魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女 作:陽炎=蜻蛉
第6話「新生」
「カスミ専用のデバイス?」
「うん、はやてさんがケーキ奢ってあげるから作らせてほしいって。」
ある日の夕方、カスミはいつも通り、ヴィヴィオやリオ達と一緒に図書館に行こうとしたところ、はやてからの連絡を受け、ひと足先に帰宅、母であるなのはに報告を行なっていた。
「もう…はやてちゃんたら。」
なのはにしても、2人とももうすぐ4年生に進級する。そろそろ専用デバイスを、とは考えていたが、まさか親友が甘いもので愛娘を釣るのが先とは思いもしなかった。出張中のフェイトが家にいたら、一体どっちについたのだろう。
「魔力運用についても授業で大体のことはわかってきたんだ。というわけで、折角のご厚意に預かりたいんだけど…」
「…高いケーキ食べるのが第一目的じゃなくて?」
「め、滅相もございません!」
ジト目での質問に対し、目が泳いでいる愛娘にこれは図星だなと噴きそうになりつつも、ちょっと待っててね、とはやてに電話を入れることにした。
「またカスミをケーキで釣るなんて…はやてちゃんも少し頭冷やそうか?」
『いやいやいや!今回ばかりは私じゃないって!元々はカスミからの相談なんよ? 自分の力を魔力運用出来るようになりたいって。』
「本当に?」
『出自が分かったのもあるけど、あの子は自分のことをもっと知りたいと思ってるだけやないかな。』
はやての言うことも的を射ているだろう。実際に出会ってから4年近くの月日が経ったが、手嶋佳純としての出自こそ判明したものの、カスミが保有する力そのものの秘密は分かっていない。尤も、平和な時代においては、それを披露する機会も無いのだが。
「わかった、あとでまたかけ直すね。」
『あいよ!こっちはいつでも待ってるから、来る日が決まったら教えてな!』
はやてとの通話を終えると、なのははリビングに戻ってきた。
「カスミ、デバイスを持つってことは、変身しなくても、ヴィヴィオと同じように大人モードになれるってことは分かるよね?」
「うん、安定して大人モードを維持できたら、もっと練習できると思うの。基礎的な力も上がってくると思うし。」
「あくまで、練習が目的?」
「もちろんです。」
即答する娘に一息吐くと、なのはは条件を提示した。
「じゃあ、ママと約束できるなら、はやてちゃんのところに連れてってあげる。」
「約束?」
なのはからの約束は2つ。
①大人モードは練習のために使用すること
②いたずらや遊びでの使用は禁止
「分かった。元々練習のためだけに使うつもりだったし、必ず守ります。」
「うん、じゃあ指切りね。もし破ったら…分かってるね?」
「は、はい…」
約束を破ったらどうなるか、その怖さを身に沁みて理解しているカスミは、少し震えつつも小指を出した。
「あ、ヴィヴィオには内緒ね?皆んなの前で専用のデバイスはまだいいかな、なんて言っちゃったから。」
「てことはやっぱり…ケーキに釣られたんだね?」
「うぅ…だってケーキ美味しいし。」
翌日、学校が終わった後、ヴィヴィオたちが練習に行っている間に、カスミはなのはの同伴の元、管理局を訪ねていた。
「直接会うのは久しぶりやね、カスミ。」
「ご無沙汰してます、はやてさん。今日は宜しくお願いします。」
「よし、ほんなら早速研究室へ案内するよ。」
ドアを開けると、技術部室長のマリエルが迎えてくれた。
「カスミちゃん、久しぶり!大きくなったわね〜」
「こんにちは、マリーさん。私のデバイスはマリーさんたちが?」
「ええ、私がメインを担当するわ。ただその前に、色々とカスミちゃんの力を調べたいから、このトレーニングルームに入ってもらえるかしら?」
「はい、喜んで。」
トレーニングルームは広い空間が確保されており、なのは達が上から見守っているのが確認できる。すると、場内アナウンスのようにマリエルの声が流れた。
『カスミちゃん、今変身はできるかな?』
「やってみます。」
カスミは目を閉じると、過去の戦闘のイメージを行い、10秒ほどでドライバーとキーを生み出した。
『ジャンプ!オーソライズ!』
すると、カスミの真横に黄色のバッタが出現する。そのまま、カスミはキーを勢いよくベルトに差し込んだ。
「変身!」
【プログライズ!
飛び上がライズ!ライジングホッパー!
"A jump to the sky turns to a rider kick."】
瞬間、カスミの体は急激な成長と共に、黄色と黒の外装が纏われる。その両眼は綺麗な赤色に変化し、ヴィヴィオの聖王モードの時とはまた違う、一種の芸術品のような美麗さを醸し出していた。
「これがカスミの姿か…なのはちゃんはあの時一緒に戦ってたもんな?」
「うん、何度やられても、ヴィヴィオに突貫してたから気が気じゃなかったけどね。でも…あの時は本当に頼もしかったんだ。」
『カスミちゃん、今からチュートリアル用のデータを送信するから、少しずつ動きを増やせるかな?』
「大丈夫です!お願いします!」
そして、マリエル作成のデータロボットを相手に、カスミはその攻撃をアクロバティックに避けつつ、高い脚力を活かした動きで相手を翻弄していく。
(これなら…上々!)
上から振り下ろされる攻撃をハイジャンプで躱したカスミは、そのまま必殺技の体勢に入った。
『ライジングインパクト!』
「デヤアアアアアアッッ‼︎」
強烈な蹴りが炸裂し、ロボットは煙を上げながら機能を停止する。時間にして僅か2分と少々。しかし、その強さを証明するには十分だったようだ。
『お疲れ様!しっかりデータは取れたから、今日のとこれまでのものを合わせて、デバイスに組み込んでいくので宜しくね!』
「ありがとうございます!」
一礼したと同時に外装は消え、その姿も元のサイズへと戻る。どうやら制限時間があるようですね、とマリエルは話すが、なのはとはやては違和感を覚えていた。
とはいえ約束通り、ケーキをご馳走されると、カスミは嬉しそうに頬張っていた。甘いものは正義、これは佳純として生きていた頃から変わらない。
「あは…ケーキ…幸せです…」
「喜んでくれたなら何よりや。せやけど、カスミの力って結局どんな原理なんや?」
食べながら喋るのは行儀が悪いので、ケーキをしっかり飲み込んでからカスミは説明を始めた。
「えーと…簡単に言うと、想像したヒーローの能力を持った外装を纏えるんです。」
「それは…中々にチートやな。」
「ただ、今は3分しか維持できませんし、強力な形態をイメージすれば、更に時間が減っていきます。あの事件の時は無制限だったんですけど、だいぶ無茶しちゃったので。」
「成程…だからあの時はスムーズに姿を変えられて、今は3分経ったから変身が解けたんだね。」
なのはは聖王モードのヴィヴィオと激突した時のことを思い出していた。あの時カスミは様々な形態に姿を変えて戦っていたが、それには仕組みがあったというわけだ。
「それでな、今回のデバイスを作る上で、カスミからのリクエストは何かあるか?」
「出来れば…私のこれまでの経験値を活かせる機能を付けていただきたいです。あと、可愛いデザインにしてもらえたら嬉しいです。」
「了解や!ちょっと時間はかかるけど、皆んなで協力して作るから、少しだけ待っててな! なのはちゃんもそれでええな?」
「うん。宜しくね、はやてちゃん!」
ということで、デバイス作成をはやてに依頼してから約1ヶ月、その間ヴィヴィオは専用デバイスである愛機、セイクリッドハートを手にしたり、覇王流の継承者を名乗る少女、アインハルト・ストラトスに出会うなど、色々なことがあった。
本当は、進級日に姉妹一緒にセットアップした姿を母達にお披露目したいところだったがそれは間に合わず、はやてには謝罪された。
「ヴィヴィオ、こんな感じでいい?」
「OK!ママ、写真!早く早く〜!」
「にゃはは…2人とも、こういうの撮りたがってたもんね?」
「2人が…2人がまた大きくなっちゃった…」
カメラを構えたなのはの前でカッコよくポーズを決める姉妹。カスミも魔力を使わずとも大人モードとアーマー装着の再現自体は出来るので、何とかなった。尤も、フェイトは急に二人が大きくなったために困惑しながら泣いていたので、後で必死に慰めることにはなるのだが。
「はい、チーズ!」
『イェーイ‼︎』
そして、無事に前期試験も終わり、いよいよ試験休みを利用しての、4日間の異世界旅行が始まろうとしていた。
〜無人世界カルジーナ〜
「エリ兄!キャロ姉!」
「カスミ、久しぶり!」
「大きくなったね〜!」
カルジーナの住人兼管理者であるルーテシアとメガーヌに挨拶したあと、大好きな兄と姉に抱きつくカスミ。何しろエリオとキャロに直接会うのが1年ぶりともなれば甘えっ子モード発動も当然だろう。
「あ、キャロ姉よりちょっと大きくなったかな?」
「も、もうっ!すぐにまた追い抜いちゃうからねっ!」
背が少しだけ上回ったことに喜びつつも、
「僕たちはこの後訓練してから模擬戦やるから、良かったら観においでね。」
「うん!じゃあ師匠、皆んなで川行きましょ!」
「まあそう慌てるなって。前来た時、はしゃぎすぎて足攣ったんだから、少しは落ち着きな。」
「うぅ…それは言わないでください…」
赤面するカスミ、ヴィヴィオたちも思わず笑うが、すぐにカスミの手を引いてあげる。
「さ、カスミ!今度は私たちが。」
「先導してあげる!」
「あはは…お言葉に甘えて。」
「アインハルトさんも一緒に行きましょう!」
「は、はい…」
初めて会ってからそれほど日が経っていない中で迎えた今回の旅行。アインハルトにとっては、初等科組の勢いの良さに押されっぱなしであった。
「じゃ、まずは対岸まで泳ごっか!」
「賛成!」
とはいえ、一度泳いでしまえば自然に雰囲気に馴染むもの。元気よく泳ぎ、水中での体の使い方についてノーヴェ指導のもとで学び、そして極め付けは。
「回…転‼︎」
バッシャアッッッ‼︎
「すっごーい! 虹が出ちゃってましたよ!」
脱力した状態から加速し、最大の威力を発揮させるための練習、『水斬り』により、皆遊びの領域を超えて、有意義な練習時間を過ごすことが出来たのだった。
「今回はしゃいだのは、私じゃなくてヴィヴィオとアインハルトさんだったみたいですね…」
「ハハハ…面目ないです…」
「ち、ちょっと筋肉痛なだけ…です…」
お昼ご飯を食べて英気を養った後、子供たちは大人組が参加する模擬戦の見学を経て、各所に分かれていた。ヴィヴィオはアインハルトと一緒にミット打ちの練習に出かけ、カスミはというと、リオ、コロナと一緒に森林浴を楽しんでいた。魔法学院での学校生活を送る中で出会った2人は、今や姉妹にとってチームメイトにして大切な友達である。
「そういえばさ、カスミが前に話してた遥さんって、どんな人なの?」
「うーんとね…私が元々生きていた世界の親友、ってところかな。」
「それって…転生ってこと?」
「そうそう、私、元の世界では津波に呑まれて死んでるから…ってそんなに引かないでよ。」
あっけらかんと死の際の状況を話すカスミには流石の2人も驚いた。
「じゃあ…記憶を持った状態で、ミッドに流れ着いて…」
「うん、フェイトママが助けてくれて、以降は前に話した通りかな。で、遥とは色々な思い出があるんだけど…」
カスミは2人がついていけそうな話題、即ち特撮要素は除いて説明した。運動会、冬でのスキー、そしてタッグで挑んだダンス大会、幸いどれも2人が興味を惹くものであったようで、楽しそうに聞いてくれた。
「因みに私がダンスゲームが得意なのは、それが理由なんだ。踊ったり歌ったりするのが楽しいのが一番ではあるけどね。」
「なるほどな〜、カスミとゲームする時、いつもダンスバトルは負けちゃうから不思議に思ってたんだよ。」
「でも、今は離れ離れになっちゃったのは寂しくない?」
すると、カスミは空を見上げる。つられて2人も見上げると、綺麗な青色が広がっていた。
「そりゃ寂しいよ。でもね、生きている限り、私たちは空の下で繋がってると思うんだ。向こうの世界の空も綺麗だったのは、ちゃんと覚えてるから。」
すると、ちょっと疲れたからお昼寝するね、とカスミはすぐに眠ってしまった。
「相変わらず行動が早い…」
「でも、可愛い寝顔だよね。」
私たちも少し寝ようか、とお互い同意して、3人はお昼寝タイムに洒落込む。訓練を終えたスバル、ノーヴェ、ティアナが見つける頃には、3人ともスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
「全く…子どもってな元気なもんだ。」
「皆んな可愛い顔しちゃって….」
「起こすのもアレだし、おんぶしてあげようよ!」
スバルの提案に同意した3人は、それぞれを優しく背中に乗せると、ゆっくり歩いていく。カスミ達が起きる頃には、背負われていた恥ずかしさで赤面することになるのだが、それはまた別の話。
「さ、お楽しみはまだまだこれからよ!この後は天然温泉!」
訓練終了後、ルーテシアの案内で一同は温泉に入ることになった。すると、カスミはルーテシアに耳打ちする。
「ルーちゃん…ちょっと相談が…」
みんなに聞こえない程度の声で話しかける。
「え? なーんだ、それくらいならお茶の子さいさいよ。」
「えへへ、ありがと!」
「あれー?カスミ、ルールーと内緒話?」
「どんな話してたの〜?」
「ふふ、秘密!」
ということでやって来た天然温泉。ある程度皆んなでお湯にゆっくり浸かり雑談を楽しんでいた中で、カスミはタイミングを見計らい、ルーテシアに目配せして合図を送る。
(OK!行ってらっしゃい!)
瞬間、紫の光と共にカスミの姿が消えてしまった。
「ふぇっ⁉︎ カスミ⁉︎」
「安心して、カスミの希望であっちに行ってるだけだから。」
ヴィヴィオたちが驚く中、ルーテシアが指差す方向は男子用温泉、そちらでは丁度エリオがガリューと一緒に浸かっていた。
「ふー、疲れた体には本当良いな…」
訓練は大変だが、今後の自然保護区での活動に向けて、まだまだ鍛えていかなければならない。とはいえ、今は疲れを癒す時だ…などとのんびりしていたら、急に目の前に魔法陣が現れるのだからビックリである。
「えーりーにーいーーっ!」
「うわあっ!か、カスミ⁉︎」
恥も外見も何のその、タオル片手に兄に抱きついた。
「うわぁ…がっしりしてる…!筋肉凄い!」
「ちょ、ちょっと!ここ、男子用だよ⁉︎」
「私は10歳だから男湯に入れるも〜ん!ささ、一緒に浸かろ?」
「もう…相変わらずそういうの気にしないんだね…いいよ。」
一応、召喚魔法を使えば送り返せるが、折角来てくれた妹にその対応は可哀想なので、ここは一緒に入ることにした。
「はー…静かなお風呂場ってのもまた良いね…」
「そうだね、今回は僕以外みんな女の子だし。」
「あれ?そういえば、明日の試合、人数足りないよね?7対6になっちゃう。」
「なのはさんが助っ人を呼んだって。誰がくるかはお楽しみだけど、その人にカスミのデバイスも持ってきてもらうようにって聞いてるよ。」
「ホント⁉︎ じゃあ、私もついにセットアップ出来るんだね。楽しみだな〜!」
そうなれば人数は7対7、問題なく試合が出来、しかも新しい姿も披露できるとなれば、テンションは上がる一方だ。
「カスミは攻撃型だから、もしチームが分かれたら僕とぶつかるかもね?」
「誰が相手になっても全力で頑張るだけだよ。エリ兄でも、ヴィヴィオでも、ママたちでもね。」
「ハハ、その意気その意気。」
のんびりと温泉に浸かりながら雑談を楽しむ2人。すると、近くの女子風呂の方が急に騒がしくなった。
「なにかあったのかな?」
2人が上を見上げると、リオの叫び声と共に空高く打ち上げられるセインの姿が見えた。
「ああ…なるほど。」
「よかった、私こっちで。セイン、驚かすの好きだから。」
「あはは…そろそろ上がる?」
「うんっ!さ、浴衣浴衣〜♪」
「あ、カスミ!急いだら危ないーー」
勢いよく上がろうとしたカスミだが、濡れた地面に足を取られてしまう。
「あ、やばっ…」
しかし、すんでのところでエリオがお姫様抱っこの体勢で何とか体を支えた。
「危なかった…カスミ、慌てちゃダメだよ!」
「ご、ごめんなさい…」
いつも優しいエリオに強めに叱られ、思わず涙目になるカスミ。強く言いすぎたかと慌てて、エリオはそっとその頭を撫でる。
「もう…そんな顔しないで。怒ってるわけじゃないからね。」
「うん…ありがとう。」
少しだけ気まずくなった空気を和らげるべく、エリオが一つ提案する。
「そうだ、上がったら一緒にメガーヌさんのお手伝いする?」
「え、喜んでやるよ!料理の勉強したいし!」
「なら決まりだね。一緒に行こうか。」
パァッと明るくなったカスミに内心ホッとしつつ、エリオは一緒に浴場を出るのだった。
(ああっ! ルーちゃん、ごめん着替えだけ転送して!)
(フフ、了解。また後でね〜)
「うん、じゃあ明日はよろしくね。気をつけて。」
「なのは、今の電話、明日のサプライズゲストさんと?」
「そうそう、カスミのデバイスも完成したから、持っていきますねって。」
「良かった…これで7対7に出来るね。」
「高町家とハラオウン家、どっちの親子が強いか…ていうのは野暮だけど、負けないよ、フェイトちゃん?」
「私…ううん、私たちだって。」
さて、皆がゆっくりと熟睡しての翌早朝、カスミはひと足先に起きていた。
「よし、やってみるか…」
皆んなを起こさないように、少し宿からは距離を取ったところで、目を閉じて、イメージを形作る。すると、腰にドライバーがセットされ、右手にはピンクのキーが出現した。
『ウィング!オーソライズ!』
「変身!」
しかし、キーをセットしようとした途端、軽い感電のような感覚が走り、ドライバーもキーも消えてしまった。
「うーん…4年経ってもこれか…」
実は、先日はやてたちに言っていなかったことがある。あの死闘から4年、カスミ自身が持つ力には3分の時間制約がついただけでなく、変身できる形態もライジングホッパーだけになってしまったのだ。
「やっぱり寂しいな。空も飛べないってのは…」
「ありゃ? カスミ、早起きだね。」
「あっ…スバルさん。おはようございます。」
ちょうど散歩していたスバルに出会したカスミ。二度寝する手もあったが、せっかく起きたということで、同行することにした。道中、2人は雑談に花を咲かせる。
「…てこともありましたね。」
「そっか〜、2人共仲良しに見えるけど、やっぱり喧嘩する時もあるんだね?」
「まあ…大概その後揃ってママたちに…」
カスミが軽く手を振る動作をすると、スバルは大凡の光景を察したのか苦笑する。
「アハハ…なのはさんを怒らせたら大変なことになるからね…でも、フェイトさんも?」
「正直、真の意味で怖いのはフェイトママの方な気はしますね。一杯甘やかしてくれる分の反動かもです。普段は恥ずかしくなっちゃうくらい優しいんですけどね…」
スバルにしても、機動六課の頃に何度もなのはに頭を冷やされている身なので共感はしやすいが、優しいイメージのあるフェイトの方が怖いとは意外だった。
「怖いっていうと…どれくらい?」
「うーん…鬼?いや、魔王くらいでしょうか…? ああ、思い出すだけでもう…」
頭を抱えるカスミに、スバルはなのはが管理局の白い魔王と呼ばれていたことを思い出して噴きそうになるのを堪えていた。
「でもね、それだけなのはさんもフェイトさんも、2人のことを大切に思ってるんだよ。悪いことしたら叱ってくれる人がいるの、凄く幸せなことなんだから。」
「そうですね…きっと、これからも偶に喧嘩するんでしょうけど、ママ達に甘えられるのって凄く良いんですよね。」
2人で笑って、久々のまったりとした気分を楽しむ。そして、朝食の後はいよいよ陸戦試合のマッチアップである。
「頑張ろうね、カスミ!」
「はい!」
〜陸戦試合会場〜
「さて、今の所13人かな?」
「なのはママ、スペシャルゲストを呼んでるってエリ兄から聞いたんだけど…?」
「あ、ちょうど着いたみたい。ルーちゃん、ちょっとお願いできる?」
「はい、お任せください!」
ルーテシアの召喚魔法が発動し、魔法陣から1人の女性が姿を現した。そのスペシャルゲストとは。
「すみません、お待たせしました!」
『ギン姉(ギンガさん)!』
ギンガ・ナカジマ、スバルの姉であり、カスミにとっては、大好きな相談相手でもある1人だ。本来、管理局での業務が多忙であるため来られないと思われていたのだが…
「何とか頑張って終わらせてきたわ。カスミにこれをプレゼントするためにね。」
「もしや、この中に私のデバイスが…」
ギンガから手渡された箱を開けると、中から飛び出たのは、真っ白な小鳥の形をしたデバイスだった。円らな瞳が愛らしい。
『か、可愛い…』
「シマエナガって言う世界でも稀少な鳥なんだって。触ってあげて。」
両手で包むと、デバイスがカスミを持ち主と認識したのか、笑顔を向けてくれた。殆どの女性陣はその可愛さにメロメロである。
「あとは変身するだけだな。行けるか?」
「はい!みんなに新しい姿見てもらうの、嬉しいです。」
少し距離を取ってから、カスミは地面に魔法陣を展開する。
「マスター認証、カスミ・テスタロッサ・ハラオウン、マスコットネームはアリア、そして…」
この子の名前は出会う前から決めていた。大好きな母、兄、姉が一緒に戦っていた頃のチーム名をつけようと。
「正式名称は、ライトニング・アリア!」
エリオやキャロも一瞬驚きつつも、嬉しそうな顔を見せる。フェイト達は言わずもがなだ。
「ライトニング・アリア、セット・アップ‼︎」
瞬間、その体は光に包まれ、変身した時と同じように体を大きくし、それに合わせて黄色と黒のバリアジャケットが装着される。瞳の色が赤に変わるのは同じだが、髪型はヴィヴィオの大人モードと同じように、長髪を一纏めにしたものとなっていた。
『おおーっ…!』
「ギンガさん、ありがとうございます! はやてさんにも帰ったら御礼しないと。」
「ええ、こちらこそよ。無事に間に合って良かった。なのはさん、カスミと私のチーム分けはどうしますか?」
「それじゃあ…カスミは私たち青チーム、ギンガはフェイトちゃんたちの赤チームで行こうか!」
『はい!』
そして、13人全員のセットアップが完了後、いよいよ戦いの幕が上がる。
エリオはフェイトと同じで、普段優しい分、本気で怒ったら怖いタイプと思っています。次回、アップデートした陸戦試合をお届けしますのでお待ちください。