推しの子+西村京太郎 十津川警部(渡瀬恒彦版)VSカミキヒカル 作:宇宙とまと
先日投稿した作品の、IF展開です。
1 調子に乗って過激なシーンを入れてしまったので、(性的では無い)12歳以下の方の 閲覧はご遠慮ください。
2 結末が違います。
3 神木は真正の クズです。(原作に忠実w)
4 神木のオリジナル設定あり
ピクシブにも投稿
「星野アクア君、君以外に弱いねがっかりだよ」
「くっ!」
「まあ撮影機材を、複数用意した事は賢明だね。僕だってそうするさ」
既にすべての撮影機材が破壊されるか、日本海に投げ込まれた。
「なるほどこのナイフは、中々考えたね。この偽ナイフで挑発して、僕に君を殺させるつもりだったね?」
「そうだ。殺人の隠蔽は簡単じゃない。お前がぼろを出す可能性に賭けた」
「確かに殺人となれば、動揺して物証を残したかもしれないね」
これは神木にとって本心だった。地獄の傀儡子高遠みたいに、多くの人を操り、時には殺させて来た。無論戯れに自分で手を下した事が無いわけではない。
だが、それらは少数であり、逆に言えば殺人に慣れているわけではない。
「さて、アクア君犯罪者にとって、最も重要な物は何だと思う?」
「金や地位への欲望に、犯罪に必要な財力じゃ」
「まあそれらも必要だね。野心や征服欲も必要だけど、一番必要なのは健康だよ」
「ふざけているのか」
「おいおい、病気になったら何もできないよ。常に健康に留意し、暴飲暴食は避ける」
「確かにな」
「さて、アクア君に残念なお知らせだよ」
「何の事だ?」
「君の元恋人の、黒川あかねさん彼女は、とても優秀だね」
「それがどうした」
「君が僕への復讐に利用したくなるのも判るよ」
「何が言いたい」
「でも僕は彼女にそれほどの脅威は感じていない。だって彼女は優秀でも、刑事や探偵としての経験が全く無いじゃないか。むしろ僕を追い詰めて来たのは、警視庁の十津川警部と、その部下たちだ。十津川警部はともかく、部下の刑事達は個人としては、黒川あかねに劣るかもしれない。が、いくつかの偶然が作用したとは言え、地道に操作を行い、その結果僕は追い詰められているという訳さ」
一人の天才より、10人の凡人の集団の方が。勝る事も有ると言う事だ。
「もう海外に出国するだけだったんだけどね。松本市の手癖の悪い飼い犬と、十津川警部達によって、どうやら試合終了も近い。が、最後に君たちに一泡吹かせようとしたが、
それも失敗した様だ」
(多分あかねが、変装して防刃ベストを着用して囮に)
「と、黒川あかねはそう思っているだろうね」
「何ッ」
「彼女は僕と新野冬子を徹底的に、分析したんだろうね。しかし、彼女は学校秀才が陥り易い陥穽(罠)に落ちている」
神木は、袋から分厚いファイルを広げアクアに見せた。
それは、アクアや、ルビー、有馬かな、さらにあかねやMEMの行動や性格を、徹底的に分析した資料だ。
「自分が出来ると言う事は、すなわち相手にも同じ事が可能だと言う事に気付いていない。彼女が探偵か刑事になり、5年経験を積めば真に優秀な探偵になれただろうねえ」
「ま、まさか」
「気付いた様だね。そう新野は時間稼ぎ用のダミーだ」
「早く知らせないと」
「無駄だよ、もう通信手段は断った。君がここから離れようとしたら殺す。いや、どっちにしても殺すが。さあ一足先に、天国のアイの元に行け。数時間以内に、ルビーとも再会できるよ」
アクア必死に抵抗しようとするが、
「さよなら星野アクア」
が、その時強力な懐中電灯の光が向けられた。
何ッ!」
「警察だ! そこで何をしている!」
(馬鹿な、こんな早く手配されたのか! 十津川警部ここまでやるとは)
神木は反射的に、背後の森の中に逃げた。
「待てっ!」
数秒遅れて、アクアも神木を追い森に飛び込む。
20秒後 警官がアクアの持っていたナイフを拾うが、偽ナイフだと判明した。
3分ほど走って、背後の日本海を見た神木は己の失敗を悟った。先ほど前見えた色は、海の黒の他には星空の白色と、漁船の灯りだけだったが、そこに一つ赤色が増えていた。
(漁船が一隻炎上している)
加賀市か、金沢港か隣接している、福井県の三国漁港辺りの漁船が、何らかの原因で火災を起こしたのだろう。どうやら他の漁船が、船員を救助している様だ。恐らく火災を見た住民が、110番に通報し加賀市か、南部の大聖寺辺りの警官が、目視で確認に来たのだろう。
(多分4人の内、警官は2名で残りは通報した住民かもしれない。もしくは漁協関係者か。よく考えたらいくら何でも、こんな早く十津川警部達が、ここに辿り着く筈が無い)
少なくとも明日の午前中だと何度も計算したはずだ。アクアと刺し違える時間は十分にある。そうすれば彼の周囲の人間は、何人かはアクア君の後を追うかもしれない。『価値ある命を絶ち、自分の命の重みを感じる』快楽殺人をやって来た、神木にとってそうなれば、最後に大戦果を挙げる事になる筈だった。
「が、これでは富士川で水鳥の羽音に恐れおののいて、逃げ出した平家の公達と,
何も違わないじゃないか」
これでは黒川あかねを笑えないぞと、自嘲気味に笑う。この暗さではアクアを探すのは難しい。
「せめてルビーだけでも……さて気付けるかな黒川あかね」
いや、実務経験が無い言わば三国志で言う馬謖に似ている、彼女では気付かないだろう。十津川省三警部、数々の難事件を解決して来た、名警部が気付き得るかどうか。そして対処する時間が有るかどうか?アイを超えつつある、星野ルビーの命運は一人の刑事に託された。
で、それから2時間後
星野ルビーは、十津川警部の連絡を受けた、小西、山下の両刑事の活躍ですんでの所で助けられた。
警視庁
「ええっ、あかねちゃんが私に変装して刺されるつもりだった?」
「あんた、何考えてるのよ! 下手すりゃ死んでいたのよ!」
「大丈夫だよ。西本刑事がニノさんの顔面に、タックル喰らわせたから」(そこまではやって無いですw)
「そういえば、アクたんは何処に?」
「あのスケコマシ三太夫は、妹と私達がピンチの時どこに居るのよ」
「図書館で受験勉強するって言ってたけど。まさかあかねちゃん、お兄ちゃんに言われて私の身代わりに」
(もしそうだったら、お兄ちゃんを今度は絶対に許さない)
「違うよ」
「本当に」
「アクア君には一切知らせてないよ。アクア君なら絶対に反対するから」
「そりゃそうでしょうよ」
「ねえ、まさかアクたん……その神木って人の所に行ってるんじゃ。まさかルビーちゃんの為に、刺し違えるとか」
「!」
「お兄ちゃんまでいなくなったら私……もう」
「あのアンポンタン! そうなったらルビーがどうなるか考えなさいよ!」
「そんな地獄耐えられないよ」
「お兄ちゃんを助けに行こう」
ルビーは決意を込めた表情で、みんなを見る
「ま、しょうが無いわね」
「うん」
MEMちょは何か調べている。
「ルビーちゃんはここに残って」
「嫌だ!」
「でも、未だ神木の刺客がいるかもしれないよ!」
「あかねちゃんだったら、そう言われて素直に残るの?」
「判った。でも決して現地では一人にならない事。いいわね?」
「でも、神木は何処にいるんだろうあかねちゃん」
「ララライの金田一さんに聞いた事が有るんだけど、神木家は別荘をいくつか持っているんだけど、その一つが東伊豆にあるみたいなの。神木の実家は小田原だから」
「じゃあ東伊豆に、別荘が有ってもおかしくないね」
最終の三島行『こだま』に乗れば、今日中に熱海には行ける。
「あっでも、ここじゃ無さそう」
「えっ、違うの」
「先月の終わりに、伊豆半島に台風が上陸したんだけど」
「遅い上陸記録の、鯛記録だって言ってたっけ」
刺身にするんかい。
台風は上陸4時間後に温帯低気圧になったが、大雨被害が伊豆半島や甲信越で発生した。
「別荘に行く道は、まだ復旧工事中みたいで、12月末にやっと開通するみたい」
「じゃあそこじゃ無さそうね」
「有ったよ、これ見て!」
そこには、週刊誌の神木輝に対するインタビュー記事で、日付は2年前だ。
「この人が、アクたんとルビーちゃんを苦しめてる悪い人だよね」
「うんっ」
「記事によると、加賀市……石川県南西部の、温泉で有名な町ね」
「そこの海沿いの、森の近くに別荘が有るみたいね」
「でも、何で石川県の南西部に、別荘が有るのめむちゃん?」
「記事によると、神木のご先祖は大聖寺藩の関係者?」
「どういう事? 石川県は、全部加賀前田家100万石じゃなかったっけ?(含む富山県全域)」
とかなが、歴史の授業を思い出している。
「ちょっと待って」
あかねがスマホで検索している。
「ええと、1639年に加賀藩2代目藩主が、隠居する際に三男に、7万石を分与して大聖寺藩が作られたみたい」
あかねによると、北国街道(現在の国道8号線)の宿場町として、昭和30年代までは、石川県南部の中心として、栄えていたらしい。ちなみに現在の加賀温泉駅の周辺は、戦前まではほとんど畑や田んぼだったらしい。
が、1970年に作見駅が、加賀温泉駅に改称され、特急の雷鳥としらさぎの停車駅が、大聖寺駅から加賀温泉駅に変わると、加賀市の中心も移りやや寂れてしまったらしい。(市役所は今でも大聖寺駅前にある)
神木家の先祖は、素の大聖寺藩の重臣の家柄で、所領は600石。ちょうど別荘が有る辺りが所領だったらしい。が、明治維新で藩が無くなると、東京に移住し昭和初期に小田原に移住したらしい。
「今ならうまく抜け出せそう」
「かなちゃん何かあったの?」
「さっき、アポ電強盗団の一味が逮捕されて、今バタバタしてるみたい」
「十津川警部の部下の刑事さんも、応援で何人か取り調べに行ったみたい」
そこであかねが手紙と、MEMが見つけた記事のアドレスを書いた紙を残し、石川県にアクアを助けに行った事を記した。
午後11時半
「彼女達が、いない?」
「どうやらこっそり抜け出して、石川県に向かったみたいです」
「やはり石川か」
「どういう事です警部?」
亀井の質問に対し、
「今新野冬子から聞き出した。神木輝の別荘が加賀市北西部の、海沿いの森の中にあるそうだ」
「と、言う事は柴山潟の近くですか。皮肉な話ですね」
直後、神木が昨晩の氷見行に乗車したとの情報が入った。
「ルビーさん達は?」
「恐らく午後東京駅11時発の、金沢行です。既に都内を出ていますね」
「明日の朝、金沢駅で保護してもらうように、石川県警に頼んでおきます」
本多課長によると、死体遺棄での逮捕状は午前4時には出るそうだ。それを受け取り朝一番の新幹線で、十津川達も現地に向かう事になった。
ヘリを使う事も考えたが、低気圧の影響で途中の山梨や長野や岐阜上空は、雷雨になっており、ヘリの使用は困難だったので断念した。
翌日午前7時半
十津川、西本、村川の乗車した一番早い『かがやき』は、雨の長野盆地を疾走している。数キロ向こうに時折雷鳴も見えた。
「本日は、JR東日本をご利用いただき誠にありがとうございます。当列車は後5分で長野に止まります。お出口は左側です。長野を出ますと次の停車駅は富山です」
周囲では、半分くらいの乗客が降りる準備をしている。その時十津川のスマホに着信が。
数分後長野で下車する乗客の流れに逆らいながら、十津川警部が戻って来た。
「どうしたんですか警部?」
「一杯食わされたよ」
「どういうことです」
「ルビーさん達だけど、全員一つ手前の停留所の、津幡駅前で降りてしまったみたいだね」
津幡は、金沢と富山との県境にある倶利伽羅峠(くりから)の中間にある町で、能登半島との交通の要衝として知られ、江戸時代は宿場町として栄えた。戦国時代は、あの上杉謙信が能登に出兵した際に、本陣を置いた事もある。
鉄道も金沢を出た、七尾線の列車は津幡まで、IRいしかわ鉄道(旧北陸本線)と並走し、津幡駅分岐してから能登半島に向かう。そこそこ需要も有るので、一部の首都圏と金沢を結ぶ高速バスは、津幡に止まる様だ。
「黒川あかねもなかなかやるね」
と苦笑する十津川。
津幡から鉄道に乗り換えれば、金沢までは20分足らず。そこから特急に乗れば加賀温泉までは20分程度で着く。普通電車でも40分も有れば到着する。
「山狩りはもう始まったんでしょうか?」
「いや未だ山を包囲しているだけで、開始されていないみたいだ」
「何かあったんですか?」
「オスの成獣……クマが一頭加賀市北西の農家にある、倉庫に昨日の夕方から籠城しているみたいでね。住民への通知や、対応にかなり人出を取られているらしい」
「確か夜間の駆除は、法律で不可能だった……かなあ」
「神木を狙うヒットマンの捜索も必要なので、今隣接している小松市や、南の福井県警に要請し、あわら加賀市
神木は、夜通しアクアを道連れにすべく探していたが、容易に見つかる筈も無く、そもそも未だ森に居るかも不明だ。
幸いまだ熊が片付いておらず、本格的な山狩りは始まっていない。しかし、外への通路はがっちりと押さえられているので、逃げ出すのは無理そうだ。
ルビー襲撃が完全に失敗した事は、携帯ラジオのニュースで知った。それに対してはさほど悔しさは無い。これも一種の頭脳ゲームだ。お嬢様の黒川あかねに見破られたのなら、悔しさも有るかもしれないが、捜査のプロである十津川警部に見破られたのなら、『有能な敵に対する敬意』の方が大きかった。
「無傷とはいえ、PTSDを発症するかもしれないね」
その場合芸能界引退や、長期休養も考えられそうなれば、敗北では無く引き分けとも取れる。
木々の隙間から日本海を見ると、炎上した漁船の残骸が未だ浮かんでいた。
「あれが無ければ今頃、ルビーやB小町に絶望を与えられたんだけどね」
過ぎた事を言ってもしょうがないんだけど‥‥‥・
(しかしこの妙な高揚感は何だろう)
市の警察から、今増援を集めている最中みたいだね」
あかね達は、津幡駅から金沢行の普通電車に乗り込み、まず金沢駅へ向かった。もしかしたら石川県警の刑事さんとか、警察官がホームにいるかと思ったけど、誰も居なかった。まだ朝早く、飲食店もまだやっていない店が多い時間帯なので、駅構内の売店で朝食と飲み物を購入した。飲食店だと、全員有名人なので騒ぎになる恐れがある。
これまでは、運よく他の客にばれずに済んだ。有名人が何人も早朝の金沢に居るとは思わなかったのだろう。
あかね達は、福井行の普通電車に乗り小松駅に向かった。
途中直ぐ近くを、北陸新幹線の高架橋が通り過ぎて行く。
「もう完成してるんだね」
「そりゃそうよ、来年3月16日に、福井県の敦賀市まで開業するんだし」
「もう、毎日試運転やってるよう」
小松駅に到着すると、
『祝2024年3月16日 北陸新幹線敦賀延長開業』
と書かれた横断幕があり,PRも始まっている。新幹線乗り換え口の改札機械等も既に設置されていた。
ここで、一旦タクシーに乗り加賀市の境を超えて、加賀市の循環バス乗り場付近で降りた。
近くに何台かパトカーがいて、ぎょっとしたが、朝に起きた多重衝突事故の捜査をしている様で、安心してバスを待った。
バスが加賀市北西部に近付くと、何台かのパトカーとすれ違った。
「籠城していた熊捕獲されたみたいだから、そっちの対応していた警官も間もなく、山狩りに加わると思う」
バス停で降りると、警察の車両が
『指名手配犯を捜索しているので、近隣住民の方は外出を避け、建物に施錠してください』
と住民に家の外に出ない様に呼び掛けていた。
森への道は、多くが封鎖されていて規制線が張られていた。
「あっちの小道から近付けそう」
ルビー達は、車も通れないような狭い道を走り、森の入口に近付く。
「あそこ、森の中に入れそうかも?」
「警察の人がいないわね?」
規制線はあり、少しおかしく感じたが、とりあえずそこから森の中に入った。
無論『神木の罠』では無く、つい1分前にはそこに警官2名がいた。
「熊だー」
と言う近隣住民の声に驚き、慌てて確認に行ってしまったのだ。そこに居たのは、やや衰弱した子熊だったのだが。(生け捕り・駆除されたクマの子供)
20分後
ルビーはあかね・かなと逸れ一人になっていた。しかも、昨日の夜はあまり眠れず疲労も蓄積している。足が止まりそうになるが、その度に血まみれで倒れるアクアを想像して、無理矢理に奮い立たせていた。
(絶対にお兄ちゃんを、せんせを助けるんだ)
その時、木の陰に見覚えのある金髪が見えた。
「お兄ちゃん」
ルビーは笑顔で、走り出した。
が、そこで待っていたのは最悪の展開だった。
「神木!」
神木は、ルビーの姿を見て一瞬驚いたが、直ぐに戦闘態勢に入った。ルビーは、足物の枝を拾い、フェンシングみたいに突き出したが、あっさり躱されて、足払いをかけられ枝を落としてしまい、自身もあお向けに倒れた。
「こんなところに来ずに、東京でおとなしくしていれば程なく僕は逮捕されるか、遺体で発見されたと言うニュースを聞けて、何の問題も無く、アイドル活動を継続できただろうに」
「お兄ちゃんを見殺しにして、アイドル活動なんかできるはず無い」
「しかし君には、感謝してるよ。『重み殺人』を完遂させるチャンスをくれた事を。君一人では無いだろう? 君たちの価値ある命を奪う事で、僕の命の重みを感じる。さあアイの元に行こう」
「やっぱり、『アイの為にできる事を探しに行く』って」
「そう、君やアクア君を殺し、魂を天国に居るアイの元に送ると言う事だよ」
神木はゆっくりとナイフを振りかざす。
「さらばだ、愛しいわが娘。僕もアクア君を道連れにしてアイの元に行こう」
「そんなことできるわけ無いよ。頭大丈夫?」
「どうしてそんな酷い事を言うのさ?」
「私とお兄ちゃんは、天国に行けるよ。でもあんたは、地獄行き! 天国のママに会える筈無いよ!」
神木は一瞬沈黙し、愉快そうに笑った。
「ははは、確かにその通りだ。一本取られたよ。さあ、そろそろ時間だ」
その時、ルビーの右手から足音が響き
「ルビー!」
走って来たのは、アクアだ。夜通し神木を追っていたのだろう、足元がふらついている。
(ルビー何でこんな所に、僕を助ける為に……多分夜行バスで、‥‥‥ルビーは絶対に助ける! 命と引き換えにしても)
疲労困憊していると言っても、瞬時に状況を把握した。神木はもうルビーの上で、ナイフを構えている。
もう助けるには、アクア自身の肉体を使いルビーの盾になるしか無さそうだった。
(僕はここでルビーの盾になって、命を落とすだろう。そうなったら、ルビーは精神を病んだり、廃人になってしまうかもしれない。
でも、ここでルビーがあの男に殺されるより、遥かにましだ! その時は、有馬、MEMちょ、あかね‥‥‥ルビーの事を頼む)
アクアの目に強力な光が宿る! しかし……
(いい目だよ我が息子よ。でも、君の今いる場所からその疲労困憊している体力では、間に合わない。僕がルビーを殺す方が早い。そうしたら直ぐに君も殺し、天国のアイの元に魂を送るとしよう)
素早く距離や、アクアの疲労度から時間的に間に合わない事を計算した神木は、勝利を確信しにやりと笑う。
「アクア!」
「アクア君!」
ルビーを探しに来た、かなとあかねは状況を見て表情を青ざめさせた。神木は今にもルビーに対し、ナイフを振り下ろそうとしている。アクアも間違いなく自分の命と引き換えに、ルビーを助けようとしていると気付いた。しかし相互の距離と、アクアの疲労度から間に合わないだろう。それどころか直後に、次はアクアも命を奪われる可能性が高い。
あかねは絶望した。
(やっぱりもっと強く説得して、ルビーちゃんは東京に残すべきだった)
しかし、真横を見た瞬間あかねは息を呑んだ。かなの目に強い光が宿ったからだ。
かなは、30秒前やや開けた場所に出た時、周囲の景色を一瞬だけ見た。
西の方が森の木々越しに見える、美しい日本海。反対側は、きれいな柴山潟と、加賀と福井県北部の県境にある美しい山並みや、加賀盆地の美しい田園や、市街地が眺望できた。
もしかすると、333年前 江戸から東北を通過し、その後日本海側を越後から越中、加賀、越前と南下した、俳人松尾芭蕉も同じ景色を眺めたのかもしれない。(奥の細道)
(『元10秒で泣ける天才子役』の最後の大舞台に、‥‥‥悪くは無いわね)
長年かなのファンをやって来たあかねは、万一の際はかなが、『生きて、ここを離れる気が無い』事を悟った。
(わたしは、眼前でアクアとルビーを失って、生きて行けるほど強くないわ)
(私もルビーちゃんと、アクア君を失って生きて行けない)
(それでも私は、ルビーとあー君を助けるのを諦めないっ! それでも、万一の際は私の全能力を使い、神木輝あんたを殺して、二人の仇は絶対に討つ!」
(私も二人を救うのを諦めない! でも万一の時は、神木輝……貴方の喉笛に喰らい付いてでも、命を貰うね!)
二人の目に、より強力な光が宿る。
万一の事態になっても、神木は死刑にできるだろう。
(でも、負けるつもりは無い)
だが、二人は丸腰でカミキはナイフを所持している。勝てたとしても、二人も致命傷を負うだろう。
(その時は二人であー君の元に、私の命は……あかね、あんたにあげる)
(うん……私の命は、かなちゃんの手で)
それに気付いた神木は歓喜に震えた。
(素晴らしい、ここにいる4人全員が、僕が奪うべき最後の価値ある命だ! 君たちの命を奪い、僕の命の重みを感じさせてくれ!。そうなれば、天国もにぎやかになり、アイも寂しくないだろう)
ルビーも、あかね達が来ている事に気付いた。
(ロリ先輩、お兄ちゃん、あかねちゃん、MEMちょ……みんな巻き込んでごめんね。ママ、今からそっちに行くね。私ママを超えたんだよ。一杯誉めて欲しいな)
(さあ目を閉じたまえ、我が愛娘。一思いに……)
(嫌よ、最後まであんたの顔を睨んでやる)
ルビーは挑発的に睨みつける。
(ははっ、流石にアイの娘だ。アイだったら同じ様にしただろうね)
(汚らわしい口で、ママの名前を口にするなっ!)
神木は動じず微笑を浮かべたまま、ルビーの左胸にナイフを振り下ろす。
(あっ、この前見た‥‥‥白川郷が舞台のアニメ見たいに、本当にゆっくりになるんだね。確かあのアニメって原作者が、白川郷を富山県だと勘違いしてたんだっけ)(岐阜県が正しい)
こんな時に詰まらない事を思い出した自分を、ルビーは心底愛おしく思った。
(ばいばい、せんせ)
が、その瞬間神木の背後にある小路から影が飛び出して来た。次の瞬間、ルビーに近付いて来ていたナイフが、横に消えた。
「ぐわっ!」
と神木がうめき声をあげて、右手を抑えた。同時にナイフがどこかの地面に落ちたのか、金属音が聞こえた。
「十津川ー!!」
神木はこぶしを握り、
「うぉおおおおおおお」
と獣のような咆哮を上げ、十津川に殴りかかったが、あっけなく躱されて、
逆に襟首を掴まれ、近くの古木の幹に追い込まれた。
バキッ、バキッ
十津川は神木の顔面に右ストレートを2発ぶち込み、更に腹パンチを3発ぶち込んだ。
「グエッ」
「あわわ、刑事さんやりすぎだよ」
(怖いけど……でもかっこいいよう)
ルビーちゃん、その刑事さん奥さんいますよw
ふと西の方を見ると、あかねは茫然としてこっちを見てるし、
(ロリ先輩、あかねちゃんに抱き着いて恐怖で震えてる。お子様みたいでかわいいなあ)
直後何人もの刑事や警官が走って来て、
「神木輝! 銃刀法違反及び殺人未遂の現行犯で逮捕する!」
西本刑事が、神木に手錠をかけ神木を立ち上がらせた。けがは大した事も無い様だ。かなり手加減していたのだろう。
「神木、これでお前も終わりだ。二度と塀の外には出られない」
神木は、不敵な笑みを浮かべながら連行されていく。
「ぜえはぁ、皆さんご無事でなりよりです」
県警の篠原警部も、息を切らせながら到着した。
ルビー達は、事情聴取の為に、加賀市警察署に移動した。
あかねは、
(あれっ何か忘れているような気が)
「みんなどこー、ここはどこー」
MEMちょは、絶賛道に迷っていたw
後編は今作成中です。
十津川警部が、神木からルビーを助け、神木をタコ殴りにするシーンは、
西村京太郎サスペンス『十津川警部シリーズ37 特急あずさ殺人事件』のオマージュです。どんなシーンか見たい人は、急ぎティーバーで見てください。ほぼ終わりのシーンです。(見れるのは投稿日の23:59までです