2分割の後半です。
少し時間を遡って、ここはサロメチームの陣営。
ここでは、急遽監督役となったゴールドシップ達のトレーナーが、チームの選手達を集めて試合前のミーティングを行なって居た。
「さて、これより試合を始める訳だが、何か質問や作戦のある奴はいるか?」
トレーナーの言葉に、ルドルフが手を挙げる。
「少し良いだろうか?」
「流石生徒会長様だ、早速何か案があるみたいだな?」
何時も通り落ち着いた雰囲気のルドルフの所作に、思わずトレーナーが期待に満ちた視線と言葉をかける。
そんなトレーナーを見て軽く微笑みを浮かべ、チームメイト達を見回してから話し始める。
「案と言えるかは自信が無いが、最初に一つ私が狼煙を挙げて見ようと思うので、私にディスクを渡してくれないか?」
「……会長、流石にこのタイミングでその様な……」
ルドルフの言葉を聞いて、エアグルーヴが眉を潜めながら遠慮がちに声をかける。
そのエアグルーヴの様子を見て何かに気付いたルドルフが、慌てながら弁明を始める。
「あっ、……ち、違うぞ? 今のは偶々だ。 私にその様な意図は無い!」
「流石会長ですわ、余裕がお有りですね?」
慌てるルドルフに、いまいち分かっていないサロメが賛辞を送る。
「いや、本当に今のはそういった事では無いのだが……」
「どうでもいいから早いとこその作戦ってのを言えよ? 待つ事には定評のあるこのゴルシちゃんでも、流石にもう待てねぇってばよ!」
そんな話の進まない状況に痺れを切らしたゴールドシップが、声を荒げた。
「……何時も殆ど待てて無いじゃない。」
そのゴールドシップの様子を見て、ダイワスカーレットがポツリと呟く。
場の空気を読んだルドルフが、再度仕切り直して説明を始める。
「そうだな、何、特に難しい事じゃ無いさ、私がディスクを持ったら私の目の前を真っ直ぐゴールまで走ってくれれば良い、必ずやディスクをパスすると誓おう。」
「……良いぜ、このゴルシさまがその大役を務めてやろうじゃねぇか!」
ルドルフの言葉を受けてゴールドシップが名乗りを上げる。
「ふっ、任せたぞ?」
「おうよっ! このゴルシさまに任せやがれ!」
そんなゴールドシップの肩に手を置いて口角を上げるルドルフと、それを受けてニヤリとするゴールドシップ、その2人を見てトレーナーが発破をかける。
「よし、お前等、頑張って来い!」
「だから、何でトレーナーが偉そうに言うんだよ?」
「そうよ、トレーナーの癖に!」
そんなトレーナーの言葉にゴールドシップ、ダイワスカーレットが苛ついた声色で文句を言う。
「お、俺はこのチームの監督だろ?」
思っていた反応と真逆の反応に狼狽えるトレーナーに、ゴールドシップが言葉をかけると、その言葉に周りが悪ノリする。
「なら監督らしく飲み物でも買って来いよ? あ、アタシは冷やしおでん缶な?」
「私はオレンジペコね?」
「わ、私はお腹が空きました!」
「ふむ、では私はダージリンを一つ、砂糖とミルクは無しで頼む。」
「私は会長と同じで良い。」
「ワタクシはロイヤルミルクティを一つで宜しくてよ?」
「ん〜、セイちゃんとしては、冷たい緑茶が良いかなぁ?」
「だから何で俺がっ!……はぁ、ったくっ! しょうがねぇなぁ!」
周りの悪ノリに場の空気が軽くなる。
その空気感に自分も乗る事にしたトレーナーに、ゴールドシップが楽しそうに声をかけた。
「お、ラッキー! マジで奢るみてぇじゃん? 流石は監督様だなぁ。」
「取り敢えず買ってくるから、お前等は怪我に気をつけるんだぞ?」
試合開始まで時間も無い為、トレーナーが急いで買い出しに行こうとした時、放送席の2人から声が掛かった。
『トレーナー、僕はハチミーの濃いめ、硬め、多めで宜しく〜!』
『あ、では私はハーブティーでお願い致します。』
「お前等は解説と実況で、同じチームでも無いのに便乗してんじゃねぇ!」
『さぁ、飲み物のデリバリーも頼んだ所でトウカイテイオーさん、どうでしょう、注目の選手は居ますか?』
『勿論会長だよ! 会長は……』
トレーナーの叫びを無視する様に放送席の2人は会話を続けた。
同時刻、リアルデュークチーム。
リアルデュークチームの陣営でも、試合前のミーティングを行なって居た。
「良いかい、諸君? この私が指揮を執る以上、我がチームに敗北は無い、これは前提条件で有り、既に確定した未来とも言える。 その為に先ずはこれを飲みたまえ。」
そう言葉に合わせて、タキオンのトレーナーがそれぞれに色の違う液体の入った紙コップを渡して行く。
「なんやけったいな色をした液体やけど、これ飲めるんかいな?」
渡された紙コップを眺めて複雑な顔をする面々を代表して、タマモクロスがタキオンに疑問をぶつける。
「大丈夫に決まっているじゃないか? 今配ったのは、今この時にそれぞれの体に必要と思われる各種ビタミンや必須栄養素を、この私が最適な形で接種出来る様に調整したモノだよ。 名付けてロイヤルビタージュース、試作品だが効果はこの私が保証しよう、だから安心して飲み干したまえ!」
「アンタが作ったって事が一番の不安材料なんやけど……まぁ、そないにヤバいモノは作らんやろ! 一丁行ったるわ!」
少しだけ紙コップに入っている液体を見ながらブツブツと呟いたタマモクロスが、意を決して一気に飲み干そうとしたが、そのまま思いっきり吹き出した。
「まっず! な、何やこれ? 絶対に人の飲むもんちゃう! 一体何入れたらこないな不味いモノ作れるんや?」
思いっきり吹き出した後、四つん這いになって暫く咽せていたタマモクロスが漸く一息付くと、その体制のまま大声で叫び出した。
そんな騒がしいタマモクロスを見ながら、タキオンがトレーナーに指示を出す。
「おやおや、折角キミの為に丹精込めて作った私の目の前でそういった行為に及ぶのは、余り感心出来ない行動だねぇ? だが、私は寛大だからね、キミの行為全てを許そうじゃないか? さぁ、トレーナー君、彼女にお代わりを渡してあげたまえ。」
その言葉通りに、トレーナーによって無言で差し出された紙コップを見詰めながら、嫌そうな顔をしたタマモクロスがタキオンに話しかける。
「う、ウチはそもそも健康やから、態々用意してもろて恐縮やけど、辞退を……」
「トレーナー君、何時も通りに……」
「うわっ、は、離せや! や、止めい、ウチはそないな毒物飲みとお無いんや!」
トレーナーがタマモクロスを後ろから羽交締めにして頭を固定すると、その口元にタキオンが紙コップを持ってくる。
「さぁ、これを飲んで元気になりたまえ!」
「グボバァッ!」
タキオンによって半ば無理矢理紙コップの中身を飲まされたタマモクロスが盛大に咽せる様を見て、オグリキャップが叫びながらタマモクロスを介抱する。
「あぁっ! タマぁぁぁっ! タマ、しっかりするんだタマ!」
「さぁ、トレーナー君、他の皆んなにも飲ませてあげたまえ!」
そんな2人を尻目に、次のターゲットへ向かうタキオンとトレーナー。
「ま、待って、ウチ等十分元気だし、既に気分もアゲアゲだから……や、止め……ングッ……ゲボラァッ!」
「あぁ、ヘリオスゥゥゥッ! あ、嫌……分かった、飲む、自分で飲むからっ!……やっぱり、飲まないと駄目?」
「い、いやぁぁぁっ!……ングゥゥッ、んん、……グフっ!」
その後も同じやり取りで全員が飲み干して、見事に全員がその場に倒れていった。
「さて、全員ちゃんと飲んだみたいだねぇ?」
「……死屍累々。南無南無。」
そんな地獄絵図を眺めて、リアルデュークが両手を合わせて祈る。
「では諸君、そろそろ体に栄養素も行き渡った事だろう。 時間も無駄に出来ない以上、このまま試合前のミーティングと行こうじゃないか?」
そう不敵に笑うタキオンの周りには先程とは違い、活力に満ち溢れた自分の体に戸惑いながら動きを確認するチームメイト達が居た。
登場人物が増えると、文章量も増えてしまいますね。
適量を探るのが難しいです。