子供って、意外と考えてます。
この幼女も多分、考えてます。
「全く、信じられませんわ! 合格発表の日を忘れて二度寝して居ただなんて! 私とお祖母様が、どんな気持ちでこの日を迎えたと思っていますの? 大体貴女は、普段からきちんとした計画性を持った節度ある生活をしないから、今日みたいな事になるんですわ。」
2次試験の合格発表の日に、二度寝を楽しんで居たリアルデュークが目を覚ますと、何故か療養所の部屋ではなく、別邸にある応接室のソファに寝かされて居た。
そして、目を覚ました途端、リアルデュークの前に仁王立ちしていたメジロマックイーンから説教を受けて居た。
「……怒ってばかりは小皺増える。」
ぼそっとリアルデュークが小声で呟くと、それを聞いたマックイーンの眉が更に吊り上がる。
「何か言いましたか?」
「何時も綺麗な姉様大好きです。」
鬼の形相になったマックイーンを見て、即座に全面降伏したリアルデュークのおべっかに好相を崩すマックイーン。
「全く、この子はもう……正直な子ですわ。」
「……何この馬鹿っぽいやり取りは?」
そんな2人のやり取りを眺めて、対面のソファに座って居たトウカイテイオーが呆れ顔でぼやいた。
「アタシ思うんだけど、マックイーン先輩って実はかなりチョロい?」
そして、テイオーの隣に座って居たダイワスカーレットが、普段から感じて居た疑問を口にする。
「リアルデュークが絡んだ時は確実にチョロいと思うよ? まぁ、今回は無事に2次試験までは受かって、後は面接だけだから大丈夫だと……は、思えないなぁ、リアルデュークがマトモに面接出来るとはボクは最早思えないなぁ。」
「アタシも、あの子が大人しく普通に面接を受けている姿が想像出来ないわ。」
ダイワスカーレットの疑問に答えながら、つい口から出たテイオーの言葉に、ダイワスカーレットも思わず同意する。
「テイオーはまだしも、ダイワスカーレットさん迄……良いですか、リアさんは普段はアレでも、この私と同じメジロ家のウマ娘なんですわよ? 当然、名家としての一般教養として、日頃から礼儀作法くらい心得てありますわ。 ねえ、リアさん?」
「……ハイソウデス」
そう言われて返答するリアルデュークの目はハイライトが消えていた。
「……何かリアルデュークの目が死んでるけど、大丈夫なの?」
「勿論ですわ! 我がメジロ家の礼儀作法担当が日々しっかりと教育しておりますから!」
そんなリアルデュークを見て、テイオーがジト目でツッコミを入れるが、それを受けても何故かマックイーンは自信満々で答えてきた。
「……と、マックイーンは言ってるけどさ、リアルデューク的にはどうなの?」
「だだだだだ大丈夫? ボク出来る女。 礼儀大丈夫?」
テイオーに答えるリアルデュークは、正に挙動不審だった。
「……これは、ダメっぽいわね?」
「だねぇ、マックイーン、現実を見ようよ?」
「テイオー、現実も何も、私のリアさんがこれくらい出来ない訳が有りませんわ!」
何故か頑なにリアルデュークの方を見ないで答えるマックイーンと、先程からずっと挙動不審な動きをするリアルデュークの姿を見て、テイオーとスカーレットは嫌そうな顔でお互いに感想を述べた。
「うわぁ、これって落ちたら面倒そうな状況だわ。」
「まぁ、リアルデュークには頑張って貰うしかないよね。」
最早諦めに似た雰囲気を出しながらテイオーがぼやく中、リアルデュークが窓の外、晴天の空を眺めながら心の底からぼやく。
「……面接面倒い。」
あれから面接の為に、マックイーンが押す車椅子に乗ってリアルデュークはトレセン学園面接会場へと向かって居たが、受付で受験票を提出した所、理事長室へと案内された。
案内に従い、理事長室のドアを開けた所、室内には壁一面の本棚と、応接セットのソファ二つに、センターテーブル一つがあり、その奥に重厚な意匠の執務机と高そうな椅子があり、その椅子には『歓迎』と書かれた扇子を広げた髪の長い歳の頃14歳くらいの女の子が座っており、その左斜め後ろには全身緑色のスーツを着た年若い女性が微笑んで立っていた。
「歓迎! よくぞ来てくれた。 私がこの学園の理事長を務めている秋川やよいだ。 怪我の具合はどうだろうか? 何かあれば遠慮なく言って欲しい。」
「このちびっこ偉そう?」
そんなやよいを見たリアルデュークが、後ろを振り返ってマックイーンを見ながら、やよいを指差して言って来た。
「す、済みません理事長、この子は日本に戻って来て未だ日が浅く、世情に疎い所がありまして、根は良い子なんです!」
そんなリアルデュークの反応にマックイーンは、背中に冷たい物を感じながら精一杯のフォローを入れる。
「……茶菓子が無い。 持て成しが悪い。」
何となく悪ノリしたくなったリアルデュークが、更に調子に乗ってみる。
「馬鹿な事を言ってないで、ちゃんと挨拶しなさい!」
「うっす、ボクはリアルデューク、よろよろ。」
焦ったマックイーンが、何とか取り繕うと必死になってフォローを入れつつ、リアルデュークを嗜める。
「あぁ、このおバカ! す、済みません理事長、ちょっと緊張しているみたいで、普段はもっとちゃんとしているんです。 ほら、きちんとご挨拶して! これは貴女の面接なんですわよ?」
しかし、状況を理解して居ないリアルデュークが斜め上の考えを披露すると、そのやり取りを見ていたたづなから声を掛けられた。
「面接? でも、理事長っぽいの居ない、脂ぎったバーコード居ない?」
「リアルデュークさんは、とても自由で物怖じしない方なんですね?」
たづなからのその一言に、顔面蒼白になって対応するマックイーンの胃がキリキリと痛み始めた。
「あぁぁぁっ! た、たづなさん? これはその、違います、やれば出来る子なんです!」
「たづな? やふ〜?」
「ふふふ、楽しい方ですね?」
リアルデュークに手を振って笑うたづなを見て、学園のトレーナー達が言って居た『緑の悪魔』の噂を思い出したマックイーンが、リアルデュークに必死になってお願いする。
「あぁぁ、もう、済みませんたづなさん! リアさん、お願いだからちゃんとして!」
「大丈夫、面接はちゃんと出来る。 ボクは出来る女!」
「だから、その面接がもう始まっているんですのよ!」
何故か自信満々なリアルデュークに不安しかないマックイーンが、リアルデュークのその言葉に更なる不安を掻き立てられたその時、マックイーンの胃を直撃する言葉がリアルデュークの口から発せられた。
「……茶が温い、ここはお茶ひとつ満足に淹れられないのか!」
「あらあら、済みません、お茶、淹れ直して来ますね?」
「ひぃぃっ! 何言っているんですの!」
両手で頬を押さえて悲鳴を上げるマックイーンを尻目に自信満々でリアルデュークが宣言する。
「機先を征する、ボクの見事な交渉術! 昨日ベル姉と一緒にアニメで学んだ!」
「……終わったわ。 何で面接の前の日にアニメなんて見せているんですの……ドーベル、帰ったらみてなさいですわ。」
帰ったらいの一番にドーベルを絞めると、心に誓ったマックイーンだった。
「愉快! ここまではっきりと自分を持っている子は中々居ない。」
そんなリアルデュークを見て、何故か上機嫌に笑うやよいと、何か目が笑って居ない気がするたづながいた。
「確かに、まるで面接と言うのを分かっていないか、何事にも動じない軸が出来ているか、どちらでしょう?」
「ボク凄い、たいざんじしゃく?」
「それを言うなら泰然自若ですわ!」
「……そうとも言う!」
「理解! 実に楽しい時間であった。 ではそろそろ面接を行う。 リアルデュークよ、君はこの学園に入って何を求めるのか?」
急に今までの愉しげな雰囲気から真面目な顔になったやよいが、リアルデュークに圧をかけながら質問する。
「……最強。 そしたらママ達を見付かる!」
そんなやよいの変化を知ってか知らずか、リアルデュークが元気よく質問に答える。
「……ママ達って、貴女のご両親は既に……」
マックイーンが思わず言ってしまった言葉を、無視する様にリアルデュークが言葉を続ける。
「強くなってレース勝つ、そうすればママ達見つかる。 おばちゃんそう言った! だからボクは勝つ!」
「おばちゃんって……シンザン様がそう言ったのですか?」
自分が知らなかった事を聞いて、思わずリアルデュークに確認を取るマックイーンの言葉を遮る様にやよいが大きな声で宣言する。
「得心! このトレセン学園ならば、キミの目標である最強を目指す手助けが出来ると明言できるだろう!」
「確かに、リアルデュークさんの目標に至る最短ルートは、この学園に入ってトレーニングを積む事かも知れませんね。」
やよいの宣言に続く様にたづながその宣言を肯定する。
「疑問! キミのご両親は既に亡くなっておられると聞いたが、ママ達とは誰か?」
「ママ達はママ達! みんな一緒に居た。 でも、居なくなた、だから探す! おばちゃん言った、ボクが有名なる、ママ達が見付けてくれる。 だからボク最強なる!」
「感動! たづなよ、我が学園の伝手でママ達を探せないだろうか?」
自身が投げかけた質問に対するリアルデュークの答えに、何かしら感じるものがあったのか、リアルデュークの手伝いをしようとするやよいに対して、たづなが現実的な話をする。
「正直、難しいかと思われます。 既にメジロ家でも探しているでしょうし、それで見つかって居ないのであれば、何らかの事情があると思われますので……」
「無念! だが、私個人でも伝手を使って探してみよう。 だからリアルデューク、キミはこの学園で先ずは最強へと邁進して貰いたい!」
手助けとならない事に残念そうにしながらも、今度は励ます様にリアルデュークに話しかけるやよい、そんなやよいの姿を見てたづなも、リアルデュークを笑顔で励ます。
「そうですね、リアルデュークさんはまだ子供なんですから、こう言う事は大人である私達に任せて、先ずは学生として頑張って下さいね?」
「同意! 学生は学生として楽しむべし! これにて面接を終了する。 みなご苦労であった!」
「正式な合否は後日書面にて郵送されますので、その日迄お待ち下さい。 本日はご苦労様でした。」
よく分からない内に、何だか面接が終わってしまったマックイーンが、反射的にお礼を述べる。
「あ、はい! 有難う御座いましたですわ。」
「……面接?」
良くわかって無いリアルデュークが首を傾げながらマックイーンに面接がいつ始まるのか尋ね様と思ったが、空気を読んで黙る。
「では、失礼致します。 ほら、リアさんもご挨拶して!」
「……うぃ、あざましたー!」
手を振りながらマックイーンによって室外へと運ばれて行ったリアルデュークが、マックイーンから拳骨を貰うのは必然だった。
「ちゃんと挨拶しなさい!」
「うぐぅ、暴力反対! 頭叩く、馬鹿になる!」
「……もう既になって居ますわ!」
マックイーンが最近ダメな子に見えて来ました。
だが、そこが良いと思います。