「あ、そうそう、言い忘れてしまいました。」
「……お前等、全員追放します!」
ここに、10年越しの復讐が始まった…
「そうでした、追放後はメジロ、シンボリ両家合同で縊り殺しますので、きっちりとのたうち回ってくださいね♪」
そう宣言された男達は、最初のうちは「何の冗談だ」や、「これだから女のTOPは感情的で思慮に欠けるからダメなんだ」などと、多少の動揺はあれど、概ねそんな事は出来る訳が無いと言う考えが大半を占めていた。
自分の放った言葉に対し、想定通りの反応が返ってきている事に対して、冷笑で返したアサマ達は、大会議室へと繋がる両開きの大きなドアを使用人達に開けさせる。
先程まで自由に歓談して居たであろう会議室に居た者達は、アサマ達の姿を見ると、一斉に深々と頭を下げた。
「皆さん、遠路遥々私の求めに応じて頂き、このアサマ、感謝の意を示します。 皆さんには事前にご説明しております通り、この者達には我がメジロ家及び、メジログループからの追放を通達致しました。」
メジロ家総帥として、覇気のある毅然とした態度でこの場に集まった者達を見遣りながらはっきりと宣言した。
会議室に集まって居た者達は、すぐに了承の意をアサマ相手に伝える。
だが、一方的に宣言された者達は納得する筈も無く、怒りを顕にアサマ達へ詰め寄って来た。
「誰のお陰でその立場に居られると思っているんだ!」
「メジロ家総帥だからと何でも思い通りになると思うな!」
「こんなの無効だ。 私等の協力が無ければメジロと言えど、これ迄の様な権勢を誇れると思うなよ?」
などなど、あらゆる罵詈雑言がアサマ達に投げかけられる。
だが、アサマはその顔に冷笑を浮かべたまま、まるでゴミでも見るかの様に顔を真っ赤にして怒鳴る者達を眺めていた。
そんなアサマとは対象的に、騒ぐ者達を射殺さんばかりに睨んでいたラモーヌは、我慢の限界とばかりに怒りの声をあげようとしたが、いつの間にか隣にいたスピードシンボリに腕を掴まれて制止された。
「……貴女はアーちゃんが話すまでお待ちなさい」
若干の苛立ちがあったが、怒りを抑えたその顔を見たラモーヌは、少しだけ冷静になって周りを見ることが出来た。
ラモーヌが冷静になった事を確認したアサマは、執事に小声で何かしらの指示を与えた後、未だに騒いでいる者達に向けて何年も内に秘めていた想いを解放する。
「黙りなさい! 今から貴方方の罪を告発しますので、黙って聞きなさい。」
その言葉で大体の者は大人しくなったが、まだ興奮して騒ぐ者達が居たが、アサマの殺意の籠った視線を受けて大人しくなる。
「さて、お集まり頂いた皆さんにも是非聞いて頂きたい事なのですが、その前に少しだけ昔話をお聞きください。 皆さんも知っていると思いますが、我がメジロ家にはその昔、此方を敵視するとある一族を強引に叩き潰したと噂された一件がありました。 まぁ、それ事態は稀にある事なのですが、今から7年前に起きたその一件については皆さんの中でもよく覚えている方も多い事でしょう。」
アサマが語りだしたその一件に対し、当時を知る者達の間で小さな騒めきが起こるが、続きを離し始めた事ですぐに静かになる。
「その時の相手、デューク家ですが、本来ならば私達と手を取り合う筈だった相手でした。 …卑劣な愚か者が居なければですが!」
そこで、少しの間を取り、追放を言い渡した者達を睨みつける。
「当時、デューク家の本家には、異端の天才とまで評価される物理学の若き権威者の殿方がおりました。その殿方はある日突然、私の姪に懸想をしたので結婚を前提に付き合いたい、その為に協力して欲しいと言って来られたのです。 当然、すぐに姪の意思を確認して、2人の覚悟も確認した私は、この2人を祝福し、力を貸すことを決めました。 当然、お互い本家の人間同士ですもの、すぐに2人だけの問題から互いの家の問題になりました。 ですが、当時の両家のTOPは打算的だった事もあり、目に見える利益を示してあげればすぐに2人の事を認めたわ。 一部の欲深い者達を除けばね?」
一度そこで話を区切ったアサマは、先程の部屋で露骨なご機嫌取りをして居た香水臭い男を睨みつける。
「ヒッ! な、わたしは映えあるこのメジロ家の為に、そう、そうだ! わたしはメジロ家の繁栄の為に、アドバイスをしただけで何も悪くない!あの男が、わたしの恋人を卑劣にも奪ったんだ。わたしは被害者なんだよ!」
「だから、全てを奪ったと?」
男の言葉を聞いたラモーヌが冷やかな眼差しで問いかける。
「わたしは何もしていない。 無実だ! こんな糾弾擬きを受ける謂れはない!」
「……貴方の意見は聞いていないわ。 それに、安心しなさい今から貴方が私の愛する姪に行ったこと、キッチリと説明して思い出させてあげる」
「……お祖母様」
底冷えのする雰囲気を纏ったアサマが、更に言葉を紡ぐ
「さて、話を続けるわよ? ああ、この愚物が私の愛しい姪の恋人だなんて事実は、一欠片もないし、貴方はストーカー規制法で接近禁止命令すら出ていた変態じゃなくて?
その変態が、家の力を使って2人を追い詰めて、駆け落ちまでさせるなんて……ましてや2人が駆け落ちした事を理由に自らの本家であるデューク家を乗っ取り、それを手土産にメジロ家に寝返るなんて、どこにそんな知恵があるのか、未だに理解不能の愚物だわ。
更にあの子が産んだ赤子にまで手を出していた。
妄執と嫉妬、それに自己顕示欲の塊、そんな暗い性根の腐った人物。
それが貴方よ? 今までは前総帥の庇護もあり、準備にこんなに時間がかかってしまいましたが、既に証拠も証人も揃えた、前総帥には世の中の事を一切気にせず、ゆっくりと余生を過ごせる場所へお送りしましたし、いい加減覚悟を決めなさい!」
そう言い放ったアサマは男達をもう一度強く睨んでから、男達への制裁開幕を宣言する。
「…さて、既にメジロでは無くなった貴方達に、私から…いえ、私達からプレゼント…ちょっと違うわね?
……お返し、そうね……そう、貴方達からの心無い贈り物に対して、精一杯のお返しを贈ってあげるから後悔しながら受け取りなさい!
執事、外でお待ちの方々を中へ」
「畏まりました。 さぁ、お客様方を此方へ」
執事長が使用人達に合図を送ると、すぐに廊下へ通じるドアが開き、10人以上の制服警官を連れた壮年のスーツ姿の男達が入ってくるなり
「人身売買及び、横領脱税などの嫌疑で逮捕する。
これが裁判所からの通達なので確認しろ!
おい、確認が終わった奴から引っ張っていけ!」
突然の国家権力の介入に一時騒然となったが、すぐに警察に手錠をかけられて、アサマに怒りを顕に騒いでいた殆どの男達は居なくなってしまったので、一次騒然として居た場の空気が徐々に落ち着きを取り戻して行く。
事の顛末を見届けた人達に、海堂が声をかけて今回の粛清によって、真のアサマ体制へと切り替わった事を祝う晩餐会の会場となる部屋へと誘導して居た。
そんな遣り取りを見ずに椅子に座って俯き、両手で顔を覆うアサマの背中を優しく摩りながら、スピードシンボリが声を掛けている。
「アーちゃん、良く頑張りました。
あの子もきっと感謝してくれますよ?
8年間、アーちゃんが必死になって、誰よりもあの子の為に頑張っていたのは、私がちゃんと見ていましたよ。
長い間、良く頑張りました。 良い子良い子です。」
「スーちゃん。 私、ちゃんとあの子に報えたでしょうか?」
「…大丈夫、大丈夫。 だって、あの子ですもの。
きっとありがとうって言っているわよ?」
不安そうなアサマを何時迄も宥めるスピードシンボリ、そんな2人を見てまた涙が出るラモーヌだった。