推しの子+西村京太郎 十津川警部(渡瀬恒彦版)VSカミキヒカル   作:宇宙とまと

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 先日投稿した作品の、IF展開です。


1  調子に乗って過激なシーンを入れてしまったので、(性的では無い)12歳以下の方の        閲覧はご遠慮ください。
2  結末が違います。
3  神木は真正の クズです。(原作に忠実w)
4  神木のオリジナル設定あり

ピクシブにも投稿


星野アクアの生還 前編

 

 

「星野アクア君、君以外に弱いねがっかりだよ」

「くっ!」

「まあ撮影機材を、複数用意した事は賢明だね。僕だってそうするさ」

既にすべての撮影機材が破壊されるか、日本海に投げ込まれた。

「なるほどこのナイフは、中々考えたね。この偽ナイフで挑発して、僕に君を殺させるつもりだったね?」

「そうだ。殺人の隠蔽は簡単じゃない。お前がぼろを出す可能性に賭けた」

「確かに殺人となれば、動揺して物証を残したかもしれないね」

これは神木にとって本心だった。地獄の傀儡子高遠みたいに、多くの人を操り、時には殺させて来た。無論戯れに自分で手を下した事が無いわけではない。

だが、それらは少数であり、逆に言えば殺人に慣れているわけではない。

 

「さて、アクア君犯罪者にとって、最も重要な物は何だと思う?」

「金や地位への欲望に、犯罪に必要な財力じゃ」

「まあそれらも必要だね。野心や征服欲も必要だけど、一番必要なのは健康だよ」

「ふざけているのか」

「おいおい、病気になったら何もできないよ。常に健康に留意し、暴飲暴食は避ける」

「確かにな」

 

「さて、アクア君に残念なお知らせだよ」

「何の事だ?」

「君の元恋人の、黒川あかねさん彼女は、とても優秀だね」

「それがどうした」

「君が僕への復讐に利用したくなるのも判るよ」

「何が言いたい」

「でも僕は彼女にそれほどの脅威は感じていない。だって彼女は優秀でも、刑事や探偵としての経験が全く無いじゃないか。むしろ僕を追い詰めて来たのは、警視庁の十津川警部と、その部下たちだ。十津川警部はともかく、部下の刑事達は個人としては、黒川あかねに劣るかもしれない。が、いくつかの偶然が作用したとは言え、地道に操作を行い、その結果僕は追い詰められているという訳さ」

 

一人の天才より、10人の凡人の集団の方が。勝る事も有ると言う事だ。

 

「もう海外に出国するだけだったんだけどね。松本市の手癖の悪い飼い犬と、十津川警部達によって、どうやら試合終了も近い。が、最後に君たちに一泡吹かせようとしたが、

それも失敗した様だ」

(多分あかねが、変装して防刃ベストを着用して囮に)

「と、黒川あかねはそう思っているだろうね」

「何ッ」

「彼女は僕と新野冬子を徹底的に、分析したんだろうね。しかし、彼女は学校秀才が陥り易い陥穽(罠)に落ちている」

神木は、袋から分厚いファイルを広げアクアに見せた。

それは、アクアや、ルビー、有馬かな、さらにあかねやMEMの行動や性格を、徹底的に分析した資料だ。

 

「自分が出来ると言う事は、すなわち相手にも同じ事が可能だと言う事に気付いていない。彼女が探偵か刑事になり、5年経験を積めば真に優秀な探偵になれただろうねえ」

 

「ま、まさか」

「気付いた様だね。そう新野は時間稼ぎ用のダミーだ」

「早く知らせないと」

「無駄だよ、もう通信手段は断った。君がここから離れようとしたら殺す。いや、どっちにしても殺すが。さあ一足先に、天国のアイの元に行け。数時間以内に、ルビーとも再会できるよ」

 

アクア必死に抵抗しようとするが、

「さよなら星野アクア」

が、その時強力な懐中電灯の光が向けられた。

 

 

何ッ!」

「警察だ! そこで何をしている!」

(馬鹿な、こんな早く手配されたのか! 十津川警部ここまでやるとは)

 

 神木は反射的に、背後の森の中に逃げた。

 

「待てっ!」

数秒遅れて、アクアも神木を追い森に飛び込む。

 

 

 

 20秒後 警官がアクアの持っていたナイフを拾うが、偽ナイフだと判明した。

 

 

 3分ほど走って、背後の日本海を見た神木は己の失敗を悟った。先ほど前見えた色は、海の黒の他には星空の白色と、漁船の灯りだけだったが、そこに一つ赤色が増えていた。

 

(漁船が一隻炎上している)

加賀市か、金沢港か隣接している、福井県の三国漁港辺りの漁船が、何らかの原因で火災を起こしたのだろう。どうやら他の漁船が、船員を救助している様だ。恐らく火災を見た住民が、110番に通報し加賀市か、南部の大聖寺辺りの警官が、目視で確認に来たのだろう。

(多分4人の内、警官は2名で残りは通報した住民かもしれない。もしくは漁協関係者か。よく考えたらいくら何でも、こんな早く十津川警部達が、ここに辿り着く筈が無い)

少なくとも明日の午前中だと何度も計算したはずだ。アクアと刺し違える時間は十分にある。そうすれば彼の周囲の人間は、何人かはアクア君の後を追うかもしれない。『価値ある命を絶ち、自分の命の重みを感じる』快楽殺人をやって来た、神木にとってそうなれば、最後に大戦果を挙げる事になる筈だった。

 

「が、これでは富士川で水鳥の羽音に恐れおののいて、逃げ出した平家の公達と,

何も違わないじゃないか」

これでは黒川あかねを笑えないぞと、自嘲気味に笑う。この暗さではアクアを探すのは難しい。

 

 

「せめてルビーだけでも……さて気付けるかな黒川あかね」

いや、実務経験が無い言わば三国志で言う馬謖に似ている、彼女では気付かないだろう。十津川省三警部、数々の難事件を解決して来た、名警部が気付き得るかどうか。そして対処する時間が有るかどうか?アイを超えつつある、星野ルビーの命運は一人の刑事に託された。

 

 

で、それから2時間後

 

 

 

星野ルビーは、十津川警部の連絡を受けた、小西、山下の両刑事の活躍ですんでの所で助けられた。

 

 

 

警視庁

 

 

「ええっ、あかねちゃんが私に変装して刺されるつもりだった?」

「あんた、何考えてるのよ! 下手すりゃ死んでいたのよ!」

「大丈夫だよ。西本刑事がニノさんの顔面に、タックル喰らわせたから」(そこまではやって無いですw)

 

 

「そういえば、アクたんは何処に?」

「あのスケコマシ三太夫は、妹と私達がピンチの時どこに居るのよ」

「図書館で受験勉強するって言ってたけど。まさかあかねちゃん、お兄ちゃんに言われて私の身代わりに」

(もしそうだったら、お兄ちゃんを今度は絶対に許さない)

「違うよ」

「本当に」

「アクア君には一切知らせてないよ。アクア君なら絶対に反対するから」

「そりゃそうでしょうよ」

「ねえ、まさかアクたん……その神木って人の所に行ってるんじゃ。まさかルビーちゃんの為に、刺し違えるとか」

「!」

「お兄ちゃんまでいなくなったら私……もう」

「あのアンポンタン! そうなったらルビーがどうなるか考えなさいよ!」

「そんな地獄耐えられないよ」

 

 

 

「お兄ちゃんを助けに行こう」

ルビーは決意を込めた表情で、みんなを見る

「ま、しょうが無いわね」

「うん」

MEMちょは何か調べている。

 

「ルビーちゃんはここに残って」

「嫌だ!」

「でも、未だ神木の刺客がいるかもしれないよ!」

「あかねちゃんだったら、そう言われて素直に残るの?」

 

「判った。でも決して現地では一人にならない事。いいわね?」

 

「でも、神木は何処にいるんだろうあかねちゃん」

「ララライの金田一さんに聞いた事が有るんだけど、神木家は別荘をいくつか持っているんだけど、その一つが東伊豆にあるみたいなの。神木の実家は小田原だから」

「じゃあ東伊豆に、別荘が有ってもおかしくないね」

最終の三島行『こだま』に乗れば、今日中に熱海には行ける。

「あっでも、ここじゃ無さそう」

「えっ、違うの」

「先月の終わりに、伊豆半島に台風が上陸したんだけど」

「遅い上陸記録の、鯛記録だって言ってたっけ」

 

刺身にするんかい。

 

台風は上陸4時間後に温帯低気圧になったが、大雨被害が伊豆半島や甲信越で発生した。

「別荘に行く道は、まだ復旧工事中みたいで、12月末にやっと開通するみたい」

「じゃあそこじゃ無さそうね」

 

「有ったよ、これ見て!」

そこには、週刊誌の神木輝に対するインタビュー記事で、日付は2年前だ。

「この人が、アクたんとルビーちゃんを苦しめてる悪い人だよね」

「うんっ」

「記事によると、加賀市……石川県南西部の、温泉で有名な町ね」

「そこの海沿いの、森の近くに別荘が有るみたいね」

「でも、何で石川県の南西部に、別荘が有るのめむちゃん?」

「記事によると、神木のご先祖は大聖寺藩の関係者?」

「どういう事? 石川県は、全部加賀前田家100万石じゃなかったっけ?(含む富山県全域)」

とかなが、歴史の授業を思い出している。

 

「ちょっと待って」

あかねがスマホで検索している。

「ええと、1639年に加賀藩2代目藩主が、隠居する際に三男に、7万石を分与して大聖寺藩が作られたみたい」

 

あかねによると、北国街道(現在の国道8号線)の宿場町として、昭和30年代までは、石川県南部の中心として、栄えていたらしい。ちなみに現在の加賀温泉駅の周辺は、戦前まではほとんど畑や田んぼだったらしい。

 

が、1970年に作見駅が、加賀温泉駅に改称され、特急の雷鳥としらさぎの停車駅が、大聖寺駅から加賀温泉駅に変わると、加賀市の中心も移りやや寂れてしまったらしい。(市役所は今でも大聖寺駅前にある)

 

 

神木家の先祖は、素の大聖寺藩の重臣の家柄で、所領は600石。ちょうど別荘が有る辺りが所領だったらしい。が、明治維新で藩が無くなると、東京に移住し昭和初期に小田原に移住したらしい。

 

 

 

 

 

「今ならうまく抜け出せそう」

「かなちゃん何かあったの?」

「さっき、アポ電強盗団の一味が逮捕されて、今バタバタしてるみたい」

「十津川警部の部下の刑事さんも、応援で何人か取り調べに行ったみたい」

そこであかねが手紙と、MEMが見つけた記事のアドレスを書いた紙を残し、石川県にアクアを助けに行った事を記した。

 

 

午後11時半

 

 

「彼女達が、いない?」

「どうやらこっそり抜け出して、石川県に向かったみたいです」

「やはり石川か」

「どういう事です警部?」

亀井の質問に対し、

 

「今新野冬子から聞き出した。神木輝の別荘が加賀市北西部の、海沿いの森の中にあるそうだ」

「と、言う事は柴山潟の近くですか。皮肉な話ですね」

 

直後、神木が昨晩の氷見行に乗車したとの情報が入った。

 

「ルビーさん達は?」

「恐らく午後東京駅11時発の、金沢行です。既に都内を出ていますね」

「明日の朝、金沢駅で保護してもらうように、石川県警に頼んでおきます」

 

本多課長によると、死体遺棄での逮捕状は午前4時には出るそうだ。それを受け取り朝一番の新幹線で、十津川達も現地に向かう事になった。

 

ヘリを使う事も考えたが、低気圧の影響で途中の山梨や長野や岐阜上空は、雷雨になっており、ヘリの使用は困難だったので断念した。

 

 

翌日午前7時半

 

 

 十津川、西本、村川の乗車した一番早い『かがやき』は、雨の長野盆地を疾走している。数キロ向こうに時折雷鳴も見えた。

 

「本日は、JR東日本をご利用いただき誠にありがとうございます。当列車は後5分で長野に止まります。お出口は左側です。長野を出ますと次の停車駅は富山です」

 

周囲では、半分くらいの乗客が降りる準備をしている。その時十津川のスマホに着信が。

 

 

 

 

 数分後長野で下車する乗客の流れに逆らいながら、十津川警部が戻って来た。

 

「どうしたんですか警部?」

「一杯食わされたよ」

「どういうことです」

「ルビーさん達だけど、全員一つ手前の停留所の、津幡駅前で降りてしまったみたいだね」

 

 津幡は、金沢と富山との県境にある倶利伽羅峠(くりから)の中間にある町で、能登半島との交通の要衝として知られ、江戸時代は宿場町として栄えた。戦国時代は、あの上杉謙信が能登に出兵した際に、本陣を置いた事もある。

 

鉄道も金沢を出た、七尾線の列車は津幡まで、IRいしかわ鉄道(旧北陸本線)と並走し、津幡駅分岐してから能登半島に向かう。そこそこ需要も有るので、一部の首都圏と金沢を結ぶ高速バスは、津幡に止まる様だ。

 

 

「黒川あかねもなかなかやるね」

と苦笑する十津川。

 

津幡から鉄道に乗り換えれば、金沢までは20分足らず。そこから特急に乗れば加賀温泉までは20分程度で着く。普通電車でも40分も有れば到着する。

「山狩りはもう始まったんでしょうか?」

「いや未だ山を包囲しているだけで、開始されていないみたいだ」

「何かあったんですか?」

「オスの成獣……クマが一頭加賀市北西の農家にある、倉庫に昨日の夕方から籠城しているみたいでね。住民への通知や、対応にかなり人出を取られているらしい」

「確か夜間の駆除は、法律で不可能だった……かなあ」

「神木を狙うヒットマンの捜索も必要なので、今隣接している小松市や、南の福井県警に要請し、あわら加賀市

 

 

 神木は、夜通しアクアを道連れにすべく探していたが、容易に見つかる筈も無く、そもそも未だ森に居るかも不明だ。

 

幸いまだ熊が片付いておらず、本格的な山狩りは始まっていない。しかし、外への通路はがっちりと押さえられているので、逃げ出すのは無理そうだ。

 

 

ルビー襲撃が完全に失敗した事は、携帯ラジオのニュースで知った。それに対してはさほど悔しさは無い。これも一種の頭脳ゲームだ。お嬢様の黒川あかねに見破られたのなら、悔しさも有るかもしれないが、捜査のプロである十津川警部に見破られたのなら、『有能な敵に対する敬意』の方が大きかった。

 

「無傷とはいえ、PTSDを発症するかもしれないね」

その場合芸能界引退や、長期休養も考えられそうなれば、敗北では無く引き分けとも取れる。

 

 

木々の隙間から日本海を見ると、炎上した漁船の残骸が未だ浮かんでいた。

 

「あれが無ければ今頃、ルビーやB小町に絶望を与えられたんだけどね」

 

過ぎた事を言ってもしょうがないんだけど‥‥‥・

 

(しかしこの妙な高揚感は何だろう)

 

市の警察から、今増援を集めている最中みたいだね」

 

 

あかね達は、津幡駅から金沢行の普通電車に乗り込み、まず金沢駅へ向かった。もしかしたら石川県警の刑事さんとか、警察官がホームにいるかと思ったけど、誰も居なかった。まだ朝早く、飲食店もまだやっていない店が多い時間帯なので、駅構内の売店で朝食と飲み物を購入した。飲食店だと、全員有名人なので騒ぎになる恐れがある。

 

これまでは、運よく他の客にばれずに済んだ。有名人が何人も早朝の金沢に居るとは思わなかったのだろう。

 

 

あかね達は、福井行の普通電車に乗り小松駅に向かった。

 

 

途中直ぐ近くを、北陸新幹線の高架橋が通り過ぎて行く。

 

「もう完成してるんだね」

「そりゃそうよ、来年3月16日に、福井県の敦賀市まで開業するんだし」

「もう、毎日試運転やってるよう」

 

 小松駅に到着すると、

『祝2024年3月16日 北陸新幹線敦賀延長開業』

と書かれた横断幕があり,PRも始まっている。新幹線乗り換え口の改札機械等も既に設置されていた。

 

 

ここで、一旦タクシーに乗り加賀市の境を超えて、加賀市の循環バス乗り場付近で降りた。

近くに何台かパトカーがいて、ぎょっとしたが、朝に起きた多重衝突事故の捜査をしている様で、安心してバスを待った。

 

 

バスが加賀市北西部に近付くと、何台かのパトカーとすれ違った。

「籠城していた熊捕獲されたみたいだから、そっちの対応していた警官も間もなく、山狩りに加わると思う」

 

バス停で降りると、警察の車両が

『指名手配犯を捜索しているので、近隣住民の方は外出を避け、建物に施錠してください』

と住民に家の外に出ない様に呼び掛けていた。

 

森への道は、多くが封鎖されていて規制線が張られていた。

 

 

「あっちの小道から近付けそう」

 

ルビー達は、車も通れないような狭い道を走り、森の入口に近付く。

 

 

「あそこ、森の中に入れそうかも?」

「警察の人がいないわね?」

 

規制線はあり、少しおかしく感じたが、とりあえずそこから森の中に入った。

 

 

 無論『神木の罠』では無く、つい1分前にはそこに警官2名がいた。

 

「熊だー」

と言う近隣住民の声に驚き、慌てて確認に行ってしまったのだ。そこに居たのは、やや衰弱した子熊だったのだが。(生け捕り・駆除されたクマの子供)

 

 

 

20分後

 

 

 ルビーはあかね・かなと逸れ一人になっていた。しかも、昨日の夜はあまり眠れず疲労も蓄積している。足が止まりそうになるが、その度に血まみれで倒れるアクアを想像して、無理矢理に奮い立たせていた。

 

(絶対にお兄ちゃんを、せんせを助けるんだ)

 

その時、木の陰に見覚えのある金髪が見えた。

「お兄ちゃん」

ルビーは笑顔で、走り出した。

 

が、そこで待っていたのは最悪の展開だった。

 

「神木!」

神木は、ルビーの姿を見て一瞬驚いたが、直ぐに戦闘態勢に入った。ルビーは、足物の枝を拾い、フェンシングみたいに突き出したが、あっさり躱されて、足払いをかけられ枝を落としてしまい、自身もあお向けに倒れた。

 

 

「こんなところに来ずに、東京でおとなしくしていれば程なく僕は逮捕されるか、遺体で発見されたと言うニュースを聞けて、何の問題も無く、アイドル活動を継続できただろうに」

「お兄ちゃんを見殺しにして、アイドル活動なんかできるはず無い」

「しかし君には、感謝してるよ。『重み殺人』を完遂させるチャンスをくれた事を。君一人では無いだろう? 君たちの価値ある命を奪う事で、僕の命の重みを感じる。さあアイの元に行こう」

 

「やっぱり、『アイの為にできる事を探しに行く』って」

「そう、君やアクア君を殺し、魂を天国に居るアイの元に送ると言う事だよ」

 

 

 

 神木はゆっくりとナイフを振りかざす。

 

「さらばだ、愛しいわが娘。僕もアクア君を道連れにしてアイの元に行こう」

「そんなことできるわけ無いよ。頭大丈夫?」

「どうしてそんな酷い事を言うのさ?」

「私とお兄ちゃんは、天国に行けるよ。でもあんたは、地獄行き! 天国のママに会える筈無いよ!」

神木は一瞬沈黙し、愉快そうに笑った。

「ははは、確かにその通りだ。一本取られたよ。さあ、そろそろ時間だ」

 

 

その時、ルビーの右手から足音が響き

 

「ルビー!」

 走って来たのは、アクアだ。夜通し神木を追っていたのだろう、足元がふらついている。

 

 

(ルビー何でこんな所に、僕を助ける為に……多分夜行バスで、‥‥‥ルビーは絶対に助ける! 命と引き換えにしても)

 

疲労困憊していると言っても、瞬時に状況を把握した。神木はもうルビーの上で、ナイフを構えている。

 

もう助けるには、アクア自身の肉体を使いルビーの盾になるしか無さそうだった。

 

(僕はここでルビーの盾になって、命を落とすだろう。そうなったら、ルビーは精神を病んだり、廃人になってしまうかもしれない。

でも、ここでルビーがあの男に殺されるより、遥かにましだ! その時は、有馬、MEMちょ、あかね‥‥‥ルビーの事を頼む)

 

アクアの目に強力な光が宿る! しかし……

 

(いい目だよ我が息子よ。でも、君の今いる場所からその疲労困憊している体力では、間に合わない。僕がルビーを殺す方が早い。そうしたら直ぐに君も殺し、天国のアイの元に魂を送るとしよう)

 

素早く距離や、アクアの疲労度から時間的に間に合わない事を計算した神木は、勝利を確信しにやりと笑う。

 

 

「アクア!」

「アクア君!」

 

 ルビーを探しに来た、かなとあかねは状況を見て表情を青ざめさせた。神木は今にもルビーに対し、ナイフを振り下ろそうとしている。アクアも間違いなく自分の命と引き換えに、ルビーを助けようとしていると気付いた。しかし相互の距離と、アクアの疲労度から間に合わないだろう。それどころか直後に、次はアクアも命を奪われる可能性が高い。

 

あかねは絶望した。

 

(やっぱりもっと強く説得して、ルビーちゃんは東京に残すべきだった)

 

 しかし、真横を見た瞬間あかねは息を呑んだ。かなの目に強い光が宿ったからだ。

 

 

 かなは、30秒前やや開けた場所に出た時、周囲の景色を一瞬だけ見た。

 

西の方が森の木々越しに見える、美しい日本海。反対側は、きれいな柴山潟と、加賀と福井県北部の県境にある美しい山並みや、加賀盆地の美しい田園や、市街地が眺望できた。

 

 

もしかすると、333年前 江戸から東北を通過し、その後日本海側を越後から越中、加賀、越前と南下した、俳人松尾芭蕉も同じ景色を眺めたのかもしれない。(奥の細道)

 

 

 

(『元10秒で泣ける天才子役』の最後の大舞台に、‥‥‥悪くは無いわね)

 

長年かなのファンをやって来たあかねは、万一の際はかなが、『生きて、ここを離れる気が無い』事を悟った。

(わたしは、眼前でアクアとルビーを失って、生きて行けるほど強くないわ)

(私もルビーちゃんと、アクア君を失って生きて行けない)

 

 

(それでも私は、ルビーとあー君を助けるのを諦めないっ! それでも、万一の際は私の全能力を使い、神木輝あんたを殺して、二人の仇は絶対に討つ!」

(私も二人を救うのを諦めない! でも万一の時は、神木輝……貴方の喉笛に喰らい付いてでも、命を貰うね!)

 

二人の目に、より強力な光が宿る。

 

 

万一の事態になっても、神木は死刑にできるだろう。

 

 

(でも、負けるつもりは無い)

 

だが、二人は丸腰でカミキはナイフを所持している。勝てたとしても、二人も致命傷を負うだろう。

(その時は二人であー君の元に、私の命は……あかね、あんたにあげる)

(うん……私の命は、かなちゃんの手で)

 

 

それに気付いた神木は歓喜に震えた。

 

 

(素晴らしい、ここにいる4人全員が、僕が奪うべき最後の価値ある命だ! 君たちの命を奪い、僕の命の重みを感じさせてくれ!。そうなれば、天国もにぎやかになり、アイも寂しくないだろう)

 

ルビーも、あかね達が来ている事に気付いた。

 

(ロリ先輩、お兄ちゃん、あかねちゃん、MEMちょ……みんな巻き込んでごめんね。ママ、今からそっちに行くね。私ママを超えたんだよ。一杯誉めて欲しいな)

 

(さあ目を閉じたまえ、我が愛娘。一思いに……)

(嫌よ、最後まであんたの顔を睨んでやる)

ルビーは挑発的に睨みつける。

(ははっ、流石にアイの娘だ。アイだったら同じ様にしただろうね)

(汚らわしい口で、ママの名前を口にするなっ!)

 

 

神木は動じず微笑を浮かべたまま、ルビーの左胸にナイフを振り下ろす。

 

 

(あっ、この前見た‥‥‥白川郷が舞台のアニメ見たいに、本当にゆっくりになるんだね。確かあのアニメって原作者が、白川郷を富山県だと勘違いしてたんだっけ)(岐阜県が正しい)

 

 

こんな時に詰まらない事を思い出した自分を、ルビーは心底愛おしく思った。

 

(ばいばい、せんせ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、その瞬間神木の背後にある小路から影が飛び出して来た。次の瞬間、ルビーに近付いて来ていたナイフが、横に消えた。

 

「ぐわっ!」

と神木がうめき声をあげて、右手を抑えた。同時にナイフがどこかの地面に落ちたのか、金属音が聞こえた。

 

「十津川ー!!」

神木はこぶしを握り、

「うぉおおおおおおお」

と獣のような咆哮を上げ、十津川に殴りかかったが、あっけなく躱されて、

 

逆に襟首を掴まれ、近くの古木の幹に追い込まれた。

 

 

バキッ、バキッ

十津川は神木の顔面に右ストレートを2発ぶち込み、更に腹パンチを3発ぶち込んだ。

「グエッ」

 

 

「あわわ、刑事さんやりすぎだよ」

(怖いけど……でもかっこいいよう)

 

ルビーちゃん、その刑事さん奥さんいますよw

 

ふと西の方を見ると、あかねは茫然としてこっちを見てるし、

(ロリ先輩、あかねちゃんに抱き着いて恐怖で震えてる。お子様みたいでかわいいなあ)

 

 

 

直後何人もの刑事や警官が走って来て、

 

「神木輝! 銃刀法違反及び殺人未遂の現行犯で逮捕する!」

西本刑事が、神木に手錠をかけ神木を立ち上がらせた。けがは大した事も無い様だ。かなり手加減していたのだろう。

 

「神木、これでお前も終わりだ。二度と塀の外には出られない」

神木は、不敵な笑みを浮かべながら連行されていく。

 

 

 

 

 

「ぜえはぁ、皆さんご無事でなりよりです」

県警の篠原警部も、息を切らせながら到着した。

 

 

ルビー達は、事情聴取の為に、加賀市警察署に移動した。

 

 

 

あかねは、

 

(あれっ何か忘れているような気が)

 

 

 

 

 

 

「みんなどこー、ここはどこー」

MEMちょは、絶賛道に迷っていたw

 

 

 

 

 

後編は今作成中です。

 

 十津川警部が、神木からルビーを助け、神木をタコ殴りにするシーンは、

西村京太郎サスペンス『十津川警部シリーズ37 特急あずさ殺人事件』のオマージュです。どんなシーンか見たい人は、急ぎティーバーで見てください。ほぼ終わりのシーンです。(見れるのは投稿日の23:59までです

 

 

 

 

 

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