リアさんは、判断力に定評が有ります。
「……相変わらず、予想の斜め上を行く奴やなぁ? せやけど、流石にこれは不味いんちゃうか?」
リアルデュークがトラックによって、爆速で去って行った後、暫し呆然としていたサロメ達だったが、タマモクロスの一言で我に帰ると、急いで関係各所に連絡を取り始めた。
そんな中、サロメがウマホでラモーヌへと状況説明をしていると、学園の正門前に10台近くの車が急停止した。
マイクロバスやジープ等、様々な種類の車が一斉に止まった事にサロメ達がびっくりして固まっていると、車から同じ装備を纏った人々が降りてきた。
「な、なんや? 戦争でも始まるんかいな?」
「これは、穏やかでは無いな?」
「……会長!」
物騒なその集団を前にして、狼狽える2人を庇う様に一歩前に出たルドルフが険しい表情で呟く。
そんな状況の中、サロメはこの人達の事を知っている可能性が高い人物に尋ねてみることにした。
「ら、ラモーヌ様、この人達は?」
ウマホ越しにラモーヌへと質問すると、ラモーヌが真面目な声色で説明してきた。
「其方の方々は、恐らくお祖母様が直接手配した精鋭部隊の方々でしょう。 お祖母様は過去に一度、大事な方を一方的な暴力で奪われております。 故に、その過去の反省からか、我が家にはお祖母様直属の海外から集めた腕利きの傭兵部隊がいると噂されておりましたが……まさにその部隊を動員したのでしょう。」
ラモーヌからそんな話を聞いたサロメはふと思う、大袈裟過ぎて規模感について行けないと……。
「……そんな部隊を投入する程の事態なのでしょうか?」
「私も、正直申しまして、やり過ぎと思うのですが……あ、お祖母様? 落ち着いて下さい! 大丈夫ですから……あ、御免なさい、ちょっと立て込んでおりますので、また改めて連絡致しますわ。」
「え、ラモーヌ様? もしもし?……切れてしまいましたわ。」
サロメが既に通話の切れたウマホを眺めていると、ルドルフが声を掛けてきた。
「サロメ君、何かしらこの状況の理由がわかったのかい?」
「はい、会長。 あの人達はメジロ家当主様直属の部隊らしいです。 恐らくはリアさんの件でご当主様が動いたのではないかと思われます。」
そう困惑気味に答えるサロメを見ながら、ルドルフが腕組みをして考える。
「アサマ様が動いたのならば、我々に出来る事はもう無いだろう。 此処は一度解散して様子を見てみようと思う。」
「確かに、ここまで大事になれば、我々学生如きに出来る事は無いと言えます。 私も会長の判断が正しいと思います。」
ルドルフの判断に追従する形でエアグルーヴが賛同する。
「せやなぁ、ウチ等がここに居っても何等意味は無いやろ。 せやけどな、会長さんよ? ウチはな、自分の知っとる子がトラックで何処かに連れて行かれてもうたこの状況で、幾ら精鋭部隊や何だ言うても、他所のモンが来たから任せて自分は知らんぷりやて? ウチにはそないな事出来ん! リアルデュークは確かにちょっとアレな子やけど、間違い無くウチの友人で後輩や、なら先輩として後輩の面倒を見るんは当たり前やし、友人の為に骨を折るんも当たり前の事や! ウチは、例え1人でも探しに行くで?」
消極的な意見と思ったのか、ルドルフの判断を聞いたタマモクロスが、鼻息荒く捲し立てる。
「わ、私も、私も手伝います! 私だってリアさんのルームメイトですし、ゆ、友人だと思っています。 ですから、友人の為に出来る事が有るならば、お手伝いさせて頂きたいです!」
タマモクロスの勢いに感化されたのか、サロメも鼻息荒く宣言する。
「おぉ、リアルデュークはええルームメイトを持ったもんやな? ここは気張って探しに行くで?」
「はい!」
「……で? 素人2人がどうやってあの状態のリアルデュークを探すと言うのだ? 素人が手を出した所で、邪魔になりこそすれ、手助けにはならない事は明白だ。 ここは会長が言った通り、静観するのが最良の選択と言う物だろう。」
熱くなった2人に対して、まるで冷水を浴びせる様に正論をぶつけるエアグルーヴ。
「出来る出来ないや無い。……やるんや! 行くでサロメ?」
「は、はい!」
そう言うと、タマモクロスとサロメは、トラックの走り去った方へと走り出した。
「では会長、我々は生徒会室にて各方面への連絡と確認をしてから自室にて待機、これで宜しいでしょうか?」
「そうだな、今出来る事はそれくらいの物だろう。 少し歯痒いが、百年河清 (ひゃくねんかせい)と言う訳でも無いだろう、我々は延頸挙踵 (えんけい-きょしょう)を願い、座して吉報を待つとしよう。」
そう言ってルドルフ達は生徒会室へと向かうのであった。
「……成る程、リアちゃんのお姉さん達ってみんな仲が良いんだねぇ? で、リアちゃんはどのお姉ちゃんが1番好きなの?」
食後のお茶も飲み終わり、2人まったりとしながら他愛無い話をしていると、来客を知らせるチャイムが鳴り女性が確認しに行くのを見送ったリアルデュークがお茶受けの煎餅を食べながら寝転がっていると、女性と一緒に警察官の男性が入って来た。
「君がリアルデュークさんで合っているかな? 私はこの子の父親で、谷歩(たに あゆむ)というしがないおじさんだ、宜しく。」
谷と名乗った男性は、リアルデュークが観察した所、恰幅の良い体格に白髪混じりで皺の多い顔だが、人好きのする顔付きに穏やかな雰囲気を纏った好々爺然とした男だった。
「ボク、リアルデューク! ヨロヨロ!」
「おぉ、元気で良い挨拶だね? 君みたいな子に挨拶して貰えて、おじさん嬉しくなっちゃうなぁ?」
笑顔で元気良く答えるリアルデュークを見て、嬉しそうに谷が答える。
「その服コスプレ?」
「おじさんはね、コスプレじゃ無くて、本物のお巡りさんなんだよ。」
「……タイホか?」
「何故そう思うのかな?」
谷は、首を傾げてそう聞いてくる目の前の子供に対して、やや困惑気味に聞き返す。
「何時も見てる警部、タイホだ!ばかり言う。」
「あはは、テレビとは違っておじさんはタイホしに来たんじゃ無くて、君を保護しに来たんだよ?」
「お父さん、保護とか言ってもまだ難しいよ?」
「そ、そうだな、えっと、では何と言おうかな?」
谷が娘からのツッコミに困っていると、娘の方がしゃがんでリアルデュークと目線を合わせると、笑顔で説明を始めた。
「リアちゃん、このおじさんは私のお父さんでね、お巡りさんなの。 今日は、お仕事でリアちゃんの事を知りたくて訪ねて来たんだ。 だから、リアちゃんの事、教えてあげてくれないかな?」
リアルデュークは、ジッと谷を見た後、胸元からペンダントを取り出してペンダントトップの裏にあるボタンを押した。
「……ロリコン死すべし!」
「いやいや、ロリコンじゃ無いから! おじさんはもっと紳士的だよ?」
「……変態と言う名の紳士?」
「いや、違うから!」
リアルデュークがボタンを押した後、谷とそんな遣り取りをしていると、谷が身に付けていた警察無線の受信機から、事案発生のアナウンスが聞こえてきた。
「……済まない、どうやら緊急の事件が発生したみたいだ。 取り敢えず、今日は遅いから泊まって行きなさい。 明日起きたら交番に来て貰って、話の続きを聞こう。」
その後、結局谷の娘である千尋(ちひろ)のアパートにこのまま泊まる事になったリアルデュークがベッドでのんびりしていると、シャワーを浴びて来た千尋が、鏡台の椅子に座って髪を乾かしながら話しかけて来た。
「リアちゃん、明日お父さんの所に行く前にファミレスでも行こうか?」
「ファミレス?」
「そう、ファミレス。 ファミリーレストランの略称なんだけど、色々美味しい物があるよ?」
「美味い物……行く!」
「じゃあ、明日の朝は少しゆっくりして、10時頃に家を出よ……な、何? 停電?」
明日の予定を話しているその時だった、急に部屋の全ての電気が止まり、真っ暗になった室内に窓ガラスを破って複数人が突入して来た。
「ひっ! な、何?」
千尋が吃驚している一瞬の内に、突入して来た者達によって床に倒されて拘束された千尋が叫ぶ。
「り、リアちゃん逃げて! 貴方達、その子に手を出したら絶対に許さないから! リアちゃん、早く逃げ……」
叫ぶ千尋の頭上を何かが凄い勢いで飛んで行くと共に、今迄自分を押さえ付けていた負荷が無くなる。
「……悪即斬!」
「ぐぇっ!」
「ち、ちょっとまっ!」
「誤解よっ!」
暗闇の中、リアルデュークが動く度に侵入者達が吹き飛んで行く、その有り得ない事態に千尋が唖然としていると、いつの間にか侵入者全てが床に転がり動かなくなる。
「リアちゃん、大丈夫? 怪我してない?」
唖然としたのも束の間、すぐに意識を戻した千尋が慌ててリアルデュークの下に這って行くと、その身体を触って確認する。
「大丈夫、モーマンタイ!」
「兎に角、ここは危ないから、お父さんの所に行きましょう!」
「紳士の所?」
「あ、その認識で確定しちゃったのね?」
千尋は、リアルデュークの言葉に苦笑いしながらも、手早く貴重品等を纏めると、リアルデュークの手を引いて外へと飛び出した。
正しい判断かは保留します。