選手の加速が止まらない、まだまだスピードが上がって行きます、本当にこれで入学前の選手なのでしょうか? 既に中団を抜いて第二コーナーを越える、さぁ、後は最終直線を残すのみ、現在トップのサロメ選手、そのリードを2馬身まで伸ばす、対するリアルデューク選手、流石に厳しいか?】
最終コーナーを抜けた時点でトップとの差は5〜6馬身程、流石にスタミナ的にも残りの距離的にもここまでかと観客が思ったその時、リアルデュークの身体が更に沈み込んだ。
すわ転倒かと観客席から悲鳴が上がるが、その低さのまま更にラストスパートをかける姿に驚嘆する。
【いや、リアルデューク選手ここから、ここから更にスパートをかける! これはモノが違う、そのままサロメ選手を抜いてゴール! なんとなんと、出遅れもなんのその、リアルデューク選手驚異の牛蒡抜き、全選手を並ばずに一気に抜き去って、最後は1馬身差迄付けての圧巻の勝利でした。】
【はは、これはまた素晴らしい才能の煌めきだな? だが、今回の件、ただの不具合で済ませて良い話では無いと私は考える。 リアルデューク選手は勿論、その保護者の方々に対し学園側の誠実な対応を期待させて頂く。】
その後も放送は続いていたが、その場に集まった面々は漸く見れたリアルデュークと言うウマ娘の力にそれぞれ違った反応を見せて居た。
「リアルデューク……やるやん、アレが神話の時代の片鱗って事やな。 おう、オグリ、アンタもすっかり起きてしもうとるやないか?」
「……タマモクロス、アレを見て何も感じないウマ娘は居ない。」
タマモクロスとオグリキャップ、一時代を築いた2人が見せた顔は、まさに勝負に取り憑かれた餓狼の顔そのものであった。
「……リアルデュークって、本当にメジロなの? だって、あの走りはどちらかと言うと、メジロよりナリタブライアンの走りそのものじゃない?」
圧巻のレースを見て、ダイワスカーレットがトレーナーに問い掛ける。
「いや、走り方より問題なのは、あの心肺能力だ、約1400mのロングスパートだぞ? あの年代じゃ無くても、って言うか普通のウマ娘じゃまず無理だ。 こんなの有り得ない能力だ。」
気圧された顔でダイワスカーレットの質問に答えるトレーナー、その隣では興奮したウォッカが拳を握り締めて叫んでいた。
「うおおおー!全員纏めて千切って捨てる。 かっけぇ、スッゲェかっけぇぞリアルデューク!」
そんなウォッカ達から少し離れた席で腕組みして満足そうな顔で頷くゴールドシップ。
「まだまだこのゴルシさま程では無いが、流石はこのゴルシちゃんの弟子。」
そんなゴールドシップに軽い口調で突っ込むトウカイテイオーの一言に、その場の全員が驚いて声を上げる。
「リアルデュークはゴールドシップの弟子じゃ無いでしょ? だってあの子はシンザン様の後継者だもん。」
「「「「はぁっ?」」」」
「あ、これって言っちゃ不味かった?」
その場の反応に不味い事を言ってしまったと言う顔をするトウカイテイオー。
「リアルデュークがシンザンの弟子ってどう言う事何だよ? アイツはこのゴルシちゃんの弟子じゃなかったのかよ?」
「アンタの弟子って事実は最初から無かったでしょ!」
「いやいや、テイオー、アイツが、リアルデュークがあのシンザン様の後継者って、本当の事なのか? 弟子じゃ無くて、後継者なんだな?」
ゴールドシップを筆頭に興奮してテイオーに質問をする面々に引きながら答える。
「うん、前にマックイーンから聞いたよ?」
「そうか、そう言う事か……」
そんな中でも、1人何かに納得するトレーナーを放置してウォッカ達が心情を述べる。
「何かわかんねぇけど、取り敢えずすげぇんだな?」
「……ウォッカって、時々リアルデュークより馬鹿っぽいわね。」
「何言ってんだスカーレット、そこにもっと馬鹿っぽいのが居るじゃねぇか……」
いつも通りウォッカに辛辣なスカーレットに、ゴールドシップがある席を指し示す。
その指し示した先では、スペシャルウィークがウマホでサイレンススズカにシンザンって誰なのか聞いていた。
「スズカさん、シンザンって何ですか?」
「……スペちゃん、嘘でしょ?」
「スズカさんは何か知ってますか?」
そんなスペシャルウィークの姿を見て、目線を逸らして言い難そうに呟く。
「……スペ先輩は、その、そう、良い人だから。」
「……マックイーンお姉ちゃん! ボクがんばた!」
「ええ、ええ、見事な走りでしたわ。 それでこそ私の自慢の妹ですわ!」
走って来たリアルデュークの体をギュッと抱きしめたメジロマックイーンが、涙声でリアルデュークを褒める。
「……良かた。 でも、ボク限界、ちょっと無理。」
先程まで抱きついていたリアルデュークから力が抜ける。
「リアさん? え、ちょっとリアさん! トレーナーさん! 誰か、すぐに来て下さいまし! リアさんが、リアさんの靴に血が!」
半狂乱状態のマックイーンの所にトレーナーが辿り着くと、両脚を痙攣させたリアルデュークを抱き抱えて、半泣き状態でトレーナーに縋る様な目で見て来た。
「……大丈夫、大丈夫だマックイーン。 そのまま仰向けに地面に寝かせろ。 リアルデューク、わかるか? もう大丈夫だからな? 良し、取り敢えずこのまま担架で医務室に運ぶぞ?」
トレーナーの的確な指示もあり、特に混乱も無く医務室で応急処置をされたリアルデュークは、そのままメジロ家の療養所へと運ばれて行った。
過ぎた力は無いのと同じ。
そんな感じします。