魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女   作:陽炎=蜻蛉

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小説には、架空のタイトルをつけて登場させましたが、FEシリーズの続編は本当に作ってほしいですね。FE3のシステムでネクサスやZを操作したいと思ってます。


第11話「決着」

 

決して、望んだ人生ではなかった。貴族の娘、雷帝の子孫、幼い頃から期待、尊敬、全て背負わされてきた。何度も心が折れそうになって、体も傷だらけになった。それでも、両親にエドガー、ジークたちのお陰で、今は血統に誇りを持ちつつ、ヴィクターとしての自分も両立できている。

 

今の私が望むものは、ジークやポンコツ不良娘たちともう一度真正面からぶつかること。だから今負けるわけには行かない。例え超新星のルーキーが相手であろうとも。

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「ええ、少し思い出に浸っていただけですわ。もう大丈夫、雷帝として決めに行きます。」

 

「どうか、ご武運を。行ってらっしゃいませ!」

 

ここまで一進一退の状況、しかし向こうが先ほど見せた形態がもう使えない以上は、量で押し通すのみ、そう決意してヴィクターはリングへと上がっていった。

 

 

【ファイナルラウンド、スタートです!】

 

開始の合図と同時、ヴィクターが仕掛ける。

 

「七四式・飛龍!」

 

竜巻の如く襲いかかる衝撃波を、ハイジャンプで躱したカスミ。しかし、ジャンプしたと同時に、次の攻撃は放たれていた。

 

「十八式・清流!」

 

(ハイジャンプ読みの連撃ーーッッ⁉︎)

 

アリアには、ヴィヴィオのセイクリッドディフェンダーのような防御機能は無い。

 

「ライトニングバリア‼︎」

 

咄嗟に覚えたてのバリアを展開するが、練度が低い故か、あっという間に砕かれてしまう。そして、溢れた水の斬撃はカスミの左膝を撃ち抜いた。

 

「ガッ…!」

 

【ヴィクター選手の水の斬撃が、カスミ選手を捉えた!】

 

(左膝がイカれた…!)

 

ハイジャンプ中の脚部負傷は、CEの骨折ダメージによってそれ以上の跳躍をさせてくれなくなった。同時にカスミの体は自然に落下していく。そして、突然それを放置するヴィクターではない。

 

「さあ…次の私の攻撃、どうされます?」

 

ヴィクターが放とうとしている技の構えは、前戦にてシャンテの分身を全て弾き飛ばした回転斬撃。喰らえば間違いなくライフが消し飛ぶ、カスミの本能はそう判断した。

 

(やるしか…ない!)

 

もう機動力は使えない以上、攻撃には攻撃をぶつける覚悟を決めるほかない。

 

「アリア、もう一度お願い!」

 

【カスミ選手、何と落下しながら打撃の体勢に入った!】

 

「ウオオオオオオオオオッッッ‼︎」

 

足の痛みを堪えながら、左の拳に魔力を込める。そして、両者の技がぶつかった。

 

「九一式・破軍斬滅‼︎」

 

「ゼロ・ブラスト‼︎」

 

拳が砕けても構わない、その覚悟に呼応したアリアの鳴き声が響き、再度カスミの体は黄色に光る。魔力強化された槍の先端と拳の激突は、衝撃だけでなく火花さえ発生させていた。しかし。

 

「グッ…アアァァァァッッ‼︎」

 

会場に響いたのはカスミの悲鳴。ここも練度の差が現れてしまった。実際に骨折したわけでは無いものの、これでカスミの左拳も完全に封じられた。

 

「ここまで…ここまでやってもなお…届かないんですか…⁉︎」

 

絶望的な状況に、リオは思わず項垂れる。ハリーはそっとその肩に手を置くと、静かに諭した。

 

「チビリオ、あのお嬢様はそれだけ強いってことだ。それに、アイツも負傷は覚悟の上だったはずだぜ。」 

 

JS事件でのカスミを知るなのは、ヴィヴィオ以外の初等科組、大人組、そして医務室で観ていたアインハルトとノーヴェもカスミの状況に戦慄していた。ここまでボロボロになったカスミは見たことがない。

 

「ハァッ…ハァッ…!」

 

捨て身の防御によって、何とかダメージは2000程度に封じた。しかし、代わりに左拳も使えなくなったのが両方の意味で痛すぎる。

 

(ヤバいな、これ…)

 

対し、ヴィクターは威風堂々の仁王立ち。そこに慢心も隙も一切ない。その上で、カスミの戦いぶりを賞賛する。

 

「貴方の戦い方、あの不良娘ともどこか被りますわ、ルーキーにしてその動き、大したものです。」

 

「その言葉、素直に受け取っておきます。けど…まだ諦めてませんから。」

 

「安心なさい。残り時間はまだ2分とありますが、ずっとその痛みを抱えさせはしません。次で…終わりにして差し上げます!」

 

宣言と共にヴィクターの全身から雷が収束していく。

 

「やはり来るか…彼女の百式が!」

 

「あ、あんなの喰らったら…本当に終わっちゃうっすよ⁉︎」

 

「もう…これまでか…!」

 

広範囲雷撃を回避するだけの機動力も、完全なバリアを展開する体力も、今のカスミには残されていない。一同が絶望しかけたその時、観客席に1人の女性が息を切らせながら到着し、叫んでいた。

 

「カスミーーーーッッ‼︎」

 

その叫びに思わず振り向いたカスミ、その視線の先にいたのは、この数ヶ月ずっと一緒に特訓に付き合ってくれた、大好きな先輩。

 

(まだ諦めちゃ…ダメだ…!)

 

カスミは、残った右手をゆっくりと突き出すと、アリアに指示を出す。

 

「アリア、フェイトママの時と同じの、いけるね?」

 

アリアからは、いつもと変わらない、元気のいい鳴き声が聞こえた。そして、闘志を再度剥き出しにした表情で、ヴィクターの前に立つ。

 

「無様に逃げたりはしません。私の全て、取れるもんなら……取ってみろッッ‼︎」

 

「貴方の強き精神に敬意を表しますわ。これで…フィニッシュです!」

 

そして、収束した雷撃が、技名の叫びと共に一気に解放される。

 

「百式・神雷‼︎‼︎」

 

襲いかかるのは、強烈な雷撃砲、それはカスミの体ごと飲み込んでしまった。ヴィヴィオも、フェイトも、なのはも、はやても、チームナカジマの面々も、そしてギンガも、思わずカスミの名を叫んだ。

 

【ヴィクター選手、3回戦に続いての強烈な雷撃砲が炸裂!これは決まりか⁉︎】

 

「ハァッ…ハァッ…中々…骨が折れましたわね…」

 

CEが発動しなかったとはいえ、2ラウンドの時点でギリギリまでダメージを背負っていた。その状態では放つ百式は、流石に負担を強いられたようだ。

 

(あの子の残りライフは17000、一気に削り取るために、前戦の時とは違って砲撃式で撃ち抜いた。これで…決まりです…!)

 

辺り一帯に煙が上がる中、仮に耐えられたとしても、ダウン判定が入ると判断したヴィクターは、ゆっくりと踵を返し、ニュートラルコーナーへと向かおうとした。しかし。

 

 

「どこへ…行くんです…?」

 

ゾクッ‼︎ とヴィクターの背中に凍る感覚が走り、思わずヴィクターは振り返る。百式・神雷は確かに命中したはずだ。当然ライフが持つはずがない。だが、カスミはボロボロの状態でも…笑い、立っていた。

 

「カスミ…!」

 

「なのは…!カスミが…!」

 

「フェイトちゃん、大丈夫、あの子はちゃんと立ってるよ‼︎」

 

【の、残したッッ! 何とカスミ選手、ライフ300ポイントでギリギリ残しています‼︎ ダウン判定も入っていない⁉︎ 一体何が起こったと言うのか⁉︎」

 

「賭けは嫌いですけど…うまくいってくれましたね。」

 

「貴方…まさか…!」

 

カスミの体から迸る光には、明らかに異なる色の光が混じっていた。そう、それは即ち。

 

「あいつ…魔力を変換しやがった…!」

 

「変換って…あんな膨大な魔力をどうやって変換したんすか⁉︎」

 

コロナが映像を元に分析し、解説する。

 

「神雷を受けた瞬間、右手でヴィクター選手の魔力を高速変換処理してます。」

 

「ダメージを削ぎつつ、自分の魔力に変換…理論上は可能ですけど、あんな状態で実行するなんて…!」

 

「アイツ…俺以上に捨て身すぎるぞ⁉︎」

 

衝撃を受けている常連組に、リオとヴィヴィオが補足説明を入れる。

 

「カスミ、2日間ずっと特訓してたんです。雷撃魔法のダメージ軽減と受けた魔力の変換、両方ができるようにって。」

 

「雷撃対策に反射が出来ないならこれしか無いって、必死に頑張ってました!」

 

「凄い…!凄すぎますよ、カスミさん!」

 

確かに、雷帝の魔力は余りにも膨大、そこから連なる防御力も桁外れ、現に想像の力を魔力値変換しても、削り切ることはできなかった。しかし、もしもその膨大な量の一部を自分のものに出来たならば。

 

「たった2日間の特訓の果てに成し得たのは…カスミちゃん自身の強い思いが大きい。チーム最後の砦として戦い抜く、その一点でフェイトさんと特訓してきたんだろう。もしかしたら、2ラウンドで新形態を披露したのも、全てはこの時のためだったのかもしれない。」

 

「ポイント差を覆すために、相手が大技を打ってくるだろう展開を狙って…?」

 

「じゃあ、足や左手の負傷もわざと…⁉︎ あの子…どこまで行くつもりなんすか…?」

 

セコンドで冷静に見ていたミカヤの解説には、ウェンディもディエチも驚きを隠せなかった。

 

「カスミさん…あんなにボロボロになってまで…」

 

医務室で観戦していたアインハルトは、改めて自身の過去に囚われて練習の成果を殆ど発揮できなかった、先ほどの己を恥じていた。自分より年下の少女が、チームメイトの笑顔のために、チームの勝利のために、目の前で必死に戦っている。そんな彼女にノーヴェはそっと手を置くと、優しく諭す。

 

「大丈夫だ、あいつはきっと勝つよ。お前が抱えてる無念も含めてな。」

 

「はい…信じます!」

 

まさか雷撃砲を受けてライフを残すとは、ヴィクターも流石に耐え切られるのは予想外だったが、後一撃加えるだけのこと、しかしカスミの笑みはその精神を間違いなく揺らしていた。

 

「ですが…その体で何をするつもりかしら?出来ることなら、棄権をお勧めしたいところよ。」

 

「ご厚意、感謝します。でも、貴方が魔力を沢山放出してくれたお陰で…使える量が増やせそうです…!」

 

その言葉に嫌な予感を覚えたヴィクターが、トドメを打つべく動き出そうとするが、ガシャンッ!という捕縛音と共にヴィクターの動きが止められた。

 

「なっ…バインド⁉︎」

 

「あいつ、いつの間に…⁉︎」

 

「ウチのママ直伝の技です!」

 

大会前になのはの愛機、レイジングハートから教わった技の一つ。なのははこの技を繋ぎとして用い、そこから数々の収束系砲撃を繰り出してきた。

 

「まさか、破軍斬滅の時に拳を打ち込んだのは…⁉︎」

 

「ええ、本当の狙いはそれでした。使いたてなんで、精々10秒持つかどうか…分からないですけど…」

 

微かに笑うと、カスミは腰を屈めながら、両腕を斜めに広げている。その体勢に、なのはたち、いやチームナカジマの面々も見覚えがあった。それと同時に、フィールド内の魔力が、今度はカスミの両腕に収束されていく。それはカスミのものだけに留まらない。

 

(この子まさか…私が放出して、フィールド内に滞留している魔力まで使うつもり…⁉︎ 動け…ないっ…‼︎)

 

「貴方の雷撃…本当に凄まじかったです…でも…私のママの方が…もっと強かった!」

 

こちらも敬意を払いながらも、両腕に収束し続ける光は青白い輝きを放ち、カスミの全身もまた同じ光に満ちていた。

 

「あれは…!」

 

『行けーーーっ!カスミーーーーーッッッ‼︎』

 

チームメイトの叫びと共に、カスミは勢い良く両腕を広げた。

 

「へァァッ‼︎」

 

そして、カスミの雄叫びのような掛け声と共に、ヴィクターはおろか、会場にいた全ての人々が、カスミの背後に同じ構えで立つ、銀色の巨人の幻影を見たと思った、その刹那。

 

「スペシウム光線‼︎‼︎」

 

十字に構えた両腕から放つ光の奔流が、ヴィクターの体を纏めて飲み込んでいく。当然、反動による衝撃に加えて、これまでのダメージも合わさり、全身に痛みが走るが、足りない部分は意志の力で補った。

 

「全力、全開ダアァァァァァァァァッッ‼︎」

 

残りの魔力など知ったことではないと言わんばかりの絶叫が響いた直後、凄まじい爆裂音が轟き、フィールドには大きな黒煙が立ち込めた。カスミは、殆どの力を使い果たしたのか、ついに片膝をつく。

 

チラリと見れば、CEによる骨折や損傷のダメージは全身に広がっていた。まさに限界ギリギリまで力を絞り切った。これでダメなら諦めがつく。

 

そして黒煙が晴れた時、ゆっくりとヴィクターが姿を見せる。最早これまでかと、カスミの精神にも遂に諦めが見えたが。

 

「み…ごと…よ…」

 

ヴィクトーリア・ダールグリュン LIFE 0

 

ダメージは今大会最高値の50000を示し、ヴィクターは遂に崩れ落ちた。

 

【逆転!逆転だ!カスミ選手、奇跡の大逆転勝利‼︎ 超新星のスーパールーキーが遂に雷帝をも下し、準決勝進出です‼︎】

 

決着のゴングが鳴り響いた瞬間、割れんばかりの大歓声が会場を包む。カスミがふと観客席を見上げれば、フェイトが泣きながら自分の名を呼んでいるのが見え、ヴィヴィオたちチームメイトも喜びで泣いていた。

 

「ハハ…皆んなそんなに泣いてどうする…の…」

 

何とか立ちあがろうとするが、9割どころか99%の魔力を使い、最早両足で立つ力さえ残っていなかった。するとそこへ。

 

「カスミ、立てる?」

 

「ヴィクター、さん…」

 

彼女もバリアジャケットはボロボロだが、こちらはまだ立ち上がるだけの体力を残していたようだ。50000もの計測ダメージを受けても動けるのは流石としか言えない。

 

「私の雷撃を自分のものにされたのは、貴方が最初で最後よ。次は負けないわ。」

 

「はい…望むところです…」

 

台詞こそ返せるが、足が思うように動かない。そんなカスミにヴィクターは苦笑しつつも、肩を貸して体を支えてくれた。

 

「もう!勝者が立てないでどうするの?堂々と胸を張りなさい!それが勝者の努めよ。」

 

「は、はい!」

 

カスミは最後の力を振り絞って高々と右手を突き上げ、叫んだ。

 

「応援、ありがとうございましたーーっ‼︎」

 

更に歓声が大きくなる中で、慌てて駆け寄るミカヤたちに抱えられて、カスミは会場を後にする。

 

「カスミ、また会いましょうね。」

 

「はい、ヴィクターさんの分も頑張ります!」

 

最後に一礼して、2人は別れていった。

 

「お嬢様、お疲れ様でした。この後は?」

 

「そうね…少し、控え室で休もうかしら。ダメージはそんなに無いけど、疲れましたわ。」

 

「畏まりました。一室押さえてありますので、どうぞそちらへ。」

 

「流石ね。ありがとう、エドガー。」

 

いつもと変わらない余裕を持った笑み。しかし、僅かな違いを感じていたエドガーは、ヴィクターに内緒で1人の選手に連絡を入れていた。

 

同じ頃、ヴィクターとウェンディに肩を貸してもらいながら、カスミは医務室へ歩いていた。

 

「一先ず、シャマル先生に診てもらわないとね。」

 

「すみません、大分無茶を…」

 

「お説教は一通り事が済んでから。ノーヴェもアインハルトも心配してるよ?」

 

「でも、皆んなの分もって思い、バッチバチに伝わったっすよ!」

 

「ハハ…なら…良かっ…」

 

「あっ!カスミちゃん!」

 

ミカヤたちの声は届くことなく、カスミの意識は闇へと消えていった。

 

 

 

〜医務室〜

 

「シャマル先生、カスミは…」

 

「大丈夫。数値は異常なし、雷撃を真っ向から受けようとした分のダメージと、その状態で一気に魔力を消費した分、疲れちゃったみたい。ただ、アリアも機能停止してるし、ちょっと待ってね…」

 

シャマルの回復魔法が発動すると、カスミのバリアジャケットが消え、元の姿へと戻る。そして、胸の上にアリアが姿を見せた。

 

「お疲れ様、アリアも全力で頑張ってくれたね、ありがとう。」

 

フェイトの言葉に、アリアも勝利した事が分かったのか、嬉しそうな鳴き声を発する。

 

「もう少ししたら目を覚ますと思うわ。フェイトちゃん、ギンガ、そばにいてあげてくれる?」

 

「はい、勿論です。」

 

「じゃあ、フェイトさん、また後で。」

 

「うん、皆んなもありがとね。」

 

激戦の直後とは思えない程にスヤスヤと眠っているカスミ。その可愛い寝顔を、2人は愛おしそうに見つめていた。

 

 

 

〜選手控え室〜

 

ヴィクターはソファにもたれ、脱力していた。アレほどの死闘は、1年前にハリーと激突した時以来だっただろうか。

 

(あんなに捨て身で、それでいて絶対に諦めない…私にはとても真似できなかった…)

 

すると、ノックする音が聞こえる。エドガーが、マスコミと話を終えて戻ってきたのだろうと思い、どうぞと声をかけると、中に入ってきたのは予想外の人物だった。

 

 

「よ、ヘンテコお嬢様。」

 

「ポンコツ不良娘…何の用ですの? ルーキーに負けた私を嘲笑いにでも来たのかしら?」

 

「いや、たまたまお前に用があったから来ただけだぜ。これ、好きなんだろ?」

 

ハリーがそっとホットコーヒーの缶を手渡した。

 

「何で貴方それを…」

 

「あのイケメンな執事に教えてもらった。代わりにお願いしたいってさ。」

 

また余計なことを、と内心思い溜め息を吐きつつも、素直に缶を受け取って一気飲みする。

 

「どうだった?あのガキは。」

 

「ルーキーとは思えないレベルでしたわよ。貴方が戦ったリオ選手や、ジークが相手をしたアインハルト選手、あのチームには、新人にして凄い面々が集まっていると認識させられましたわ。」

 

「そっか。けど、オレとしては正直残念だよ、都市本戦でお前とやり合いたかったから。」

 

「嫌味のつもりですの?やっぱり貴方、私を馬鹿にして…」

 

「真剣に戦った奴を誰が馬鹿にできるんだ?」

 

空気が変わる。いつものお調子者な雰囲気など無い、混ざり気無しの怒りを感じた。ハリーもまた、選手としての誇りを持っている、それを忘れていた。

 

「失礼、今のは失言でしたわ。」

 

「分かってるならいい。」

 

しばしの沈黙の後、今度はヴィクターがポツリと話し始める。

 

「私は…雷帝の子孫としての運命を受け入れたつもりでした。その為の厳しい訓練も、数々の戦いも。」

 

「オレは馬鹿だからそういうの分からねえけどよ。大変だろ、好きなように生きられないって。」

 

「まあ…否定はしません。それでも、全ては自分のため、勝利のためと信じて努力してきたつもりです。ですが、現実を分かっていても…負けるのは……」

 

言葉が途切れたのに異変を感じて、ハリーが見ると、ヴィクターは静かに涙を流していた。声を上げることもなく、嗚咽を漏らすこともせず。それは、淑女としての最後の意地だったのかもしれない。

 

「…ほら。」

 

ハリーはそれだけ言うと、ヴィクターをそっと抱きしめた。

 

「何…を…?」

 

「泣きたいなら好きなだけ泣けばいい。今くらい、自分の気持ちに正直になってやれ。」

 

予想外の行動と、その温かい言葉は、ヴィクターの涙腺を刺激するには十分だった。 

 

「少しだけ……お借りしますわね。」 

 

それから少しして、目元を少し腫らしながらも、ヴィクターはいつもの調子を取り戻した。

 

「今回ばかりは貴方に感謝しますわ。おかげでスッキリしました。」

 

「そりゃ結構。ま、安心しな。お前の分も含めて必ず都市本戦に向かうからよ。」

 

「寧ろ行かないと怒りますわよ。さ、これから貴方も一緒に来なさい。」

 

「へ?どこに?」

 

「この後、管理局の八神司令主催でパーティがあるわ。美味しいモノも食べ放題よ。」

 

「…ありがたく同行させてもらうぜ。腹ァ減ってたんだ。」

 

今日の敗戦を未来に繋げるために、雷帝は再び立ち上がる。

 




vsヴィクター戦を3話に分けてお送りしました。最後のスペシウム光線の描写は、FERのギガスペシウム光線からヒントを頂きました。

中々正式に描かれることはありませんが、ハリーは競技選手に対してのリスペクトは誰よりも強いと思っています。口喧嘩するヴィクターに対しても、選手としては敬意を表しているんじゃないかと。ということで、試合後にそんな描写を入れてみました。

次回からは、無限書庫編なんですが、カスミは転生しているとはいえ、元は一般人なので、どんなふうに絡めるか考え中です。また、短編も幾つか挟む予定ですので、お待ちください。
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