ホッケラーメン、本当に有るんですね。
冗談で出したんですけどねぇ(汗)
「はぁぁっ? 居なくなったぁ?」
リアルデュークとメジロマックイーン、この2人の仲違いはゴールドシップの後押しも有り、無事に収まると思われたが、思いっきり拗れた。
あれから、墓所の奥にある東屋で1人泣いているリアルデュークを見つけたマックイーンが、最初は上手くリアルデュークを宥めていたのだが、感情的になったリアルデュークがフランス語で捲し立てた為、分からない言葉に苛立ったマックイーンが日本語での会話を強要し、結果お互いに感情的になり喧嘩別れとなった。
勿論、マックイーンとしてはリアルデュークの言い分にもちゃんと耳を傾けたかったのだが、如何せんフランス語は門外漢だった為、フランス語のわかるであろう爺やを呼びに行っている内に、1人残ったリアルデュークが何処かに行ってしまったのだった。
マックイーンが爺やの所に戻った時には、ゴールドシップ達は既に何処に行っており、リアルデュークが居ない事に気付いた時には爺やとマックイーンの2人しか居なかった。
「 MacQueen, espèce d'imbécile, maintenant que c'est comme ça, je vais chercher maman tout seul. (マックイーンの馬鹿、こうなったら自分だけでママ達を探してみせる)」
先程居た東屋から見えた建物群を目指して走って来たリアルデュークは、目標の場所まで辿り着くとそう呟きながら、意を決した顔で辿り着いた片田舎の商店街を見詰める。
その呟きは、先程まで使っていたフランス語での呟きだったのだが、その呟きに1人反応した少女が居た。
「 Tu ne serais pas perdue, par hasard ? (貴女、もしかして迷子なのかしら?)」
リアルデュークが声を掛けてきた人物の方を見てみると、高校生くらいの金色の瞳と、前髪に入った太く白いメッシュが特徴的な鹿毛のウマ娘が心配そうに立っており、その周りを黒服にサングラスをかけた屈強な男達が囲んでいた。
「その筋の人?」
思わず思った事を口に出したリアルデュークがぼんやりと少女を眺めていると、少しだけ首を傾げたり、人差し指を顔の前でくるくると回したりしながら考えた少女が、にっこりと微笑んで話しかけて来た。
「ご機嫌よう、私はファインモーションって言います。 貴女のお名前を教えて頂けると嬉しいです。」
両耳に付けた赤に緑色の縁取りがされた花の髪留めを揺らしながら、リアルデュークの顔を笑顔で覗き込む様に見ながらそう話すファインモーション、その屈託の無い笑顔に釣られる様に自然とリアルデュークもはにかむ様な笑顔で返事をする。
「ボク、リアルデューク」
「まぁ、凛々しくも可愛らしさの有る、とても良いお名前ですね?」
リアルデュークの名前を聞いたファインモーションが嬉しそうに名前を褒めると、何故かリアルデュークも嬉しそうに笑顔になった。
「それで、リアルデュークさんはどうしてこの様な所に1人で居るんですか?」
そう聞かれたリアルデュークは、一瞬だけ鸚鵡返しに話そうになるが、すぐに口を噤んで涙目になってしまう。
「……良いんですよ、無理に言わなくても」
そんなリアルデュークの様子を見て、ファインモーションがリアルデュークの頭をそっと優しく撫でながら話しかけて来た。
「辛かったり、苦しかったり、悲しかったりするなら、私はリアルデュークさんに無理に話せとは言いません。 ただ、これだけは素直に答えて下さると助かります。」
リアルデュークの頭を撫でながら、ゆっくりと優しく話しかけて居たファインモーションが、リアルデュークと目を合わせて優しく問いかける。
「貴女は今、困って居ますか?」
あれからファインモーションに連れられて、一軒のラーメン屋に入ったリアルデュークは、ファインモーションに勧められるまま、ホッケラーメンを食べ、その味に感動したファインモーションの話を小一時間程聞いた後に、何故か自身の身の上話をしていた。
苦手な日本語ではなく、物心着く前から使っていたフランス語での会話が可能だった事もあってか、リアルデュークの口は何時もより饒舌だった。
全て聞き終えたファインモーションは、暫し感慨深く目を閉じて頷いてからゆっくりと目を開くと、リアルデュークを見据えて口を開いた。
「成る程、リアさんはそのお歳で既に、私には考えも及ばない程の苦労をして居たんですね? わかりました、私が及ばずながらも力をお貸しします。 リアさんのママさん探しと、お姉さんとの仲直り、私がなんとかして見せましょう!」
「……人任せ、もうしない。 ママはボクが見付ける!」
ファインモーションの言葉に、少しだけ迷いを見せたが、リアルデュークは真剣な眼差しでファインモーションを見ながら強く宣言をする。
すると、リアルデュークの宣言よりも強い語調で自信満々にファインモーションが断言する。
「大丈夫です! こう見えても私、ケンカの仲裁には定評があるんですよ? それに、我が家の力を使えば、世界の何処かに居るリアさんのママさん探しにもきっとお役に立ちますよ?」
「……ボク、何も持って無い。」
その自信満々な笑顔を見て、リアルデュークが俯き加減で力無く呟くと、そんなリアルデュークにファインモーションは、その小さなリアルデュークの両肩に手を置き励ます様に話しかけた。
「大丈夫です! だって、私とリアさんはもうお友達じゃないですか!」
「……友達?」
俯いていた顔を僅かに上げてリアルデュークが問いかけると、ファインモーションは優しく、元気良くリアルデュークに答える。
「そうです、一緒にラーメンを食べて話をする。 これはもうお友達と言っても良い関係性ですよ? それに、リアさんはちゃんと私に話を聞かせてくれました。 それは正に、Ei kysyvä tieltä eksyです!」
「うぃ?」
右手の人差し指を立てて得意気に話すファインモーションの言葉に首を傾げるリアルデューク。
「Ei kysyvä tieltä eksy 私の国の諺で、道を聞く人は迷わないと言います。」
「道を聞く、迷わない当たり前。」
不思議そうに思わずといった形で疑問を呈するリアルデュークの反応を見て、更に調子を上げて話すファインモーション。
「そうです、当たり前なんです。 この当たり前が出来ない人が多いんです! でも、リアさんは変なプライドを持たずにきちんと私に話してくれました。 だから、私はそんな新しいお友達の手助けをしたいと思ったんです。 それに、日本でも言うじゃないですか、お互い様って! 私、この言葉大好きなんです! 正に日本人の心の有り様を表す言葉の一つじゃないですか? ギブアンドテイクより、お互い様の方が私は好きなので、私の為にリアさんは助けられて下さいね?」
「……うぃ。」
最後にウィンクまでして話を押し切ったファインモーションが、近くの黒服に指示を出し始める。
「では、皆さんその様に……本国のお父様には私から直接お話させて頂きますが、時間を無駄にしたくありませんので、関係各所には先に動いて貰って下さい。」
「……しかし、殿下。 流石にこれ以上の勝手は……」
指示を受けている黒服とは別の黒服が遠慮がちに意見しようとすると、ファインモーションが真面目な顔で黒服を叱咤する。
「お黙りなさい。 私が友人の窮地を黙って見過ごしては、本国のお父様やお姉様がどう思うでしょうか?」
「……それは」
「何より、そんな私をお母様が御許しになる訳がありませんわ!」
「……畏まりました。 私の考えが浅慮でした。」
「いえ、それも私の身を案じて下さっての事、何時も有難う御座います。」
恐縮して頭を下げる黒服に対して、逆にお礼を言うファインモーションの姿を見て、何処となくアサマの姿を重ねたリアルデュークは、不思議なモノを見る顔で様子を見て居た。
そんなリアルデュークに気づかずに黒服達に指示を出し終えたファインモーションがリアルデュークの方に向き直ると、笑顔で話しかけた。
「さて、それではリアさん、ラーメン巡りに参りましょう! 私、まだまだ行きたいお店が沢山あるんです!」
「ラーメン!」
その言葉に、その日1番の笑顔と元気の良さでリアルデュークが返事をした。
アニメでは雑な扱いされてますけど、私は殿下、意外と好きです。