ちょっと短めです。
あれから4人でお茶をしていると、執事長が慌てた様子で執務室に駆け込んで来た。
「大奥様! 大奥様! 遂に来ました!」
「執事、間違いありませんか?」
執事長の言葉に立ち上がって確認をするアサマに意気軒昂と応じる執事長。
「はい、この通りお名前、住所共に間違い有りません。」
「では、開封の儀の準備をしましょう。」
封書が待っていた物だと確認が取れたアサマが、高らかに宣言した。
「あぁ、3女神様、どうかご加護を……」
「何卒、何卒お嬢様に祝福を……」
そして直ぐに祈りを捧げ始めるマックイーンと執事長。
そんな周りの様子に染み染みとリアルデュークに話すテイオー。
「リアルデューク、キミって、本当にこう言う方面では、全く信用無いんだねぇ?」
「天才は中々理解されない。 悲しき宿命。」
そう言いながらもっちゃもっちゃとテーブルに置かれたお茶請けのどら焼きを両手に持って貪る様に食べるリアルデューク。
「天才かぁ、どっちかって言うとさ、キミはゴールドシップと同じ分類だと思うけどねぇ?」
そう言った瞬間、リアルデュークが床に這い蹲って震えながら絶望して居た。
「うわぁ、ど、どうしたのさ、リアルデューク?」
「アレと同じ……もう生きて行けない。」
「いやいやいや、そんな自分だけは違うみたいな、この世の終わりみたいな顔されても……」
取り敢えず軽く宥めるつもりでリアルデュークの肩に手を置こうとしたその時、血走った目でテイオーを見たリアルデュークが、急に飛びかかって来た。
「じょ、冗談と言えぇぇぇっ!」
「うわぁっ! 急に何するのさ、リアルデューク!」
「アレと同じ、最大の侮辱! 訂正する!」
叫びながらテイオーをソファに押し倒したリアルデュークが、襟元を掴んで前後に揺さぶり始める。
「わかった、わかったから、だから襟首掴んで揺すらないでぇぇっ!」
「アレと同じだけは、アレと同じだけは……」
なんとかリアルデュークを引き剥がしたテイオーが襟元を確認する。
「うぅっ、すっかり襟元が伸びちゃったよ。 これってまさかの同族嫌悪?」
「同族言う良くない! 人には言ってはダメな事ある!」
テイオーの言葉にキレたリアルデュークがまたテイオーの襟元を掴む。
「うわぁ、ごめん、ごめんってばぁ!」
またまたリアルデュークに馬乗りになられて前後に揺さぶられたテイオーが必死になって謝っていると、執務室の扉を開けて入って来たドーベルが、テイオー達を見て声をかける。
「貴女達は一体何をしていますの?」
「マックイーン、学園から結果が来たんだって?」
「先生の合格通知が来たんですね!」
ドーベルに続く様に入室して来たライアンが、近くにいたマックイーンに声をかけると、それに反応したドーベルが喜びの声をあげる。
そんな周りを制する様に、アサマが声高らかに宣言する。
「では、先ずはこの場の全員で3女神様に祈りを捧げます。 それから開封の儀を執り行います。 執事、祈りの準備は宜しいですか?」
「はい、大奥様の指示通りに隣の部屋に用意してあります。」
アサマからの問いに恭しく答えた執事長が、隣の部屋へと続くドアを指し示す。
「では、皆様、参りましょう。」
上機嫌のアサマに促されて、その場の全員が隣の部屋へと移動すると、テイオーが思わず叫ぶ。
「いやいやいや、これってガチの祭壇じゃん!」
「はい、学問の神様で名高い神社監修のリアルデュークお嬢様合格祈願祭壇で御座います。 隣は3女神様によるリアルデュークお嬢様合格祈願祭壇と、世界的に有名なパワーストーンを各種取り揃えてあります。 更に学問に御利益のある神社仏閣全てを調べ、それぞれの監修の下、祭壇を建てて今から約3ヶ月程前より、著名な祈祷師の方々に祈りを捧げて頂いておりました。 ですので、リアルデュークお嬢様の合格運は、いまや天元突破していると申しましても問題ない状態であると言えます。」
テイオーの問いに、執事長が得意気に答える間にも、異様なその空間を確認したテイオーが全力で叫ぶ。
「神頼みにも程があるよ! てか、宗派が集まり過ぎて最早何の集まりなのか訳わかんないよ!」
あれから約1時間程、謎の儀式に付き合ったテイオーの目はハイライトが消えかけ、隣にいたリアルデュークは既に寝落ちして居た。
そんな2人とは対照的に、メジロ家の面々はいつにも増して真剣な表情でアサマが主導する謎の儀式を完遂して居た。
「……それでは、これより開封致します。 みなさんのご祈祷によって、きっと良き結果が出るものと私は信じております。 さぁ、みなさん今一度の助力を願います。」
メジロ家の面々が更なる祈りを捧げる中、アサマが封書をペーパーカッターで開封していくと、祈りの熱も更に上がっていった。
「たはは、最早カルトだよ……」
テイオーの呟きも掻き消される程の祈りの合唱が遂に終わる。
「……いざっ!」
アサマが掛け声と共に通知書を取り出して目を通す。
「……ふ、ふ、不合格……です。」
アサマの放った言葉に、場の空気が一気に極寒となり、啜り泣く声が聞こえ始める。
手に持った通知書を取り落とすと同時に、その場にへたり込むアサマを咄嗟に抱き抱えて支えた執事長が、床に落ちた通知書を見ると声をあげた。
「……大奥様、まだです。 まだ希望は有りますぞ!」
「……執事?」
そんな執事を怪訝な目で見るアサマに対して、執事長が床に落ちた通知書を指し示す。
「通知書を今一度ご覧下さい。 補欠合格と書いております!」
「何ですって?」
執事長の言葉を聞いたアサマが、床に落ちた通知書を今一度確認する。
「……お祖母様?」
そして床の通知書を確認した態勢のまま、動かなくなったアサマを心配して声をかけるマックイーン。
「……やりました、やりましたよマックイーンさん、合格です! 補欠合格ですわ!」
マックイーンの声掛けから更に数十秒経ったあと、勢いよく立ち上がったアサマがマックイーン達に歓喜の報告をする。
「まぁ! やりましたわ、お祖母様! 私達の願いが、祈りが届いたのですわ!」
アサマの言葉に、今度はメジロ家面々の感情が爆発する。
場の空気は一気に明るくなり、みな口々にアサマに祝いの言葉を贈る。
「おめでとう御座います、お婆様!」
「有難う、ドーベルさん。」
「やったね、おめでとう、お祖母様!」
「有難う、ライアンさん。」
「まさに、大奥様の祈りの賜物かと……感無量で御座います。」
「有難う、執事。 貴方にも苦労をかけました。」
「やりましたね、お祖母様。 私達の勝利ですわ!」
「ええ、その通りですわ、マックイーンさん。」
そんな、涙目で歓喜に震えながら抱き合う人達を眺めながら、1人テイオーが騒ぎで目を覚ました、当事者なのに何故か蚊帳の外のリアルデュークに話しかける。
「いやいや、補欠だから……って言うのは、言わぬが花ってやつかなぁ? 取り敢えず、合格おめでとう、リアルデューク。」
その言葉を受けて、リアルデュークが得意気に胸を張る。
「出来る女、それがボク!」
「しかしまぁ、信じる者は救われるって言うけど、リアルデューク以外全員が神頼みって言うのも、ある意味キミらしいって言えるのかな?」
適度にリアルデュークを揶揄いながらも、心の底から喜んでいる人達を見て、何となく心が温まる気がするテイオーだった。
メジロ家史上初の補欠合格です。
人間、下ばかり見せられると、変な感じにポジティブになれる。
そんな気がします。