メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 大人の事情ってやつです。
 貧乏くじを引いたのはどちらでしょうね?


メジロ家の謀略

 

 

 「お待ちしておりました、サロメ様。 さぁ此方へ、応接室にてラモーヌお嬢様がお待ちです。」

 「そ、それでは失礼致しますわ。」

 約束の日、10時頃に来た迎えの車に乗って無事メジロ家の別邸に着いたサロメは、屋敷の大きさに唖然としながらも、執事の案内に従い長い廊下を歩きながらながら昨日の騒動を思い返していた。

 あの日、言われた通り、時間を潰す為に食堂で小一時間程お茶をしていたら、メジロ家の家人であろうメイドが迎えに来たので、そのまま部屋に戻った所、あれだけ酷い有り様だった部屋がすっかり元通りになっており、部屋の中央に設置された何処と無く高そうな気がするアンティークなセンターテーブルにはお茶とお茶受けのケーキやスコーン等がセッティングされており、簀巻きにされて転がされているリアルデュークの横には、マックイーンが優雅な所作で床に座って微笑んでいた。

 「その、何と言いますか……色々とお世話になりました。 お陰様で無事に学園生活を送れそうですわ。」

 若干の戸惑いを見せながらもマックイーンにお礼を述べるサロメの姿を見てリアルデュークがモゴモゴと猿轡を嵌められた口を動かしていたが、どうせくだらない事か碌でもない事を言っているだけだろうと思ったサロメが無視すると、軽くリアルデュークの頭を叩いたマックイーンがサロメにお茶を勧める。

 「いえ、元はと言えばこの愚妹がしでかした事です。 そのせいでサロメさんには、余計な手間と迷惑をおかけしてしまいました。 姉として深くお詫びする次第であります。」

 そう言って頭を下げるマックイーンに、慌てながら頭を上げる様に促すサロメに簀巻きにされたまま体全体で何かを必死に抗議するリアルデュークだった。

 

 

 「あれから、マックイーン先輩と軽くお茶会をして、昨日は何事も無く終わったのですけど……翌朝、迎えの車を見て執事さんに何故かブブセラ片手にリアルデュークさんが元気に抗議しに行きましたのよね。 後を追いかけましたら、何故か執事さんがリアルデュークさんの顔面を掴んで天高く突き上げておりましたわ。」

 小声で今日の出来事を確認しながら、慣れた様子でアイアンクローを決めたリアルデュークを片手に持つ?ぶら下げる?兎に角、グッタリとしたリアルデュークさんを運びながら営業スマイルで案内をする執事を見て、この状況に対していまいち現実味が無いサロメだった。

 

 

 所変わってメジロ家別邸、執務室。

 ここ、執務室では2人の人物が深刻な表情で手元の報告書を片手に話し合っていた。

 「……しかし、これ程とは思いませんでした。」

 アサマは報告書を眺め、眉を顰める。

 「私もですわ、お祖母様。 まさか入寮初日にここまでやらかすとは……我が妹ながら侮れませんわ。」

 ラモーヌの口調には、妹であるリアルデュークに対する呆れが混ざっている。

 「……こういう言い方はアレですが、常識と言う物を弁えているとは思えませんし、余りにも本能……いえ、煩悩ですか……其れ等に忠実過ぎて目眩を覚えてしまいます。」

 アサマは溜息を吐きながら言った。

 ラモーヌはその言葉に頷きながら、自分の妹の行動がどれだけ破天荒であるかを想像していた。

 それはまるで潜水艦が空を飛ぶかの様に、常識の範疇を超えている。

 「兎に角、あの子をこのままにしておく訳にはいきません。 何かしらの対策が必要です。」

 「それに関しては既に対策を呼んでありますわ。」

 「ラモーヌお嬢様、お客様がお見えになられました。」

 メイドがドアをノックしながら告げる。

 「分かりました。 準備をしますので、応接室へお通しして下さい。」

 ノックされたドアの方を見て返事をするラモーヌの背中に、アサマの視線が刺さる。

 「……ラモーヌさん、わかっていますね?」

 「大丈夫ですわ、お祖母様。」

 ラモーヌは微笑みを浮かべつつ、胸を張って返事をした。

 

 

 「ようこそメジロ家へ、サロメさん。 当主アサマに代わり、歓迎致しますわ。」

 あれから少し歩いて辿り着いた部屋に入ると、画面越しに何度か見たことのあるウマ娘が、ソファから立ち上がって歓迎の意を示してくれた。

 その女性はと言うと、流星を模したメッシュが入った黒髪をシニヨンに結び、その整った顔立ちは右目のあたりにある泣きぼくろがその妖艶さを際立たせ、身体は女性として完成された素晴らしいプロポーションを見せ付けるかの様に、丈の短い黒のジャケットに女性らしさのある白のブラウスを着て、体のラインがはっきりと出る白のパンツ姿のまさに大人の女性だった。

 そんな目の前の女性と自身の身体を見比べたサロメが、謎の敗北感を感じていると、すぐにソファを勧められた為、サロメは素直に女性の対面にあたる席へと着席した。

 「……まずは自己紹介を……私、メジロ家当主代行をしております、メジロラモーヌと申します。 本日は妹のリアルデュークのルームメイトになられたサロメさんと直接会ってご挨拶をしたいと思い、ご招待させて頂きました。 サロメさんに至っては、お忙しい中招待を受けて下さり、心からの感謝の意を申し上げますわ。」

 サロメにとって、初めて直に会ったメジロラモーヌと言う人物は、名家の人間としての教育が行き届いているのか、その所作も話し方もまさに上流階級のお嬢様然としながらも、何処か妖艶な色気を感じる女性だと思った。

 そう思ってしまう程、名家の人間として『深々とお辞儀をする』という動作だけで絵になる程に美しく洗練された動きと表情だった。

 「此方こそ、ワタクシみたいな一学生でしか無いこの身を、名高い名家で有らせられるメジロ家の、しかも噂に名高いあのメジロラモーヌ様直々に御招待頂けるなんて、このサロメ、一生の名誉と申しても過言では有りませんわ。」

 深々と頭を下げながら感謝の意を示すサロメに対して、一瞬だけ値踏みする様な視線を向けたラモーヌが、笑顔で話しかける。

 「まぁ、サロメさんはとても奥床しいお方ですのね? そんな方が、私の愛する妹のルームメイトになって下さり、安心致しましたわ。 多少、色々とお茶目な所のある子ですが……是非、『公私共に仲良くして』やって下さいね?」

 『多少?お茶目?……公私共に仲良く?』ニコニコしながら話すラモーヌの言葉に、リアルデュークの昨日の様子を思い返してみたサロメは、ラモーヌの最後の言葉に悪寒を感じた。

 (……これはアレですわ、前にテレビでやっていた、手に余るペットとかを押し付ける時に聞く台詞ですわ! このままですと、アレの世話を押し付けられてしまいますわ。)

 「……いえいえ、ワタクシが如き若輩者が、メジロ家御令嬢と公私共に仲良くなど、リアルデュークさんのご迷惑になるだけですわ。 ですので、ワタクシは『単なるルームメイトとして、公私のケジメを持って』お相手させて頂きますわ。」

 「あら、そんなご謙遜為さらなくても宜しいですわ。 これも何かのご縁ですもの、是非、『ルームメイトとして妹の至らない所を御指導して下さい』ね?」

 「そんな、ワタクシ如きがメジロ家ご令嬢に御指導する所なんて有るとは思えませんわ。」

 「いえいえそんな……」

 「いえ、こちらこそ……」

 お互いに営業スマイルを貼り付けたまま、問題児の押し付け合いをする事30分程、両者譲らないまま手詰まりとなりかけた時だった、廊下に繋がるドアが勢いよく開け放たれると、元気いっぱいにその問題児が入室して来た。

 「やふ〜、サロメ遊ぶ!」

 勢いよく開けられたドアが壁に激突して大きな音を立てる中、リアルデュークがサロメ目掛けて飛び込んで来た。

 咄嗟の事で硬直していたサロメは、飛び込んで来たリアルデュークを受け止めたが、勢いに負けてそのままソファに倒れ込んだ。

 そのまま暫くの間、押し倒された形で状況が理解出来ずにいると、サロメの上に乗ったリアルデュークがご機嫌な表情でサロメを抱き締める。

 「リアさん、少々はした無いですよ?」

 そんな2人を見ながら、ラモーヌが溜息混じりに嗜める。

 「まぁ、この通り、リアさんは少しお茶目な所があるので、その点を良く理解してあげてくださいね?」

 と、ラモーヌが声をかけると、リアルデュークはその言葉の意味を理解した様に目を輝かせた。

 「おばば言ってた!サロメ世話宜しく!」

 「は? はぁぁぁっ?」

 戸惑うサロメに元気いっぱいに挨拶するリアルデューク、そんな2人を見ながらラモーヌの口元が少し上がっていたが、状況を理解出来ずにいるサロメは気付く事が出来なかった。

 こうしてサロメは、メジロ家の問題児、リアルデュークと共に過ごす日々が始まった。

 彼女の心に芽生えた不安は、取り敢えず責任者(ラモーヌ)への直通番号を教えて貰う事で抑えることとなった。

 








 取り敢えず、アーモンドアイ完凸目指します。
 
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