類は友を呼ぶなのか、一丘之貉なのかは不明ですが、
会ってはいけない人物が出会った気がします。
「むぅ、暇ひま……」
嫌な予感がした食堂からいち早く脱出したリアルデュークは、特にする事もなく手持ち無沙汰に校舎裏を散策していた。
「アレ、知ってる背中!」
暫くぶらついていたリアルデュークは、前方に見知ったウマ娘に似た後ろ姿を見付けると、暇つぶしに近付いて行く、その時だった……。
「確保ぉぉぉっ!」
突然の大声と共に、左右の植垣から警備員が2名ずつ飛び出してリアルデュークの肩と腕を抑える。
「……ぬんっ!」
大柄な男性4名に両肩両腕を掴まれたリアルデュークは、慌てる様子も無く左右を見ると、気合い一閃両腕を動かして男達を投げ飛ばした。
その後、不様に転がる男達の股間目掛けて、近くに転がっていた小さな石ころを拾い投げつつ、ゆっくりと散策を再開する。
因みに、前方にいたウマ娘は、後ろに居る人物を確認すると、厄介ごとに関わりたく無い為か、騒ぎの音を聞いてすぐにダッシュで走って行ってしまった。
それからも襲って来る警備員達を、投げたり飛ばしたり殴ったりしながらも、リアルデュークの散策は続いた。
「……クンフー足りない!」
襲いくる顔馴染みの警備員達を地面に転がして、その背にリアルデュークがドヤ顔で叫ぶ。
そんなリアルデュークに対して、拍手をしながら近付いて行く白衣の人物が現れた……。
所変わって此処は学園の食堂内に設営された、リアルデューク捕獲作戦本部。
仰々しい看板を入口に掲げてはいるが、単に窓際のテーブル2つをくっ付けて並べ、テーブルの上にあちこちに印の付けられた学園の地図を広げてあり、ウマホが何台かとノートパソコンが1台置いてあるくらいだった。
そしてサロメは、そのノートパソコンの前に座り、配置と現場指揮を任せた警備員と話をしていた。
「あのぉ、サロメさん?」
「分かっています。」
「分かっているなら良いんですけどね、一応此方もプロとして一言だけ言わせて貰うと、お嬢相手にうち等じゃ逆立ちしても勝てませんよ?」
モニター越しに渋い顔をして苦言を呈する警備員の顔を見ながら、サロメが落ち着いて話を続ける。
「貴方達は普段メジロ家のお屋敷でこの手の任務に着いているとお聞きしておりましたが?」
「あぁ、確かにお屋敷ではそうですがね。 屋敷ではサバゲーって言うルールを設定することによって、あの戦闘力を抑えているんですよ。 今回みたいに正面からって言うのは無理な話ですよ?」
「成る程、ゲームですか……それなら何とかなりそうですわ。」
警備員との会話で何かを思い付いたのか、顎に手を当てて考え始める。
そんなサロメの姿を見て何かを感じたのか、近くに居たゴールドシップがにやにやしながら話しかける。
「お、やっとアタシ達の出番か?」
「任せて下さい、サロメさん!」
ゴールドシップの話を聞いて、パフェを食べていたスペシャルウィークも元気に胸を叩く。
「おぉ、何か良くわからねぇけど、何か燃えるシチュエーションだな?」
そして、そんな3人を見ていたウォッカが口元をニヤケさせながら拳を前に突き出す。
「アンタねぇ、良く分からないのに何でシチュエーションが分かるのよ?」
いつも通りに、近くで紅茶を飲んでいたダイワスカーレットが得意気にウォッカの言葉にツッコミを入れた。
「ウルセェって、お前にはわかんねぇだろうけど、こう言う時は素直に乗るのがかっけぇんだよ!」
「場の空気も読めないアンタがそんなの乗れてる訳無いじゃ無いの?」
「違いますぅ、ちゃんと空気読めますぅ! そっちこそ読めて無いのを他人のせいにすんなよな?」
「はぁぁあっ? アンタこそ何言ってんのよ!」
「何だよやるか?」
「良いわよ、やってあげようじゃないの!」
お互いに顔を突き出し合って売り言葉に買い言葉で叫び合う2人に対して引き気味な表情のサロメが声をかける。
「……まだ何をするか話しても居ませんが?」
「「お前(アンタ)のせい(よ!)だかんな?」」
サロメのその言葉に、再度お互いに言い合う2人に溜息混じりにサロメが話す。
「まぁ、好都合ですかね? どちらかにリアさんに勝負を挑む特使になって頂きます。 そして、リアさんが納得したならそのままリアさん側になって勝負すれば良いでしょう。」
「おしっ! なら話は簡単だ、俺が行くぜ!」
詳しい内容も聞かずに名乗りをあげるウォッカ。
「宜しいのですか? 自分で言っておいてアレですが、彼方の総大将はリアさんになりますが……」
「うっ、そっか、リアルデュークかぁ……」
自身が言った事に対して起きる結果に気付かされたウォッカが、その勢いを無くす。
「なによ、自信が無いなら止めておきなさいよ?」
そんなウォッカにドヤ顔でダイワスカーレットが話す。
「うっせぇ! 誰が大将でも関係ねぇ、俺が勝たせれば良いだけだ!」
(お、我ながら今の台詞はかなり格好良いんじゃないか?)
「……アンタがそれで良いならいいけどね。」
(どうせ自分の台詞に酔ってるだけでしょ?)
言い切ったウォッカが自分の言葉の余韻に浸っている姿を、冷めた目で見ているダイワスカーレット。
「では、話が纏まった所で、今回リアさんに仕掛ける勝負内容を説明しますわ!」
そんな2人を尻目に、サロメがこの場に居る全員に宣言した。
「はーはっはっは、素晴らしい、実に素晴らしい力だね! モルモット君もそう思わないかい?」
学園の制服の上からぶかぶかの白衣を着た小柄なウマ娘が、七色に光る人を従えてやや大袈裟に拍手をしながらリアルデュークに近付いてきた。
あからさまに怪しい人物の登場に、流石に警戒すると思われたリアルデュークだが、実際は七色に光る人に興味津々で、その幼い瞳を輝かせて見ていた。
「どうやら、思いの外気に入ってくれたみたいだね?」
そんなリアルデュークの様子を見て、白衣のウマ娘が微笑みながら話しかける。
「このピカピカ格好良い!」
話しかけられたリアルデュークは、嬉しそうに答える。
「ピカピカが気に入ったのかい? 君が望むならば、いつでもピカピカにしてあげようじゃないか? 君がこの私の願いを聞いてくれるならね。」
怪しい笑みを浮かべてそう言うウマ娘に、リアルデュークが即答する。
「ん〜、面倒だから嫌。」
「クックックッ、前情報通りだねぇ。 どうだろう、君が私のモルモット君2号になるなら、私が君の願いを叶えようじゃないか?」
想定通りの答えだったのか、愉快に笑いながら更に誘って来るウマ娘を見詰めながら、その話した一つのワードにリアルデュークが興味を示す。
「願い、叶える?」
「あぁ、私が出来る限りとはなるがね?」
契約には真摯なのか、そのウマ娘が正直に話した。
その言葉を聞いたリアルデュークが興味を無くした顔で断りを入れる。
「じゃあ、無理だからいい。」
「では、こうしよう……」
そんなリアルデュークに、更なる代案を示そうと、そのウマ娘が口を開いた時、ふいに大声で話しかけてくるウマ娘が居た。
「あ、いたいた。 お〜い、リアルデューク!」
「あ、ウォッカ?」
リアルデュークが、声を掛けて来た相手を見て首を傾げながらその名を呼ぶ。
「……何だねキミは? 今私が彼女と会話中だとわからないのかな?」
あからさまに不機嫌になった白衣のウマ娘が、話に割って入ったウォッカに苦情を述べる。
「うぇっ、アグネスのやばい方!」
苦情を言われたウォッカが、相手を確認して思わずと言った程で声を出す。
「失礼だが、まぁ、良いだろう。 で、リアルデューク君、君が私のモルモットになるってことで良いかな?」
「……嫌、無理、興味無い。」
気を取り直してアグネスタキオンが自分に都合の良い話を展開して、リアルデュークに即答で断られる。
その様子を見ていたウォッカが、目的であるサロメからの話を伝える。
「あぁ、えっと、サロメからの提案で、このままだとお互い面倒なので、チーム戦で勝負をしないか?って事らしい。」
「……勝負?」
「あぁ、アルティメットってスポーツらしいんだけど、これで勝負して負けた方の代表が、勝った方の代表の言う事を一つ聞くって条件だ。」
ウォッカの話を黙って聞いていたアグネスタキオンが、一つの提案を述べる。
「成る程成る程……リアルデューク君、私からの提案だが……この勝負、私が君を勝たせれば、そうだねぇ……君の身体のデータを取らせてくれないかい? 勿論、危ない事や君に不利になる事はしない。 どうだろう、中々お得な条件だと思うのだが?」
「……勝負勝つ、お菓子食べ放題、問題解決?」
条件がデータを取るだけと言うのもあって、これまでみたいに即答せずに考えるリアルデューク。
その様子を見て、更に畳み掛けることにしたアグネスタキオン。
「そうそう、私に任せれば全て解決さ!」
「あ、因みに、俺もそっちのチームに入るからさ、任せてくれよ!」
「……決めた。 提案受ける、善きに計らえ!」
ウォッカの言葉が決め手になったのかはわからないが、リアルデュークはこの提案を受ける事にした。
「契約成立、まぁ、この私に任せておきたまえよ。 あぁ、そこのキミ、この私がチームに居る事は秘密にしてくれたまえ。」
無事提案が通ったアグネスタキオンが嬉しそうに話す。
「わかった、試合は今日の16時に第二練習場で行うみたいだ。 それじゃあ俺はこれからサロメに話してくるから、メンバー集めは任せた!」
それだけ言うと、ウォッカはサロメ達の所へ走って行った。
「さて、それでは残り3人のメンバーを集めようか? なぁに、私に任せておけば大丈夫だとも!」
やる気に満ち溢れたアグネスタキオンが声を上げると、未だに光っているモルモット君がどこかに向けて走って行った。
ぶかぶかの袖を振り回すタキオンって、とても可愛いと思います。