メジロ家の変な子   作:ネギ市場

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 無知とは罪でしょうか?




怪物 その1

 

 

 

 ここトレセン学園の栗東寮の一室では、3日前からとある闘いが繰り広げられて居た。

 「この、クソガキがっ!」

 「ボク、クソガキ違う!」

 長い黒鹿毛を飾り紐で注連縄風に結わえてポニーテールにしている少女ことナリタブライアンが、部屋の柱にしがみつく幼女ことリアルデュークを力尽くで部屋から引き摺り出そうと今日も奮闘して居た。

 「いい加減、観念しろ!」

 「虐待反対! いい加減諦める!」

 柱にしがみつくリアルデュークを力尽くで引き剥がそうとするブライアンだったが、その小さな身体からは想像が出来ない程の力でしがみついてる為、未だに腕の一本も柱から引き剥がせずに居た。

 更なる力で引き剥がそうとした所で、朝の予鈴が鳴りそれを聞いたブライアンが忌々し気に舌打ちをしてからリアルデュークから離れた。

 「クソッ、時間切れか! 今日の所はこのくらいにしてやるが、明日こそは容赦なく引き摺り出すからな!」

 苛立ちを隠そうともせずにそう言い張って部屋を出て行くブライアンのその背中に、リアルデュークが怒りながら罵声を浴びせる。

 「何度来ても無駄! 我が城鉄壁! 一昨日来る!」

 そんな2人の攻防をオロオロと見て居たスーパークリークだったが、ブライアンが去った部屋で興奮気味に叫ぶリアルデュークを優しく抱き締めながらひたすら落ち着くまで宥めて居た。

 

 

 「……全く、ガキの癖になんて力だ。 この私が全力でやってもビクともし無いとは、一体何の冗談だ。」

 朝の攻防を思い出し苛つくブライアンが校舎の裏庭で昼食の弁当を食べようとベンチに座っていると、袖の余った白衣を着た顔色の悪いウマ娘がにやにやしながら話しかけて来た。

 「やぁやぁやぁ、ブライアン君。 キミ程のウマ娘でもあのリア君には苦戦しているみたいだねぇ?」

 「……何だ貴様は? あのチビの知り合いか何かか?」

 そのウマ娘の無遠慮な言葉に、更なる苛立ちを感じたブライアンは相手を睨みながらも訝し気に尋ねた。

 ブライアンからの問い掛けに、そのにやにやした表情を崩さないまま数秒程何かを考える素振りを見せると、何故か得意気に答えて来た。

 「そうだねぇ、知り合いと言えば知り合いかな? まぁ、私としては友愛と言うよりも、研究対象としてだがね。」

 「で、その知り合いであるアグネスタキオンが、この私に何の用があるんだ?」

 ここまでのやり取りで相手のことを思い出したブライアンが、警戒しながら問い掛けると、タキオンは目を見開いてブライアンを見ながら口角を上げた。

 「一つ、取り引きをしないかと思ってね?」

 「ハッ、取り引きだと? 一体何の話か知らんが、そんな物に応じるつもりは無い。」

 即答での拒絶を聞いたタキオンが一つも残念そうな態度をせずに、ただ先程と違い些か芝居掛かった動きと声で口を開く。

 「これはまた……取り付く島もないとはこの事だねぇ。 まぁ良いさ、私も急いでいる訳では無いしね、今は時期尚早としてここは退きさがるとしよう。 では、リア君の相手頑張ってくれたまへ。」

 一方的に自分の言いたい事を言うと、満足したのかタキオンはその場を去って行った。

 「……噂通りの変な奴だ。」

 去って行くタキオンの後ろ姿を見ながらそう呟いたブライアンは、周りを警戒した後、人が居ないと判断すると気を取り直してアマさん特製のキャラ弁(今回はデフォルメされたブライアンとビワハヤヒデ)を嬉しそうに食べ始めるのであった。

 

 

 この日も、栗東寮のクリークの部屋は朝から大騒ぎだった。

 「また来た! 何度来ても無駄! ボク、楽園死守する!」

 部屋に入って来たブライアンの姿を見るなり、威嚇するリアルデュークを庇う様に2人の間に立つクリークが、その端正な顔に困った表情を浮かべながら、遠慮がちにブライアンを見ながら話しかける。

 「あの、ブライアンさん……こう毎朝来られると、流石に他のお部屋の方達の迷惑になるかと……」

 「そう思うならば、そこのチビが大人しく授業に出れば良いだけだ。」

 話しかけて来たクリークをその鋭い眼差しで見ながら何事もなかった様に答えるブライアンは、視線をリアルデュークへと固定する。

 「授業出たければ勝手に出ればいい! ボク、ここでダラダラする!」

 「……いっそ清々しいくらいに駄目な奴だな。 まぁ良い、今日は一つ私から提案が有る。」

 ブライアンは威嚇するリアルデュークを呆れ顔で見ながらも、これまでとは違い落ち着いた雰囲気で話すと、リアルデュークがすかさず答える。

 「……無条件降伏?」

 「何で私がそんな事すると思うんだ?」

 「ボク、帝王の器。 感化されたに違いない。」

 「お前の理論が破綻しているのは良くわかった。 だがな、残念ながらそうじゃないウマ娘らしい提案だ。 おチビお前、私と勝負しろ。」

 リアルデュークの斜め上の考えに少し苛立ちを見せながらも、最後には猛禽類を思わせる獰猛な笑顔を見せて提案する。

 「なっ! ブライアンさん!」

 「クリーク、お前は黙っていろ! おチビ、お前強いんだろ? だったらこの勝負受けるよな?」

 思わずといった感じで口を挟もうとしたクリークを鋭い一喝で黙らせると、リアルデュークを挑発し始める。

 「ボク強い、でも勝負面倒。」

 そのブライアンの挑発を受けたリアルデュークは、何故か自信満々で胸をそらせる。

 「じゃあ、万が一お前が勝ったら金輪際私はお前に構わない、これでどうだ?」

 「……それだけ、美味くない!」

 「なら、お前が勝ったらお前の言う事を一つ、何でも聞いてやる。 その代わり、私が勝ったら私の言う事を一つ何でも聞いてもらうぜ?」

 「……何でも?」

 ブライアンは、自身の提案した条件に食い付いたリアルデュークを見て口元を釣り上げながら更に畳み掛ける。

 「あぁ、何でもだ。 これでも金だってある程度は稼いでるんでな、大抵の事は可能だ。」

 「……レースの賞金だけでも、ある程度ってレベルじゃないと思いますが……」

 「……勝負受ける! ボクの力見せる!」

 クリークの呟きに、リアルデュークの目が輝き脊髄反射的に勝負を受けた。

 「……OK、じゃあ、契約成立だ。 勝負はそうだな……放課後、コースは芝、距離なんかはおチビが好きに決めろ。 それじゃ、また放課後にな? 逃げるんじゃねぇぞ?」

 交渉成立に気を良くしたブライアンが獰猛な笑みのまま、最後の一押しと言わんばかりにリアルデュークを挑発すると、面白いくらい簡単に挑発に乗るリアルデュークを見てブライアンは上機嫌になる。

 「ボク勝つ! 逃げる有り得ない!」

 「クリーク、ちゃんとおチビを連れて来いよ?」

 最後にクリークへと声を掛けると、機嫌良くブライアンは部屋から出て行った。

 

 

 部屋から出て行くブライアンの背中を眺めながら、今目の前で起きたやり取りに暫く呆然として居たクリークが慌てて口を開く。

 「……リアさん! こんな無謀な勝負、どうするんですか!」

 「ボク強い。 前のレース、敵居なかった!」

 自信満々に腕を組んでそう言い放つ姿にクリークが盛大に溜息を吐くと、小さな子に言い聞かせる様に話始めた。

 「リアさんの言う前のって、おそらく入学試験のレースの事ですよね? それならそんなの参考にならないですよ。 だって、ブライアンさんはあの三冠ウマ娘なんですよ? 日本で5本の指に入る強さで、トゥインクル時代は影をも踏ませぬ怪物とまで言われたお方ですよ!」

 「……うぃ? 三冠?」

 クリークは自分のその話にキョトンとした表情を浮かべながら首を傾げたリアルデュークの姿を、信じられないモノを見る様目で見る。

 「……ウマ娘なのに知らなかったんですか?」

 「……ボク、方言とか分からない。」

 「方言じゃ無いです! 普段からちゃんと授業受けて居ないから分からないんですよ?」

 オロオロとするクリークを、自信満々なリアルデュークが宥める。

 「大丈夫、慌てる、良く無い。」

 「そう言う話じゃ無いんです!」

 「ボク勝つ! そして楽園死守する!」

 「だから相手が悪過ぎるんですよぉ!」

 最早涙目で狼狽えるクリーク、何故か自信満々なリアルデューク、朝の栗東寮にクリークの叫びが響き渡った。







 幼女のRTA始まります。

 相手は怪物ナリタブライアンです。
 無理ゲーだと思いますが、幼女は自信に満ち溢れて居ます。
 
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