メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 50話超えて、やっと入学です。
 
 


トレセン学園

 

 

 あれから暫く経ち、阪神大賞典と大阪杯が開催され、それぞれマックイーンとトウカイテイオーが圧勝し、更に数日が経ったとある日、トレセン学園の入学式が開催された。

 大きな問題も無く、無事に入学式が終わり、新入生達が式場となった体育館から退出していく、その一団の中にその少女は居た。

 少女は、その長い金髪をサイドテールに結び、ウマ娘の中でも特に整った勝気な顔と表情を全開にして両腕を腰に当て、その大平原な胸を張って小さいながらも集団の中に堂々と立って居た。

 そして、その少女の連れと思われる胸に大山脈を持つ大人びた背の高い少女に背を向けると、何故か何も無い場所に向かって話しかける。

 「突然ですが皆様初めまして、おはようからお休み迄、皆様のワタクシことサロメで御座います。 本日はワタクシことサロメのビューティフルな入学式が開催された記念日で御座います。 まぁ、入試ではあの変なおチビさんに邪魔をされましたが……そこは優秀なワタクシ、無事に映えあるトレセン学園新入生第3位、ウマ娘界ではTOPの学園で3位! まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いな3位のウマ娘、皆様のサロメで御座います。 そんな、素晴らしくビューティフルでエレガントなワタクシ、サロメがこれからの約束された栄光の日々を過ごす場所、つまり……寮! そうです、ワタクシの次に賢明な皆様ならお分かりでしょうが、ワタクシ、実は入学式を終えて寮へと向かう途中で御座います。」

 急に明後日の方を向いて自己紹介を始めた友人に、恐る恐る連れの少女が声をかける。

 「サロメさん、急に明後日の方を向いて、どなたとお話されていますの?」

 「おほほほ……何でも有りませんわ。 そうですわ、寮に向かう前にカフェでアフタヌーンティーでも嗜んで行きません事?」

 少々強引に話を変えたサロメを見て、すぐに何時ものことと流した少女がサロメの話に乗っかる形で場の空気を読む。

 「流石サロメさん、確かにそろそろお茶のお時間ですね? でも、学園にカフェは御座いませんでしょうから、食堂に行きませんか?」

 「ええ、では早速向かいましょう。」

 実に自然に話の流れを変えた、自身の卓越した話術を内心で称えながら、気分良く食堂に向かうサロメだった。

 

 

 「それではサロメさん、私もそろそろ自室に戻って部屋の片付けをしないといけませんので、これで失礼致しますわ。」

 「ええ、確かに良き時間ですね? では、また明日と言う事で……ご機嫌よう。」

 「はい、サロメさんも、ご機嫌よう。」

 そうして食堂を出て行く友人を笑顔で見送ると、サロメは椅子に座り直し、深く溜息をついた。

 「寮……自室。 はぁ、頭の痛い問題ですわ……」

 先程までの友人と過ごしていた時の明るさは形を潜め、疲れた表情でテーブルに突っ伏す。

 「とは言え、このまま此処に居ても意味は御座いませんし、覚悟を決めて部屋に戻るとしましょう。」

 そう独り言を呟くと、勢いをつけて立ち上がったサロメは、与えられたばかりの自室へと向かうのだった。

 

 

 

 「おかえろ!」

 あれから直ぐに帰宅したサロメが、部屋の中に入ると、先に帰って来ていたのか、ジャージ姿のルームメイトの元気な挨拶に答えながらも、部屋の惨状を見て怒りに震える。

 「……只今戻りましたわ。 リアルデュークさん、ワタクシ昨日も言いましたよね? お菓子を食べたら床にゴミを放置しない、飲んだペットボトルも床に置かないで片付ける、見終わったDVDはきちんとケースに入れる、そのケースもきちんと元の場所に戻す。 今朝片付けたばかりですのに、なぜこんなにも散らかっているんですの! それと……何でワタクシのベッドで寛いでいるのですか!」

 「ここならボクのベッド綺麗、お得情報!」

 「ワタクシのベッドが悲惨な状態なのですが?」

 「尊い犠牲、致し方無し。」

 「貴女って人はぁぁぁ!」

 サロメのベッドでお菓子を食べ散らかすリアルデュークを床に叩き落したサロメが、愚痴口と言いながらも、テキパキと部屋の片付けをする。

 そんなサロメを見て、床に転がったリアルデュークが目を輝かせて話してくる。

 「サロメ凄い、サロメ居るだけで部屋綺麗!」

 「……そんなに褒めても何も出ませんわよ?」

 そう言いながらも、ある程度片付けが終わると、自分とリアルデュークの分の紅茶も淹れたサロメが自分のベッドに腰掛け、ふと思う。

 (……よりにもよって、何故ワタクシのルームメイトが、このおチビなんですの?)

 「それで、何を見て居ましたの?」

 「キャロットマン!」

 「……それって、お子様向けの番組ではなくて?」

 ルームメイトの無邪気な返答に眉を潜めるサロメ。

 「面白ければそれでおけ?」

 「おけ?って、何で疑問系なんですの? そんな事より、帰ってきてからちゃんと足の手当てはしたんですの?」

 ふと視界に入ったリアルデュークの足の包帯を見て、気になった事を聞いてみる。

 「これ見たらやる。」

 「これ見たらでは有りません、大事な事なのですからきちんとおやりなさい。」

 「……うぃうぃ。」

 適当な生返事をするリアルデュークに溜息をつきながらも、サロメが立ち上がる。

 「……全く、仕方ありませんわ。 ほら、此方に足を寄越しなさいな?」

 そう言うとサロメは、リアルデュークの使用している棚から救急箱を持って来ると、慣れた手付きで床に横になっているリアルデュークの足の手当てを始めた。

 「まぁ、貴女、また朝の手当てをさぼりましたね? あれ程大事な事だと言いましたのに……きちんとした手当てとリハビリを欠かしては、治るものも治りませんわよ?」

 「ん〜、明日から本気出す!」

 「……貴女、昨日も同じ事を仰ってましたわよ? 良いでしょう、其方がその気ならば、ワタクシにも考えが有ります。 彼の方に電話をします。」

 そのサロメの一言で勢いよく起きたリアルデュークが抗議の声を上げる。

 「卑怯者! ボクを売る、良くない!」

 「貴女の為です!」

 毅然とした態度のサロメを見て、その瞳を潤ませて上目遣いでサロメの足元に縋り付くリアルデューク。

 「わかた、今後ちゃんとやる、だから電話ダメ、おk?」

 そんなリアルデュークを見下ろすサロメは、幼児に対する慈愛の表情を浮かべてから、一切の躊躇無く電話をかけた。

 「……分かれば良いのです。 では……あ、ラモーヌお姉様ですか? 実は……」

 「電話するダメェェェッ!」

 リアルデュークの絶叫が響くなか、楽しそうにウマホでの会話を終えたサロメが、にっこりと微笑みながらリアルデュークに告げる。

 「……はい、それでは失礼致します。 ……お小遣い、減額だって♪」

 「……いやぁぁぁぁっ!」

 その日、学園の寮に、リアルデュークの絶望の叫びがこだました。







 て事でルームメイトはサロメさんになりました。
 何故ラモーヌさんの連絡先を知っているかは、また後日と言う事で……。
 
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