メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 スペちゃんって、意外と難しいキャラかも知れません。
 
 


夏合宿 その7

 

 

 

 『これは……、これは凄まじい勢いです! 途中参加のスペシャルウィーク選手、凄まじい勢いで料理を平らげて行きます! 本戦のあの激闘が幻であったかの様な状況、まさに、まさに荒ぶる魔人の如き食べっぷりです!』

 あれから直ぐにタキオンによってテーブルに座らせられたスペシャルウィークは、テーブルの上にある料理を見ると、無言で食べ始めた。

 その食べっぷりはとても凄まじく、その虚な目と、七色に輝く身体の為、見ている観客席からは荒神でも居るかのように拝み始める人まで現れていた。

 「ふふふ……ハーッハッハッハッ! 素晴らしい、素晴らしいよ! あの薬がここまでの効果を発揮するとは、とても興味深い現象だよ!」

 そんなスペシャルウィークを見て、心底愉快そうに高笑いを上げるタキオン。

 「あかん、アレは人として超えたらあかん領域に踏み込んどる……まぁ、これで勝負になりそうやし、今は目ぇ瞑ろかぁ! ウチも負けんと食べるでぇぇっ!」

 取り敢えず、倫理的な事は考えずに目の前の勝負を優先することに決めたタマモクロスが最後勝負とばかりに勢いよく食べ始めると、それを見て会場の熱気も最高潮になる。

 『残り10分、各チーム共にラストスパートをかけております。 特に青チームの追い上げが凄まじい! 覚醒したスペシャルウィーク選手とタマモクロス選手が、チャンピオンのオグリキャップ選手以上の速度で食べ進めております! この速度は既に人の辿り着ける領域を超えております! 人とは、ウマ娘とは、ここまでの高みへと至れるものなのか? 私、心からの感動を覚えており、マイクを握る手も震えております。』 

 熱の入った実況が会場に響く中、黄色テーブルのウマ娘達が倒れ伏す。

 会場には床に転がるウマ娘達の死屍が増えていく中、3人の食べる速度と量はまさに鰻登りに増えていった。

 

 

『さぁ、3人の覚醒した選手による三つ巴の対決、手に汗握る頂上決戦も残す所あと5分少々となります! この戦いの結末はどうなるのか?会場の皆さま、この世紀の戦いの行方をお見逃し無い様、しっかりと最後までご覧下さい!』

 そう司会者が囃し立てる中、今ひっそりと幼女が1人、周りを伺いながらゆっくりとテーブルに突っ伏す。

 「……ボク、これで食べる辞めれる。 戦略的撤退、これぞ出来る女!」

 顔を伏せたまま、そう小さく言ってニヤリと笑っている幼女、そんなリアルデュークにとって、計算外な人物が音も無く隣に立っていた。

 「ふふふ、安心したまえ、キミにもちゃんと用意してあるのだよ?」

 「……うぃ? ゲフッ!」

 そう言ってタキオンが顔を伏せたリアルデュークの口に、試験管を突っ込んで中身を飲ませると、一瞬だけピクリと肩を震わせた後に、リアルデュークの意識は深い闇の中に沈んで行った。

 「……ふむ、錠剤以外は失敗みたいだねぇ。」

 意識を失ったリアルデュークを見下ろしながら、ため息を吐いたタキオンがゆっくりと観客席へと戻って行った。

 

 

 

 「オグリん、ウチがアンタに勝てへんなんてことは、ウチが一番よく分かっとるんや! せやけどな、それでもやるしかあらへんのや。 勝てる勝てないや無い、ここでウチはっ、アンタに立ち向かわなくちゃいけへんのやぁぁぁっ!」

 そう1人叫んだタマモクロスは、意識を失うとそのまま椅子から力無く崩れ落ちた。

 『タマモクロス選手、残り1分でダウン! これにより、オグリキャップ選手以外の全ての選手が続行不可能となりました。』

 そう司会者が実況する中、ただひたすらに食事を続けるオグリキャップだった。

 「先程のタマモクロスさんの言葉、何処かで聞いたこと有る台詞ですわ。」

 「サロメさん、オマージュですよ、オマージュ。」

 「はぁ、そうですか……。」

 既に勝敗が見えていたサロメと千尋は、そんなタマモクロス達を見ながらも、オグリキャップの食べた皿数にドン引きしていた。

 

 

 

 『……結果発表ぉぉっ!』

 激闘を終えた会場に、司会者の声が響き渡る。

 『激闘のエキシビジョンマッチ、勝者は……オグリキャップ選手です!』

 多くのウマ娘が倒れ伏す中、1人ステージの中央に立つオグリキャップが、司会者からの勝利宣言を受けて右拳を高々と天に向けて突き上げる。

 その姿に会場から惜しみない拍手喝采が沸き起こる。

 『では、早速オグリキャップ選手に勝利者インタビューをしたいと思います。 オグリキャップ選手、優勝御目出度う御座います。 かなりの激闘でしたが、戦いを終えて一言、どうでしたか?』

 「ん、どの料理もとても美味しかった。」

 司会者の質問に大きく張り出したお腹を撫でながら、満足そうに答えるオグリキャップ。

 『……流石はチャンピオンですね? とても余裕がある言葉ですが、後半青チームからの怒涛の追い上げ、特に昨年競ったスペシャルウィーク選手の参戦にはどう思われましたか?』

 「ん、そうなのか? 済まないが、食べるのに夢中で覚えていないんだ。」

 意外な質問だったのか、少しだけウマ耳を垂れながら申し訳無さそうに答えるオグリキャップをフォローしようとする司会者。

 『成る程成る程、食べる事に必死になるくらいの追い上げだったと言う事ですね?』

 「そうなんだろうか? 兎に角、私は美味しい料理がお腹いっぱい食べれるこの大会が大好きだ。」

 そんな司会者の好意を知ってか知らずか、嬉しそうにオグリキャップがそう宣言した。

 オグリキャップの素直な言葉を受けて、司会者が大会を締め始めると、死屍累々のウマ娘達も代表者を残して他は係員の手を借りてステージから去って行った。

 『オグリキャップ選手も大好き、美味しい料理のあるこの商店街に、皆さんも興味津々ですね? 会場の皆さまも、今回オグリキャップ選手が美味しいと太鼓判を押した料理の数々、ちゃんと一般的な分量も有りますので、是非食べに来てくださいね? それでは、優勝トロフィーの授与と、商品の贈呈に移らせて頂きます。 先ずは……』

 

 

 「しっかし、今回もまたえらい目におうたなぁ。 リアルデュークが絡むと碌な目にあわんわ。」

 戻ってきた控え室でパイプ椅子に寄りかかって座りながら、タマモクロスが心底疲れた様に言い放つと、サロメがすぐに反応した。

 「タマモクロスさんは何時もそう言いますが、毎回ちゃんとリアさんに付き合ってくださるのですね?」

 「そら、友達やからな? こう言うアホみたいな事に付き合うんも、また楽しい思い出や。 テイオーも似たようなもんやろ?」

 タマモクロスは、サロメの言葉に笑顔で答えながら、側でお腹を摩っているトウカイテイオーに同意を求めたる、

 「友達ってのは僕も否定しないけどさ、毎回こうだとちょっとだけ付き合い方を考えちゃうよね?」

 「ボク悪くない、今回は千尋悪い!」

 そんなトウカイテイオーの言い草にリアルデュークが床に寝転がりながら反論する。

 「そうだ! そう言えば、何で千尋はこんな事企んだのさ?」

 リアルデュークの反論を聞いたトウカイテイオーが思い出したかの様にサロメに尋ねると、難しい顔をしたサロメが話し始めた。

 「トレーナーの考えは判りかねますが、アグネスタキオンさんの登場にはかなり狼狽えてましたよ?」

 「アグネスのやばい方かぁ、前回と言いアレはホンマにやばいなぁ。」

 テイオーとサロメの話を聞いていたタマモクロスが、何かを思い出しながら染み染みとそう溢すと、その場にいた全員が同意するかの様に何度も頷いた。

 「まぁ、何はともあれや、これでトウカイテイオー達の合宿は終わりやんなぁ?」

 「その筈だけど、千尋がまだ来ていないからねぇ。」

 「そう言えば、遅いですね?」

 トウカイテイオーとサロメがこの場に居ない千尋の事を話題にすると、リアルデュークが元気に話しかけた。

 「きっとトイレ! 大!」

 「成る程のぅ、便秘っちゅう訳か?」

 「出る物出ていればいいのですが、大変そうですわね。」

 場の空気が千尋のお腹を心配する空気になった頃、控え室のドアが開き、千尋とオグリキャップが入って来た。

 「うんこマンおかえろ!」

 「……ふんっ!」

 そう言って出迎えたリアルデュークが、千尋にアイアンクローを決められるのを見ながら、サロメがリアルデュークを嗜める。

 「駄目ですよ、リアさん。 うんこマンでは無く、うんこウーマンですよ?」

 ぷらぷらと揺れるリアルデュークを嗜めるサロメを笑いながらトウカイテイオーが言う。

 「サロメも何だかんだでズレてるよね?」

 「……流石はリアルデュークのルームメイトやな?」

 そう言って2人で笑うタマモクロスとトウカイテイオーだった。







 だって、食べ物以外の絡みが浮かばないんですもの。
 
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