原因があって結果がある。
ウマ娘には揺るがない結末がある。
この扱いって難しいです。
「……軽い脳震盪でしょう。 一応、大丈夫だとは思いますが、今日一日はあまり運動とかはさせない様にして下さい。 では、私達はこれで失礼します。 あぁ、もし吐き気などを催したら念の為、再度大きな病院で診て貰って下さい。 それでは……」
「色々と有難う御座いました。」
控え室のベンチに横になっているリアルデュークを診察していたレース場所属の医師と看護師が注意事項を述べてから控え室を出て行く。
お礼を述べて出口まで見送ったマックイーンとライアンが、未だ目を覚ましていないリアルデュークを見てからお互いの顔を見る。
「この子は本当に落ち着きが有りませんわね?」
眠るリアルデュークの長い髪を手櫛で漉きながら、マックイーンが優しく呟く。
「そんな事言って、リアの意識が無い事に気付いてから、お医者さんが来るまで狼狽えまくっていたのは誰かな?」
そうライアンがマックイーンを揶揄うと、少しムキになってマックイーンが言い返す。
「そ、そう言うライアンさんだって、泣きそうになっておられたではありませんか?」
「……まぁ、何事も無くて良かったよ。」
「……本当に、その通りですわね?」
そんなマックイーンを見た後、視線をリアルデュークに戻して染み染みと2人が安堵の言葉を口にした。
そして思い出したかの様に、ライアンがマックイーンに問いかける。
「……そう言えば、マックイーンが肩車って珍しいって言うか、初めて見たけど、普段からリアを肩車してたりするの?」
「違います、リアさんが、ライアンさんの姿を良く見たいって仰るからですわ。 何故か今日のレースだけは絶対に全力応援するって、レース場に着く前から興奮気味でして、身長が低いので良く見えないだから肩車するって言ってききませんでしたのよ? お陰様で私のセットが乱れてしまいましたわ。」
手櫛で自身の髪を整えながら不満気に話すマックイーンを見ながら、ライアンが嬉しそうに話す。
「そっか、リアが応援してくれたから私も全力が出せたと思う。」
「次は天皇賞ですわね?」
「うん、勝つよ、だってリアが応援してくれるんだから!」
晴々とした表情で勝利宣言するライアンに対し、マックイーンは挑戦的な表情でライアンを煽る様に話す。
「あら、勝つのも、リアさんの応援対象も私ですわ!」
「……負けないよ? 天皇賞でマックイーンとトウカイテイオーに勝って、リアに胸を張って世代最強は私だって言うんだからさ。」
「それは私も同じですわ! 天皇賞を連覇して、リアさんの尊敬を一身に浴びますのよ?」
「「勝つのは私だよ(ですわ)!」」
お互いに真剣な表情で目線を合わせて勝利宣言した後、何方からとも無く笑い出す2人、そんな2人の笑い声でリアルデュークが目を覚ました。
「……ボクどした?」
むくりと上半身を起こしたリアルデュークが辺りを見回すと、近くに居た2人に問いかけた。
「……おはようリア、やっと目が覚めた?」
「何処か痛かったり、気持ち悪かったりしませんか?」
2人はリアルデュークの顔を覗き込む様に見ながら話しかける。
「……おでこ痛い、何故?」
少しだけ赤くなったおでこを撫でながらライアンに問いかけるリアルデューク。
「それはマックイーンに聞かないと分からないかなぁ?」
「パクパクさん弁明する! はよっ!」
ニヤリとしながら答えるライアンに何かを感じたのか、リアルデュークはマックイーンの方を見ると、急かす様に詰め寄る。
「ちょっ、ライアンさん?」
「あはは、こればかりはマックイーンにも責任あるからねぇ?」
「パクパクさん、はよっ!」
焦った様子でライアンに声をかけるマックイーンを見て、笑いながら答えるライアンだった。
その後、無事ウィニングライブも終えて着替え等も終わり、控え室を出たメジロライアンが、待ち合わせ場所の関係者用出入り口に向かって歩いていた時だった。
「……痛っ! 何か釘でも踏んだ?」
何の前触れもなく、急に右足の中指の付け根付近から、土踏まずを通って踵までの広範囲に痛みを感じたライアンが、思わず右足を庇う様に蹲る。
「……これって……」
それ以上言葉が出て来ないライアンが、そのままの体勢で痛む右足を両手で押さえていると、中々来ないライアンを心配してトレーナーがやって来た。
そして蹲るライアンの姿を見ると、すぐに駆け寄りそのまま抱き上げると、車で待っているマックイーンと執事の所へ駆け出した。
「あら、ライアンさんのトレーナーさん……何かを抱えている?」
後部座席で友人達のウマスタのチェックをしていたマックイーンが、ふと、人の気配を感じて窓の外に視線を向けると、出入り口から何かを抱えた人が此方に向かって走って来ていた。
その人物はすぐに特定出来たが、問題はその人物が抱えているモノであった。
お姫様抱っこをされながら右足首辺りを押さえているライアンの姿を見ると、マックイーンの表情が一気に険しくなり、そのウマ耳も無意識に絞られていた。
「事情は後で、今は直ぐに病院へ連れて行って下さい! 私も後から車で向かいますので、着いたら連絡をお願いします。」
マックイーンの所まで辿りついたトレーナーが焦った様子で叫ぶ様に懇願してくると、努めて冷静さを心掛けたマックイーンが執事に指示を出す。
「爺や! すぐに近くのウマ娘用の専門医がいる総合病院へ向かって下さい! もし近くにないなら一度療養所へ! 主治医には今連絡して受け入れ体制を整えて貰いますわ!」
「時間も時間なので、先ずは当家の療養所が宜しいかと……」
「では、それで! 時間をかけれません、急いで下さいまし! ライアンのトレーナーさんも後から来て下さいませ。」
マックイーンは、的確な指示で行き先などを決めると、ライアンのトレーナーにも指示を出す。
「だ、大丈夫、ちょっとだけ痛いだけ……ぐぅっ!」
後部座席に横になったライアンが心配を掛けまいと強がってみせるが、痛みが強いのか、最後まで言えずに終わる。
「……痛みが強いみたいですね? 出来るだけ急ぎますから、ライアンさんも頑張ってください!」
「……ごめん、マックイーン。」
申し訳無さそうにするライアンに、マックイーンは敢えて強気の姿勢でライアンに微笑みながら宣言した。
「大丈夫、私にお任せ下さいませ!」
ここはメジロ家所有の療養所。
あれから、ここに運び込まれたメジロライアンは、準備をして待っていた主治医達によって、迅速に診察室へと運ばれて行った。
そして残ったマックイーンには療養所の待合室が案内された。
それから数分もしないうちに、ライアンのトレーナーが駆け込む様に待合室に入ってきて、マックイーンがトレーナーへの状況の説明が終わったのが先程、ほんの数分前であり、状況の確認を終えたトレーナーは、それから直ぐに学園へ報告の電話を始めた。
「……はい、今は診察中で……はい、いえ、メジロ家の療養所です。 分かりました。……では、失礼致します。」
学園に電話していたライアンのトレーナーが、話が終わったのか、ウマホをポケットにしまう。
それを待っていたのか、すぐに執事がトレーナーに話しかけた。
「……トレーナー様、主治医がお呼びで御座います。 お手数かと思いますが、どうぞこちらへ……マックイーンお嬢様はこの部屋でお待ちください。」
そう言うと執事は、ライアンのトレーナーを案内する為に一緒に部屋を出て行った。
1人残されたマックイーンは、診断結果が軽い物であることをただ祈ることしか出来なかった。
結末を考えると、悩ましいですね。
メジロライアンって良い子なんですよねぇ。