メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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幼女は素直です。


リアの日々

 

 リアルデュークが、メジロ家に引き取られてから半年程経ったある晴れた日、急な環境の変化に対して、リアルデュークはシンザンから教えられたトレーニングメニューを淡々と熟す事で、何とか心のバランスを保っていた。

 (やっぱり身体を動かすのは良いです。動いていれば何も考え無くなります。トレーニング最高です♪)

 屋敷から抜け出したリアルデュークは、適当に施設内を散策したのち、特に何かを考える訳でも無くふと遠くに見えた山に向かって走っていた。

 体感で1時間程走ってようやく目的の山の麓付近に辿り着いたリアルデュークは、近くの川の水で喉を潤していたのだが、ここまで走ったからか既に山への興味を失っていたリアルデュークは、今度は川に沿って歩き出す。

 シンザンと出会い、日々トレーニングに励んでいたのだが、ここ日本に来てからと言うもの、日本語の勉強や学力テストなど、良く分からない物をわからないまま、周りの大人達によってただやらされる事に強い不満を感じて居た。

 特に、行儀作法の勉強なんてものは、特大のストレスが溜まる。

 元々礼儀だの何だのとは無縁の世界に属して居たリアルデュークにとって、メジロ家のご令嬢と言う立場は想像すらした事が無いモノであったので、全く勉強に身が入っていなかった。

 「……ここヤダ。 みんなと踊りたい。 ケチャしたい。」

 軽くホームシックにかかってしまったリアルデュークは、昔良く仲間たちと行ったダンスを思い出して、肩を落として川岸を歩いていた。

 考え事をしながら歩いていた為か、知らない内に川の近くまで近付いていたリアルデュークは、足を滑らせて川に落ちてしまった。

 急に感じた一瞬の浮遊感の後に一気に水の中に沈んだリアルデュークが、慌てて水面に顔を出そうと踠いたその時、碌にクールダウンをしなかった為か、右足が釣り始めた。

 右足の痛みと速い川の流れに暫し慌てたリアルデュークは、自らの師であるシンザンの言葉が頭に浮かんできた。

 アレは、シンザンに出会って約束をして、亡き両親の思い出話を聞いていた時の事だった。

 すっかり忘れていたが、あの時のシンザンは施設の職員を殴り飛ばし、かなり強引にリアルデュークの部屋に来ていた。

 当然、そんな事をすれば警察に通報される。

 そして、当たり前の様にシンザンは凶悪犯として地元警察に囲まれていた。

 少しだけ焦った顔をしたシンザンが、リアルデュークに向けて何故かキメ顔で言ったのが、

 「よいか、窮地に陥ったらこの言葉を思い出すのじゃ!」

 【筋肉に勝るもの無し!】

 ……コレであった。

 もちろん、「やってやらぁ!」と、裂帛の気合いと共に警官達に特攻して行ったシンザンは、警官数名を道連れに無事玉砕した。

 懐かしい記憶を思い出したリアルデュークは、気合いを入れ直して腕だけで陸地まで無事辿り着き、両腕を突き上げると、その勢いのまま叫ぶ

 「筋肉大事!」

  こうしてピンチを脱したリアルデュークは、またひとつこの世の真理を理解した気になった。

 その後、屋敷に帰って来たずぶ濡れのリアルデュークを見たメイド達によって、入念に洗われた後、そのままアサマの部屋で説教と、流れる様に運ばれて行った。

 「……解せぬ」

 

 それから数ヶ月後、第一次筋肉ブームを終えて、片言だった日本語も何とか日常会話レベルくらいは出来る様にはなった頃、メジロライアンから筋トレの手引きを日々しっかりと、過剰な位に受けたリアルデュークは、目標とする身体を目指して各筋肉達のチェックをしていた。

 「……今日も良い筋肉。 でも、腹筋さんが自己主張してきません。 ライアン姉様に言われた、腹筋群は腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋で出来ている、ナイスマッスルする為、まずは柔軟と充分なストレッチ行うべし!」

 メジロ本邸は北海道にあるメジロ家の本拠地だけあり、日本最大のトレーニング施設であるトレセン学園に匹敵する程のトレーニング設備が揃っていた。

 その施設の中にあるトレーニング室では、リアルデュークが壁に据え付けられた大きな姿見の前で、床に仰向けで横になり、揃えた両脚を真っ直ぐにしたまま、上にゆっくりと上げていく。

 更に脚を上げ続け、そのまま3点倒立をする様に肩と顔の横に手の平をつけた腕だけで支える。

 良く言われるドラゴンフラッグと呼ばれる腹筋トレーニングを、時間をかけて鏡で姿勢を確認しながら行っていると、誰も居なかった室内に自動ドアの開く音と共に、喜色に満ちた若い女性の声が響く。

 「ナイスマッスル! 凄い凄い、もう教えたドラゴンフラッグを物にしているね? 本当にリアはナイスマッスルだよー!」

 「…ら、ライアン姉様……ドラゴンフラッグ……腹筋さん、ありがとう……貰える?」

 入って来たライアンの方を見ながらも、動きを止める事なくリアルデュークは会ってすぐに筋肉を褒めてくれたライアンに笑いかける。

 「貰える貰えるよ! だってリアの腹筋さん、私から見てもいい動きしているもん!」

 「えへへ……ライアン姉様、安心します。」

 既定回数を終えたリアルデュークは、床にぺたんと座り、汗を拭いながらはにかんだ笑みを見せた。

 





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