沢山食べるキミが好き。
「もう無理ぃぃっ!」
そう叫びながらテーブルに突っ伏す黄色テーブルのウマ娘。
『あぁ〜っと、ここで黄色テーブルのトレセン学園有志チーム、1人脱落か? 更に青テーブルのトウカイテイオー選手も先程から手が止まっている。』
そんな司会者の実況が響く中、トウカイテイオーが限界を迎えつつあった。
「あ、あかんテイオー、手を止めたら死ぬで!」
「……う、うぷっ……もう食べれ無いよ」
タマモクロスが隣で励ますが、既に物理的に限界を迎えているトウカイテイオーが弱音を吐いたその時、観客席から声を掛けてくる人物が居た。
「……ふふふ、そろそろ私の出番かね?」
「嘘やろ? いつの間にそない近くに?」
少し目を離した隙に最前列で話しかけてくるアグネスタキオンを見て驚くタマモクロスと、焦った様子で叫ぶトウカイテイオー。
「林檎、フジりんごだったらまだ食べられるのにぃ!」
「ふむ、ならばキミにはこの薬を処方しよう!」
何時の間にかテイオーの隣に立っていたタキオンが、そう言いながら叫ぶ為に口を大きく開けていたテイオーの口の中に、七色に光る試験管の中身を注ぎ入れた。
「えっ? い、いや……間に合ってま、ふぐっ!」
「テイオー!」
一瞬キョトンとしたテイオーが思わずそのまま飲み込むと、その様子を見たタマモクロスが叫ぶ中、糸の切れた人形の様に一瞬でテーブルの上に倒れた。
『あぁ〜っと、トウカイテイオー選手、セコンドからの支援を受けたがそのまま倒れた!……ピクリともしませんが、大丈夫でしょうか?』
「ふむ、少々分量を間違えてしまったかな?」
司会者の実況を背に首を傾げるタキオン。
「何してんねん! せめてそこは味は不味いけど何故か一杯食べれる様になってトウカイテイオー奇跡の復活!とか言う場面ちゃうん? 何ホンマに止め刺してるん? アホちゃうか! こないな状況でテイオーやられたらホンマにアウトやん? このチビっ子とウチだけであん怪物に勝てる訳有らへんやん!」
怒涛のツッコミを行うタマモクロスに対して、タキオンが自信満々に答える。
「……ふふふ、大丈夫、この私が何も考えていない訳がないだろう? この試合のルールは、一度にテーブルにつけるのが3人と言うだけだ、ならばテイオーの抜けた穴を他の者で埋めれば良いだけさ! さぁ、キミの出番だ!」
「えっ? 私?」
急に指名されたメジロドーベルが困惑しながらキョロキョロと辺りを見回す。
「さぁ、メジロドーベル君、キミの可愛い妹のリアルデューク君の為に頑張りたまへ!」
「わ、分かりましたわ。 私が先生の為に頑張りますわ!」
タキオンからそう発破をかけられたドーベルが胸の前辺りで握り拳を作って覚悟を決めてステージに上がる。
その姿に満足そうに頷きながら、倒れ伏すテイオーをステージの床に転がすと、ドーベルに青テーブルを指し示した。
そしてドーベルが決意と共に青テーブルにつき、勢いよく食べ始めた。
それから10分後……。
「も、もう無理ですわ。」
すぐに満腹になったドーベルがそう言いながらテーブルに突っ伏す。
「ええいっ! 役立たずな……次、メジロライアン君!」
舌打ちしながらドーベルを床に投げ捨てると、苛つきながらメジロライアンを指名するタキオン。
「わ、私も?」
「ツベコベ言わずにさっさとやりたまへ!」
急な展開に付いて行けてないライアンに対して、半ば強制的にタキオンが命令すると、吃驚したライアンが急いで青テーブルについて食べ始めた。
それから10分後……
「……こ、これ以上は無理だよ」
「全く、役に立たない筋肉だねぇっ!」
ドーベルと同じく、すぐに限界を迎えたライアンを乱雑に投げ捨て、次の指名をするタキオンの目が鋭くなる。
「ならばマックイーン君!」
「わ、私は大食いなんて無理ですわ!」
そのタキオンの眼光の鋭さに圧倒されたマックイーンが、渋々席に着いて食べ始めた。
それから10分後……
「スイーツなら、スイーツならば……けぷっ」
マックイーンが倒れ伏すと、すぐに前の2人と同じ様に床に投げ捨てたタキオンが腹立たし気に叫ぶ。
「ええぃっ! 揃いも揃って使えないメジロだねぇ!……矢張り、この薬を試すべきみたいだねぇ? なに、安心したまえ、副作用等は既にモルモットくんで確認済みだよ? まぁ、それから少しだけ成分を変えたが、些細な問題だよ。」
「いや、成分変えたら確認の意味無いやろ!」
そう独り言ちたタキオンが懐から紫色の錠剤を取り出した所で、タマモクロスが大きな声で正論を述べると、タキオンは少しだけ首を傾げて考える振りをした後、ヘラヘラとした軽薄そうな笑みをタマモクロスに見せながら話しかける。
「まあまあ、些細な問題だし、女は度胸とも言うだろう?」
タマモクロスにそう話しながら観客席に座っていたスペシャルウィークの隣に移動したタキオンがニヤリと笑う。
「逃げるんや、スペシャルウィークゥゥゥッ!」
「えっ? アグネスタキオンさん?」
気が付いたら隣にいたタキオンを、不思議そうに見るスペシャルウィークを見るタキオンの目は、まさに獲物を狙う捕食者の目だった。
「さぁ、限界のその先へと行こうじゃないか!」
そう言いながら、スペシャルウィークの口に錠剤を投げ入れるタキオン。
「あれ? これって何です?……あぐっ!」
口の中に入った食べ物は条件反射的に飲み込むスペシャルウィークの癖のせいで、タキオンの投げ入れた錠剤をすぐに飲み込んだスペシャルウィークが、電池の切れたおもちゃの様に一瞬で気絶する。
「スペシャルウィークゥゥゥッ!」
タマモクロスが絶叫するなか、一度気絶したスペシャルウィークの身体が光を放つ。
「はーはっはっはっ! 実験は無事成功した。 まぁ、七色に輝くのは何時もの事、発現効果も想定内と言う事は、成功と言えるだろう!」
光り輝くスペシャルウィークを見て、満足そうに高笑いするタキオン。
「人は七色に輝く生物や無い、それだけで失敗やろがぁ!」
スペシャルウィークの様子を見て盛大にツッコむタマモクロス。
『……えと、だ、大丈夫ですか? 何やら大分賑やかな色を出してますが?』
そんなカオスな状況について行けない司会者が心配そうに話しかける中、オグリキャップは1人黙々と食事を続けていた。
と、言っても限度は有ると思います。