山吹乙女が若菜成り代わり転生していた話   作:Calく

4 / 7
八分の一の血と爆速結婚

 道中、乙女の姿から若菜の姿に戻っていたことに驚きながらも、遅れないように後ろを着いてしばらく。

 ぬらりひょんが先導した部屋には、鯉伴の母たる珱姫の姿が。

 珱姫、ぬらりひょん、鯉伴、若菜の計四人が揃った所で、つい先程までの前世の記憶があることを改めて話すのだった。

 

 転生。

 確かにそれは実在する。因縁たる羽衣狐は転生妖怪であり、禁術として転生の術も存在する。

 しかしそういった理に干渉する以外で、前世の記憶を持って産まれてくる――或いは思い出すという記録は信憑性にかけるものとされている。

 科学的根拠は無いものとされ、妖の中でも信じてはいるが、事実としては認められていないものであり、現代では信じるものは殆ど居ない。

 しかし転生という部分においては、珱姫という前例がある。

 かつて亡くなり、明治時代に生まれ変わりを果たした珱姫は、生きた証拠と言える。

 かつての記憶の姿よりも若い珱姫を見て驚いた若菜も、その説明を聞いてその姿に納得することが出来た。

 ぬらりひょんや鯉伴も、珱姫という前例がなければ、そう受け入れられるものではなかっただろう。

 

「輪廻転生……信じ難ぇ話だろうなぁ? 普通はよ」

「ま、ワシらにゃ珱姫の前例があるからな。……若菜さんの話は十分信じられる」

  

 そうして若菜=山吹乙女ということを全員が再認識したところで本題へとはいる。

  

「本題は若菜さんの、人間と妖怪が混じったような、あの妙な姿について、」

「これはワシが調べた範囲の話になるが――」

 

 半妖や人間の混血の場合、大抵どちらかの道を選ぶ。 妖怪として生きるか、人間として生きるか。

 勿論どちらを選んでも、人間や妖怪の姿になれないということは無い。あくまでも生き方の問題だからだ。

 しかし血が薄い、或いは力が弱い場合――必然的に片方の道を選ぶしかない者もいる。

 潜在的な素質や体質によるが、そういった者は、生涯その姿で過ごすことになる。

 まれにそれが覆される――例外が起きることがある。

 死の恐怖を感じるような危機に陥いる――死への恐怖、或いは強い心理的衝撃を受ける――そういった事で、妖怪の姿に目覚めてしまう。

 そういった例外が起きた者は、虚弱体質であり――何かしら問題を抱えていることが多い。

 

 若菜には妖怪の血が八分の一流れている――鯉伴よりもさらに薄い血が。

 通常、混血や半妖は人間の姿でも、身体能力は妖の血が入っている分、純粋な人間よりも遥かに強靭と言える。

 だが若菜の人間時の身体能力は、軽く試したところ常人程度しかない。

 妖怪としての姿になってようやく並以上と言える。

「恐らく妖怪の血が弱いんだろうな。目覚めなきゃ一生を人間として過ごしていたはずだ。だが、」

 

 妖怪として生きるにはあまりにも血が弱く、そのままであれば人間として過ごしていただろう。

 たが、何の因果か妖怪の血に目覚めてしまった――耐えれる体では無いというのに。

 目覚めたばかりの妖怪の血が、まだ若菜の体に馴染んでいない。

「あの半端な姿は、妖怪の血が騒いでるだけだ。そのうち落ち着くだろうよ」

「問題は――妖怪の血が、若菜さんの体にとって強すぎる事だ」

 常人程度の身体能力しかない体には、人外の血は毒になりかねない。

「あまり妖怪としての姿を保たない方が良い。一日なら良いが、連日となると倒れかねん」

 そこらを気をつけるとして、

「若菜さんは鯉伴が守るだろうし、いざとなりゃワシも珱姫もいる。――あまり一人で抱えなさんな」

 ぬらりひょんは、こんくらいで良いだろうと話を区切った。

 そうして話が一段落した所で、

 ふと、珱姫とぬらりひょんが顔を見合せ、金の髪が揺れる。

 にんまり、と擬音が付きそうな笑みを浮かべ、

 

「所で鯉伴」

「――お前、結婚はいつすんだ?」

 

 急な話の展開に目を瞬かせる若菜に、鯉伴がぬらりひょんに吠える。

 

「おいっ、親父――」

「いや、そろそろ挨拶にでも来るんじゃねぇかと思ってたんだが」

 そう言って頬をかいた。

「中々来ねぇなと思っとったら、今日この話が来たからよ」

「この面子なら、顔合わせが済んだも同然じゃろ」

 

 確かにこの部屋にいる三人は事情を知っているので、説明は省いて良い。

 若菜としての付き合いも、鯉伴との交流が始まってからは奴良組の組員にも知られている。

 告げてはいないが、恐らく皆勘づいているだろう――将来の伴侶ではないかと。

 若菜としても乙女としても、そうなりたいと思っていたが、ぬらりひょんの方からその話が振られるとは思ってもいなかった。

 

 片手で顔を覆って唸る鯉伴を尻目に、トントン拍子で話は進む。

 

「ぐ……」

「ということで若菜さん、――愚息だがよろしく頼む」

「若菜さん、私の方からも――鯉伴をよろしくお願いしますね」

「は、はい……! 不束者ですが、此方こそ――」

 

 そうして瞬く間に話はまとまり、数週間後。

 奴良組二代目による、二度目の祝言が行われた。

 たいそう賑やかな様子で行われた宴会は、翌日には死屍累々の組員で床が埋めつくされていたとか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。