魔法少女リリカルなのはHERO Tの名を持つ少女   作:陽炎=蜻蛉

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お久しぶりです。5ヶ月もの間、失踪してしまい申し訳ありません。ようやく、無限書庫での出来事の始まりを作ることが出来ました。ここからリスタートしていきたいと思います。お待ちいただいた読者の皆様、是非ご一読ください。


第12話「魔女の悪戯」

 

「ん…あれ…?」

 

「おはよう、カスミ。」

 

「大丈夫?」

 

「フェイトママ、ギンガさん…」

 

目を覚ましたカスミは、ゆっくりと体を起こすと、その肩にはアリアが止まる。

 

「アリア…そっか、私気絶してたんだね。」

 

「準決勝進出おめでとう。良い試合だったよ。」

 

「そうだよ、私もヴィヴィオたちも、皆んな泣いちゃったくらい。」

 

その言葉に勝利の実感が湧いたのか、ホッと一息つくと、改めて2人に感謝の言葉を告げつつ、頭を下げる。

 

「特訓に付き合ってくれて、ありがとうございました。引き続き応援よろしくお願いします!」

 

「フフ、了解よ。」

 

「ママも試合の日は必ず観に行くからね。」

 

みんなで笑って、ほのぼのとした時間を過ごす。すると、カスミは妹含め、他の皆んながどこにいるのか気になった。

 

「あ、ところでヴィヴィオたちは?」

 

「はやての主催で、パーティ…というよりは話し合いをするみたい。」

 

「はて…話し合い?」

 

「あの子やジークリンデ選手、そしてヴィヴィオ…ベルカ諸王時代の記憶を持つ子どもたちが今回の大会には多く参加しているから、色々と皆んなで共有したいんですって。」

 

カスミは、ヴィヴィオのオリジナルである、聖王オリヴィエは勿論、初等科組で図書館に行く際、その時代の歴史については学んでいた。しかし、あくまで本の中での話であり、実際のところは分かっていない。

 

「ママ、それ何時くらいに始まるの?」

 

「えっと…後30分だね。」

 

愛する妹や尊敬する先輩が関わる話ともなれば、参加しないわけにはいかないだろう。

 

「よし!じゃあ、私も行く。あ、でもその前にインタビューを…」

 

「大丈夫よ、ノーヴェたちが代行してくれたから。会場まで一緒に連れて行ってあげる。」

 

ゆっくりとベットから降りると、自分の体に異常がないことを認識しつつ、ふと思い出したようにフェイトに質問する。

 

「ママ、明日から出張だよね?」

 

「うん。ごめんね、大事な時に…」

 

「ううん、寧ろいつも観に来てくれてありがとう。次も頑張るから、あの…」

 

急に指をいじるカスミ。どうしたのかと首を傾げるギンガだが、フェイトは娘の気持ちを察すると、ゆっくりと近づいてその体を抱きしめ、囁くように。

 

「次の試合も楽しみにしてるよ。でも、命に関わるような無茶は絶対しないこと、約束ね?」

 

「うん…!約束!」

 

幾つになっても、このハグが無いと生きていけない、カスミはそう思っている。

 

「ごめんね、ギンガ。カスミのこと、お願いします。」

 

「はい、承りました。じゃあ、カスミ一緒に行こっか。」

 

「はい!」

 

フェイトに見送られて、カスミはギンガと一緒に会場に向かった。

 

 

 

 

「八神司令、お待たせしました。」

 

「すみません…って、凄い数⁉︎」

 

「お〜、カスミも来てくれたんやね。ありがとう。ギンガも良かったら一緒にどうや?」

 

「そうですね、私も是非皆んなの話を聞いてみたいので、喜んで。」

 

皆の視線が一気にカスミに集中する。そこには、チームナカジマの面々だけでなく、ジーク、エルス、ハリーたちインターミドルの強豪選手、そして、1人近づく女性。

 

「カスミ、改めて準決勝進出おめでとう。思ったより早く再会できて嬉しいわ。」

 

「ヴィクターさん、こちらこそ嬉しいです。あ、雷帝の子孫だから…ですか?」

 

「それもあるけど、ジークの保護者としての責任もあってね。」

 

さっきまで、死闘を繰り広げていた相手とは思えないほどに高貴な姿に思わず、胸の奥に煌めくものを感じていた。

 

「簡単やけど、料理も用意してるから、良かったら食べてってな〜。」

 

「カスミ、一緒に食べよ!」

 

「そうそう!主役の1人なんだから!」

 

「あはは…了解。」

 

というわけで、一同はゆったりと食事を楽しみつつ、はやての事前説明のもと、アインハルトが持つ、覇王クラウス=イングヴァルドの記憶について、本人の口から語ってもらうことになった。

 

アインハルトが話してくれたのは、戦乱が続く世の中で出会った、聖王オリヴィエ、その友人であるエレミアとの束の間の穏やかな日々、そして、そんな日々を嘲笑うかのように苛烈化していく戦争と、それを終わらせるため、最終兵器にして玉座についた者の生命も尊厳も奪う“聖王のゆりかご”に乗り込もうとしたオリヴィエと、必死に止めようとするも無惨に破れたクラウス…そんな、悲劇の物語だった。

 

「オリヴィエがゆりかごの王になる決断をして以降、エレミア…リッドとは二度と会えませんでした。」

 

「クラウス殿下は…不義理と思っていたんかな。」

 

「正直、もしも会えていたならば、一体どこへ行ってたのかと一発殴り飛ばすつもりではありました。」

 

それも当然の気持ちだろうと、一同は同意する。ただ、とアインハルトは前置きし、続けた。

 

「理性では…分かっているつもりです。何か大変な事情があったのだろう、リッドが悪いわけじゃないと。」

 

「とはいえ、クラウス、オリヴィエ、エレミアの3人は結局、再会することはできなかった…凄まじい重さを感じますね。」

 

「てことは、私に聞きたいのは、その頃のリッドについてってことかな?」

 

「はい、何かご存知なことがあればと。」

 

「残念だけど…エレミアの資料はジークの実家にも殆ど残っていないのよ。流浪の一族だったからというのもあるんでしょうけど。」

 

しかし、エレミアという単語に引っ掛かりを覚えたヴィヴィオが、一つの提案をする。

 

「私、無限書庫の司書資格持ってまして、良かったら皆さんでその資料、探しに行きませんか?」

 

その言葉に一同は驚愕した。因みに初等科組全員立ち入りパスは保有している。

 

「お前ら…改めてどんな小学生なんだ…⁉︎」

 

「ま、まあ…色々ってやつです。」

 

「ほんなら、私とノーヴェで引率して、皆んなで探検ツアーと行こうか?」

 

はやての最終提案に同意した一同はこの日、本局宿舎で一泊することとなった。

 

「ジークさん、初めまして…ですよね?」

 

「アハハ、そんな畏まらんくてええよ。え〜と…ここはフレンドリーに、スミちゃんって呼んでもええかな?」

 

「はい、是非。」

 

何気に直接激突したヴィクター以外の上位勢と顔を合わせるのは初めて。カスミは、体を休めつつ、それぞれとの会話を楽しんでいた。そして、しっかりと睡眠をとって迎えた翌朝、一同は無限書庫の無重力空間に入室する。

 

「リインさん、ティオとアリアのこと、宜しくお願いします。」

 

「勿論です!戻ってきたら2人にお返ししますね。」

 

「ヴィヴィオ、ごめんね。クリスにもついてもらっちゃって…」

 

「全然気にしないで!何かあればノーヴェたちに連絡するだけだし。」

 

リイン曰く、順調にいけば途中から合流できるとのこと。カスミとしても、何かあれば変身すればいいと思っていたので、デバイス不在の問題は無さそうだ。

 

 

 

「目的の本がありそうな場所は、10ヶ所まで絞り込んでます。なので、ここからは手分けして探しますか?」

 

「おし!これだけ集まってんだ、そうすっか。」

 

緊急時、はやてとノーヴェにすぐに連絡を入れるといつ共有を挟みつつ、一同は探検に向かっていく。カスミはヴィヴィオ、ミウラとの3人でチームを組むこととなった。

 

「ミウラさん、今日は宜しくお願いします。」

 

「こちらこそ!お二人、いつも仲良くされてて見ていて楽しそうだなって思ってたんですよ。」

 

「えへへ…自慢のお姉ちゃんです!」

 

「なんだか改めて言われると照れるな…」

 

はにかみつつも、目的の書物発見を目指す3人。しかし、一同が書庫に入ったのと同じ頃、1人の少女が目的に向けて動き出していたことを、今はまだ誰も知らない。

 

「えーと…エレミアの…うーんそれっぽいのも見当たらないな…あ、日本の歴史漫画が…」

 

「カスミ、それは後でね?」

 

「はーい…」

 

手嶋佳純として生きていた頃から、歴史関係の書物は読み漁っていたが、カスミとなった今もそれは変わらない。一度興味を惹けば、つい目的を忘れて手に取ってしまう。

 

そうして、3人各自に捜索を続ける中、次のフロアに向かおうとした時、目の前に魔女そのものと呼ぶべき姿をした少女が音もなく現れた。

  

「貴方確か…」

 

「ミウラ・リナルディ、ヴィヴィオ ・タナマチ、カスミ・テスタロッサ・ハラオウン…」

 

【真名認識】

 

3人が目の前の少女について考えようとした次の瞬間、少女が放った黒い魔物が、その肉体を飲み込むべく襲いかかってきた。

 

「ディバインバスター!」

 

しかし、即座にヴィヴィオが砲撃を放ち、直撃した魔物は勢いよく地面に激突する。

 

「ファビア・クロゼルク選手ですよね?」

 

「あ、インターミドルで勝ち残ってた…」

 

「いきなり攻撃って…何のつもりです?」

 

姉妹の問いに、少女ーーファビアは答える。

 

「私は魔女だから。欲しいものは手に入れる、それだけ。」

 

その言葉に危機感を覚えたカスミは、自身の力でキーを発現する。

 

(この空間なら…こっち!)

 

『サンダー!オーソライズ!』

 

「変身!」

 

『プログライズ!』

 

纏うは橙色の外装、雷の力を持った疾風の昆虫、その名は。

 

『ラララ!雷鳴!雷電!電撃!ライトニングホーネット!

"Piercing needle with incredible force.』

 

(魔力を使わずに姿を変えた…⁉︎)

 

「ちょっとビリビリしてもらいます!」

 

カスミはお返しとばかりに、電撃を纏った針を複数飛ばす。しかし、書庫への被害を考慮した分威力が低下し、ファビアには簡単に防がれてしまった。

 

「この程度…!」

 

だが、カスミの狙いはあくまでも時間稼ぎ、初撃は目眩し程度で十分だ。手元にデバイスが無い今、はやてやノーヴェたち大人組が救援に駆けつけてくれることを信じて、今は防御と避難に徹する。

 

「ヴィヴィオ、ミウラさんを安全な所までお願い!」

 

「了解!カスミも気をつけて!」

 

飛行魔法に不慣れな状況で離れては、確実に魔物に取り込まれてしまう。ヴィヴィオがミウラをお姫様抱っこしながら退避しようとした、その刹那。

 

「失せよ光明(ブラックカーテン)」

 

(しまった!)

 

ヴィヴィオの進行先には、もう一体の魔物が待ち構えていた。

 

「逃げ場など…無い!」

 

その口が開くと同時、魔物は一気に2人を飲み込んでしまった。

 

「ヴィヴィオ!ミウラさん!」

 

「魔女の呪いから逃れる術はない…勿論あなたも…」

 

魔物は勢いそのままに、動揺しているであろうカスミも呑み込もうとした。だが。

 

「ヴィヴィオに……何をしたァァァァァァァッッッ‼︎‼︎」

 

咆哮が轟くと同時、魔物は悲鳴をあげて群体に散り散りになる。

 

「な……⁉︎」

 

ファビアが目にしたのは、赤と黒のオーラを纏ったカスミの姿、表情こそ見えないが、水晶に映っていた時とは全く違う、明確な怒り、いや殺意を露わにした姿。一手選択を誤れば、目の前の少女は間違いなく自分を潰しにかかる、ファビアの皮膚感覚はそう覚えた。

 

(この殺気…⁉︎)

 

しかし、この数秒の間が決定的な隙を作る。

 

『にゃお♪』

 

次の瞬間、愛らしい鳴き声と共に、ファビアの手に握られていた、ミウラの瓶がスティールされる。その行き先は。

 

「カスミ、お待たせ!」

 

「ハッ……ルーちゃん!」

 

アインハルトの愛機、ティオの鳴き声とルーテシアの一声で、カスミの体からオーラが消え、その心は正気を取り戻す。見上げれば、ティオだけでなく、妹の愛機であるクリスの姿、勿論ヴィヴィオも取り返してくれていた。そして、カスミの元に飛来するのは。

 

「アリア…メンテナンス、無事に終わったんだね。おかえり!」

 

カスミの嬉しそうな声に、アリアは元気な鳴き声で答えてくれる。

 

「カスミ、ここは一つ力を貸してくれる?」

 

「勿論!いくよ、アリア!」

 

鳴き声と共に、ライトニングホーネットの外装から、いつものバリアジャケットに切り替える。戦況はこれで2対1となった。

 

「さあ、無駄な抵抗はやめて降参しなさい?」

 

「魔女を…侮るな…!」

 

だが、それでもファビアは諦めない。散り散りになっていたモンスター達が高速でファビアの元に吸収されていく。

 

「悪魔合身(デビルユナイト」」

 

そして、先ほどヴィヴィオが沈めたモンスターがファビアの体を呑み込むと、即座に二つ目の詠唱が発動する。

 

「姿態編成(シェイプシフト)」

 

そして、炸裂音と共にモンスターが消滅し、現れたファビアの体は、明確に大きくなっていた。まるで、カスミ達の大人モードと同じように。

 

「魔女の誇りを傷つけた者は、未来永劫呪われよ……!」

 

「ま、向かってきてくれるなら望むところ!」

 

ルーテシアはファビアを拘束すべく、魔法陣を展開しようとした。

 

「這え穢れの地に(グラビティプレス)」

 

「ルーちゃん、上!」

 

しかし、いつの間に展開されていたのか、2人の真上にある魔法陣から光が放たれる。

 

「ライトニングバリア!」

 

「ミラージュプロテクト!」

 

すかさずバリアを張ることで食い止めるが、明らかに押されていた。

 

「無駄なこと、防壁を張っている間は何もできない。撃って!」

 

ファビアは使役するモンスターに刺股を装備させ、2人に突撃させた。このままではマズイ、と思ったその時。

 

「…クラウス⁉︎」「アインハルトさん!」

 

地面に突き刺さる刺股を足場にして、アインハルトがルーテシアをアシスト、そして既にファビアの背後には。

 

「スパーク…スプラッシュ‼︎」

 

電撃を纏う拳がファビアに直撃し、更に拘束魔法が発動し、鎖で彼女の体を捕える。

 

「ヴィヴィオ!よかった、無事で…」

 

「カスミ、ルーちゃん、ありがとう!」

 

「後は他の皆さんを探さないと…」

 

アインハルトの話から察するに、リオやミカヤ達も既にファビアによって閉じ込められたのかもしれない。すると、別の方向から声がした。

 

「魔女っ子〜!どこ行った〜!」

 

「え…チャンピオン⁉︎」

 

現れたのは間違いなくジークのはず、しかしその体は明らかに小さくなっていた。

 

「ジークさん、どうしたんですかその姿…⁉︎」

 

「あ、ハルにゃんにスミちゃん…」

 

無重力に不慣れなのか、すぐにルーテシアがジークをお姫様抱っこする。

 

「あの子にやられちゃいました?」

 

「うう…面目ない…」

 

どうやら、ファビアの魔法によるものらしい。すると、ヴィヴィオ、アインハルト、ジークの3人を目の前にして、ファビアの心の何かが弾け飛んだ。

 

「私を見捨てたあの王たちを…私は絶対に許さないから…!」

 

言うが早いか、ヴィヴィオの鎖を強引に引きちぎると、携行する杖を一同に向ける。

 

「黒炎‼︎」

 

「来ます!」

 

襲いくる爆炎を何とか回避しつつ、ヴィヴィオはファビアに接近する。

 

「ま、待ってください! 私たち、古代ベルカの資料を探してるんです。もしかして、貴方も関係者の1人なら…戦う必要、ありませんよね?」

 

「必要かどうかは…私が決める。先祖の代から恨み続けた一族の子孫と…馴れ合うつもりなんてない!」

 

攻撃の意思は明確、またしても妹が危機に晒されようとしている状況。

 

「あの野郎…!」

 

思わず前に出ようとしたカスミを、アインハルトが制止する。

 

「カスミさん、大丈夫ですよ。ヴィヴィオさんを信じてあげてください。」

 

「アインハルトさん…」

 

暫しの静寂、杖を向けられている状況下で、ヴィヴィオはそれでも、笑顔でこう返す。

 

「それでも私は…貴方と話してみたいですよ。」

 

柔らかな笑顔。戸惑いと、迷いを振り払うように、ファビアは叫ぶ。

 

「箒星!」

 

だが、直撃の寸前に体を捻ることで回避すると、ヴィヴィオはファビアの右手を掴んだ。

 

「ご先祖様のことや、貴方が拘っていること…私たちもそれを知りたいだけなんです。」

 

だが、説得を続けようとしたその時、近くに転がっていた瓶詰めが複数回光を放つ。カスミの脳裏によぎったのは、自身と同じ性質を持った技。

 

「ヴィヴィオ、避けて‼︎」

 

カスミの叫びと同時に体が瞬時に反応したヴィヴィオはファビアを抱えながら横に飛ぶ、その直後、一直線に放たれた光の奔流が書庫の一区画に直撃した。

 

「なんて威力…!」

 

「これ、番長の…⁉︎」

 

すると、ハリーとその舎弟組、エルス、ミカヤ、リオの併せて7名がセットアップした状態で姿を現した。

 

「おいコラ、そこのチビ魔女!テメェよくも不意打ちで、アタシらのこと素っ裸にしやがって!ケツ引っ叩いてやるから覚悟しろ!」

 

怒りの表情のまま、ファビアに向かおうとしたハリーだが、それをヴィヴィオが制する。

 

「ま、待ってください番長!」

 

「いいや、待たねえ!」

 

ガンフレイムの体勢に入ろうとするハリー、しかしヴィヴィオはより一層声を張り上げる。

 

「今、私がファビアさんとお話ししてるんです‼︎ 待ってください‼︎」

 

「え、あ…それはそうだが…」

 

時間にして数秒の間。ファビアも、自分の盾になっている聖王の子孫の行動に戸惑う中で、ルーテシアたちはその隙を見逃さない。

 

「隙あり!」

 

「なっ⁉︎」

 

左手首に嵌められたのは手錠、しかしただの手錠ではない。

 

「少し大人しくしていただきます。」

 

「魔力錠、オン!」

 

瞬間、手錠から放たれた光が、悲鳴とともにファビアの外装を解除する。分離した魔物達も慌てて逃げようとするが、カスミが立ちはだかり、一言だけ告げた。

 

「ゲームオーバーだよ。」

 

その後、別区画で魔物達と戦っていたヴィクターとコロナの合流、更に唯一取り残されていたミウラの救出も成ったことで、無事に一同は再集結を果たすことができた。

 

その上で、ルーテシアから抵抗の意思の有無を問われたファビアが泣き出したこと、駆けつけたはやてとリインが破壊されてしまった各区画の完全修復を行ったこともあり、騒動は平和的な終結を見ることになる。

 

「命があって元気でいるならわざわざ悪いことしたり辛い思いすることない。ちゃんと話して、迷惑かけた人たちには一緒にごめんなさいってしよ。そしたらきっと、ええ感じに前に進めるから。」

 

はやての説得を受け入れたファビアは一同に謝罪(小声ではあったが)した後、ジークの身体を元に戻した上で、はやて、リイン、ルーテシアと共に地上に戻っていった。

 

「いやはや…大変な目に遭いましたね。」

 

ノーヴェ、オットー、ディードの3人が回収した元の服に着替えながら、一同は雑談をしていた。中でもミウラは、先ほどカスミが見せた形態について気になっていたようだ。

 

「カスミさん、そういえばさっきの姿って…」

 

「魔力変換せずに外装を実体化したものです。いざという時しか使いませんけどね。」

 

簡単に説明しつつ、カスミの脳内は先ほど変身したライトニングホーネットについて考えていた。

 

(設定上は存在する、テレビ本編で登場しなかった形態にバルキリーの配色で変身できた。もしかしたら…)

 

「カスミ、大丈夫?」

 

「あ、ごめんね。ちょっと考え事してただけだから。さて、じゃあ探索を…」

 

「ちょっと待ったー!」

 

着替え終えた一同が、探索を再開しようとしていた時、リオが皆を呼び止めた。

 

「多分これが、お探しの【エレミアの手記】だと思います!」

 

「リオ、いつの間に…⁉︎」

 

「実は、ひと段落した時に本棚にあったのを見つけたんだ〜!」

 

目的に必要な材料は揃った、後はじっくりと皆で読み進めるだけだ。ヴィヴィオ、アインハルト、ジークの3人が率先してその歴史を読み解いていくのだった。

 

 




第12話、如何でしたか? ライトニングホーネットを始め、ゼロワンには設定上存在しつつも登場しない形態が沢山あります。本来はバルキリーが変身した姿とゼロワンのそれは異なりますが、今回はイメージしやすい面を意識し、前者を採用しました。

さて、エレミアの手記に描かれた物語を知る中で、カスミはどんな答えを見つけるのか、是非13話をお待ちいただけると幸いです。
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