推しの子+西村京太郎 十津川警部(渡瀬恒彦版)VSカミキヒカル   作:宇宙とまと

2 / 6
元々8月の、『158話ルビーショック』の後に急遽作成した、小説の内容を大幅に修正・加筆して完成させました。『推しの子160話以降の展開を予想』して作成しました。今日と明日で完結します。(木曜になれば、最新号が出てしまうので)


星野アクアの消失 第2話

 

 

 事の始まりは、クリスマスより遡ることおよそ5か月前、7月最後の日に遡る。

 

 

字幕 長野県 松本市の山

 

 

 

 犬が地面を掘っている。近くに居た飼い主がやって来て、犬を止めようとする。

 

「おい、何掘ってんだ。勝手に掘ったら地権者に怒られるんだ。俺が」

 

穴をのぞき込むと、人の骨の様な物が見える

 

 

「うわあああああ」

驚いて転んでしまう飼い主。

 

 

 

 山間の道を、数台の警察車両が走って来る。

 

 

 

「東警部、ホトケは成人女性で、死後半年って所ですね」

「所持品は? 財布やカバンは?」

「ありませんね。ホシ(犯人)が持ち去ったんでしょう」

「他殺と見て間違いないな」

「身元の特定には時間がかかりそうですね」

「遺体を運んでくれ」

 

その後、頭蓋骨をもとに生前の顔を法医学の技術を用い推測し、粘土で型取りをして、義眼を入れて鬘等を被せたりして、身元特定を行う『複顔』が行われた。身元不明の白骨遺体の解明の他に、遺跡などで発掘された古代の遺体の、学術調査にも用いられている。

 

 

 

9月20日

 

 

「十津川君」

「課長おはようございます」

「すぐカメさんと、松本に行ってくれ」

「何かありましたか?」

「7月末に松本市と塩尻市の境界付近の山中で発見された遺体だがね。『複顔』の結果、半年前から消息不明だった、若手女優片寄ゆらさん(25歳)の可能性がかなり高いそうだ」

 

室内に居た刑事たちが、驚いている。

 

「有名な賞を、何本も取っている女優さんですね」

「消息不明とは聞いていましたが」

[DNA鑑定の為に、彼女の兄さんと向かってくれ」

「了解しました」

 

映像 字幕

 

特急あずさ号

 

 

松本駅

 

駅舎から十津川と、亀井、ゆらの兄が出て来て、タクシーに乗り込む。

 

 

 

警察署

 

 

「十津川さん」

「島警部、先日はお世話になりました。彼が片寄ゆらさんの兄で、正幸さん30歳です」

「本当に妹なんでしょうか?」

「その可能性が高いので、最終鑑定の為にDNA鑑定が必要なんです」

「判りました」

 

 

「島警部、死因は何です?」

「後頭部の打撲痕、これが致命傷ですね」

「鈍器で殴られた形状とは、違うと思うんですよ。岩か何かに後頭部を打ち付けたのでは」

島警部は、鈍器とは傷の形状が一致しない事を説明した。

「どこか別の場所で、高所から突き落とされて殺害され、この山に運ばれて埋められた可能性も考えられます」

カメさんの言った可能性が、現状一番高いかもしれない。

 

その日は、我々3名は松本市内で宿泊した。翌日昼、DNA鑑定の結果遺体は、片寄ゆらさんと断定され、大きく報道された。

 

『行方不明だった女優の片寄ゆらさん、長野県内の山中で、遺体で発見。死後半年と見られ、長野県警及び警視庁は、殺人事件と断定』

 

 

 

松本市 喫茶店

 

 

 

「正幸さん、ゆらさんが何かトラブルを抱えていたとか、そういう噂等を知りませんか。金銭トラブルとか、恋愛とか?」

「そういった相談を受けた事はありますか?」

 

「記憶に無いですね、ゆらは友人も多く、明るい性格でそう言ったトラブルは無かったです」

「些細な事でも構いません。何かありませんか?」

「妹が消息不明になって、3日後に捜索願を出したんです。マネージャーさんから、連絡が有って」

「なるほど」

「次の日、管理人さん立会いの下、警察の人にゆらの部屋を調べてもらったら、どうも空き巣が入った形跡があると」

「本当ですか? 何か盗られた物は?」

「うーん、妹とはあまり会う事も無かったので。ああ、現金や貴重品らしいものは手付かずでした」

 

 

「どう思うカメさん?」

「怪しいですね。ま、偶然空き巣が入った可能性も0ではありませんが」

 

我々は、目撃者捜しを県警に委ね帰京した。

 

 

「片寄ゆらの、交友関係、仕事関係の調査及び、失踪前後の目撃者捜しを重点的に行う」

 

 

 片寄ゆらの周囲は、これと言ったトラブルも無かった様だ。3年前に、一度付きまとい行為をしたファンがいたが、警告を受けた後はおとなしくしていて、更に1年前から、台湾で生活している事が判明し、捜査対象から外された。

 

ゆら自宅近くの警察署

 

「私が空き巣事件を担当した、久我山です」

「現金や貴重品に、盗難の形跡はないみたいだね」

「はい。預金通帳などの貴重品は手付かずでした」

「金狙いでは無いとすると、女優の何かお宝グッズでも狙ったかな」

と亀井

「いやお兄さんによると、そちらも盗難の形跡は無さそうだと」

「ああ、でも」

「でも?」

「芸能人って、お友達たくさんいるはずですよね」

「まあ大半はそうでしょうね」

と十津川

「極端に友人などの写真が少ないんです。お兄さんも驚いてました」

「電子化が進んでいても、多少はそういうのが部屋に無いのは変ですね」

 

 

 

「警部、この空き巣が偶然じゃないとすると」

「ホシにとって、都合の悪い何かを隠そうとしたのかも」

ほどなく、片寄ゆらが失踪するより数か月前から、とある人物と『飲み友達』

 

になっていた事が判明した。

 

 

「名前は。ゆらさんによると『ミキさん』

亀井がホワイトボードに情報を書き込む。

 

残念ながら、名前などの具体的情報不明だ。そもそも本名であるかも不明だ。

「これじゃあ、何もわかっていないのと同じじゃ無いか」

と本多課長が言うが、実際それに近いのだ。

 

「ゆらさんから、友人たちが聞いた話だと男性の可能性は高いんだがね」

 

 

3日後 

 

 私と村西は正幸さんから聞いた、ゆらさんの一番の親友が住んでいる府中市に向かった。

「今日は風が強いですね」

「木枯らしかな」

 

「確かこの近くの住所ですね」

村西が、電柱の住所を見てメモと比較する。

 

近くの駐車場に車を止めて、歩き出す。

 

後少しで親友の家に着く時、反対側の車線を女子高生が自転車で走って来る。

 

 

 

 

 

 十津川たちとすれ違う寸前、いきなり強い北風が吹いて来て、女子高生の自転車が転倒しそうになる。が、間一髪何とかバランスを取り、転倒を免れた。

しかし、生徒手帳を投げるような形で落としてしまう。が、運よく十津川の足元に落ちたので、拾って返してあげた。

 

落ちた時に、写真が飛び出してしまい、どうやら公立の『瑞沢高校』2年花野 菫(はなの すみれ)と言う名前の様だ。

 

 

「あ、ありがとうございます」

その時、内ポケットから警察手帳が落ちてしまう。

 

「えっ、警察の方なんですか?」

「この近くに、ある事件の捜査でね」

「あれっ、今私の顔を見て驚かれてましたけど、どこかで会いましたっけ」

「どこかで、君の声を聞いた気がするんだけど、気のせいかな」

「あ、最近よく似てるねって言われるんです」

「誰か有名人?」

「B小町の、有馬かなさんって子に私の声がかなり似ているみたいで」

「警部、幼少期から子役としてかなり活躍してましたよ」

「そうそう、確か『重曹をなめる天才子役』です(違いますw)」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

(かっこいい刑事さんだなあ。真島先輩も30年後はあんな感じになるのかなあ?)

 

 

 

 

 

数分後

 

インターホンを鳴らすと直ぐに応答があった。十津川と村川は、警察手帳素提示した。

 

 

「警視庁捜査一課の、十津川です」

「村西です」

「ゆらの中学・高校時代の友人だった、金山佐和子です」

「先ほど電話での話だと、金山さんは、ゆらさんの失踪直前に自宅でお会いしたんですね」

「はい久しぶりの再会だったんで、所謂『家呑み』をやったんです。時間は、一時間半くらいでした」

 

ちなみに、その後ゆらはタクシーで帰宅した事が判明している。

 

「ゆらさんは、登山が趣味だったんですか?」

「はい、女優も結構体力必要な仕事ですし、ゆらは元から山が好きだったんので、体力増強になるんで一石二鳥だって。私も一緒に登山した事も。

ミキさんも登山好きらしいですよ」

「その、ミキさんとお会いした事は?」

と村川が聞くと、

「ありませんが、さっき電話で話した通り写真はありますよ」

 

佐和子が、写真を見せる どうやら高級バーの様だ。映っているのは、30代くらいの長身の金髪の男で、かなりの美男子だ。

男は寝ている様で、酒が入り僅かに眠っている間にゆらさんが撮影したのだろう。

 

「相手は撮影に気付いているのですか? 何か聞いていませんか?」

「いいえ、気付いていないし相手には言っていないそうです」

 

翌日の土曜日、急に休日主張で大阪の支店に向かう事になり、ゆら失踪を知ったのは数日後との事。

 

 

「写真の事は、警察に話さなかったのですか?」

と十津川が聞くと、佐和子恥ずかしそうに、

 

「あの日、二人で飲んで酔ってしまい、ゆらは写真を置き忘れ、私も写真は返したと勘違いして、どこかに仕舞いこんでしまって、3日前に偶然見つけたんです。

まさか殺されていたなんて思いもしなくて」

 

佐和子は悔しそうに表情を歪ませる。

 

「この写真お借りしてよろしいですか?」

「お願いします。ゆらの事件の犯人を逮捕してください」

「必ず逮捕して法の裁きを受けさせます」

 

 

 

 捜査本部に戻ると、待ち受けていたかの様に長野県警の島警部からの電話が有った。

 

「松本市郊外で目撃情報ですか?」

「はい、朝早くですがね。農家の人が2、3人金髪で長身の男が車で、山の方から走って来るのを見たそうです」

「顔とかナンバーはどうですか?」

「目撃した人の家から、少し距離が有って、何せ半年前の事ですから」

 

 

一縷の望みをかけて、金髪男の写真を送信したが、結果は芳しく無く、決定的な証言は得られなかった。

 

 

金髪男の正体も判らず数日が経過した。このところハッカーの攻撃が各種検索サイトに殺到し、後数日は使えない様だ。

 

 

「警部、奥さんに見せてみてはどうでしょうか?」

「直子にかい?」

「直子さんは、交友関係広いですからもしかしたら」

 

 

その日の夜

 

私はダメもとで直子に写真を見せた。

 

「ふーんこれが、今あなたが追っている奴なのね。中々の優男ね」

「まだ犯人と断定されてはいないんだがね」

「どこかで見たような気が」

「本当か」

「誰かの写真に映っていた気がするの。ええと……あれは福子の持っていた写真! 今電話して聞いてみるわ」

 

 

「直子恩に着るよ」

「じゃあこの事件が解決したら、宮崎は遠いので、都内で宮崎牛が食べられるレストランに連れて行って。それと福子には、それとなく口止めもしておいたから安心して」

「君は私にはもったいないくらいの妻だよ」

 

 

 

翌日

 

 

「この写真の男は、神木輝34歳。『神木プロダクション』及び、『株式会社メディアEYES』の代表取締役です」

「若いのに大したもんだね」

と本多

「神木プロダクションを設立したのは、19歳の時です」

亀井の追加説明を聞いた、刑事達は一様に驚いている。

 

「それは本当ですか?」

「大富豪の中には、大学生の時に大成功した人も居ますね」

「神奈川県生まれで、劇団ララライに11歳から16歳で所属していました。19歳以降の経歴については現在未だ調査中です」

 

 

「一体どうやって、大金を稼いでいたのでしょうか?」

「その辺りも解明が必要かもしれない」

 

 

 

「とりあえず一度、当人に会ってみます」

 

 

 

午後2時

 

神木プロダクション

 

 

「どのようなご用件でしょうか?」

「警視庁捜査一課の十津川です」

「西本です」

 

受付で、警察手帳を提示し、社長への面会を求めた。

 

「片寄ゆらさんとの事を、お伺いに参りました」

「しょ、少々お待ちください……5分だけならとの事です」

 

 

 

「社長の神木です。警部さんの御高名はかねがね伺っております」

「恐縮です。では早速本題に入らせていただきます。神木さんは、ゆらさんと親しかったようですね」

西本が例の写真を見せる。

 

「隠し撮りされてたんですか? これは訴えれば罪に問えるんですか?」

「この程度の写真では無理でしょう。第一ゆらさんはもう死亡してますし」

「彼女が失踪したと思われる〇月〇日は、どこに居ましたか?」

「これは関係者全員にお伺いしています」

 

「ちょっと待ってください」

 

神木はスマホのスケジュール帳を調べている

 

「その日は、9時まで新宿の〇バーで飲んで、タクシーで帰宅して朝まで寝ていましたね」

「どなたか、アリバイの証言してくれる方は」

「いませんね。独身なので」

「片寄さんから、何か相談などを受けた事は?」

「明るい方だったので、誰かの悪口とかは無かったですね」

 

 

 

「どう思いますか警部」

「写真を見せた時、一瞬だけ明らかに動揺していた」

「怪しいですね」

「だがこれだけで断定する訳にはいかない」

 

 

 

 10月に入り、ここ数年で5人以上の、女優やアイドルに歌手が消息不明になっている事が判明した。

 

彼女達に共通しているのは、全員演技や歌唱力が高く評価され、有名な賞等を授与されている事。そして失踪の少し前に、全員白いバラを送られていた事が判明した。

 

 

他の事件の捜査の合間に手分けして捜査が行われ、不明者が貰った白薔薇は、全て神木が購入していた事が判明した。

 

「任意でカミキを引っ張りますか(連行の隠語)」

「流石にこれだけでは無理だよ。偶然だと白を切るに決まっている」

「全員消息不明ならまだしも、バラを贈られ無事な人の方が、遙かに多いんだからねカメさん」

課長の言う通り、全員が失踪しているならともかく、多くの人が無事な以上、偶然だと主張されたら打つ手は無い。

 

 

 

 

 

 そんな折、元刑事で今は私立探偵をしている橋本豊から、連絡があり警視庁近くの喫茶店で会う事になった。

 

 

 

 

 橋本は元は十津川の部下だったが、ある時婚約者が性的暴行を受けて、その挙句に自殺してしまった。橋本は刑事を辞めて加害者を追跡し、報復を行ってしまった。彼が殺人犯かと思われたが、十津川の捜査で橋本は負傷させただけで、別の黒幕が止めを刺し、殺人の罪を橋本に擦り付けていたのだ。

 

橋本は、懲役3年の計で服役し、出所後は私立探偵になり、時折十津川たちの捜査を助けている(西村京太郎氏作『北帰行殺人事件』1981年12月発売

1982年と2002年の2回にわたり、テレビ朝日系列でドラマ化)

 

橋本は数日前、誰かに追われていた情報屋を助けてやったらしい。翌日男は姿を消したが、2日後再び戻って来て、

 

「俺は一宿一飯の恩義は忘れない。あんた様な硬骨漢嫌いじゃないぜ。これはあんたの元上司に渡してやれ。面白そうなネタを見つけたので探っていたんだが、

虎の尾を踏んでしまったみたいでな」

 

 

「警部、情報屋は、このネタをもとに脅迫でもしようとしていたみたいですね」

「それがばれるか、金額でトラブルになり追われているという所か」

 

 内容を確認した十津川の顔色が変わる。

 

橋本は金の受け取りを拒否したが、十津川の提案で事件解決後に、刑事部長に適切な報奨金を出してもらう事で説得した。

 

 

「事件に関係するか不明だが、橋本が情報を持って来た」

「橋本の奴元気でやっているのか」

亀井刑事は、橋本の事を聞いてうれしそうだ。

 

「この男を見た記憶は無いか? と言っても14年も前だから無理も無いか」

「どこかで見た記憶はありますね」

 

写真の男は20代くらいの青年だ。いささか神経質に見える。

 

「本名菅野良介、死亡時22歳。あの星野アイ殺害実行犯だ」

刑事達から一斉に驚きの声が上がる。

 

「思い出したぞ、このクソ(表記不可能)野郎は、アイちゃんを殺した直後、自宅で自殺しやがったんだ」

アイのファンだった本多課長は、写真の良介を睨みつけている。

「次はこの写真です」

良介と一緒に二十歳前後の愛らしい女性が映っている。

「課長ならお判りだと思いますよ」

本多が、写真に顔を近づけ数秒眺めていたが、

 

「この子は、旧B小町のニノちゃんじゃないか!」

「警部、この二人はどういう関係ですか?

「恋人でしょうか」

「情報屋Aの調べによると、その可能性があるらしい。ニノに進められて良介は、旧B小町のライブを見に行った様だ」

「アイドル殺しと、そのアイドルの仲間が恋人……ただ事ではありませんね」

「それを隠していても、それ自体が罪に問われるわけではないがね」

 

 

 

 

「カメさん、安原、小西、山下は神木をマークしてくれ」

「了解」

「私、村川、西本はニノのマークと、星野アイ殺しの関連調査」

「はいっ!」

 

 

 

 

 私は一度、村川と共に新野冬子に会ってみる事にした。彼女は自宅では無く西葛西にある、彼女がコーチとして働いている、ダンススクール近くの、喫茶店で会う事を望んだ。

 

 

 

 

「新野冬子さんですね。警視庁の十津川です」

「村川です」

「新野です」

ニノは緊張しているのか、視線が店内をさ迷っている。

 

 

 

「新野冬子さんは、星野アイさん殺害の実行犯菅野良介さんと、恋人だと言う情報提供が、警視庁にありましてね。16年前の事情聴取の時の記録を拝見しましたが、

ニノさんは、被疑者と恋人だと言う事を隠していますね」

「申し訳ありません。もし、あのときそれが露見していたら、激高したアイのファンに私が殺されていたかもしれません」

「警部、確かにその危険性が高かったかもしれません」

「私もそのことを今更咎めるつもりはありません。星野アイの人気はすさまじかったですし、その反動も大きくニノさんが言うような危機は理解できます」

 

 

「この写真の男性をご存じですか?」

「いいえ。白衣を着ていますけどお医者さんですか?」

「この方は雨宮吾郎さん(3〇歳)で、高千穂町総合病院で、18年前消息不明になり、2年前の12月に、神社の境内にある洞穴で白骨遺体で発見されました」

と十津川

「その方と私と何の関係が?」

「実はこの人、アイさんの出産時の担当医だったんです。そして、出産の直前に一度自宅に戻ろうとして、消息不明になりました」

「そ、そうなんですか」

「実は県警の中には、良介さんが殺害し、遺体を遺棄したと考える動きも有るそうです。良介さんは、妊娠し双子を出産した、アイさんを強く憎み犯行に及んだ。そして、その担当医も同罪と言う事で、襲撃したのではないかと。まあ『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』と言う事です」

「そんな、証拠はあるんですか?」

「失踪寸前、フードを被った大学生くらいの男性と、雨宮先生が揉めていたという、目撃証言はあった様です」

「警部さんも、良介が犯人だと?」

「警部はそう考えてはいないようなのです」

「確かに動機は有るかもしれませんが、こじ付けに近いうえに、証拠も有りません。殺人犯だからと言って、簡単に疑うのは勇み足だと思います。

事故死の可能性も疑うべきかと」

「夜間の森の中で、謎の人物を追跡中に、足を踏み外し転落した可能性もあると言う事です」

 

「貴女達、旧B小町のメンバーと、アイさんはあまり関係が良くなかったと、言う噂を聞いたんですが実際はどうだったんです」

「関係は良くなかったです。アイだけがものすごく人気が有ったので、初期メンバーとの対立は日常茶飯事でした。私も、嫉妬から『死んでくれないかな』

と言ってしまった事も有ったんです」

ニノは涙目になりながら答えた。

 

「無論冗談で本気ではありませんよ。何かあっても、アイは翌日にはそれを忘れてケロッとしていたので」

「その無邪気さに甘えていたと言う事でしょうか?」

「確かにそうかもしれません」

「アイさんが死亡した事件ですが、引っ越して一週間で事件は起きています。良介さんは、どうやって新居の住所を知ったんでしょうか?」

「新野さんはご存じでしたか」

「いいえ、全く知りません。引っ越しの事実すら事件後に知りました。良介は偶然住居を掴んだんだでは?」

「偶然ですか」

「アイは、透明人間じゃないです。それに、かなり抜けている所も有ったので、うっかり知られてしまったのかも」

 

 

「最後に、最近B小町の名前を継いだグループが、大いに活躍していますね。実は私も最近ファンになりました」

と村西

「特にアイさんの娘で、ルビーさんは各メディアで活躍していますね。12月のライブでは、最終日ドームを超えて新国立競技場でのライブ開催らしいですね。

これは、見方によっては母親の星野アイさんを超えるとも言えますが、どう思いますか」

「とても素晴らしい事だと思います。天国のアイも喜んでいますよ」

 

 

その後

 

「警部、新野さんは明らかに嘘をついていますね」

「同感。雨宮医師の事を聞いた時、明らかに動揺していたからね」

「犯行に加担していたかどうかは不明ですが」

「少なくとも、良介から何らかの事情は聴いていると思う」

「とはいえ犯人隠避はもう時効ですから」

「ただ、遺体の隠蔽は良介の可能性が高い。住民に揉めている所を見られているしね。事故死だろうが、誰か第三の人間の仕業だろうが、もし遺体を見つけてしまったら隠さざるを得ないだろうね」

「しかし、よく16年も遺体が見つかりませんでしたね。地面の中に埋まっていたとかでは無く」

「実は〇年前、私は一度事件捜査で高千穂に行った事がある」

「そうなんですか」

(西村京太郎氏著作 神話の国殺人事件 1988年発売。 現在は『十津川警部の休日』『JR周遊殺人』の中に収蔵中)

「アイさんが双子を産む前の年だね。その際雨宮医師が発見された神社……個々の奥まったところに洞穴があるんだが、神社は荒れて立ち入り禁止ならともかく、

そこそこ参拝客も居たり、地元の子供が遊んでいたね。よくそんな所に遺体があっても、誰も気づかないんだと2年前、ニュースを聞いて驚いたね」

「間違いなく洞穴の外まで、腐敗臭が漏れ出していると思います。おかしいですね」

「ただ、県警は遺体が動かされた可能性も低いと」

 

「新小町を応援していると言うのも、明らかに嘘だね」

「嫉妬や反感どころでは無い、もっと危険な物を感じました」

「アイを超える存在は許さない。たとえ実の娘でもと思っているのかもね」

「とはいえそう思っているだけでは、警察も何も出来ませんから」

 

 

 

 

 

 

 11月下旬、焦りを見せたのか神木が、ついにボロを出したかに見えた。夜間秘かに電子機器をスクラップ工場に運び込んだのを、マークしていた刑事が、

辛うじてスクラップ機に放り込まれる寸前で、回収に成功した。

 

しかし、

 

「HDもここまで破壊されていると、修復は難しいですね」

「どうにかならないですか」

「うーん、申し訳ありませんが難しいかと」

 

 

「そうか無理なのか」

落ち込む本多

「まあそう易々と行く相手でも無いでしょう」

と亀井

 

その時西本刑事が、橋本豊を連れて入って来た。

 

「警部、入り口に橋本さんが来られていたのでお連れしました」

「橋本か、何か情報を入手したのかい」

「警部、神木の所有する会社が、資産整理を開始したと言う話です」

「本当か!」

「所属している、芸能人の移籍交渉も開始しているみたいですね」

「資産整理して、海外に高飛びしようとしてるんですかね」

「会社設立以前から、どうも相当無茶をしていた様です。資金集めの為に、かなり違法行為や、犯罪すれすれの事もやっていた様です」

「とうとう、ライオンのしっぽでも踏みましたかね」

 

と亀井

「だが現状では、手が出せない」

 

「それとこの写真は、お役に立つと思ってお持ちしました」

「写真?」

そこには、15歳くらいの少年が映っていた。

 

「あら美少年ですね」

と村西

「背がかなり低いですね」

 

「劇団ララライに所属していた、15歳の神木です」

「20年ほど前のか……この少年どこかで見た記憶が」

 

 十津川は何かに気付いたのか、PCを操作して有料配信サイトから『今日あま』の最終回をクリックし、時間を飛ばす。

 

ストーカーの少年のアップの所で止める。

 

「この、ストーカー役の少年と、神木の写真を比較してみてどうだ?」

「かなり似ていますね……いやそっくりですよ」

「知らない人が見たら、勘違いするかもしれないレベルですよ」

 

「星野アクアと、神木輝は親子である可能性が高いと思う」

「って事は、星野ルビーちゃんの父親も」

「課長、そりゃ一卵性双生児なんだから当たり前ですよ」

カメさんが、また課長にダメ出しをしたw

 

「最後に、これは関係無いかもしれませんが、旧B小町のメンバーの一人に、子供がいたそうです」

「本当か、誰の子か知っているかい?」

「新野冬子らしいです。父親は不明ですね。子供は生まれて程なく養子に出されたそうです」

 

 

 

 

 

 

 

「まだ確定では無いが、仮に本当に親子だった場合。こういう解釈も成り立つのではないか?」

「どのような?」

「新居の住所を教えたのは、星野アイ本人では無いかと言う事です」

「ええっ」

「子供たちも4歳、一度会わせてあげたくなってもおかしくは無いですね」

と西本

「兄妹が父親に会いたいと言ったのかもしれませんね」

「カメさんの言う通りじゃないかなあ」

 

課長とカメさん、残念ながら大違いw

「その時住所を聞き出し、神木がリョースケに情報を流した」

「もしくは間に、新野冬子が関わっている可能性もある。彼女には動機もある」

「高千穂の医者殺しも、同じアイさんが情報を漏らした可能性もあると言う事か」

「一応宮崎県警に連絡お願いします」

「判った」

「新野の子供の件は調べますか?」

「そうだな、一応調べてみよう」

 

 その後、妙に他の事件も起きず、神木関連の情報も特になく、数日経過し12月に入った最初の金曜日。

 

「十津川君、悪いんだが明日宮崎に日帰りで出張に行ってくれないか?」

「何かありましたか」

「昨日の朝、新宿のビジネスホテルに潜伏していた、宮崎市内の連続殺傷犯が逮捕されたんだが」

「県警から引き取りに来たそうですが」

「それが、二人とも食中毒起こして病院送りだよ。県警も、今なんやら事件が続いて手が足りないらしいんだ。県警本部長と、三上部長が協議して

数日は時間に余裕がある、十津川班から派遣する事になった。帰りは午後5時発の羽田行きだ」

「了解しました」

 

 

 

 

 

 我々が宮崎に出張に行って数日後、ついに神木と新野の関係が割れた。

 

各所の防犯カメラなどを検証した所、神木と新野の接触が多数確認された。

 

「どうやら極力人目に付かないところで、会って居たようですね」

「新野を任意で引っ張れないかね?}

「現状では無理です」

「まあそんな危険な人だと、知らなかったと言われればそれまでです」

 

「確実な証拠を挙げるか、現行犯で押さえるかのどちらかですね」

 

 

12月19日

 

 

「特別警備体制を敷くのは了承する。ただし期限は25日までだ」

「了解しました」

「君も一番危ないのは、ライブ当日だと考えているのだろ?」

「はい。神木と新野が、アイさん殺しを再現しようとした場合、可能な限り当日に動くと考えます」

「悲しき犯罪者の性質だね」

 

「神木や新野は、アイさんの実子であっても容赦はしないと」

「二人はおぞましい連続殺人鬼です。そのような人間的感情とは無縁の連中です」

 

 

「十津川君は、2人の犯人候補の内誰が本命だと?」

「二人が共同で動くか、もしくはどちらか単独で動く。もしくは神木が過激なファンを使うか、ヒットマンでも雇う可能性も有ります」

 

「皆聞いてくれ」

十津川班の刑事達が、神妙な面持ちで着席している。

 

「一連の快楽殺人事件の真犯人、神木輝は既に資産を処分を終え、27日午後の香港行きを予約している事が判明した。今回が連中の罪を暴く最大で、最後のチャンスだ」

「警部は最初、B小町の3人を一時保護しようと考えたんだ」

「しかしそうなると、一時的に犯人は警戒するだろうが、永久に保護を続けるわけにもいかない。我々か、関係者の気が緩んだ所を狙って来るだろう」

「神木の資産は数十億です。それを使えば、海外からでも遠隔操作でいくらでも事件を起こせる」

 

 

「午後8時より、特別警戒態勢に入る。今まで二人の手にかかった被害者の無念を晴らすために、必ず連中を逮捕する!」

 

 

「西本、村西先に向かってくれ」

「判りました」

 

 

午後6時

 

亀井と十津川だけが残っている

 

「どこへ行くんです警部?」

「宣戦布告」

「ほどほどでお願いしますよ」

 

 

30分後 

 

 

 

 とある高級ステーキ店 カミキが美人モデルと夕食を食べている。

「神木さん乾杯」

「乾杯!」チリン

 

そこに十津川がやって来る。

 

 

「警部さんもここの常連だったんですか?」

「事務所で聞いたら、この店に居ると聞いたんでね」

「何なら御馳走しましょうか、ここのサーロインは絶品ですよ」

「お前の様な犯罪者に奢られたら、俺は一発で懲戒処分だ」

「神木さん、この人警察の人?」

「警視庁の十津川警部。どうやら僕を犯罪者にしたいらしい」

神木余裕の笑みを浮かべる。

 

「で、そこのモデルさんは次の獲物ってわけか?」

「いい加減にしないと、名誉棄損で‥‥‥・」

 

「名誉‥‥・お前が」ギロッ

たじろぐ神木

「一昨日、日光男体山(なんたいざん)南側で、20代女性の腐乱遺体が発見された」

「!」

「昨日南房総市の大房(おおふさ)岬付近の丘で、女性の遺体が発見された。付近に免許証があり「佐伯祥子」24歳〇社所属の歌手。どうした顔色が真っ青だぞ」

 

神木の顔色が青ざめてる

 

「お前は、絶対分析されないようにしたつもりだろう。いや私達も最初はそう思った」

 

 

 

12月初め

 

「やはり、どうにも難しいですね」

「そうですか」

 

「ちょっと見せてください」

振り返ると、十津川の同年代の男が立っていた。

「どちら様で?」

「十津川警部、この方ならもしかしたら」

「合同研修で、警視庁に来ている京都府警科捜研所長の日野です」

「日野さんは文書復元の第一人者ですよ」

「可能ですか?」

「一度見せてください」

 

 

20分後

「可能だと思います。2か月前京都で同じ機種の奴ですが、同程度の破壊のを復元成功しました」

「助かります。よろしくお願いします。京都府警の方には、刑事部長に話を通してもらいます」

 

 

「悪い事は出来ないもんだなあ神木」

「け、刑事さん」

モデルの女性が怯えている。

「君は直ぐに帰りなさい。そしてスマホなどは新しく再契約するんだ。そしてしばらくは自宅じゃなくホテルにでも泊まりなさい」

女性は慌てて帰って行った。

 

「お前の罪は必ず暴き、刑務所にぶち込んでやる。首洗って待っていろ。邪魔したな」

立ち去ろうとした十津川だが、振り返り、

「せっかくの娑婆での最後の晩餐だ。せいぜい楽しんでおけ」

神木は茫然として十津川を見ている。十津川は、

 

「店内をお騒がせしたお詫びです」

と会計係に、2万円押し付けると颯爽と店を出て行った。

 

で、十津川の後ろ姿に熱い視線を送っている美少女二人

同じ店に居た、寿みなみと不知火フリルだ。

 

「かっこええわあ、刑事ドラマみたいで」

「多分また視力が増えそう」

 

 

 

 

 

12月20日

 

午前中晴 昼過ぎから曇りになり、日差しが雲に隠れる。

 

動き無し

 

 

12月21日

 

一日中曇り 

 

 

動き無し

 

 

12月22日

 

明け方パトカーの緊急サイレン。どうやら飲酒運転の検問を突破した車がいるらしい。程なくゴミステーションに突っ込み逮捕。

 

天気は曇ったり、小雨の繰り返し。午後6時ごろより雷雨。京浜東北線が落雷により2時間不通。

 

動き無し

 

12月23日

 

 

今日未明に都心で初雪、奥多摩で10センチ 八王子で5センチの積雪在り。交通には若干の乱れあるも、大きな被害なし。

 

昼過ぎには天気回復して晴れ間あり。

 

 

「こちら亀井です。神木に動きありません」

「外出もか?」

「食事も配達に頼っていますね。配達員も監視していますが、怪しい動き有りません」

 

 

「小西です。ニノは今日も、ダンス教室の仕事の後は、スーパーで買い物をして帰りました」

「昨日と同じか」

「スーパー出口付近で、レシートを落としたので回収しました」

「よくやった」

「レシートは、所轄に頼んで警視庁に送ってもらいました」

 

 

 

12月24日

 

 朝から雨

 

午後3時ごろ本多課長から電話

 

「佐伯祥子が失踪する寸前、神木輝との接触があった事が判明した」

「本当ですか」

「それに彼女の運転免許証から、第三者の指紋が検出され、簡易鑑定で神木のである可能性が高い。

明日本鑑定を行い、恐らく26日の朝一で、佐伯祥子に対する死体遺棄罪で逮捕状が出るように準備している。それと神木を狙っている反社が、ヒットマンを放った様だ

警戒してくれ」

 

 関係は無いだろうが、黒川あかねが事務所から独立したらしい。あの会社は、先月末社長が会社の金を私的に流用していた事が判明し、他にも主要芸能人が、何人も退所している。早晩倒産すると思われる。

 

 

24日午後8時

 

 

「日下です。神木動きます」

「こちら十津川了解。交通手段は?」

「徒歩で、赤船岩淵駅に向かっています」

(地下鉄に乗るのか、それともその周辺に飯でも食べに行くのか?)

 

 

神木は赤船岩淵駅から、南北線に乗車したとの報告を受けた。

 

20分後

 

「神木、後楽園駅で降ります」

「了解」

後楽園駅は、丸ノ内線の他に接続している春日駅から、都営三田線、大江戸線と4つの路線に接続している。

神木は三田線に乗車した様だ。

「神木、茅場町駅で降りました。日比谷線へのホームに向かっています」

「了解、こちらをかく乱しようとしているのだろう」

 

神木は、中目黒方面行に乗り二つ先の、築地で降り接続している新富町駅から有楽町線の、新木場駅行に乗り込んだ。

 

「警部我々をからかって遊んでいるのかもしれませんね」

「カメさんの言う通りかもね」

神木は、一駅先の月島で降り、今度は都営大江戸線外回りに乗り換えた。

「神木大門で降り、都営浅草線のホームに向かっています」

「了解」

神木は、次は五反田駅で降りた。

 

「あそこは地下鉄の接続は無いですね」

「そうだ。山手線と東急池上線で地下鉄は無い」

 

「神木山手線外回りに乗ります」

 

神木は3つ先の渋谷で降り今度は半蔵門線に乗り換え、青山一丁目で再び、大江戸線外回りに乗り換えた。

「新宿で駅の外に出ます」

 

 

神木の背後を数人の刑事が追跡している。神木が横断歩道を渡り終える寸前、

 

「きゃー」

見ると、女性が突き飛ばされ転倒している。どうやらひったくりの様だ。

 

ひったくり犯は、逃げようとしたが日下と三田村により取り押さえられた。

「強盗傷害未遂で現行犯逮捕! 12月24日午後9時40分」

 

「神木が居ません!」

「しまった」

 

「神木に逃げられた?」

「申し訳ありません」

「そういう事情なら仕方ない。女性の負傷具合は?」

「骨折はしていないと思いますが、一応救急車を要請しました」

「了解、所轄に応援を要請するから、周囲の宿泊施設や、ネットカフェを調べてくれ」

 

 

 

 

そしてついに運命の日を迎える。

 




 十津川警部が、外道の黒幕を脅しに行くシーンは、ドラマでも何回か有りました。
日野さんは、『科捜研の女』の所長の人です。榊マリコさん(沢口さん)の上司ですね。

花野 菫は、『ちはやふる』の主要人物で、フリル……綾瀬千早の後輩です。声は重曹ちゃんにそっくりですw。

第3話は午後7時に投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。