無知の知って、何か語感が良いですよね?
「って事で、今日の放課後に勝負する事にした。 これでこの面倒な仕事も無事終了だ。」
お昼ご飯を食べ終えたブライアンが生徒会室に寄ると、中でお茶をしているルドルフとエアグルーヴが居た。
これ幸いとブライアンが朝の一件を報告すると、エアグルーヴが難色を示した。
「……確かに良い案だとは思うが、些か大人気無いやり方では無いか?」
ルドルフも何かを思い出したのか、真面目な表情で疑問を呈する。
「あのリア君と勝負か……これまでの事を考えると、ちゃんとした真面目な勝負になるだろうか?」
そんな2人の態度を見て面倒臭そうな顔を浮かべた後に、ニヤリと笑ってブライアンが話始めた。
「会長様やエアグルーヴの言いたい事はわかるが、あの人生舐め切ったクソガキには丁度良い経験になるだろうさ。 ああいうのは一度、圧倒的な力の差で行われる理不尽ってのを経験するべきだ。」
「ふむ、確かに一理あるな。 良いだろう、生徒会の名でグラウンドを押さえておこう。 副会長、仔細は任せても良いだろうか?」
「はい、お任せ下さい会長。」
ブライアンの話に理解を示したルドルフ、そのルドルフからの指示で何処かに電話をかけるエアグルーヴ。
そんな2人を満足そうに眺めながら、せめて少しは楽しめる試合になると良いと考えるブライアンだった。
時は遡る事数時間前、その日、その幼女は人生で自分史上1番焦って居た。
「アババババ……三冠、最強。 パクパクさんより強い、ボク聞いて無い。 圧倒的ピンチ、何とか考える。」
あれからクリークと話を聞いて駆け付けたファインモーションに、2人がかりでナリタブライアンの強さを資料を通して説明されたリアルデュークは焦って居た。
焦って焦って仕方がないので、この想いを共有する為にも取り敢えず知り合い全員に呼び出しをかける事にした。
それから30分後、お昼休みを利用して集まった面々を仁王立ちで見渡すと、無駄に自信満々な態度で口を開いた。
「ボクの知恵袋、勝利の方程式教えろ。」
リアルデュークがニヒルな表情でそう言い放つと、早速タマモクロスがパイプ椅子から立ち上がって叫ぶ。
「なんや、知恵袋て? ウチ等集めて何言っとるんや?」
「勝利の方程式と言われましても、相手が相手ですので……」
タマモクロスに続いて、戸惑いを隠せない様子でファインモーションが言葉を濁すと、何故かちょっとだけ嬉しそうなシンボリルドルフが立ち上がって疑問を呈する。
「いや、気軽に声を掛けて貰えるのは嬉しいのだが、流石に私がこの会議に参加するのは不味いと思うのだが?」
「1人混ざっちゃダメなんが居る!」
困惑するタマモクロスを横目に、フジキセキが優雅な所作のまま気の毒そうにリアルデュークを見て話す。
「私のポニーちゃんが困っているのならば、私が助けるのは吝かでは無いのだけどね。 その、なんだ……流石に相手が悪過ぎると思うよ?」
「おいおい、流石にこのゴルシちゃんでも無理ゲーだぜ?」
「もまえ等、弱音吐かずに考える!」
最後に投げやりな態度で話すゴールドシップが匙を投げると、リアルデュークが不満を隠さずに叫ぶと、それを受けてタマモクロスが我慢出来ずに盛大に突っ込みを入れた。
「いや、考える以前の問題やろ!ってか、1番考えなあかんのはジブンやろが!」
「ボクは実行者。 考える、ボクじゃない!」
自身の突っ込みにも態度を変えず不敵に応えるリアルデュークを見て、だいぶ呆れた表情とジト目になったタマモクロスがボヤく。
「……ジブン、いっそ清々しいくらいに他人任せやな?」
そんな2人のやり取りを他所に世間話をしていたゴールドシップ、ファインモーション、フジキセキが騒ぐ。
「そうだそうだぁ! これで勝てるならトレーナーなんざいらね〜!」
「相変わらず強気な所が良いですね。」
「こういうのは私達ウマ娘よりも、トレーナーさんの領分ではないかな?」
そんな中、フジキセキが隣に座るルドルフに話しかけると、それを受けたルドルフが暫し考えた後に、周りにも説明するかの様に話始めた。
「ふむ……問題は、ここに居る面々が誰一人としてブライアン君相手にしたリアルデューク君が勝てる要素を見出せて居ない事だ。 まさにこれは無理無体な要求と言えるな? ならばまずは、リア君とブライアン君とを比較して、優っている所を見つけ、そのデータを元に対策を考えると言うのはどうだろうか?」
「「「「成る程!」」」」
「居ったらあかん奴が1番マトモに考えとる!」
タマモクロス以外がルドルフの話に賛同すると、各自が冷静になって考え始めた。
リアルデュークを除く全員が考える中、ルドルフの言葉の通り現状を把握する事にした一同の中から、先ずはファインモーションから話始めた。
「まず、スピードですが……圧倒的な差でブライアンさんですね。」
ファインモーションの言葉に全員が頷くと、次はゴールドシップが口を開く。
「根性は……ゴルシayeで見てもリアルデュークにそんな物有る訳無いな?」
「体力なら、ポニーちゃんもそんなに見劣りしないんじゃないかな?」
これまでの否定的な言葉を聞いて居たフジキセキが、地味に部屋の隅で四つん這いになって落ち込んでいるリアルデュークをチラ見しながら、フォローするかの様に遠慮がちにそう言うと、ルドルフが自信満々に周りを見渡しながら力強く自論を述べる。
「リアルデューク君が圧倒的に有利なモノが有るだろう? そう、パワーだ! これだけはブライアン君にも余裕で勝てると思う。」
「「「「おおっ!」」」」
ルドルフの言葉によって若干明るくなった気がする場の空気に、次の言葉が止めを刺した。
「後は知性やが……あかん、全てのプラスをマイナスにするくらい圧倒的に差がついとる!」
「「「「……確かに。」」」」
「つまり、纏めると……力以外全て負けていると言う事だな?」
「まさに脳筋やなぁ?」
「見事な脳筋ですわ。」
「うん、脳筋だ。」
「まさに豪放磊落、猪突猛進、脳筋此処に極まれり、だな?」
これが、今日これ迄議論を重ねてきた者達全員の一致した意見だった。
「いや、実に良い議論だった。」
「せやな?」
「此処まで完璧に一致するのは中々有りませんわ。」
「ゴルシちゃんとしても、中々良い時間だったと思うぜ?」
「みんなでポニーちゃんの事を再認識する。 素晴らしい時間だったよ。」
全員やり切った顔で互いに称え合う姿を見たリアルデュークが、四つん這いのまま全員に問いかける。
「勝利の方程式! 勝利の方程式は?」
「「「「「それは無理。」」」」」
「のぉぉぉぉおっ!」
全員の清々しい結論に、リアルデュークの叫びが木霊した。
リアさんはやっと自分の設定した難易度を理解しました。
前途多難です。